ラブライブ! Another 一つ屋根の下で 作:伊崎ハヤテ
久しぶりな方はお久しぶりです。
まえがきってあらすじを書くもんだと勘違いしていました。
ですのでこの前書きでもはっちゃけさせてもらいます
新シリーズとして穂乃果編を書かせて頂きます。
凛ちゃんや穂乃果といった元気な子は書きやすいのがいいですね。
私が書く穂乃果が皆さんからも「こいつは高坂 穂乃果だ」と思って貰えるといいです。
それではお付き合い下さいませ。
春の暖かな風が吹き抜ける。その風にのって桜の花びらがひらひらと舞い落ちる。車道の車の風圧で更に桜が舞う。俺、二城 悠はそんな風情ある道を歩いていた。
高校二年になる春から、転校して家からの通学が難しい俺に親父の親友である人の家の一室を提供してもらえるのだ。俺はその人の家、もとい俺の新しい住処へと向かうついで街を見て回ろうと思ったのが運のツキか、迷ってしまった。周りは見覚えのない家ばかり。右も左も解らない現状に苦笑いする。
「是非もなしってな。なんとかなるさ」
そう言葉が漏れていた。こんな時、こうなってしまったのも仕方ない、と割り切ることにしてる。階段の手すりに腰を預ける。割り切って心に余裕があるからか、春の風が心地よかった。
「だって…感じたんだ…進め…」
ふと風と一緒に声が流れてきた。澄んだ声は一定のリズムを刻み、こちらに近づいてくる。その声に少し心が軽くなるのを感じた。この声は何だろうと、上を見上げた。すると、俺が腰かけていた手すりに乗り、滑り降りてくる女の子が一人。
「わぁ~! 危ない!」
その子が叫んだ時には、回避は間に合わず。俺はその子と衝突してしまった。
「いたた……」
俺ではない声に少し飛んだ意識が戻る。すると腰の辺りから少しの重みと柔らかい感触が。
「わわ、ごめん!」
自分がどんな状況なのか理解したのか、彼女は俺の身体から腰を上げた。
「大丈夫? どこか怪我してない?」
女の子は心配そうな表情で俺を見つめている。その青色の瞳に吸い込まれそうな気がして。そんな思考を振り払い、上体を起こしながら笑いかける。
「大丈夫。少しビックリしただけだから」
本当にごめんね、と女の子は俺に手を差し伸べる。俺は少し迷ってその手を取り、起き上がろうと力を込めた。
「わ!」
起き上がる力に耐えられなかったのか、彼女は再び俺の身体に倒れ込んだ。彼女の身体全体の感触が俺の身体を襲う。
「えへへ、何度もごめんね?」
サイドポニーが揺れ、苦笑する彼女の顔に、俺は目が離せなかった。互いに立ちあがり、笑い合う。
「いや、俺の方こそごめん。力が強すぎたかな」
「うう……。スクールアイドルへの道は遠いかなぁ……」
「スクールアイドル?」
聞いたことのない単語を聞き、それを聞き返す。
「スクールアイドルって言うのはね――」
『穂乃果!』
『穂乃果ちゃん!』
説明しようとした彼女の言葉を遮る二つの声。声の方向を見ると階段から降りてくる。
「もう! 勝手に動かないで下さい! 心配したじゃないですか!」
少し低めの声をした女の子が真っ先に降りてくる。長い黒髪。凛とした表情に困惑が混じる。その女の子を一言で表すなら大和撫子が相応しいだろう。
「えへへ、ごめん海未ちゃん」
穂乃果と呼ばれたサイドポニーの子は無邪気に笑う。
「穂乃果ちゃん、大丈夫? 怪我無かった?」
甘い声をした女の子がその次に階段から降りてきた。ベージュの髪にリボンを付けたおしゃれな女の子って感じだった。
「うん、大丈夫だよことりちゃん。この人が穂乃果の下敷きになってくれたから」
下敷きって。もっとマシな言い方もあるだろうに。そう思った瞬間、背中に寒気が奔った。俺はその寒気のする方向に視線を向けた。
そこには海未とことりと呼ばれている二人の女の子。二人はにっこりと笑いながら俺に感謝の言葉を告げる。
「そうですか。穂乃果が迷惑をかけました(この男、穂乃果に何か良からぬことをしてないでしょうか。もしもしていたら―)」
「穂乃果ちゃんに怪我がなくてよかったです。ありがとうございます(いいなぁ。ホノカチャンとボディタッチできて。羨ましいなぁ)」
何か、言葉とは別の何かが聞こえるような気がする。しかもそうとう危ない感じの。
