※この作品はR-18です。

ラブライブ! Another 一つ屋根の下で   作:伊崎ハヤテ

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明けましておめでとうございます。
 今回はサイドストーリーです。これを読むに関しての注意点が幾つかあります。
・前回とは話は全く繋がってません。
・時系列もめちゃくちゃです。本編が五、六月に対してこれは一月の話です。時空の歪みと解釈して頂ければ……

 それでも良い方はどうぞお読みください。



Side Story 穂乃果と過ごすお正月

「暇だねぇ」

「そうだな」

 穂乃果はこたつから顔を出し、机に顎を置く。俺はそんな彼女を見ながら蜜柑を口に運ぶ。

 穂むらの仕事も一段落し、俺達は正月気分に浸っていた。テレビを見るでもなく、ただ二人同じこたつに脚を入れ、まったりと同じ時間を過ごしている。

「悠くん、外で羽子板でもする? 罰ゲーム付きで!」

「この歳になってやるか普通? 子供だな穂乃果は」

「もー! いつも穂乃果を子供扱いするんだから!」

 顎を机につけたまま頬を膨らませる。その様が可笑しくて、可愛くて俺の頬が緩む。

「外はメチャクチャ寒いぜ? わざわざそんな中でやりたくねえよ」

「寒い中って、私達μ’sはその寒い中で練習してるんだよ? もうちょっと見習ってよ~」

「それはそれ。これはこれ。穂乃果も練習以外で外に出たくないだろ?」

「それは……」

 穂乃果は黙ってしまう。流石の穂乃果でも外には出たくないらしい。

「まあ暇なのは確かだな。ここで出来る遊びでもやろうぜ」

「こたつに入ったまま出来る遊び……」

 んー、と視線を泳がせ考える。暫くすると思い付いたように俺の方に身を乗り出す。

「悠くん、腕相撲しようよ! 腕相撲!」

「いきなりだな……」

「穂乃果、いつも悠くんにからかわれて負けっぱなしだもん! ここで汚名挽回しなくちゃ!」

「汚名を挽回してどうする。返上しなきゃダメだろ」

「揚げ足とらないのー! とにかく勝負だ!」

 このまま放っておくとぎゃんぎゃんうるさく言うので彼女の提案に乗ることにした。

「やるか。じゃあ罰ゲームは羽子板と同様顔に墨をつけるってことで」

「うん! 東ぃ、穂乃山~」

 即興で四股名を考えたのか行司のような声で机に右腕を出す。俺は笑いながら自分の腕の肘を机につける。

「西ぃ、二城~」

「俺は名字そのままかよ」

 互いに手を握り合い、見つめ合う。彼女の手のひらはすべすべしていた。

「悠くん、準備はいい?」

「おう、いつでも」

「じゃあ、いっくよ~。はっけよ~い……」

 俺の手を握る穂乃果の手に力が入る。こいつ、こんな時にも真剣なんだな。ま、少し力抜いてやるか。

「のこった!」

 その瞬間からぐんと右腕に力がかけられる。その力に驚いて思わず力を入れる。気を抜いたらすぐに持っていかれそうだ。

「おま、意外と力強いんだな!」

 それなりに力を出しているのに穂乃果の腕はなかなか倒れない。こいつこんなに強かったっけ? 出会った時は俺を起こそうとして腕を引かれただけで倒れこんだのに。

「μ’sの練習でそれなりに、鍛えられてるから、ね!」

 穂乃果の力が増す感覚が手のひら越しに伝わっていく。その力に徐々に俺の腕が傾く。俺も負けじと力を増していく。

「けど、まだまだだな! 俺は力をセーブ、してるしな!」

「穂乃果だって! ま、まだ五割しか本気だしてないよ!」

「ご、五割でそれか? 俺なんか四割の力だぜ!」

「ゆ、悠くんの四割ってたいしたことないんだね! こ、これなら、三割で勝てるよ~」

「わりい、嘘ついてた。俺、実は、一割の力で戦ってんだぜ……!」

 穂乃果の額に汗が光る。俺の額にも熱い何かが伝う。握った拳が震える。

「さて、小手調べはここまでに、するか。ちょっと、本気になろうかな……」

「ほ、穂乃果も本気に、なっちゃうもん! あれだよ、穂乃果が、本気になっちゃったら一瞬だからね!」

「本気? 俺が本気になったら、腕一本もってかれるからな? 本当にやっちゃっていいんだな?」

「よーし! こうなったらやっちゃうよ~! いっくぞ~」

 そんな俺達二人の、しょうもない戦いの場と化した居間の戸を開ける音。そして入って来た二人の女の子。

「穂乃果、明けましておめでとうございます」

「ほのかちゃん、おめでと~」

 園田 海未と南 ことり、穂乃果の幼なじみだ。二人の顔を見ると穂乃果の顔は飼い主を見つけた犬のようにぱぁっと明るくなる。

「あ、海未ちゃんにことりちゃん!」

 元旦に二人に会えたことが嬉しかったのか、腕にかかる力がほんの少し弱くなった。俺はその隙を逃さなかった。

「あ!」

 穂乃果が再び力を入れようとするがもう遅い。彼女の手の甲を机に伏せさせる。勝負ありだ。

