※この作品はR-18です。

ラブライブ! Another 一つ屋根の下で   作:伊崎ハヤテ

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そういえば前回の前書きで言ってなかったけど、ペンネームを変更しました。出来ればユーザーネームも変えたいのですが、どうしたら変更出来るでしょうか?
実はこの回は前回と一緒に書いてました。あまりにも長くなりそうなので半分にしてみました。案の定長くなったので正解だったかも。ここで二人の物語は大きく動き始めます。それではどうぞ。



憧れを語る君の――

 首筋が痛む。じわりとした痛みに意識が戻ってくる。俺の視界に移るのは、横向きに見える、穂乃果の部屋。

「ん?」

 何で俺は横になってるんだ? 身体を起こそうと力を入れるが、動かない。自分の身体の状況を改めて確認してみる。身体は何かの紐で縛られていて芋虫の様に這うことしか出来そうにない。

「気が付きましたか」

 冷やかな声の方へ視線を向ける。海未が俺を見下ろしていた。

「ことり、起こしてあげて下さい」

 俺の後ろにいたことりが身動きのとれない身体を起こす。彼女の顔には笑顔が貼り付いていた。

「あ、あの、どうして俺はこんなことになってるんでしょうか?」

 俺の質問に海未は、

「さあ、どうしてでしょうか? 御自分で考えて下さい」

 と笑顔で答えた。眼は、笑っていなかった。

「穂乃果は? どこいったんだ?」

「貴方が伝えようとしたことを思い出して、下に降りました。今度はこっちが質問する番です」

 そう言うと海未は俺の眼の前に正座した。冷や汗が流れる。このプレッシャーは何だ?

「どうして貴方は穂乃果の部屋に入ったのですか?」

「それはきい子さんに用事を頼まれて――」

「嘘おっしゃい!」

 台詞を遮られる。彼女の鬼神の如き顔面が詰め寄ってくる。

「貴方のことですから、穂乃果が着替えているのを知っていて覗こうと考えたのでしょう?!」

「君の中の俺はどんなヤツなんだよ! そりゃ、ノックした後に少し間を開けておけばよかったと思うけど、故意にやったりはしない。したら居候の身としての俺の立場が無くなるよ!」

「立場を無くしてまで穂乃果の裸を見たかったのではないですか!」

「しねーよ!」

 どうしたんだ、海未は? あまりの暴走具合に俺はことりに助け船を求めて視線を送る。

「ん~?」

 その視線が理解出来ないかの様ににっこりと笑って相手にしてくれない。まさかことりも俺が覗いてしまったことを怒っているのか? 女の子のものとは思えない表情をした海未が俺の肩を掴む。掴まれた肩が痛い。

「殿方が穂乃果の柔肌を拝もうなど、百年早いのです。貴方にはそれなりの――」

「海未ちゃん、だめ~っ!」

 突然響く声。そして横から体当たりしてくる茶色の髪のサイドポニー。穂乃果が海未に突進するように抱きついてきた。

「ほ、穂乃果、何を――」

「海未ちゃん、悠くんにキスしようとしたでしょ?!」

 穂乃果の言葉に海未は顔を赤らめる。

「キキキ、キスぅ? 穂乃果、何を勘違いして――」

「だって悠くんの肩を掴んでたもん! 穂乃果、漫画で知ってるよ! あれはキスの流れだよ!」

 どうやら彼女はあの光景(拷問)をキスしようとする一歩手前だと勘違いしているようだ。

「わ、私は、ほ、穂乃果の貞操を守ろうと、け、決してキスをしようなどとは――」

「駄目だよ海未ちゃん! 縛った悠くんにキスを強要しちゃ! キスはもっとロマンチックにしなきゃ!」

「で、ですから私は~」

 顔を赤らめた海未はふっと眼から焦点を失うと、その場でこてりと倒れこんでしまった。

「うみちゃん、おーい、うみちゃん~」

 ことりが彼女の頬をぺしぺしと叩く。当の本人はうーんと唸っている。

「うみちゃん、自分がキスみたいな状態になってると知ってオーバーヒートしちゃったみたい」

「ホント、海未ちゃんはこういったもの苦手だよね~」

「ね~」

 笑い合う二人の隣で俺は助かった、と胸をなで下ろした。

 

