ラブライブ! Another 一つ屋根の下で 作:伊崎ハヤテ
デート編後編です。元々前編と一緒の原稿に書いていたので構想はそれなりに決まっていました。海未ちゃんがいつも以上に頭のネジが吹っ飛んでいるのでご注意下さい。
「悠くーん!」
音ノ木坂学院の校門に立っていた男、二城 悠に穂乃果は抱きついた。
「穂乃果、そんな軽々しく抱きつくなって! ここで他の生徒に見つかったらどうするんだよ」
「放課後だから大丈夫だよ~。悠くんったら恥ずかしがっちゃって~」
悠の腕を指でぐりぐりとつつく。悠は顔を赤くしてそっぽを向く。
「日が日だからさ、穂乃果の、当たると変に緊張するんだよ……」
それを聞いた穂乃果の頬もぽっと夕日の様に赤くなる。
「もう、悠くんのエッチ……」
「ほ、ほら行くぞ。日が暮れちまう」
「うんっ!」
穂乃果は嬉しそうに悠の腕に自分の腕を絡める。悠は微笑んで歩き出した。
「見事なリア充っぷりだニャー」
「おぉ~。穂乃果ちゃんったら嬉しそうな顔しとるなぁ~」
「ハ、ハラショー……」
悠と穂乃果の後ろ姿を凛、希、絵里の三人は興味津々に
覗いていた。
「ことりと海未はわかるとして……」
絵里は視線を他の三人に向ける。ぐぬぬと悠を睨みつける海未と表情を崩さずに二人を見つめることり、何故か険しい顔で二人を見つめる花陽の姿があった。
「かよちん、どうしてあの二人をそんな怖い表情で見ているの?」
質問を振られて我に返った花陽は顔を赤く染めた。
「あ、あのね! アイドルが男の人と付き合うってどういうことかなーって思って二人を観察しようと思って―あ、穂乃果ちゃんまた抱きついた」
再び険しい顔に戻ると花陽はメモに何かを書いていく。そんな彼女を絵里は苦笑いしながら見ることしか出来なかった。
穂乃果と悠はしばらく街の中を歩いていくと、パン屋の前で止まった。穂乃果がはしゃぎながら悠の手を引く。悠は苦笑いしながらパン屋の中へ消えていった。
「うみちゃん、二人共パン屋の中へ入っちゃったよ」
「見ればわかりますことり。お昼にもランチパックを食べていましたから」
「穂乃果ちゃんどれだけパンに飢えているんやろか」
「ある意味かよちんと逆だニャ」
「え、それってどういうこと?」
「ここじゃあんまり見えないわ。もう少し近づくわよ」
絵里が率先してパン屋へと近づく。
「なんやかんやでえりちもノリノリやな」
「絵里ちゃん、あんまり賢くないニャ」
パン屋のウィンドウから悠と穂乃果の楽しげな表情が見える。ウィンドウ越しだからか二人の会話までは聞こえない。
「二人はどんな会話しとるんやろな」
「そんなもの決まってます希。『悠くん、あのメロンパン美味しそうだよ!』『ああ、でも俺はお前についた二つのメロンパンの方が美味しそうに見えるぜ』―っ悠! 貴方は最低です!」
「貴方の方が最低よ!」
音ノ木坂学院生徒会長の手刀が海未の頭部に炸裂した。
「いやー、練習後のパンが美味い!」
「穂乃果は本当にパンが好きだな」
二人はメロンパンをかじりながら街を歩く。穂乃果の美味しそうにパンを食む姿に悠の頬が緩んだ。
「だってお饅頭とかもう飽きたんだもん」
「和菓子屋の娘が言うことか」
「半分冗談だよ~」
「半分は本音じゃねーか」
「えへへ~」
穂乃果は嬉しそうに残りのパンを食べると、悠の手を取った。
「悠くん、今度はあそこいこ!」
穂乃果が引っ張る先には、ゲーセンがあった。
「デートにゲーセン、高校生ならではって感じね」
絵里はそんな二人の姿を見ながらクロワッサンを口に運んだ。
「まぁ、そんなにお金は使えんやろうし、妥当やね」
希はピザパンを頬張る。
「高校生ならではのデート……、メモメモ……、けほっ!」
花陽はアンパンを食べながらメモをとろうとするが、思わずむせてしまう。それを見た凛はカレーパンを慌てて飲み込み、背中を擦る。
「大丈夫、かよちん!?」
「んぐ、ありがとう凛ちゃん……」
「あ、ジャムパンおいし~♪」
ことりはジャムパンを美味しそうに食べている。
「っていうかことりたち、どうしてパンを食べてるの?」
「そんなこと決まっているじゃないですかことり」
海未は焼きそばパンを加えながら電柱の影に隠れながら穂乃果達を見つめる。
「尾行にはパンがつきものじゃないですか」
「海未ちゃんは穂乃果ちゃんのことになるといつもおかしくなるニャ」
「凛、私は正気ですよ」
『えっ』
海未以外全員の声が一致した。海未は首を傾げるが、構わず穂乃果と悠に視線を向ける。
「私たちもゲームセンターに入りますよ」
一人ゲーセンへと向かう海未を絵里たちは追いかけた。
「ゲーセンだよ、悠くん!」
