全然そういう行為じゃないのに感じちゃうのって良いよね
「やあルミちゃん。言いつけ通り、今日もちゃんと来てくれたんだね。」
「ッ…どの口が…」
目の前で人当たりの良い笑顔を浮かべる大柄な男。
悪印象を持たれにくいだろう男を私は"見上げ"、嫌悪感を顕に睨み付ける。
男に渡された何が入っているかも分からない薬。
その効果で若返らされた上、身体能力もキヴォトスの外の人と同じくらいにされた私にできる、唯一の抵抗だった。
「そんな顔をしないで欲しいな、折角の可愛い顔が台無しだよ。」
「いやぁ怖いなぁ。もしかしたら指先が震えて君の大変な写真がキヴォトス中に公開されてしまうかもしれないなぁ。」
「うっ…くっ…!!」
男の発言に、私はぎこちない笑みを無理矢理に浮かべる。
事の発端はあの"若返り現象"だった。
無差別に多くの生徒が若返り、業務もままならなくなったあの事件。
その最中で私は、後輩の一人がいなくなっていることに気づいた。
そして気づいた矢先にその後輩から呼び出されたのだ。
そこで待っていたのは人質に取られた後輩とこの男。
後に何があったかは…今の状況で言わずともわかるだろう。
「…それで、するなら早くしなよ…」
「挨拶。」
「…」
ドスの効いた声が、小さくなった身体を震わせる。
情緒が幼い頃に引っ張られているのか、今の私はそれだけで恐怖を感じてしまう。
男に逆らえない事も依然変わらず、泣いてしまいそうな心持でその指示に従う。
両手を広げ、抱っこをねだる様な姿勢で、幼子の様に。
「だ、大好きな、お兄さん…私の事、ぎゅーって…して、下さい…!」
「…うん、よくできたね。じゃあこっちにおいで。」
手を引かれ、私はそのまま男の寝室へと誘導される。
これから始まる事を、私は知っている。
そしてそれが、着実に私をおかしくしている事も。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「ぎゅ………ぇ”………ゔ…………………」
「ふふっ、やっぱり可愛いねルミちゃん。」
私は裸で、圧し潰されていた。
ベッドの上で、のしかかる男の体重を、小さく非力になったこの身に受けて。
呼吸はもちろん血流までもが堰き止められ、脳細胞が死滅していく様な感覚を覚える。
苦しい。苦しい。苦しい。どこまでも、苦しい。
身体の中身が今にも外に飛び出してしまいそうだ。
だが、その中で感じてはいけないものが脳裏を過る。
私はそれから必死に目を逸らせた。
有り得ない、そんなはずは無い、と。
「さあ、もう少し体重かけるよ?」
「っ!?…ま”……で……げぇっ…………!?」
更にグン、とかかる重み。
制止する声もまともに出せず、潰されたカエルの様な声が絞り出される。
必死に酸素を求めて口を開け、舌をも突き出すが空気は吸えない。
重さで肺が膨らませられないのだ。吸えるはずもなかった。
(だ……め………死……!!)
明確に見える死のビジョン。
殆ど無意識に私の手が動き、男の身体をぺちぺちと叩く。
しかし非力にされた私の力では男を退かせる事は愚か、痛みを与える事すらも出来ていなかった。
「ダメじゃないか、ルミちゃん。大人しくしてねぇ?」
男は私の手首を素早く掴むと、凄まじい握力を以て押さえつける。
ギリギリ、ミシミシ、と骨までもが軋む様な力強さ。
その力に朦朧とする意識は、明確に雄を感じつつ白く染まっていく。
そして見えるもの全てが白く染まり───
「っげはぁぁっ、ひゅうぅぅ…!!!はぁぁっ!!ひゅうぅぅ…はぁぁ…!!!」
染まりきるすんでの所で、その重みから解放された。
漸く膨らませられた肺。
待ち望んでいた酸素が、男の体臭を伴って体内へと流れ込む。
生き残った脳細胞が生存を悦び、その瞬間を”良いもの”として記憶していく。
「ひお”っ…!ほぉっ、お”おぉぉぉ…!!」
今度は低く呻く様な声が腹…いや、”胎”から漏れ出る。
私の股は、ぐしょぐしょに濡れていた。
圧し潰しという性行為でも何でもない、ただの苦痛からの解放だけで。
端的に言えば、私は圧し潰されて感じてしまっていた。
解放の瞬間を”良いもの”と覚えさせられた脳が、それを快楽として受け入れてしまっているのだ。
あってはならない感覚だ。
だというのに、回数を重ねるごとに実感が伴っていく。
その上最近は潰されている最中ですら感じてしまっているのだ。
変わっていく、変えられていく自分が、恐ろしかった。
「うん、良い調子だ。今日はあと14セットやるから…しっかり覚えて帰るんだよ?」
涙と涎、鼻水と鼻血。
全てが混ざったぐちゃぐちゃの顔を、顎を掴まれて覗き込まれる。
この男の目指す果てにある私は一体どうなっているのか。
私を見る男の瞳に写る私は、震える事しかできなかった。