私はガラガラガラと音がしたドアの方を恐る恐る振り返る。
ドアの音がしたとき、てっきり、さっき出ていった若菜四季が忘れ物でも取りに戻ってきたのかと思った。しかし、振り向いた先に立っていた人物は違っていた。
科学室は暑いくらいなのに、急に寒気が私を襲った。
なぜなら、目の前で全裸の私を見ているのは若菜四季ではなく、いつでも柔らかい笑顔を向けてくれて、いかにも純朴といった言葉の合う、
そして、彼女の方を向いたまま、脱ぎ捨てられた服に伸ばしていた手や言い訳を考えようとする頭も固まってしまった。
終わった――――――
ただ頭の中でその言葉が駆け巡る。
すると、彼女は胸の前で手を重ねながら一歩、また一歩と私に近づいてくる。
「きな子ちゃん、これは違うんだ! これは......」
必死に思い付いた言葉を発するのに合わせて彼女も口を開いた。
「......見てたっす。先生がはだかんぼで四季さんと何かをしているとこ......」
そ、そんなところから見ていたのか......と彼女の衝撃発言に私は動揺が隠せない。
「だから、きな子......たくなって......」
最後の方がよく聞こえなかったと思っていると、きな子はスルスルと襟元の蝶ネクタイ紐をほどき始めた。その手は止まらず、ワンピースの上部、ブラウスと脱いでいく。
黄色いブラジャーの上で小玉メロンのような重さの胸が二つ、ずっしりと存在感を放っている。そして、ベルトを外すと、ワンピースが下にパサッと落ちる。
きな子が穿いていた黄色のパンツはタイツの黒色と重なっていて、黒いもやの中の希望の黄色い光のように見えた。
その光にたどり着きたい気持ちが
彼女は手を止めず、タイツを脱ぎ始めたのだ。
光が見えた......! と思った瞬間、きな子の身に付けていたブラジャーが床に落ちた。
パッと目線を上げると、彼女の小玉メロンが二つプルルンと揺れていた。
その豊満な果実についている桃色の突起もはっきりと目に入った。
しかし、取れたての果実に釘付けになりかけていたその直後、きな子はパンツを雑に脱ぎ捨てていた。脳が追いつかない。
思考をすぐさま整理しなければと考えていると、きな子はジリジリと私に近づいて来た。
「四季さんを見てたら、きな子も二人きりでイチャイチャしたくなっちゃったっすぅうっ!」
そう言ってきな子は正面から抱きついてきた。
上では白く柔らかい胸に圧迫され、また局部が刺激される。
そして下では裏筋と陰嚢に感じる湿り気と毛のこそばゆさが気持ちいい。
長い髪を二つに縛っているきな子からするバニラのような甘い匂いと胸に当たる荒い息が私の興奮をより加速させる。
寒気など忘れ、体温がどんどん上昇していく。
「はあぁ......先生の大きな体ぁ、あたたかいっすぅ」
そう言って、きな子は更に胸と顔を私の体に寄せてきた。
「それに、先生のおちんちんムクムクって❤️どんどん大きくなってきてるっすよぉ」
さっき四季の前で射精したばかりだというのにまた
そうしてしばらくきな子はひっついたままだったが、
「じゃ、じゃあ先生ぇ......まずは......」
きな子は照れながら、私を見上げた状態で目を
もう、このまま彼女とひとつになりたい......と思いかけたそのとき、ドタドタと廊下を走る足音が近づいてきているのが聞こえた。しかも、その足音は複数人いる。
Liella! のメンバーが近づいて来ているに違いない、と私は思った。
きな子を探しにこちらの棟に来たのか、それとも、私を呼びに行こうとした四季に全員がついてきたのか、目的はわからない。
けれど、思考を巡らせ、なぜこちらの棟に部員が来ているのかで頭の中がいっぱいになっていた。
そんな頭がパンクしてしまいそうな中、私は、数分前、チラリと見えた四季のスマホ画面の時刻が七時半だったことを思い出した。
朝練は八時からだが、意識の高いメンバーたちなら練習に早く来ていてもおかしくない。
――この場面を見られてはまずい――
足音がどんどん近づいて来るにつれ、散々フル回転していた頭の中は絶対に見られてはいけない、という考えで
とにかく、隠れなきゃ、と考えた私は
「ふえぇぇ」
「き、きな子ちゃん、奥に隠れよう」
このカーテンの向こうに部屋があることはわかっている。
私は迷うことなくホワイトボードの後ろのカーテンをバッと開けた。
しかし、その部屋は、流し付きの大きな机が二つと、実験道具が入った棚が壁に沿って置かれていて、隠れられる場所がない。