穂乃果がぴょんとはしゃいでいるのを悠は優しく見つめる。
「はしゃぎ過ぎじゃないか? よく行ったりしないのか?」
悠の問いに穂乃果はうーん、と考える。
「練習終わったらすぐに帰るかちょっと買い食いするだけだったからねー。あんまり来たことなはないかなー?」
「そっか。まあそのほうが健全ではあるかな」
「穂乃果がゲーセン行こうって言ったら海未ちゃんが『そんな不健全な所は行けません!』って怒るし、あんまり行けなかったってのもあるね」
「海未らしいな」
悠が苦笑いしていると穂乃果が手を引っ張る。
「悠くん、ダンスゲームやろうよ! 練習の成果を見せてあげる!」
「ダンスは……、苦手だな……」
「むー、それじゃあ……」
穂乃果は頬を膨らませながら辺りを見渡す。そしてぱぁっと表情が明るくなる。
「じゃあじゃあ、あれやろ!」
「いけません! 穂乃果を止めないと!」
穂乃果の動きに海未がとっさに彼女の元へと行こうとする。
「どうしたの海未! そんなに慌てて!」
「絵里、穂乃果が行く先を見てご覧なさい!」
海未が指差す先には目元が綺麗な女性がプリントされた機械。
「あれってプリクラやな。カップルなら入るのが普通とちゃうん?」
「何を呑気なことを言っているんですか希! プリクラですよ!」
「な、何がいけないの?」
肩をワナワナと震わせる海未に花陽は恐る恐る尋ねる。
「プリクラと言ったら、狭い場所に男女が集まる……、如何わしいことし放題じゃないですか!」
「あなたは何を言っているの!」
絵里の言葉も聞かず、海未は二人が入っていったプリクラへと歩みを進める。
「待っていて下さい穂乃果! 今助けます!」
「落ち着きなさい海未! 皆、海未を取り押さえるわよ!」
絵里の一声でことり達が海未を必死に止めようと腕や足、胸を掴む。
「離して下さい! 穂乃果が! 穂乃果がぁ!」
「ここで海未ちゃんが行ったらデートが台無しになるニャー!」
「う、海未ちゃん落ち着いてー!」
「ほうほう、海未ちゃんもなんだかんだで発育しとるなぁ~」
「えっ、のぞみちゃんほんとう? ことりも確かめる~!」
「やぁっ! んっ! 希、ことりも何をしてるんですか!」
「わしわしMAXで海未ちゃんのお胸をチェックや~」
「チェックや~」
「あなた達は何をしてるの!」
四人に取り押さえられても尚、海未はプリクラへの足を止めようとしない。
「ああ、穂乃果が、穂乃果の貞操が……」
「海未! いい加減にしないと生徒会長チョップを食らわせるわよ!」
「行かせて下さい! このままでは穂乃果が!」
「穂乃果が、何だって?」
突然聞こえる男の声に、六人の動きがピタリと止まった。恐る恐る視線を向けると呆れながら六人を見る二城 悠の姿があった。
●
「あ、あら二城くん。き、奇遇ね」
「ええ、奇遇ですね」
俺は笑って答える。絵里先輩が少し引きつった顔でいる。他の面々も海未を取り押さえるのをやめた。
「その、穂乃果は?」
「ああ、穂乃果ならトイレに行きましたよ。先輩達は皆で遊びに来たんですか?」
「まぁ、そんなとこね」
絵里先輩の視線が虚空を泳いでいる。どう見ても嘘をついている反応だ。さっきの発言で裏もとれた。
「それにしても妙ですね。どうして俺が穂乃果と一緒にいるって知ってたんですか?」
「っ!」
絵里先輩の顔が更に引きつった。他の面々も視線を落としたり口笛を吹いてごまかそうとしている。
「いつから、気づいてたの?」
絵里先輩は観念したように聞いてきた。
「パン屋の辺りからですかね。誰かの視線を感じたので」
「おにーさんスゴイニャ! もしかしてニュータイプなのかニャ?」
「ニュータイプって……。まあそんなとこかな」
本当はその前からなんだけど。俺と穂乃果が合流した時から威圧感を感じていた。俺はその威圧感の主であろう人物に視線を向ける。
「何ですか?」
「いや、別にー」
海未は少し居心地が悪そうに視線を逸らす。俺は視線を絵里先輩に戻す。
「人の視線を異様に感じながらデートするってのはあんまり気分は良くないですけどね」
「ごめんなさい、私たちも興味があったからつい……」
他のメンバーも申し訳なさそうに俯く。さて、どうしたもんか。
「あれ、絵里ちゃんたち?」
そこへ穂乃果がハンカチで手を拭きながら戻ってきた。
「ほ、穂乃果!」
海未が驚いたように叫ぶ。その様子に穂乃果は笑いながら首を傾げた。
「どうしたの海未ちゃん、そんなお化けでも見たみたいにさ~。他の皆もどうしてここにいるの?」
穂乃果に後をつけられていたと説明するのは簡単だ。でもそれを知ったら穂乃果はどう思うだろう?
