気がつけば翌朝だった。
およそ運動というものを体験してこなかったリヒトでは、森を数時間歩いただけでも体に相当な負担が掛かったようで、昨日は夕食を食べ終わるとすぐさまベッドで寝てしまったのだ。
目を覚ますとルナジリオが微笑ましい顔でリヒトを見下ろしていた。彼女も昨晩は昂っていただろうに、怒っている様子はなかったが、それがリヒトにはまた申し訳なかった。
或いはルナジリオにフェラでこってり絞られたせいで疲れ果てたのかもしれない。その場合は仕方のないと思う事が出来るが……
「本当は二人とエッチしたかったのに……」
と肩を落としながら宿屋を後にするリヒト。村を囲う木々の隙間から差し込む朝日に目を細めながらも、一日の始まりにしてはなんだかやるせない思いだった。
しかもせっかく出会えた彼女達とやりたい事がそれしかないというのも、まるで自分が猿になったような感じがして悲しかった。
性欲とは恐ろしいものである。
「これから機会はいくらでもあるわ♡」
とは、落ち込む少年を撫でながら、気にしないでと優しく諭してくれるフゥリィ。変わらずぴらぴらと乳首やおまんこの前の布が風で揺れて、大切な部分が見えてしまいそうだ。
「はい、マスターのお身体が第一です。決して無理をなさならないでください♡」
とは、ビキニの上からビンビンに乳首を勃たせて、若干鼻息が荒いルナジリオの言だった。ダメそうだった。
「うーん……」
リヒトはもう一泊して二人を気が済むまで抱こうかとも考えたが、無駄な事でもあると気がついていた。この究極の美女達に対して飽きが来ることなどないに決まっている。食事とベッドさえあれば、百年だって彼女達とまぐわい続けるだろう。
ならば、昨日話した金欠の話もあるし、さっさと金を稼ごうと考えたリヒトだった。
何よりも、昨日の会話の最中に思いついた、小さくて大きな野望を叶えるために。
「──まだ全然先の話だと思うんだけどさ、三人で家を買おうよ」
「あら、良いわね」
「マスターとの我が家……♡」
「それで三人で住んで……いっぱいエッチしよ」
リヒトは頬を赤くしながらそう告げると、二人の丸出しのお尻をぺろんと撫で上げた。
如何に少年であろうとも普通であればゲンコツの一つや二つ飛んできそうなセクハラだが、その場にいた二人は国が滅びるような絶世の美女でありながらも許した。
それどころか蕩けるような微笑みを浮かべて、前屈みになるとその豊満な四つの乳房で少年の頭を押し潰した。
リヒトの前に、デカすぎる長乳が並び、むにむにと顔にぶつけられる。柔らかく、どこかミルクのような匂いがした。
「楽しみね、坊や♡ たっぷりと、愛し合いましょう♡♡」
「マスター、その時は私──歯止めが効かなくなってしまいそうです♡♡ いつまでも、ぱこぱこ、ぱこぱこ……♡♡」
脳を犯す甘い声が、リヒトの男性器を朝っぱらから覚醒させてくる。
リヒトは多少前屈みになりながら、村から出ることになった。
村人達には、両脇の美人を見てさもありなんと頷かれていたような気がした。
「──さて、一応陣形を決めておきましょうか。坊や、戦闘は出来るの?」
村を出ると、フゥリィはすぐに口を開いた。
これから自分達は三人パーティということになる。当然このゲームはファンタジーの世界で、獣や魔物、ひいては山賊といった賊達なども多く、戦闘は避けて通れない。役割分担をするのは当然だった。
リヒトは腰に下げた
「一応援護射撃くらいは出来ると思うけど、戦闘が出来るのか? っていう問いにイエスかノーで答えるならノーかな……」
リヒトは戦闘経験どころか運動経験すら皆無だ。足を引っ張ることは目に見えているし、ここで見栄を張ることはしなかった。自分が出来るのはせいぜい遠くから魔道具で火弾を飛ばすことくらいだろう。
「そう、分かったわ。なら、坊やは私の隣に居なさい、守ってあげるわ♡」
