ラブライブ! Another 一つ屋根の下で 作:伊崎ハヤテ
穂乃果「カイトくんの真似をする海未ちゃんは嫌いだ……」
主役は遅れてやって来るものです。それでは続きをどうぞ。
「只今戻りました」
「たっだいま~!」
俺がアイドルメイド喫茶で時間を潰している二つの声が聞こえてきた。凛とした声と、元気いっぱいの声。間違いない、海未と穂乃果だ。
「あっ! 悠くんだ!」
穂乃果は俺を見るなり嬉しそうに駆け寄ってきた。こいつの嬉しそうな表情を見るとこっちも自然に笑顔になるな。
「悠くん来てくれたんだ!」
「当たり前だろ。彼女の文化祭に来るのは彼氏としては当たり前だろ」
「えへへ……」
穂乃果は頬を朱に染めて身を捩る。これ、客観的に見るとバカップルのノロケにしか見えないんだろうな。
そんな俺達にかけられる咳払い。意識をそちらに向けると少しジト目の海未が俺たちを睨んでいた。
「悠は私が呼んだんですよ穂乃果」
「海未ちゃんが?」
首を傾げる穂乃果に俺は自分の携帯を見せる。
「海未からメールを貰ったんだよ。『私じゃ手に負えないから何とかして下さい』ってな。それで海未、何が手に負えないんだ?」
俺の問いに彼女は苦笑いしながら穂乃果の肩を持ち、俺に向ける。
「穂乃果を、お化け屋敷に連れて行って欲しいのです」
「お化け屋敷に?」
その頼みに俺は一つの違和感を覚えた。薄暗いお化け屋敷なら穂乃果に触りたい放題、触られ放題だ。その絶好のチャンスを目の敵にしてる俺に与えるのか?
「聞いてよ悠くん! 海未ちゃんったらお化け屋敷に行ってくれないんだよ!」
穂乃果の拗ねた声が俺の思考を遮る。俺の苦笑いを余所に穂乃果の駄々は続く。
「学園祭と言ったらお化け屋敷!! お化け屋敷のない学園祭なんて学園祭とは言えないよ!! だから絶対に行こうよお化け屋敷ったらお化け屋敷~! 穂乃果の青春はお化け屋敷だぁ~!」
「――とこの様に駄々をこねて困っているのです」
耳を塞ぎながら呆れた表情で俺を見つめてきた。
「俺としては問題はないけど、海未は行かないのか?」 やっぱり気になって質問してみた。穂乃果大好きっ子のこいつが遠慮するのがどうしても引っ掛かった。そして穂乃果は未だ「お化け屋敷~」と騒いでいた。
海未は少し戸惑ったように視線を泳がせた。
「わ、私は怖いのが苦手なんです! あまり興味もありませんし」
「そっか。苦手ならしょうがないな。穂乃果、俺と行こうぜ」
俺が声をかけると今まで駄々をこねていた穂乃果がぴたりと静かになった。
「え、悠くんが一緒に行ってくれるの!?」
「おう。海未はお化けが苦手らしいからな。苦手な奴に無理強いしちゃ悪いしな」
海未の厚意を無駄にしちゃいけないな。ここはありがたく受け取っておこう。
穂乃果は嬉しそうに俺に抱きついてきた。
「ありがとう! 悠くん!」
「ちょ、おま! 簡単に抱きつくな!」
柔らかな感触に身体が反応しかけるが、それを振り払い穂乃果を引き剥がす。彼女は唇を尖らせる。
「むー! 悠くんのケチ!」
「ここは家とは違うんだ。仮にもアイドルなんだから少しは自覚しなさい」
いつもの家ならまだしも、ここは音ノ木坂学院。彼女たちμ’sの総本山とも言える。ファンもいるであろうこの場所での安易な行動は彼女たちのイメージダウンに繋がりかねない。
「とにかく行くぞ。今日ライブあるんだろ?」
ちらりとことりの方を見ると、彼女は笑顔で答えてくれた。