μ’sの皆とそれなりに親しいと思っている俺も流石に少し不快感を覚えた位だ。すごく悲しむだろう。こんなことで彼女たちの仲を悪くしたくない。俺は言葉を頭の中で整理した。
「穂乃果、あのね――」
「絵里先輩たちもゲーセンに遊びに来たんだとさ」
絵里先輩の言葉に俺は割り込むように入った。彼女は驚いた様に俺を見るが俺は「話を合わせて」と視線を送る。
「たまにはメンバーで遊んでみようかって考えてゲーセンに行ったらたまたま俺たちと会ったみたいだ。ね、絵里先輩?」
「え、ええ。先輩後輩の垣根を超えて親交を深めようと思ってね」
さっきの動揺が嘘のように振る舞う絵里先輩。理解が早くて助かる。
「もう絵里ちゃん、忘れたの? もう穂乃果達にはそんな垣根なんてないんだよ? あれ、にこちゃんと真姫ちゃんは?」
穂乃果の質問に彼女は詰まってしまう。俺もそれに対する答えは用意してなかった。フォローしようかと口を開こうとした時、今度は俺が声を遮られた。
「にこちゃんはあの後すぐに帰っちゃったニャ! なんか急用があるんだって!」
「ま、真姫ちゃんは何か習い事があるって言ってたよ!」
口を開いたのは凛と花陽だった。
「そっかー。二人共忙しいんだねー」
とっさの嘘だったが、穂乃果には通じたようだ。ナイス、と視線を送ると凛はえへへーと笑い、花陽は少し照れながら会釈した。
「そ、それじゃあことり達、そろそろ帰る所だから! じゃあね穂乃果ちゃん!」
ことりの言葉を皆理解したのか、ゲーセンを出始めた。肝心の海未は――
「それでは穂乃果、また明日」
控えめに笑うと他のメンバーの背中を追いかけた。海未にしては珍しく引き際がいいな。穂乃果はまた明日ー、と手を振っている。
「それにしても珍しいこともあるんだね! ふっと立ち寄ったゲーセンで絵里をちゃんたちと鉢合わせるなんて!」
「そうだな。世界は狭いな」
これ以上この事で話してるとボロが出るかもしれない。俺は少し話題を変えてみる。
「ちょっと意外だったな。穂乃果なら『一緒に遊ぼう』とか言うと思ったんだけど」
「まあ他の皆と悠くんと一緒に遊ぶってのもありかなーって思ったんだけど……」
穂乃果はぎゅっと俺の腕に抱きついてきた。そしてふにゃっとした笑顔を見せる。
「穂乃果は悠くんとデートしてるんだもん。デートの時は、穂乃果は好きな人と二人っきりで遊びたいのー!」
えへへと笑う穂乃果が愛おしくてぎゅっと頭を撫でる。そこまで俺のことを好きでいてくれているんだな。
「よし、今日はゲーセンで思いっきり遊ぶか!」
「うん!」
俺と穂乃果は笑顔で歩き出した。
「あ、悠くん、あれ見て!」
穂乃果が指さした先にはクレーンゲームがあった。ガラスの中には横倒しの二本のバーの間に首を挟まった可愛らしい女の子の人形があった。どうやらクレーンであの人形を摘んで落とすらしい。
「ほのり人形だって! 何か穂乃果にそっくり!」
「確かにそっくりかもな。ちょっとやってみるか」
「うん!」
俺はマシーンに硬貨を入れてクレーンを操作し始めた。人形の位置を確認しながら的確にクレーンを誘導する。
「ここだ!」
俺が操作ボタンを離すと、クレーンは真下の人形めがけてアームを広げる。そのまま人形の首根っこを押さえると持ち上げ始めた。まるで首を締めているようだ。
「悠くん、なんかこれ、シュールだね……」
「ああ。俺もそう思った」
アームは人形の首を締めたまま移動して、下に落とした。穂乃果はそれを嬉しそうに抱く。
「何はともあれ、人形ゲット! 悠くん、ありがと!」
人形をげっと出来たのがそんなに嬉しかったのか、穂乃果は俺の頬に唇を当ててきた。ちゅっと唇の音が響き、俺の体温が上昇する。
「ほ、穂乃果……」
「さ、次はレースゲームで競争だー!」
穂乃果は顔を少し赤らめて俺から離れると先に行こうと走った。俺はにやりと笑うと彼女を追いかけた。
「おーし、負けたら罰ゲームな!」