「じゃあことりはうみちゃんをおうちに連れて帰るね」

 ことりは玄関で海未を抱える。女の子一人で抱えるのは難しいだろうから手伝おうかと提案したが彼女は、「大丈夫だよ~」とやんわりと断った。

「あ、そうだゆうくん~」

 片手で俺に近寄るように指示してくる。言われた通りに彼女に顔を寄せると小さな声で囁いてきた。

「次、ほのかちゃんの裸を覗いたら、ことりのおやつにしちゃうよ?」

 その甘い声には此方の心臓を鷲掴みにして、握りつぶす程の迫力があった。彼女、かなり怒ってるな。

「ん、悠くんに何言ったのことりちゃん?」

「ナンデモナイノヨ」

 穂乃果の問いに笑顔で答えることり。実はこの子、黒いのか?

「じゃあほのかちゃん、また明日~」

 ことりは俺達に手を振ると、海未を引きずるように去って行った。玄関に残されたのは俺と穂乃果の二人。気まずい空気が流れる。

「そ、そういえば穂乃果、家の手伝いはもういいのか?」

「え? あ、うん。すぐ済んだよ」

 会話が続かない。穂乃果の方を見ると俯いていてその表情が読み取れない。心なしかサイドポニーがしゅんと下がっているように見えた。

「「あの」」

 この空気をなんとかしようと声をあげたら、穂乃果と声が被ってしまった。二人して焦る。

「穂乃果から言ってくれよ」

「ううん、悠くんからどうぞ」

 互いに遠慮し続けるとキリがないだろうから俺は一息吸うと穂乃果に頭を下げた。

「ごめんっ! いきなりドア開けちゃって! 別に覗くつもりなんてなかったんだ」

 俺の謝罪に穂乃果は慌てるように両手をぶんぶんと振る。

「あ、謝ることないよ! 穂乃果が悠くんのノックに気付けなかっただけだし!」

「中から返事があるまで俺は待ってるべきだったんだ。ここでの暮らしに慣れ過ぎた――」

 穂乃果は俺の頬を両手でばちんと挟む。

「とーにーかーく! 悠くんは悪くないの~!」

 ぐっと俺の顔を引き寄せる。彼女の青い瞳が近づく。流石に照れる。

「穂乃果、近い。照れる……」

「っ、ご、ごめん!」

 慌ててぱっと俺から離れる。穂乃果は顔を赤くしながらこっちを横目で見る。

「こ、今度からはもう少し大きめにノックするよ」

「あ、うん。ありがとう」

 その後もまた沈黙が続く。それが耐えきれず、話題を変えてみることに。

「あの時三人で何してたんだ? だいぶ夢中になってたみたいだけど……」

 すると穂乃果はよくぞ聞いてくれました、と言わんばかりの表情に変わり、興奮した様子で喋った。

「そう! 穂乃果ね、スクールアイドル始めたんだ!」

 誉めて誉めて、とその表情は語っている。だが俺には彼女が何を始めたのか、理解出来なかった。

「悪い穂乃果、基本的な事から聞きたいんだけど、スクールアイドルって何だ?」

 俺の質問に彼女の表情は驚きに変わっていく。

「えぇーっ!? 悠くん知らないのぉ? もう、時代遅れなんだから~」

「しょうがないだろ。こちとら引っ越してきた人間だからな。東京のそういったものにはまだ疎いんだよ」

「じゃあ穂乃果の部屋で教えてあげるね♪」

 行こ、と彼女は笑顔で俺の手を握って階段を駆けだした。

 