「俺のっ、勝ちだな、穂乃果……」

 息を乱しながら俺は勝利の笑みを浮かべる。それを穂乃果は悔しそうに頬を膨らませる。

「むぅ~! 悠くんのひきょーもの!」

「二人を見て力を緩めるお前がいけないだろ。勝てなかった言い訳をするのか?」

「ぶぅ~!!」

 更に頬を膨らませる穂乃果が可愛くて、俺は彼女の頭を撫でる。

「ま、だいぶ力強くなったな。驚いたよ」

 それを受ける彼女は少し顔を赤らめながら笑う。

「えへへ~。穂乃果だって成長してるんだよ~っだ!」

 俺は年賀状を作成するために置いてあった墨と筆に手に取った。

「でも罰ゲームはやらせてもらうぞ」

「う~」

 眼を瞑る彼女の右目の周りに円を描いてやる。よし、正月っぽい感じになったな。

「二人は何をしているんですか?」

 コートを脱いで畳む海未。俺を睨む視線が痛い。ことりもにこにこと笑いながら威圧的な何かを俺に発しているようだ。

「正月だから、腕相撲することにしたんだ!」

「何で正月だからって腕相撲することになったんですか……」

 苦笑する海未の表情は俺に向ける時と全く違って。この格差は何だ。

「海未ちゃんとことりちゃんもやろうよ! 悠くん強いんだよ~!」

 穂乃果は負けたにも関わらず俺が強いことを自分のことの様に嬉しそうに語ってくれる。それがちょっと嬉しかった。

「じゃあゆうくん、ことりとやろ~」

 ことりがこたつに入り、腕を差し出す。ことりはそんなに力も強くなさそうだし、本気を出さない程度にするか。

「よし、やるか」

 手首を動かし、穂乃果戦での疲労を振り払う。握ったことりの手はもっちりしていて、温かった。

「それじゃいくよ~。はっけよ~い……」

 穂乃果が俺達の手を抑える。押さえ解き放たれるのを待つことりの眼は自信に満ち溢れていた。

「のこった!」

 穂乃果の掛け声と共に彼女の手に力が込められる。穂乃果に比べると大したことはない。これなら半分の力で――

「っ!」

 握る手に痛みが奔る。何事かと視線を送るとことりの親指以外の指の爪が俺の手に深く立てられていた。

「ちょ、ことり、爪が、痛い!」

「ん~?」

 彼女はにこやかな顔を崩さず、知らん顔をしている。主審は何をしているんだ!

「海未ちゃん、鼻はここでいいかな?」

「もっと真ん中ですよ、穂乃果」

 駄目だ! 穂乃果に眼隠しして福笑いしてやがる! というか主審、選手放っておいて福笑いするなよ!

 一瞬ちらと海未が俺を見て鼻で笑った。そうだった。海未とことりは穂乃果が大好きなんだ。だから彼女を負かした俺が気に入らないんだ。穂乃果に墨を塗った俺に墨を塗ろうとしてるんだ。

 痛みで力が入らず、徐々に手の甲が机へと近づいていく。ことりの表情はにこやかなまま変わらない。

「このまま腕を折っちゃうぞ~、なんてね♪」

 甘い声で冗談を言っているはずなのに、冗談に聞こえない。このままだと俺の腕が……!

「悠くん、頑張れ~!」

 そんな時穂乃果の声が俺の耳に届いた。声の方を向くと、穂乃果は眼隠しを外して俺を応援してくれている。その事実が俺に力をくれる。まかせてくれ穂乃果、俺は――

「隙あり! えい!」

「あ」

 さっきの穂乃果と同様、余所見をした瞬間を狙われて、俺の手は机に触れてしまった。すまない穂乃果、キミの応援に応えてあげられなかった――

「ことりちゃん、イエーイ!」

「いえーい!」

 穂乃果はことりとハイタッチを決めていた。どっちが勝ってもいいんかい。まあそれが穂乃果だからな。苦笑いがこみ上げる。

「じゃあゆうくん、罰ゲームだよ~」

「う、わかった。一筆好きなようにどうぞ」

 まあさっきの穂乃果と同じようにやってくれるだろう。俺は眼を瞑った。

「えい!」

 ことりは瞑った眼に縦一文字に筆を下ろした。液体が眼に入って滲みる。

「っおぉ……。目蓋の上に書くか普通……」

 眼を抑え悶える俺を見て、ことりは首を傾げる。

「え~? だって一筆好きなようにって言ってたよね? ほのかちゃん?」

「ねー」

「男子たるもの、一度言ったことは守らなくてはいけませんよ、悠」

 ここに俺の味方はいないらしい。

「さて、今度は私が相手ですよ、悠」

「え、海未もやるのか?」

「当然です。さあ腕を出しなさい」

「いや、俺はもう――」

「当然です」

「穂乃果とやれば――」

「腕を出しなさい」

 話を聞いてくれやしない。仕方がない、戦うしかない。俺は腹をくくってそのやる気に満ちた手を握った。彼女の手は少し冷たくもさらりとしていた。

「はっけよ~い……」

 穂乃果の言葉に身体が張り詰めた。海未の事だから、ことり以上に姑息なことをやるかもしれない。だがもうそれに負ける俺じゃない。かかってこい! 真正面から受け止めてやる!