「よーし、負けないぞー!」
「大分遊んだねー!」
「ああ。すっかり暗くなっちまった」
空は暗く、星が見え始めている。時計の針は七時を示している。
俺たちは思いっきりゲーセンで遊んだあと、スーパーで食品を買った。二人で夕飯のことを話しながら買い物すると、何か夫婦っぽいなって感じがする。
「ん? 悠くんどうしてニヤニヤしてるの?」
一つのスーパーの袋を二人で持つ。手をつなぐのとは別の恥ずかしさとドキドキがある。
「いや、別に~」
「もう、話してよー」
うりうり、と塞がっていない手で俺の肩をぐりぐりといじる。それが心地よい。
「二人で夕飯の話とかしながら買い物してるとさ、何かこれって夫婦みたいだなーって思ってさ」
「夫婦って、悠くん気が早いよー!」
穂乃果は顔を真っ赤にしながら俺の腕を叩いた。
「悠くんと、夫婦……」
言葉を反芻しながら視線を下に向ける。それが可愛らしかった。オトノキの町に入ってから、辺りの明かりはもう少ない。ここならいいか。
「穂乃果」
「ん?」
穂乃果が振り向いた瞬間にその唇にキス。すぐに離れて笑いかけると穂乃果は顔を赤らめたままいたずらっ子の表情をする。
「じゃあ穂乃果からもお返しっ!」
身を乗り出してキスしてくる。が、すぐに離れてしまう。えへへっと笑う穂乃果が欲しくてたまらない。
「もう一回――」
「んう――」
それから俺たちはキスを繰り返しながら家へとたどり着いた。
いつもは付いている穂むらの看板の電気が消えている。ここも他の店と同じように暗闇に溶け込んでいた。
俺たちは家の玄関から入る。
「た、ただいまー」
穂乃果が何故か声を小さくして靴を脱ぐ。廊下は真っ暗闇。何者の反応もない。
「本当に、穂乃果と悠くんだけだね」
いつもと違う穂乃果の表情に、俺の喉が鳴る。買い物袋を床に置くと、俺は穂乃果を抱きしめた。
「悠くん……」
穂乃果は俺の抱擁を受け止め、小さく声を返してくる。が、少し身を離してしまう。
「買ったもの、冷蔵庫とかに入れないと、ね?」
「あ、ああ」
途端に冷静さが戻ってくる。俺の馬鹿、がっつき過ぎちゃ元も子もないじゃないか。
「悠くん」
袋を手にして台所へと向かおうとすると穂乃果が声をかけてきた。穂乃果の方を向くと穂乃果は顔を真っ赤にしながらもじもじとしている。
「あ、あのね。穂乃果、自分の部屋で待ってるね……」
俺は彼女の言葉に「ああ」としか答えられなかった。穂乃果はそれを聞くと恥ずかしいのか二階へと駆け上がってしまった。
俺はぼーっとしながら冷蔵庫に買った物を入れる。そして入れ終えると階段を登っていった。そして穂乃果の部屋の前で立ち止まる。
軽く戸をノックすると、「ど、どうぞ」と穂乃果の少し上ずった声が聞こえてきた。
今日俺は、二人だけの家で、穂乃果と二人っきりの時間を過ごす。
今日が穂乃果ちゃんの誕生日と聞いて急ピッチで完成させました。ちょっと荒削りかもしれません。可笑しい表現があればご指摘下さると嬉しいです。
最近気になることが二つ。このサイトで他のラブライブの二次創作を読んでいるのですが、名前に「ゆう」が入る主人公が多いんじゃねって思う。悠って字も使ったりしてるし。同じ電波を同時期に受信でもしたんじゃないでしょうかね。
アニメで穂乃果ちゃんはメイド服を着てるのを見て、「穂乃果ちゃんって何かご奉仕するってイメージわかねーな」って思いました。なんというか、こっちが奉仕っぽいことしてとことん甘やかしたいみたいな。「穂乃果が奉仕するってイメージねーな」って悠に言わせて穂乃果にご奉仕(意味深)するって話が浮かんだので、これも書いていきたいと思います。
次回はR18回を前後編でお送りしたいと思います。なぜ分かれてるかって? R18シチュが2パターンあるからです。本当に書いちゃっていいのかとブレーキをかけようとする自分がいますが、頑張って書いていこうと思います。
ご意見ご感想お待ちしてます。