そんな中、視線の先にドアがあることに気づいた。
あのドアの向こうにいくしかない。
絶体絶命の中での
もし開いていなかったらその場で終わりだ。
そんな私の恐怖と緊張や焦りの感情とは裏腹にきな子は興奮しているのか、暖かい吐息を漏らしながらモジモジしている。
ドアノブに手をかける。
頼む、開いてくれ――――
私たちは開けた勢いと同時に奥の部屋に入る形になってしまった。
中は科学室よりも暗く
入って右側には、ガラスの両開き扉の中に大量の薬品が入った木製の大型キャビネットが二つ置かれている。
しかもよく見たら開き扉の下に引き戸も付いているタイプだった。
部屋の真ん中には大きな机が一つ置かれていて、その下に段ボールが並べられている。
大きな机の奥には大型キャビネット側から窓側のほうへ、冷蔵庫、事務用デスクと背もたれの付いた回転椅子のセット、フォルダで一杯になった棚、天体望遠鏡と並べられている。窓は四つあって、どれもカーテンが閉められている。そして窓の下にも棚が並べられている。
辺りを見渡した後、私はドアを閉めた。
そうか......ここは科学準備室か。
幸い、まだ朝なので何も見えないほど暗く無かった。
ドアが開いていたときは見えなかったが、左側には掃除用具入れと棚が置かれていた。
さて、どこに隠れようか......と考えていると、きな子が口を開いた。
「しぇ、先生、さっきから焦ってどうしたんすかぁ? しかもこんな奥の部屋まできちゃって......」
「さっき、遠くから足音が聞こえた気がしたんだ......。だから隠れなきゃと思って......。きな子ちゃん、一緒にこの部屋に隠れよう......!」
私はきな子の両手を彼女の胸の前でぎゅっと握りながら言った。
それから二人で隠れ場所を探し始めた。
すると五分も経たない内に科学室のドアがガラガラガラと鳴ったのが聞こえた。
......隠れるとしたらここしかない。
私ときな子は音に気が付き、すぐに隠れた。
♈
「おーい、きな子ちゃーん、せんせー、いたら返事してー!」
遠くから部長の
「さっきまで、先生は四季と一緒に科学室にいたから、もしかしたらまだいるかもしれない」
先程まで科学室にいた若菜四季の声も聞こえてくる。
やっぱり私ときな子を探しに科学室に来たのか。
トタン、トタン、とゆっくり足音が近づいてくる。
ガチャリ......と科学準備室の部屋のドアが開く音がしたと同時に誰かがパチリと電気をつけた。
もうすぐそこまでメンバーが来てると思うと、心臓の鼓動がどんどん速くなっていく。
それに、きな子と密着しているのに体温が下がっていってる気がする。
「えぇ......この部屋ほんとに入るのぉ? 電気つけてもまだ薄暗いんですけどぉ......」
「かのんちゃん! もちろん入るよ! 二人がいるかもしれないし!」
怖じ気づいた様子の
「もしかして、この部屋に隠れてたりしてるんじゃないんですの~?」
「まっさかぁ〜、そんなことあるぅ? 部室に戻ったらきな子ちゃん来てるかもしれないし、先生の方も職員室に探しに行った
「かのん先輩、たしかにありえないですけど、一応探してみましょう」
「そうデスよ、かのん! 怖くなーい、怖くなーい」
「もーう! もう怖くないよ!」
「ではぁ、かくれんぼスタートデスね!」
ですのやデスの語尾から
メンバーたちは科学準備室の入り口で話していると思われ、聞こえてくる声は大きく、その声と内容は私の心臓に響いて、どんどん腕の辺りの力が抜けていく。
そんな中、大きくて柔らかい胸を向かい合わせの状態で私の上から当てているきな子が小声で囁いた。
「先生ぇ......四季さんたち来ちゃったっすねぇ」
「うん......。でもきっと大丈夫だから、きな子ちゃん、引き戸の中は狭いけどもう少しがんばってね」
「き、きな子は全然平気っすよ......❤️」
そう言ってきな子は上から腕を私の後ろにまわしてぎゅうっと抱きしめてきた。
柔らかくて気持ちいい感触だけじゃなく、きな子の速い心臓の鼓動が感じられた。
もし、この状態がバレてしまったら、私だけでなくきな子までも学校を去ることになるだろう。
そんな緊迫した状態なのに私の陰茎は
「フフフ、先生のおちんちんすごく固くなってるっす......。こんな時に大きくなっちゃうなんて変態さんっすねぇ」
「そう指摘しているきな子ちゃんも十分
「っ......そ、それはぁ❤️もう......