「あるけどまだ時間には余裕があるし、ゆっくりお祭り見物してっていいよ~」
「ありがとうことりちゃん! よーし、穂乃果、悠くんと一緒にお化け屋敷に行ってきまーす!」
穂乃果は教室の戸に突進する勢いで走っていった。
「おい、待てよ穂乃果!」 俺はことりの「いってらっしゃーい」という声を聞きながら彼女の背中を追いかけ始めた。
「うみちゃん、よかったの?」
「ええ。悠には毎回邪険にしてきましたから。これ位はしてあげませんと」
「うみちゃん……(邪険にしてた自覚あったんだ……)」
「それに……」
「それに?」
「お化け屋敷という空間に穂乃果と二人っきりになったら私の精神がどうなるかわかりません。暗いところを怖がって私に抱きつく穂乃果を見たら私は、私は……っ!」
「ウミチャン……」
「えへへ~♪ 悠くんとデート~♡」
店の広告で彩られた廊下を二人で肩を並べて歩く。俺の隣で穂乃果は嬉しそうにスキップしていた。
「デートならよくやってるだろ」
「もう、悠くんってば夢がないなぁ! 学園祭で、ってとこに意味があるんだよ!」
穂乃果は振り向いて頬を膨らませる。
「ま、互いに制服で学校の中でデートってのも少し、いやかなり新鮮だよな」
「そうでしょ! 穂乃果、この日を楽しみにしてたんだ~♪」
自分たちの持ち歌を鼻歌にして歌っている。それだけ楽しみにしてくれてたんだな。それが嬉しくて頬が緩くなる。
「じゃあ今度、俺の学校の文化祭に来るか?」
「え! いいの?」
俺の提案にずいと身を寄せる。その青い瞳がきらきらと俺を見つめてくる。
「でも女子校の音ノ木坂学院ならまだしも、俺のとこは男子校だしな。ファンも多いだろうし、大変なことになるんじゃないか?」
「あっ、そうだね……」
少しはスクールアイドルとしての自覚が芽生えてきたのか、そのことの意味を理解出来たようだ。穂乃果はしゅんと落ち込んだ。
「じゃあ今度学校終わったらどこかで待ち合わせしてそのままデートしてみるか」
「おぉ! 高校生のデートっぽいね!」
俺の提案に即座に顔をぱぁっと輝かせる。表情が豊かなのが彼女のいい所だ。
「ありがと悠くん! だーいすき!」
嬉しさのあまり穂乃果が俺に抱きついてきた。俺はその頭にぴしりとチョップを当てる。
「だーかーら、今日はおさわり禁止だ!」
「ぶー!」
「ぶー! じゃない。ここにもしもお前のファンがいたらショックを受けるだろうが」
引き剥がしながら諭すとしゅんと落ち込むようにサイドポニーもしょげた。ちょっと可哀想だったから耳元に囁いてやった。
「続きは家で、な?」
それを聞いた瞬間、ぼっと音を立てるように顔を真っ赤にした穂乃果は足を速めた。
「い、行こ! お化け屋敷終わっちゃうかも!」
俺の返事も聞かず、穂乃果は階段を登り出した。少し刺激が強すぎたかな。
俺は苦笑いしながら彼女の背中を追いかけた。
「あ、にこちゃん!」
お化け屋敷の受付にいた女の子を見ると穂乃果は声をあげて駆け寄った。受付の子はツインテールで身長は穂乃果よりも小さく、俺の肩までしかない。一年生かな?
「悠くん、紹介するね。こちらアイドル研究部部長の矢澤 にこ先輩だよ!」
紹介された女の子は笑顔でダンスの振りの様に動いて決めポーズを取る。
「にっこにっこにー♪ あなたのハートににこにこにー♫ 笑顔届ける矢沢 にこにこ~♡」
矢沢 にこちゃんか。中々に可愛い子だな。ん、今部長って言ったよな?
