「自己紹介……は、要らねえんだよな。なんか、妙な感じだぜ……」
ハバキは照れくさそうに頬を掻いた。初対面で泣きついた事が恥ずかしくもあり、名前から生い立ちまで全て知られている『創造主』に対してどう接していいのか分からないといった様子も垣間見える。
そんな彼女の手を握ると、リヒトは優しく微笑む。
「うん、ハバキの事ならなんでも知ってるよ……でも凄いよ。こうして現実で会うと、カッコよくて、美人で、声もイケメンで、素敵な人」
「やめろよ、て、照れるっつーか、体が痒くなるっつーか……あー……」
ぷい、と顔を晒して赤面を隠すハバキ。
少年はくすくすと笑いながら──それから「けほけほ」と空咳をした。
「ああ、わりぃ! しんどいよな、大丈夫か?」
彼女は慌ててリヒトを横にすると、心配そうな面持ちでそっと自らの『創造主』の身を案じた。
「大丈夫、疲れてるだけだから……」
リヒトは首を振り、安心させるように微笑む。ハバキは尚も心配そうな表情だ。
彼女もまた、ゲームのキャラクターとは思えない感情の豊かさで、そこに人間がいるみたいだ。ルナジリオ達と同じと捉えて良いだろう。
そんなハバキの顔を見ながら、リヒトは自身が作った『OFS』の環境を思い出す。
自らの作り上げたゲームの環境を、何度も何度も頭の中でなぞってみた。
──やはりあり得ない。彼女がここにいるのはありえない。
結論はそれしかなかった。
彼女がこの世界にいるのはあり得ない『はず』なのだ。
だからリヒトは、直接尋ねることにした。
「──それより、聞いてもいい?」
「ああ、なんだ?」
「──どうしてインストールしてないはずの、ハバキがいるの?」
ーーーーーーー
『武器は装備しないと意味がないぜ』
RPGでよく使われるメタ表現であるが、MODにも同様の事が言える。
ネットの海に数多あるMOD群は、全てダウンロードしただけではゲーム内で楽しむことは出来ない。どのMODもダウンロードしたデータを用いて『OFS』のゲーム環境に適応──つまりインストールする必要があった。
ルナジリオやフゥリィ。或いはランドラマの街などは全て手作業でリヒトがゲーム環境に導入したものであるため、現実になるとこうなるのか、くらいの驚きしかなかった。
だが、彼女は違う。彼女自体はリヒトが作成したものだが、最後にゲームの設定した時、『ハバキのMOD』はインストールしていないのだ。無論データ自体は自分のPCには存在しているが、インストールとなると話は別だ。
何故なら、リヒトのパソコンでは、三人以上のMODキャラクターは表示できないからだ。リヒトが作成したキャラクターは全て恐ろしいほどの工数が掛かっており、データの容量も比例して長大だ。そのため、単純な話、リヒトの持つパソコンの能力では全員を描画しきれないので、リヒトはお供に付けるキャラクターを物理的に切り替えながらプレイしようとしていたのだ。故に、ルナジリオとフゥリィが存在している以上、『仲間にするMODキャラクター』の三人目としてリヒトの作成したキャラクターがこの世界に居るのはあり得なかった。
これがリヒトの思い違いであるならば良い。一つや二つの記憶違いくらいあるのは人間として当然だろう。たまたまインストールしたままで、そしてもはやパソコンのスペックなんて関係なく現実になってしまった今なら、結果オーライで済む話である。
だが、もしこれが記憶違いではなく──数々のテストを行って、自らの判断でインストールをしなかったMODや、バランスを壊しかねないとアンイストールしたもの、それら全てがリヒトの意思とは関係なしにこの世界に組み込まれているとしたら。
それはNPC達が意思を持ったこの世界において、秩序の崩壊を指しているのではないだろうか。
「──わりぃ、よくわかんねぇな。ここに来た理由とは別ってことか?」
ハバキはガシガシと頭を掻きながら申し訳なさそうに眉根を寄せた。
当然だろう、データである彼女に──否、データで『あった』彼女にそんな事は分かる筈がない。彼女もまたこの世界に生きる人間として、人生を歩んできただけなのだ。
彼女が知る訳はないのだ。リヒトはやはり記憶違いだと思い直すことにした。
「ごめん、そうだよね。忘れて……それで、ここに来た理由って?」
「ん、ああ。そっちは単純でよ、アタシはある貴族から娘の捜索を依頼されててよ。諸々調査した結果、ここに辿り着いたって訳」
「……ここにいるの?」
「分からん」
胡座をかきながら、「さぁ?」と肩をすくめる彼女。リヒトは「適当だなぁ」と苦笑した。随分雑な人格のようである。もっともリヒト自身がそう設定した訳だが。
今更ながら、彼女達の性格にも所謂『フレーバーテキスト』が反映されていることに改めて驚く。所詮は素人が作ったもので、ゲーム内であれば見てくれは良くとも中身はデフォルトの用意されているNPCに設定しているのが『MODキャラクター』達である。当然話し方や戦闘スタイルも既存のものでしかない。