「のこった!」

「せぇい!」

 穂乃果の掛け声と共に海未の武芸者ばりの気合いの入った声と共に俺の手は机に伏していた。その余りの早業に俺の認識は追いつけなかった。

「は?」

 痛みが後から襲い掛かってくる。叩きつけられた手の甲に激痛が奔り回る。

「っおぉ……。今、何をした……?」

それに悶える俺に海未は筆を持ってにこやかに笑う。

「武家の娘となればあれ位出来て当然です」

 真正面から叩き伏せられたのか? ええい、園田の家の娘はバケモノか!

「さあ、罰ゲームですよ、悠」

「いや、もう俺は充分だから……」

「ことり!」

「は~い」

 ことりは俺の後ろに周り、羽交い締めしてくる。

「あ、あの、ことりさん、離してくれるかな?」

「駄目だよ、ゆうくん~。罰ゲームから逃げちゃ~。そんな子はぎゅーって押さえちゃうから」

 そう言うとことりはぎゅっと俺の身体を抑える。背中に柔らかい感覚が襲う。この柔らかさ、穂乃果よりも――、ってそんなことを考えている場合じゃない!

「今、破廉恥なことを考えていませんでした?」

 海未はじりじりと詰め寄ってくる。こいつら、穂乃果の事になると容赦ないな。

「はあぁ!」

 気合いに満ちた声と共に横一文字の一閃。海未の奴、両眼に目掛けて引きやがった。しかもことりよりも力が強いから、眼が痛くて開けられない。

「さあ、悠。もう一勝負です」

 そんな俺に彼女は更に勝負を吹っかけてきた。

「あの、さっきの勝負で右腕が……」

「何言ってるんですか、あなたには――」

 眼は見えないけど、彼女は多分――

「もう一方の腕があるじゃないですか」

 とてもいい笑顔をしてたんじゃないかって思う。

 俺の左腕は、机とキスすることになった。

 

「酷い目にあった……」

 洗面所で顔を洗う。冷たい水は俺を震え上がらせる。何度も何度も洗顔料で洗ってもうっすら残ってしまった。これ時間が経てば消えるよな?

 顔をタオルで拭きながら居間へと戻って来た。

「あ、悠くん、人生ゲームやろうよ!」

 そんな俺に元気に声をかけてくれる穂乃果。そんな彼女の笑顔がぼろぼろになった俺を癒してくれる。

「おし、やるか!」

 俺も出来る限りの笑顔で返した。

 

「お、穂乃果、結婚したよ!」

「相手は、相手は誰なんですか!」

「黙って結婚なんてひどいよほのかちゃん!」

「おい、これゲームの話だからなー」

 盤上の人生に必死になる海未とことり。穂乃果は笑いながらもちらりと視線を俺に送る。頬を少し赤らめた彼女の顔に少しどきりとして。

「……」

「……」

 穂乃果大好きっ子の二人の、殺気にも似た視線にぞくりとして。

 

「わぁ穂乃果、三つ子のお母さんになっちゃった! 大家族だぁ~!」

「誰の、誰の子なんですか!」

「ことりは許してないよ、ほのかちゃん!」

「盤上のゲームの話だと言っている!」

 穂乃果はずっと笑顔で盤上の人生を幸せに生きて。海未とことりは自分の人生よりも穂乃果のそれを必死に見守って。俺はそんな二人から法外な借金を押しつけられて。

 これからも、こんな三人とこの一年過ごしていくと考えると、苦笑いと楽しみが湧きあがる。

 穂乃果と過ごすこの一年が、いい年でありますように。

 




正月なんで、こんな感じで過ごす彼女達と悠の姿を書きたかった。ただそれだけです。
「こんなん書いてる暇があったらはよ本編書けや」というお叱りの声も甘んじて受けます。どうか見捨てないで……
 腕相撲ですが、年末ののぞえりラジオにてえみつんの爪跡の話がおもしろくて、中の人ネタとしてやってみました。腕力では海未ちゃんが一番強そうだと思い、このような展開になりました。そのうち、僕は海未ちゃん推しの方に殺されそうな気がする。

 アニメ一期、二期の再放送が始まりますね。僕は両方とも10話まで見ようと思います。それ以降? 知らん、そんなことは俺の管轄外だ。

 今年も、全力前回でこのシリーズを書いていきたいと思います。お気に入りに登録して下さっている方々も、変わらぬお付き合いお願いします。

 今年もよろしくおねがいします。
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