リヒトの知るランドラマという街は、所謂ごく普通のRPGの『最初の街』である。大陸北部らしい雪積もる街並みで、人々は厚着しながら、凍える寒さに耐えて日々を生きていた。
しかしMODの影響か、目の前に広がる光景はそんな『最初の街』とは真反対の街になっていた。町中から溢れる蒸気で肌寒さなど一切感じず、人々は皆全裸に近い格好で飯を食い、酒を飲み、風呂に入り。そして女を抱いていた。
どう見てもおかしいと思う。三時間も歩けば寒さに凍える村々があるというのに、ここは異常だ。
けれども誰もそれを疑問に思わない。そんな暇があるくらいなら、快楽を貪ると言わんばかりに、みんな欲望に溺れていた。そこかしこから喘ぎ声が響く、とんでもない街だった。
とても『最初の街』とは思えない。
「なんかエッチな街になってるなぁ……」
リヒトは大通りを通りながら、宿か娼館しかない街並みに呆れ果てていた。
決して一つのMODだけのせいではないと確信する。何かしらのMODが競合──つまりMOD同士の干渉が起こり、本来ではありえない事象が発生してしまっているのだ。恐らく、下半身に従って導入した娼館MODと、その他いやらしいMOD群が悪さをしているに違いない。
普通のゲームプレイならすぐに中断して原因を探って対処するところだが、今のリヒトに出来ることはない。リヒトはこの世界に取り込まれてしまって、もはやこのゲームの一部だ。つまりこの街は一生このままなのだ。
なんともいえない気分だが、別に悪い事ばかりではない。辺りでは客待ちをしている全裸のお姉さんが何人も手を振ってくれるし、食料や水なんかも案外簡単に手に入りそうだ。
そして何より、宿だ。当然『その手のサービス』に特化した宿も多いだろうし、そう利用されるのが当然の宿も多いのだろう。
先ほどから期待に胸が膨らんで、ズボンの中ではペニスがパンパンに膨れ上がっていた。
「とんでもない街だなここは……マスターに愚物共の交尾を見せたくはないが……」
穢らわしいものを見るような目で辺りを見回すルナジリオは、やがて一人でに「そうだ」と頷き出した。
「──マスター、よろしければ私が抱っこしてマスターを運んで差し上げましょうか?♡ 貴方様は私のおっぱいに顔を埋めて、ちゅぱちゅぱ乳舐め♡ おちんぽ様を私のお腹や太ももに擦り付けて──いや、おまんこにずっぽりでも良いですね♡ そのまま目的地まで堪能していただければ──」
「いや、良いよ。見てて飽きないし」
「──そう、ですか……」
途端に背中に哀愁を漂わせるルナジリオに苦笑しながら、リヒトはある意味自分の『理想の街』となった辺りを見回す。MODの影響でそこらの一般的な娼婦でさえ、リヒト好みの体型を兼ね備えていた。巨乳爆乳が大安売りされていて、乳首なんて隠してる方が馬鹿と言わんばかりに娼婦たちは曝け出している。
流石に顔立ちは、リヒトの理想を詰め込んだルナジリオやフゥリィに遠く及ばない者達ばかりだ。けれども金髪や黒髪といった髪色、褐色肌や綺麗な白肌といった肌の色、更には乳の大きさや体付きまで本当に様々な美女達が肉体美を余すことなく露わにしていた。そこに悲しみや怒りといった感情はなく、娼婦達も開放感あふれるこの街を楽しんでいた。
ヌーディストビーチならぬ、ヌーディストタウンである。
「お姉ちゃん、良いおっぱいだねぇ」
「お、話のわかるおじ様が来たわね!」
「しかも。さくらんぼみたいな乳首だねぇ」
「んふふ、舐めていいよ!♡」
「ほんと? それじゃ失礼して……ぢゅぞぞぞっ!」
「あぁんっ、もう、吸いすぎー!♡」
そんな彼女達を、腰に布を巻いたおっちゃん達が吟味していた。
興味を引く子がいればその場で会話し、乳を一揉み。娼婦側も抵抗することなく受け入れ、さすさすと客の股間の膨らみをさする。