冷や汗を流していると穂乃果と呼ばれている子の声でその空気が崩れた。
「私は高坂 穂乃果! あなたのお名前は?」
彼女の質問に俺は助かった、と内心ホッとしながら答えた。
「俺は二城 悠。今度からこの街で暮らすことになったんだけど――」
「ふたしろ?」
彼女は俺の名字を聞くとうーん、と頭を捻る素振りを見せる。他の二人も彼女の様子を見守る。暫くすると彼女は思い出したように叫んだ。
「あぁ~! 思いだした! 確か今日から穂乃果の家で暮らす男の子がいるんだった!」
彼女の言葉にいち早く反応したのは俺ではなく、黒髪の少女だった。
「本当ですか穂乃果! どうしてそのことを私達に言ってくれなかったのですか!」
彼女の言葉に甘い声の女の子も反論する。
「そうだよ穂乃果ちゃん! なんでことりにも言ってくれないの?」
二人に詰め寄られて穂乃果は慌てながらも事情を説明する。
「仕方ないじゃん! 穂乃果だって夕べ聞いたんだよ? お父さんの親友から頼みだからって断れなかったんだから!」
同居する俺のことなどほったらかしで、三人は口げんかを始めてしまった。
「だいたい穂乃果はいつもそうです。突拍子もないことをするんですから――」
「だからこれは穂乃果のせいじゃなくてお父さんの――」
「ことりに何も言ってくれないなんて、ひどいよ穂乃果ちゃぁん……」
わーわー、キャーキャー、ピーピーと三者三様に言葉をぶつけ合う三人。俺はそれを聞いているのがおかしくて、つい口から笑いが零れる。
『何がおかしいの?』
『何がおかしいのですか!』
『何がおかしいの?』
それを聞いた三人が一斉にこちらを振り向き、叫ぶ。その様がまた可笑しくて、笑いながら答える。
「いや、ごめん。君たちは本当に仲がいいんだなって思ってさ」
「あったりまえだよ! 穂乃果たちはこのオトノキで育った幼なじみだもん!」
高坂が胸を張りながら自慢げに答える。その様を彼女の友人二人は微笑みながら見ている。
「所でどうしてこんな所にいるの? お父さんから聞いた話だと二時頃には家に着いてるってはずだけど……」
そこで俺は自分が迷子だったということを再認識したのだった。俺は渡りに船とばかりに彼女に事情を説明した。
「そっか! 実は穂乃果たちも帰る途中なんだ! よかったら一緒に行こ!」
にこりと笑う高坂の表情に俺はただ頷くだけだった。
「で、ここが音ノ木坂学院。穂乃果達が通う学校だよ」
高坂はこの街を見て周りたいという俺の要望に応えてくれ、帰りの道すがら色々と案内してくれている。嬉々として教えてくれるのが可愛らしくて、思わず頬が緩む。この街に来て、なかなかいいスタートをきっていると我ながら思う。
「……」
「……」
俺と高坂の後を黙ってついていく二人の女性の目線が刺さることを除いては。その二人の視線など知らず、高坂は説明を続ける。
「で、そのことりちゃんのお母さんは学院長さんなんだよ!」
まるで自分のことのように自慢する高坂に紹介された女の子はその垂れ気味で優しそうな目で俺を見つめる。
「南 ことりです。これからよろしくね」
にこりと笑って手を差し出してくれる。やっと警戒心を解いてくれたかと安心してその手を握る。
「ああ。こちらこそよろしく――」
続けようとしたその手をかなり強い力で握られる。その痛みに視線を南 ことりに向ける。
「よ・ろ・し・く・お願いしますね?」
「あ、はい。よろしくお願いします、南さん」
その笑顔と手元の力のギャップが恐ろしくて、思わず敬語になってしまう。
「ことりでいいよ~」
ぱっと手を離し、柔らかい笑みを俺に向けてくれる。握られた手が痺れていた。
「どうしたの二人とも~ 置いて行っちゃうよ~」
高坂の呑気な声に我に返った俺は彼女の元へと急ぐ。
彼女達が通う学院から歩くこと十分。大きい一軒家が建つ高級住宅地から下町の雰囲気へと周囲の風景は変わっていく。
「ここが穂乃果と海未ちゃんが生まれ育った町、オトノキだよ!」
高坂は両手を広げて嬉しそうに自分の町の建物を説明していく。
「ここが、おいしい御握り屋さんで、ここが――」