挑発にこちらも挑発で返してしまったからか、彼女は照れながら、私の胸の上に手のひらを乗せて、そう頼んできた。
私の答えは最初から決まっていた。
「............それはダメだよ、きな子ちゃん」
「ええぇ......ど、どうしてっすかあ~、せっかくこんな、一歩手前で......」
「だって、こんな狭い空間じゃ、動いたときに大きな音が出てバレちゃうよ」
「むうぅぅ......」
悔しそうな声が聞こえたので、諦めてくれるかと思っていたら、突然、唇に温かい感触が乗っかった。
「これならバレないっすね❤️」
......きっと、きな子は得意げな顔をしているに違いない。
突然過ぎて彼女の唇をじっくり感じられなかったが、私はきな子にキスをされた。
も、もう一回......、ときな子が唇を重ねようとしたとき、ガララララと隣のキャビネットの引き戸が開いた音がし、私は一瞬ビクッとした。
「もぉ〜、クゥクゥちゃん! そんなとこいないって」
「わああ、かのん見てください! 薬品がたくさんデス!」
「......てか、そもそも板が真ん中にあって人が入れるわけないですの」
そう。
真ん中に棚板があって一見入ることが不可能に思える。
だが、私たちは隠れる直前、これが外れることに気付いたのだ。
それに、幸い、引き戸の中に入っていた薬品の数も少なく、すぐに移動させることができた。
「......」
「どうしたの四季ちゃん」
「千砂都先輩......四季は、もうひとつの引き戸が怪しいと思います」
「ええ~、いないと思うけど」
「一応開けるだけでいいです」
すると、奥の私たちが隠れているキャビネットの戸がガタガタと音を立て始めた。
「......うーん、開かない。あ! 四季ちゃん、よく見たら鍵穴があるよ。鍵が掛かってるのかも!」
「......」
「ま! とりあえず一通り部屋を見たけど、いなかったから一旦戻ろうか! もしかしたらもう部室にいるかもだし」
「それがいいかもね」
「それで大丈夫? 四季ちゃん」
どうやら科学準備室に来たメンバーは一旦部室に帰るらしい。
電気を消す音、準備室のドアが閉まる音がしてから少し肩の力が抜けた。
そして遠くで科学室のドアが閉まる音を確認してから私は口を開いた。
「ふぅ......四季さんたち行ったみたいだね」
「そ、そうっすね......」
「じゃあ、きな子ちゃん、一旦この中から出よう」
私は足で斜めに掛けておいた棒を蹴ってどかし、引き戸を開けた。
きな子が出てから私も出ると、彼女は後ろから抱きついてきた。
「先生ぇ......今日はもうお預けっすか......?」
弱々しい声の余韻と柔らかい感触だけが残る。
私はきな子の方を向いて、頭を優しく
「先生が科学室の方を見てくるね。すぐに戻るからきな子ちゃんはここで待ってて」
もうこれ以上できないと
科学準備室には科学室から繋がっているドアからしか入ることができないから大丈夫だろう。
科学室の段ボールから服を取り出して練習に戻ろうとカーテンを開けたそのとき聞き馴染みのある声が聞こえた。
「ふーん。やっぱり隠れてたんだ」
声がした方を振り向くと、窓際の椅子に青色の練習着を着た若菜四季が腰掛けていた。
想定外の事態に私は身動きが取れなかった。
「なんでって顔してる。だって四季、先生たちがどこにいるか気づいちゃったもん」
すくっと立ち上がって発した四季の衝撃的な告白に寒気が全身を駆け巡る。
「奥のキャビネットの引き戸の中、でしょ? 四季、毎日科学準備室に入ってるからわかる。机の下の段ボールの中に危険な薬品なんて入れない。それにその側に大きな板もあったし」
そんな。四季には最初からお見通しだったなんて。
「それに千砂都先輩は鍵が掛かってるって言ってたけど、四季は開けておいた。なんで開かなかったのかは謎だけど」
すると、四季はコツコツと足音を立て、机の下から段ボールを取り出し、中に入っている服を見せながら、
「きな子ちゃん、まだ科学準備室にいるんでしょ? 先生と同じ裸んぼのままで」
と不敵な笑みを浮かべながら言った。
「こ......これから、ど......どうするつもりだ......?」
すっかり縮こまってしまった陰嚢と陰茎をぶら下げながら、恐る恐る口を開いた。
「んー、先生はどうなりたい?」
「私はどうなっても構わないから......、せめて、きな子ちゃんだけは見逃してほしい」
四季はふーん、と微かに微笑んだ後、目の前まで来て、内側から足をかけて倒してきた。そして後ろに手を付いて座り込んだ私に被さるような体勢でゆっくり囁いた。
「いいよ。 きな子ちゃんとのことは皆には内緒にしてあげる。でも、四季、
四季はすくっと立ち上がって、
「まあ、先生楽しみにしててよ。これから
フッと笑みをこぼして屋上で待ってる、と科学室を去って行った。
私はへたりと仰向けに倒れ込んだ。
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