値段帯などで折り合いがつかなかったのだろう。最後にベロベロとキスをすると、おっさんはちょっとしょんぼりしながら他の店に入っていった。
「すご……」
リヒトは衝撃だった。金も払わず乳揉んでキスして、店から出てきたのだ。どう考えてもあり得ないだろう。しかも、この街はそれを許容するキャスト達を集めてあるらしい。本当に凄い街である。
腰の奥にムラっと来るものがあった。というか男なら誰しもこうなるのが当たり前だった。
思わずフゥリィの方を見ると、「どうぞ?」という顔で頷き返してくれた。好きなおっぱい揉んでこいと言わんばかりだ。
これから三人でしっぽりと楽しむ予定だというのにである。懐が広いどころの話ではなかった。
びっくりしてルナジリオの方を見ると、こっちはリヒトの想像通りの反応をしてくれた。
「ばっ、馬鹿な! これから私達は宿でたっぷりマスターに可愛がって頂くのだろう!? それをこんなどこの馬の骨とも知れぬ女達の店に──」
「私は構わないわよ? 坊やの目を引く巨乳ちゃんがいたら買ってきなさい♡ むしろ宿代が割引されるから二、三人は見繕って来てもいいわ♡」
「なっ、はっ、え、わ、私がおかしいのか……!?」
パクパクと口を開け閉めするルナジリオ。心情的には理解できる部分もあるが、フゥリィが合流してからというもの、面白お姉さんになりつつあるなと彼女に同情するリヒト。
しかし、目の前のおっぱいパラダイスは理性をあまりにも簡単に吹き飛ばす。リヒトはわーいと万歳しながらフゥリィに抱きついた。
フゥリィはよしよしとリヒトの頭を撫でながら、空中からいきなり、パンパンに膨らんだ皮袋を取り出した。中からは数百枚のゴールドが頭を覗かせている。
「これくらいあれば好きな子が買えると思うわ。女の連れが居るからって言えば大体察してくれるはずよ」
「う、うん、なんか思ったより大金だね……やっぱり良いよ、僕には二人がいるし」
ずしりとくる重みの袋に、流石にちょっと引け腰になるリヒト。確かに、よくよく考えれば一晩あんな美女達を「買う」だけでも相当な値段なのだろう。それを何も考えずねだってしまった自分を恥じた。さっき入り口であんな話をしたばかりなのに。
というよりも二人に対して失礼な話だった、と若干理性が戻りかけるリヒト。
そんなリヒトにフゥリィは気にしないでと肩をすくめる。
「さっきも言ったけど、ここはほとんどの宿が娼館と提携してる特殊な街なのよ。この街の娼館はどこも女の子の貸し借りをするだけで寝泊まりなんか出来ないし、そうなると女の子を買えば当然ヤるための宿も絶対に必要。そして、宿に泊まれば食費やら何やらで更にお金が落ちる。その循環を作るためにも、娼婦を買うとそれぞれのサービスが割引される……この街は女の子を買って過ごすのが賢いし、常識なのよ♡」
つらつらと理由を説明し終えると、「ほら行ってらっしゃい」と、まるで初めてのおつかいに息子を行かせる様子で背中を押してくる。
リヒトはなんだそのバカみたいな街とは思ったが、これで経済が回っているのだろうから驚きだ。
……いや、或いは回っていないのかもしれない。MODの影響でこうなっているだけで、いつか破滅する可能性も十分にあった。MODは経済の部分まで考慮していないに決まっている。なにせずぶの素人が、好きなゲームに好きな要素だけ詰め込んで追加しているからだ。あまり考え込んでも良いことはない。
深く考えることをやめて、とにかく今を楽しむことにしたリヒトであった。
「でも忘れないで。貴方が愛していいのは『坊やの創造物』だけよ──♡」
離れ際にがっしり玉袋を揉まれると、それからフゥリィは腕を組んでリヒトの後ろに立った。どうやらここで待っているつもりのようである。