しかし、ルナジリオやフゥリィ、それにハバキを見ていると、リヒトが鼻歌まじりに長々と書き込んだ過去やら設定やらがきちんと反映されているのだ。これもこの世界に来た恩恵とも言うべきか……ともかく、リヒトとしては嬉しい事だった。何せ自身が作ったキャラクターが本当に生きているのである。感涙ものであった。
「……あ」
……同時に、ハバキの戦力に関しては大して思い付かなかった事も思い出す。少なくとも『Sランク』相当の名のある冒険者とした記憶はあるが、ルナジリオやフゥリィ達ほど詳細に書かなかったのだ。武道などを嗜んでいないリヒトは、『拳系』の造形が浅かった。
まぁ考えすぎだろうと、リヒトはすぐにその思考を何処かへやった。
「ま、居なかったらここにいる奴らをぶっ飛ばして出ていくさ……だから、先に謝っとく。すまん、その貴族のお嬢さんを探し出すまではここから出られない。お前をこんなにした奴が今も生きてるなんて腑が煮え繰り返るが……」
彼女は深い怒りを目に浮かばせ、そう言ってリヒトの右腕をそっと撫でる。肩には鳥の羽が交差するようなマークが赤く腫れ上がっていた。じくじくと血が滲み、肉の焦げた臭いがした。
「大丈夫。それにお揃いだし」
「お揃いって、これ奴隷の証だぞ……」
返答しつつも満更ではなさそうな顔でリヒトを抱き抱えるハバキ。重たいおっぱいがむにゅんと胸板に潰れて、肋骨がみしりと鳴った。
「すまん、本当に……絶対、これをした奴らを皆殺しにするから……」
「ふふ、大丈夫だよ。信じてるから……後あの、あんまり、その、裸で抱き合うと、その……」
ハバキはくすりと耳元で笑った。
「──分かってるよ、スケベ♡ 好きなんだろ、これ♡」
そう言って重たいデカパイをぐにぐにと押し付けてくる。死に掛けた事もあってか、生存本能の爆発した身体が勢いよく下半身に血を送り、あっという間に勃起してしまう。
「馬車で見た時デカすぎて最初ちんぽか分かんなかったんだぜ♡ それから、アタシの創造主様ってのはこんなとこまでスゲーんだなって、笑っちまった♡」
そんな事を言いつつ、彼女の声音にはネガティブな感情は含まれていないようだ。むしろ逞しい男根を待った少年に惹かれているような顔つきでボロボロのリヒトを見下ろした。
それは、恋する雌の目つきだった。やっと会えた大切な人を前に、もう二度と離れまいとする女の瞳だった。
リヒトは彼女の事を抱きしめると、耳元で囁く。
「ハバキ……僕のものに、なってくれる?」
それは彼女達にとって、唯一無二の絶対の契約──逆らえるはずもない命令だった。
頷けば自分の何もかも差し出して、命よりも優先するべき大切な『御方』に仕えなくてはならない。『創造主』様より言い渡される、睦言の如き甘美な命令。愛する『創造主』様より賜る、未来永劫お側にお仕えする事が『許されて』、何処までも幸福な召使いとしてコキ使われる存在になるという不動の誓い。
その言葉を聞いた瞬間、電撃が走ったようにハバキの身体が震え、そして顔をこれでもかというほど蕩けさせた。
答えは考えずとも分かってしまう。
「──アタシは今からお前のものだ♡ いや、ずっと前からお前のもんだった……この顔も、乳も、尻も、まんこも、全部お前の所有物……♡♡ いつでもアタシに許可なく触って、舐めて、犯していいぜ♡ 大好きなお前に何されても、おまんこ濡れ濡れで歓迎するからさ♡♡」
ハバキはだらしない顔で、リヒトの額に「ちゅ♡」と口づけをした。耳朶を打つ官能的なアルトボイスから発せられるエロ奴隷宣言に、下半身に血がぎゅんぎゅんと集まっていく。
彼女の細指が、バキバキに反り返った肉棒を握った。指の輪が、太いちんぽになんとか抱きつく。太すぎて指が届いていなかった。
「ハバキ……ハバキ……エッチすぎ……」
「んふ、可愛い声しやがって……どうしたいんだご主人様?♡ アタシにチンコキさせたいのか?♡」
リヒトは余裕なさそうに頷きながら、ハバキの顔を抱き寄せた。
「ちゅーしたい……ちゅーしながら、ちんちんシコシコして……」
「くぅぅぅぅぅっ──♡♡♡ はむっ、ちゅ、ちゅぷ、ん、ぷ、れろぉ、ぢゅ、ぷるるるるる、んむっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅぷ、ぢゅるっ、んんんんーっ──♡♡♡」
美女が獣のように鼻息を荒くするとデカチンを扱きながらリヒトの顔にむしゃぶりついた。
びちゃびちゃと顔面中を舐め回しながら、口の中も一緒に蹂躙される。何十年と押さえつけられていた感情が爆発したかのごとく、果てのないキスが降り注いだ。
「んんぅ、ちゅぷ、ちゅむっ──んっ、……りひとぉ、りひとぉっ──♡ アタシの創造主さまぁっ、アタシの事を好き勝手していい、唯一のご主人様ぁっ♡ やっと会えたんだぞっ、このっ……ぁぁっ、好き好きっ♡ ちっちゃくて、可愛くて、カッコよくて、ちんぽでかくて、好きすぎるぅっ♡♡ アタシだけのぉっ、アタシだけの王子様ぁっ──♡♡」
クールな見た目からは想像もつかない媚び媚びの猫撫で声でキスを繰り返すハバキ。
リヒトはきゅんきゅんと胸を高鳴らせながら、新しい仲間に希望と肉棒を膨らませていた。