彼女は予見していたらしく少年の言葉にすぐ頷くと、それから戦闘を歩くルナジリオに視線を向けた。
「前衛は任せていいのかしら?」
「ああ、後ろは任せる。前は私が斬り伏せよう」
「あら、随分あっさりと信頼してくれるのね。また信用できないからマスターのお側には私が〜って、駄々こねられるかと思ったのに」
ルナジリオは鼻で笑った。
「馬鹿が。誰が貴様など信じるか痴女。私は貴様ではなく、貴様を作り上げたマスターのことを信じているのだ。マスターは私をお作りになった。ならばその力に間違いなどないに決まっている」
それは、確信とも取れる、強い信頼の言葉だった。ルナジリオが、どれだけリヒトのことを信じているのかが言葉の端々から響いていた。
「ルナ……」
リヒトは思わず胸がじんとした。本当に、何も持っていない自分には勿体無い人だ。
思わず駆け寄って隣に立つと、彼女の手を掴んだ。
「僕も、ルナの事信じてるからね!」
「は、はい!♡ お任せください我が主……貴方様の征く道を塞ぐ全ての愚物を斬り捨ててご覧に入れます!!♡♡」
ルナジリオは飛び跳ねるような声で、リヒトに頷き返した。
それからリヒトは、二人と並んで街道を歩いた。ゲームの世界だけあって、街道といっても草が刈られているだけの獣道もいいところである。
しかし、左右の美女と恋人繋ぎをしながら大自然の中を歩くのは、リヒトの短い人生の中でも一番と言っていいほど楽しい時間だった。
灰色とも呼べる人生を送ってきた少年にとって、それは、やっと始まった彼の人生だった。
「二人とも、どうして僕の事が製作者だって分かったの?」
リヒトは道すがら、そんな事を二人に問うた。
「直感ですね」
「そうねぇ、本当にそんな感じ。こう、びびびって来たのよ。探してたのはこの人なんだー、って……後、数日前からここに行かなきゃってなんの理由もなく思うようになって」
「ああ、それは私も感じた。用向きなどないのに、あの森に行かねばとなんの疑問もなく思い始めたな……話の流れからすると、マスターがそう仕向けた訳ではないのですね?」
ルナジリオの言葉に首を左右に振る。
そもそもどうやってゲームの世界に入ったのかも分からないのだ。そんな入念な準備、出来ようはずもない。
とはいえ、この二人はゲーム序盤のあの村で出会うように設定している。それが作用しているのだろうと薄々勘付いてはいた。ルナジリオの方はすぐ出会えるようにとさらに村から離れた森の中にイベントを置いた気がするので、現状とも符合する。リヒトの設定通りであった。
そう考えると仕向けたの自分かもしれないと思い直したリヒトだったが、細かいことなので口には出さなかった。
「でも、二人に会えて良かった」
リヒトの噛み締めるような言葉に、二人は微笑んだ。
少年も笑顔を返して……それから暫く歩くと、小さく「ふぅ」と息を吐いた。
「……ちなみにさ……話変わるんだけど次の村まで後どれくらい?」
「あと半日ほどかしら……なぁに、疲れたの坊や?♡」
「うん、少し。ごめんね、頼りなくて」
「良いのよ、坊や。気にしないで。いざとなったら私と坊やだけで飛んで連れてってあげるから、日が暮れても心配しないで大丈夫よ」
「おい、私はどうするんだ」
「走りなさいよ筋肉」
「ひっぱたくぞ乳布女」
二人は案外仲が良いのではないか。
そんな事を考え始めたリヒトだった。
話しながらの道中、特にこれといった野生のモンスターに遭遇することはなかった。フゥリィによると、この辺りは冒険者達によって定期的に人に害をなす魔物たちが討伐されている。おかげで農民だろうとあまり警戒することなく移動出来るらしい。
ゲームでは序盤のエリアだからと、プレイしている時は特にこの平和な街道に対して何も思わなかったが、そういう理由もあってモンスターは出てこないようだ。