「って部長なのか?」
「そうだよ。にこちゃんは三年生だよ!」
「えぇっ!? こんな小さな子が三年生なのか?」
見た目こんな幼い子が俺よりも年上なんて。目を疑った。
「ちょっと表に出るニコ。久々にキレちまったニコ」
「ちょっと悠くん! にこちゃんに本当のこと言うのはヒドイよ!」
「お前のほうがよっぽどヒドイこと言ってるけど!?」
「まったくフォローになってないわね」
にこ、先輩がため息をつく。改めて彼女に向き直る。
「あの、穂乃果共々すみません」
頭を下げると彼女はさっきとは違う感じに笑いかけた。
「いいのいいの、気にしてないわよ。これでも需要あるニコよ♡」
可愛らしくウィンクしてくる。成る程、確かに可愛いな。
そんな彼女を見つめていると突然頬を挟まれた。視線を向けると頬をふくらませた穂乃果が俺を睨んでいた。
「悠くん! にこちゃんのスマイルに魅了されちゃだめー! 悠くんは穂乃果の彼氏でしょ~!」
ヤキモチ妬いてくれたのか。それだけ俺を好きでいてくれる穂乃果が愛おしかった。
「ばか、穂乃果の笑顔が俺にとっちゃ一番だよ」
「悠くん……」
とろんとした表情で俺を見つめてくる。俺も黙って彼女を見つめる。そんな俺達に一つの咳払いが聞こえてくる。
「噂に違わないノロケっぷりニコね。もう容赦しないニコ」
彼女は入り口の戸を開け、暗闇に向かって叫んだ。
「みんな! 次の客はカップル様よ! 思いっきり怖がらせてあげてちょーだい!」
次の瞬間、暗闇からなんとも言えない威圧感が押し寄せてきた。この先には何があるんだ?
「このフロアの教室全部を使ったお化け屋敷ニコ。果たして無事にここまで帰ってこれるかしらね?」
くくくっと笑うにこ先輩。隣で穂乃果が鼻息荒く俺の腕をがっちりとつかむ。
「よーし! 負けないぞー! 穂乃果と悠くんのラブラブパワーでお化け屋敷を制覇だ~!」
俺は引きずられる様にお化け屋敷に入っていった。
「いってらっしゃーい♡」
にこ先輩は何かを含んだ黒い笑みで俺たちを見送った。
かくして俺と穂乃果のお化け屋敷攻略の旅が始まった。
キス島撤退作戦を一回でクリア出来るとは思わなんだ。改二もなしに。
今回で文化祭回は終わらせようと思って書いていたのですが、あれよあれよと文字数が膨らんでいくことに。海未のやらかしとにこの登場だけとになってしまいました。楽しみにしている皆さんの読みやすい文字量はどの位でしょうか? 流石に七千超えると長すぎかな?
タイトルが最近中二っぽくなってきた。なんとなく世界樹の迷宮のマップ名っぽくしているつもりっぽい。
最近何が辛いってラブライブをあまり楽しめていない自分がいるってこと。元から青春ってジャンルは苦手だし、そもそも花田が脚本ってことが拍車をかけて、再放送を見ようって気が起きなくなってしまいました。好きだったはずののぞえりやにこりんぱなのラジオもアニメの話が出てそれに同調するコメントにも共感出来ない。他の二次創作の方の作品を読むとやっぱりアニメの流れに肯定的な方が多いようで。アニメを好きでなければいけないのかなぁ。そんな考えが渦巻いて、筆が遅くなってしまいました。
でも他の方の作品を読んで、「負けてられないな」って思うし、感想を送ってくれた方々の為にもこれからも書いていこうと思います。アニメが微妙と感じても穂乃果たちを好きな気持ちは変わらないつもりだし。
作品を出すペースは落ちると思いますが、これからもどうぞ変わらないお付き合いをお願いします。
ご意見ご感想お待ちしております。