ちらとルナジリオの方を見ると、当たり前のようにリヒトの背中を追おうとしていた。「マスターに近づく女は全て斬り刻む!」とか言い出しそうである。やはり想像通りの反応をしてくれるルナジリオにもはや安心感すら覚える。
分かりきっていた反応を見たフゥリィは、その細い指でルナジリオの耳を引っ張った。
「な、なんだ、邪魔をするな! マスターにどんな変な虫がつくとも限らんぞ!」
「邪魔なのは貴方でしょ。私達が着いて行ったら坊やがおちんちんに従って選べないじゃない」
「私達が居るではないか!」
「さっきも話したでしょ? この街では女の子を買ったほうが何かと便利なのよ。なんなら私一人の時でも買ってたくらいなんだから」
「な、なに……? 私はそういう趣味はないぞ……?」
「そう。案外悪くないのだけれど──ってそういう話じゃなくてね──」
なんとも続きが気になる話だったが、リヒトはそれをさておいて大通りの店の前に出た。
大通りには様々な娼館が、人目を憚らずに並んでいた。看板とも呼べる美女達が客引きのように男達の手を引いては、店の中へと連れ込んでいく。そして中からは美女に囲まれた男達がちんぽを撫で回されながら隣に併設された宿へと足早に駆け込んでいく。
なんというか、凄い街である。
リヒトは期待に胸躍らせながら、店を吟味し始めた。
「──あら可愛い、どうしたの、僕? ご両親は?」
すると、すぐに近くにいたお姉さんがリヒトの元にやってくる。ピンク色の乳首が歩くたびに跳ね回って、肉付きの良い尻肉が振動で震えていた。
全裸が当たり前らしい彼女は、むしろ服を着て街から浮いているリヒトを迷子か何かと思ったようだ。
「あ、あの、えっと……」
「──あれ、あらら?♡」
しかし、リヒトがズボンの中で破裂するくらい股間を膨らませているのを見破ると、その表情は一変する。
ぺろりと、それは蛇が獲物を狙うかのような舌舐めずり。さっきの心配そうなお姉さんはどこへやら。気がつけば色気ムンムンで微笑む痴女がそこに立っていた。
「僕、お客様なのね♡ なら何を遠慮してるのかな? ほらほら触って♡♡」
「あ、ちょっと……」
流れるように手を掴まれると、そのままお姉さんのおっぱいを揉まされる。柔らかい。暖かい。サイズはルナジリオ達に遠く及ばないが、それでもおっぱいに貴賤はないとはっきり理解出来る、良いおっぱいだった。
ピンクの乳首が、リヒトの網膜に焼きつく。吸い付きたい膨らみの乳首だった。
「柔らかくてムチムチでしょ?♡ 大きさはちょっと他と比べると見劣りするかもしれないけど──その分こっちも凄いわよ♡」
彼女は乳を揉ませながら、リヒトの眼前で陰唇をくぱりと開いた。ツルツルのおまんこが開かれて、中からピンク色のマン肉が露出される。
「とろとろにしゃぶり尽くしてあげる♡ 一晩どうかしら、可愛い僕?♡」
まだ何も言ってないのに、あまりにあっさりおっぱいを揉ませて、あまりにあっさりとおまんこを見せてくる娼婦に、リヒトは心臓をバクバクさせていた。
凄い、凄い。もっと色んなおっぱい揉みたい。
リヒトの頭の中は乳で埋め尽くされた。
「あ、あの、ごめんなさい、他のおっぱい……じゃないや、お店も見たくって……」
そう言うと、お姉さんは「そっかそっか」と気にした様子もなく頷いた。
「私のおっぱいが恋しくなったら来てね♡ 早く来ないと売り切れちゃうかもよー?♡」
「は、はい、また来ます……」
リヒトは最後までおっぱいに目を奪われてお姉さんの顔を見ないまま、その場を後にした。
「あ、そうだ、喉乾いてる? 今ならマン汁かおしっこ無料だよ?♡」
「い、いえ、お断り、しておきますー……」
やっぱり凄い街でヤバい街だった。
リヒトは戦慄に近い何かを感じながら、次の店に向かう。