「言うなれば、ご当地アイドルの学校版みたいなものか」

 女子高生の間で流行っているなんちゃってアイドル活動。それがスクールアイドルというものらしい。穂乃果の説明を聞いた俺の開口一番の言葉はそれだった。

「まあそんなとこかな。ゲリラ的に動いてたり、部活動として存在してたり、学校ごとに違いがあるみたい」

「んで、三人でスクールアイドルとやらを始めようってわけか」

「うんっ。ステージ用の衣装をことりちゃんに作ってもらったんだ!」

 穂乃果の視線の先にはフリフリのついたピンク色の、いかにもアイドルが着るような衣装。

「これをことりが作ったのか? 器用なんだな~」

「そうなんだ! ことりちゃんが作るお洋服はね、すっごいんだ~。とっても可愛くて、穂乃果が着るのには勿体ないくらい!」

 自分の事の様に嬉しそうに穂乃果は語る。そこからは彼女のことりに対する信頼が見える。

「それで、衣装のチェックの為に試着しようと、したんだけど……」

 興奮気味に喋っていた穂乃果だが、途中から声が小さくなる。俯いて顔を赤らめている。

「けど?」

 俺が聞き返すと、一層恥ずかしそうにしながら、小さく呟いた。

「悠くんの、えっち」

 聞いた瞬間俺はその言葉を理解してしまった。一つ屋根の下一緒に暮らしている女の子の部屋。脳裏に蘇る彼女の肌。

「本当にすまなかった」

 床に頭を下ろし、土下座する様な形で謝罪する。穂乃果は笑って許してくれた。また微妙な空気になりかけると困るので話題を投げかける。

「で、何でスクールアイドルをやろうって話になったんだ?」

「あ、それはね――」

 穂乃果の話はこうだった。穂乃果達が通っている音ノ木坂学院は廃校の危機に瀕していた。昨今の少子化の影響で生徒数が減少しているのが原因らしい。彼女の後輩にあたる一年生は一クラス分しか生徒がいないらしい。

「それで、スクールアイドルをやって学校を有名にして、入学希望者を増やそうって訳か」

 俺の関心薄めな反応に穂乃果は頬を膨らませる。

「もう、悠くんってば他人事みたいに~」

「実際他人事だしな。同じ学校じゃないし」

 同じ学校に通っているなら何らかの力になれるかも知れないが、穂乃果が通っているのは女子高。俺が入りこむ余地はない。

「しかしどうして廃校を阻止したいんだ? 話を聞いてる限りじゃ穂乃果よりも一つ下の子達が卒業するまでは学校は存在するんだろ? 自分達には何の影響もないじゃないか」

「うん、まあ、そうだよね」

 穂乃果は少し落ち込んだ表情で言葉を返す。しゅんとしょげたサイドポニーが揺れる。

「最初は穂乃果も自分が卒業するまで学校はあるからいいやって考えてたけど……」

「けど?」

 穂乃果はじっと俺の方を向いて力強く見つめる。

「あたりまえにあった、オトノキが無くなっちゃうなんて、やだ!」

「……」

 真剣な眼差しのまま彼女の独白は続く。

「穂乃果にとって、あの学校は憧れなんだ」

「憧れ?」

「これと言って理由はないんだけどね? 小学校の頃からあの制服を着たお姉さんが町を歩いてたんだ」

 ハンガーに掛けられた、音ノ木坂学院のブレザーを穂乃果は懐かしそうな眼差しで見つめる

「小さな頃から見慣れたそのお姉さんたちに、私もなるんだ~!って。それで、誰かの憧れでありたいって考えてたんだ」

 憧れを語る穂乃果の表情からは、譲れない決意が感じ取れる。

「その憧れが、あたりまえが無くなっちゃうのは絶対にやだ。だから――」

 そこで彼女は言葉に詰まった。よく見ると穂乃果の眼にはうっすらと涙が。

 そっか。穂乃果はこの町が、オトノキが大好きで。そのオトノキの一部が無くなるのが寂しくて、怖くて、悲しいんだ。

「穂乃果は本当にオトノキが好きなんだな」

 それ以上彼女の涙は見たくなくて、穂乃果の頭に手を乗せて撫でてやる。穂乃果は涙声で笑う。

「うん。大好きなオトノキの為に頑張る」

 その笑顔に俺の何かが動いた気がした。

「じゃあ俺は、お前の頑張りを応援してやる」

「え?」

 穂乃果はきょとんと首を傾げる。俺は自分の胸を叩く。

「スクールアイドルの事は、そこまでは力になれないかもしれない。でも相談にのることは出来ると思う」

「それって穂乃果の相談役になってくれるってこと?」

「ああ。愚痴の相手とも言えるな」

 穂乃果は未だにんー、と理解してない表情を見せている。俺自身、どうやって力になれるのかよくわからなかった。でも力になりたいという気持ちは自分の中にある確かなものだった。

「廃校を撤回させるってのは、相当努力しないと出来ないことだろう。その努力の途中で、挫けることも、苦しいこともあるかもしれない。悩むことだってあるだろう」

 うんうんと穂乃果は頷く。説明を理解してくれているようだ。

「そんな時は、俺に全部吐き出せ。海未やことりにも言えないような苦しみも悩みも、俺が全部受け止めて、一緒に苦しんで、悩んでやる。一緒に泣いてやる。そうすれば苦しみとかも半分になるだろ?」

 気がつけば、そんなことを口走っていた。言い過ぎたか? と穂乃果の顔を窺う。

「――と言った感じでいかがでしょうか? 穂乃果さん?」

 彼女は肩をぷるぷると震わせている。うわ、やっちまったか? 少しくさいセリフ言い過ぎたか?

