村に着くまでは、そこから一時間以上かかった。
慣れない獣道はリヒトを大変苦しめたが、自在に動く手足に慣れてくると感動が疲労を上回り、あまり辛いものではなかった。
リヒトは本当の自由を手に入れた気分だった。ひ弱な身体はもうどこにもない。走ることすら不自由な肉体はどこにもなかった。
思わず鼻歌を歌いながら前を歩くと、ルナジリオには大変微笑ましいものを見る目で見つめられた。リヒトは恥ずかしくなったが、それでも喜びを抑えつけることは出来なかった。
さて、ゲーム内の地理はあらかた頭に入っているリヒトだが、どうやらゲームと比べると大分マップの縮尺が変化しているようだった。或いは現実世界に再構築するとこの広さになるのかもしれない。
北部森林だけでこれだけ距離感に違いがあると、大陸全体がどれほど広大になっているのか、見当もつかなかった。
元々、『OFS』というPCゲームはオープンワールドゲームとしてマップの広さも売りとしている。ゾッド大陸という架空の大陸が舞台で、端から端まで歩いたら現実時間で四、五時間を要するという話もあるくらい広大なマップだ。それが現実基準になれば、或いは本当に年単位の可能性もある。
「ふぅ……村ってあれだよね?」
「ええ、間違いありません」
歩いた時間はトータル三時間くらいか。彼女の忠告通り、本当に日が暮れそうだった。
「お前達、そこで止まれ!」
ようやく村の目の前まで辿り着くと、長い槍を持った禿頭がリヒト達に声を上げた。
リヒトはびっくりして肩を跳ねさせた。
鋼の防具と衛兵であることを示す赤色の装備をした兵士だった。確か街から派遣されているとかなんとかだったか、とリヒトは記憶の片隅からゲームの設定を引っ張り出す。
「旅人だ、通してくれ」
「……アンタはそう言うだろうが、そっちの子は何だ? まさか、人攫いか?」
ルナジリオは慣れた様子で返答したが、禿頭はリヒトに目を向けると胡乱な目つきで槍を構えた。
こんな寒空の中、子供を一人連れた女に、何かしら異常だと感じたのだろう。おまけにルナジリオの格好はちょっとばかしこの世界の常識から外れてる。余計にそう感じたのかもしれない。
人攫いか、たしかに言われてみるとそんな雰囲気がなくもない、と彼の観察眼に感心していたリヒトだが、その後慌てて首を振る。
明らかにルナジリオが警戒されていた。ここはリヒトが説明する必要があった。
「ち、違うんです、僕が熊に襲われて、それで助けて貰ったんです!」
「熊……? っていうか、ガキ、よく見たらお前も全然見た事ない……この辺りの子じゃないな?」
「あ、えっと……そうです……」
「なら、その女に攫われて来たのか?」
「違います。ルナジリオには助けて貰ったんです。本当です……!」
門番は暫く不思議そうな顔をしていたが、やがてリヒトの顔に嘘はないと判断したのか槍の刃先を下ろした。
「……ようこそヘラードの村へ。最近はこの辺りにも盗賊やら山賊やらの犯罪者が多くてな、警戒するに越したことはないんだ」
「通ってもいいか?」
「ああ、そのガキに免じて通してやるよ。もっとも、村で変なことをしたら叩き出す」
ルナジリオはこくりと頷くと、リヒトの腕を引いて村の中に足を踏み入れた。
「そうだ、宿屋ならこの通りを少し行くと右手にあるぞ。スリーピングホビットという宿だ。すぐわかる」
「分かった、ありがとう」
「あー、それと……」
「まだ何か?」
「昨日の夜ぐらいか……この先の森で妙な音がしたんだが、何か知っているか? ちょうどお前たちが来た方角だ」
「いや、知らないな……音というのは?」
「さあな、俺もちゃんと聞いたわけじゃない。何か大きな物が落ちたような音らしい。おおかた村人達が魔物の縄張り争いでも聞いたんだろ……忘れてくれ。良い旅を」
「ん……? そうか、なるほど……行きましょうか、マスター」
リヒトは二人の会話を聞きながら、改めてファンタジーの世界に来てしまったのだなと実感していた。
槍を持った兵士に、木で作られた門。村の中は土壁やら木製の家ばかりで、川のそばには水車があった。
おまけに通りを歩く村人達の姿は、どれも現代日本と比べたら何世紀も前の衣服ばかりで、それだけでここが異世界だと痛感する。