彼女が指し示したその家は家と呼ぶよりお屋敷と呼んだほうがいいんじゃないかと思うくらい立派だった。純和風なその家の門は目の前に立つ者の侵入を拒んでいるように見えた。そう思っているのは俺だけのようで、高坂は平然と門の前に立つ。
「海未ちゃんのお家は、武道家で日舞のお家なんだよ!」
その雑な説明に黒髪の大和撫子はくすりと笑う。
「穂乃果。それじゃうまく伝わりませんよ」
俺に改まって向き合うと彼女はお辞儀をした。その丁寧さから彼女の育ちの良さがわかる。
「自己紹介が遅れました。私は園田 海未と申します。父が剣道、母が日舞の家元をしています」
「それとね、海未ちゃんは弓道もやってるんだよ!」
高坂の補足に園田は照れながら淑やかな笑みを向ける。
「そうですね。部活は弓道部に所属しています。弓を引くと心が引き締まるんです(言えない、自分がラブアローシュートと妄想して心を乱していたなんて!)」
いちいち気にしていたらキリがないので、彼女の言葉とは別の何かには突っ込まないことにした。
「改めまして、よろしくお願いしますね、二城さん」
「こちらこそよろしく。その、園田さん」
「海未と呼んで頂いて結構です二城さん(本当ならさんを付けて下さい、このでこ助と言いたいですが穂乃果の手前、我慢しましょう)」
「ああ、わかった。じゃあ俺のことも悠でいいよ」
その言葉に海未は笑顔で答える。
「わかりました。羨ましいですね悠は」
今聞こえたのは、空耳かな?
「え?」
「なんでもありません」
「ねえ、ことりもゆうくんって呼んでいい?」
海未との会話にことりが割って入る。特に困る理由もないので俺は了承した。
「ありがとう! ゆうくんってラッキースケベだね?」
今のは空耳じゃないよな。どういう意味だとことりに問い質しても、なんでもないよ~と誤魔化されてしまった。
「着いたよ、ここが穂乃果のおうち!」
海未とことりと話しているうちに、どうやら目的地に辿り着いたようだ。その家のど真ん中に「穂むら」という木製の看板がある。
「穂乃果の家はね、お饅頭屋さんなんだ! ウチのほむまんはおいしいよ!」
自分の家が大好きなのか、今までの説明にも一番熱が込められているように感じた。
彼女の隣に立ち、「穂むら」の看板を見つめる。
「高坂は、自分の家が大好きなんだな」
「穂乃果でいいよ。これから一緒に暮らすんだもん」
そう言う彼女の声色は今までの元気な声とは少し違う、柔らかな声で。彼女の頬は少し紅くなっているようにも見えた。
それを誤魔化すようにくるりとまわり、その看板に背を向け、俺に手を差し伸べた。
「ようこそ穂むらへ! 悠くん、これからよろしくね!」
満面の笑顔を籠めた歓迎に自然と笑みがこぼれる。俺は穂乃果の手を握った。
「ああ、これからよろしく、穂乃果」
「うんっ!」
ひまわりの様な笑顔から俺は目が離せなかった。
ここから始まるんだ、俺の新しい生活が。
この眩しい元気な笑顔を周囲に振りまく穂乃果と一緒の毎日が。
俺はこの時、俺達を、いや、俺を見つめる二つの視線に気づくことはなかった。
(穂乃果の貞操は、私が守ります!)
(ホノカチャンのあんな姿やこんな姿まで……。やんっ、羨ましすぎるよぉ~)
せめて、平穏な毎日が過ごせますように。
第一話はこの位で。
我ながら「どこのエロゲーだよ」と突っ込みました。
他の方の二次創作ですと、大体の穂乃果の男友達は昔からの幼なじみが多いので
こういった形にしてみました。
穂乃果編が居候な分、海未ちゃんとことりちゃんには幼なじみを当てたいと思っています。
前回と大きく違うのは、主人公が語り部になっている点とギャグ、コメディ成分が多いことですね。
こういったドタバタが穂乃果にはぴったりかなぁと考えて書きました。
そのドタバタの一つとして、一期一話のススメ→トゥモロウに入る前に主人公と衝突させてみました。車道で踊っちゃあぶないからね。あまりアニメの展開を阻害するようなネタは控えたいと思っていますが、こことあと一つどうしても書きたいネタがあるのでお許しください。
このあと、悠と穂乃果はどのような物語を紡いでいくのか、私自身書きたくてウズウズしています! 今後もお付き合い下さい。
御意見ご感想よろしくおねがいします。