「ありがとう! 穂乃果、嬉しい!」

 勢いよく手を握られ、ぶんぶんと手を振る。そのオーバーなリアクションに驚きつつも、喜んでくれるのがこっちも嬉しかった。

「じゃあ悠くんが、私達音ノ木坂学院スクールアイドルのファン第一号ってことだね?」

 俺は少し考えると、にやりと笑う。

「それはどうかな?」

「え?」

 きょとんとする穂乃果。穂乃果の反応に少しドキドキしたのを誤魔化す為にもからかってみることに。

「ファンになるならないってのは、相談役のやることじゃないと思うぞ。俺をファンにさせたいなら、俺を感動させることをしてくれないとな」

「ん~、そっかぁ。感動させること……」

 悩んだ穂乃果の視線の先には、ことり自作のアイドル衣装。穂乃果はよし、と頷くとこう提案した。

「じゃあ、悠くん。あのステージ衣装、穂乃果着るから、見てくれる?」

「衣装? 衣装だけじゃあ……」

 そう渋ると彼女は頬を膨らませて抗議する。

「さっき試着しようとしたら悠くんが入ってきちゃったから着れなかったの! これは悠くんの責任だよ?」

 むう、とむくれる穂乃果。さっきの光景を思い出し、申し訳なさが蘇る。

「そうだな。相談役として、それが似合うかどうか見るのも仕事かもな」

「よーし! じゃあさっそく――」

 穂乃果は勢いよく立ちあがって、直後に固まる。少し眼が泳いでいる。

「どうした?」

「えっと、あの、悠くん……」

「はい」

 顔を赤らめてもじもじとしながら少し小さな声で彼女は言った。

「着替えるから、部屋出て、くれる?」

 瞬間脳裏に蘇るは彼女の肌。穂乃果が言おうとしていることが理解出来た。

「ああ、わかった! すぐに出る!」

 逃げるようにして俺は部屋から出た。

 

廊下にて俺は穂乃果の部屋の戸を背にひたすらに待っていた。

 心臓がドクンとうるさく響いている。意識を集中すれば、衣擦れの音が聞こえそうな気がして。早く着替え終わってくれ、と願っていた。

「悠くん、準備出来たよ……」

 待っていたその声を聞いてふっと息が漏れる。改めて戸の前に立ち、取っ手に手をかける。

「じゃあ、開けるぞ……」

「うん……」

 恐る恐る戸を開いて彼女を見る。そこには先程の衣装に包まれた穂乃果の姿。胸元には大きなリボン。スカートから伸びる脚をハイソックスが包んでいる。その衣装だけでなく、顔を赤らめ、もじもじしている穂乃果が――

「可愛い」

「え?」

 呟きが彼女に聞こえてしまったみたいだ。慌てて平静を装いドキドキする鼓動を抑えながら答える。

「似合ってるぞ」

「―っ!」

 嬉しそうに笑う穂乃果に俺は目が離せなかった。そっか。俺はこの笑顔の力になりたいんだな。

 

 こうして俺の、スクールアイドル 高坂 穂乃果を応援する日々が始まった。

 




穂乃果ちゃんに「えっち!」と言われる、結構いいかも。そんなことを書いている自分を客観的に見るのが怖い今日この頃。
 主人公が穂乃果の夢に対してどう接していくか、その姿勢を示す回でした。
 でもこれ、海未ちゃんのポジションをことごとく奪っている気がするなぁ。海未推しの方、ごめんなさい。
 さて、今度こそ執筆作業をお休みしたいと思います。理由は、この小説よりも優先して書かなきゃいけない卒論がるから。四苦八苦しながら書いています。出来る事ならこの作品をもっと書いていたい! 穂乃果ちゃんをもっと書きたい!
 でもそこはぐっと堪えて一度筆を置きたいと思います。この作品を楽しみにして読んでくれる方の為にもっとパワーアップして戻ってきます!
 それではしばしの間、待っていて下さい。ありがとうございました。
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