何よりも会話の内容が現代日本ではありえないものだ。それを大真面目にやり取りしているのだが、この場でふざけている者がいないのは肌で感じ取れる。
ゲームの世界とはいえ、ここは紛れもなく異世界だった。この世界観が好きだからこそ、世界中のゲーマー達がこぞってプレイしているのだろう。
「マスター?」
「あ、うん、ごめん」
ルナジリオに連れられて、リヒトは村の中を進んだ。
少し歩いて、すぐに違和感に気がつく。
「……なんか、みんなやけに薄着じゃない?」
村を歩く女性達の肌の露出が多いのが気になった。男性達は特におかしいとは思わないが、女性達は悉く身体のラインがくっきり出るような装いだ。
しかも全員美人で、コピペでもされたみたいないやらしい身体つきだった。巨乳に細い腰、むちむちのお尻。
ルナジリオに引けを取らない美女達ばかりだった。流石にルナジリオが頭ひとつ、いや二つ以上は頭抜けていて比べ物にはならないが。
しかし今は冬である。そして北部の村だ。雪も降り積もっている村でこれは何かおかしい。
「誰か手付けにしたい雌でも居ましたか?♡」
「いや、これもMODのせいだね……現実で見るとなんか信じられないや、みんな凄い体付きだね」
「中には金さえ出せば股を開く者もいると思いますが……個人的にはそのような者を抱くよりかは、その……私を……♡♡」
ルナジリオはそう言うと指でリヒトの頬をなぞった。
リヒトは微笑んだ。
「勿論だよ、ルナジリオは僕の中で一番強くて可愛くて綺麗でエッチなんだから……何度でもエッチしたいよ」
彼女は分かりやすく頬を朱に染めると、こくんと頷いた。
こんないじらしい事を言ってくる美女に誰が我慢できるだろうか。リヒトは思わず正面から抱きつくと、爆乳の谷間に顔を埋めながら、両手をコートの中に突っ込んで丸出しの尻肉を鷲掴みにした。
「あはんっ、マスター──♡」
ある意味ちょうど良い身長差の二人は、肉感的な女体に少年が取り込まれているような様相だった。
ルナジリオは待ってましたと言わんばかりに少年を抱き抱えると、胸肉をわざとらしく顔に押し付けながら、優しく後頭部を撫でつけた。
「そうです、それで良いのです……私は貴方様の所有物♡ いついかなる時でも求めてくださって構いません……いつでも触って、揉んで、吸って──犯してください♡♡」
「すー、はー……おっぱい気持ちいいよ……」
リヒトは夢見心地になりながら、美女をおっぱいの谷間から見上げる。
聖母のような微笑みで、彼女はリヒトを見下ろすとよしよしと後頭部を撫でた。
「良いんだね? 我慢しないよ……ルナジリオ、綺麗だから本当にいつでもセクハラしちゃうからね?」
「はい──よろしければ今からでも♡」
彼女は頷くと同時に、身を屈めてリヒトの股間に手を伸ばした。
リヒトは途端に周りの目が気になり出した。というか村の入口での一件もある、いきなり青姦というのもかなり立場を悪くするだろう。
慌てて彼女の手を掴んで待ったを掛けると、「まずは宿を見つけよう」となだめるように彼女を見た。
彼女もここが村の中だと思い出したのか、こくりと頷いた。
「では宿へ向かいましょう──もっとも、今すぐおまんこしたくなったのであればその場でお申し付けください♡ 邪魔する村人など居れば、私が切り伏せてご覧にいれます」
「いや、それは……やめようか……」
本当にやりそうな彼女を止めつつ、村の中を進む。MODの影響で村の女性達は皆美しく、そしてやけにボディラインの強調された衣服に身を包んでいた。
リヒトは度々目を奪われては、隣で剣を抜きそうになるルナジリオを慌ててなだめながら、宿屋までなんとか辿り着いた。
宿屋はファンタジー世界らしく木製だった。
はるか昔のログハウス、という表現が適切だろうか。何から何まで木製で、言葉を選んで言い表すなら自然を感じるたたずまいだった。
看板らしきものが道沿いに立っている。やはりここが目的の宿屋だ。
「ここならベッドがありますね──♡」
気がつくとルナジリオが背後からリヒトを抱きしめた。
後頭部を爆乳で包み込むと、いやらしい手つきでリヒトの股間に手が伸びてくる。当然のようにテントを張っていたズボンの上から、なでなでとチンポを触れてくる。
リヒトは脳内を真っピンクにしながら、宿屋の戸を開けた。