ウォーターウォールを使った水瓶やシャワータンクへの給水は、女性全員に物凄く感謝されてるようだ。水汲みや洗濯は重労働だから、思う存分に綺麗な水が使えるのは贅沢なんだろう。元の世界でも、水の問題は紛争の種でもあった。
ニードルウッドのドロップ品のブランチを売らないで台所の燃料にしたので、薪を取りに行く必要も無くなった。ほとんど煙を出さず高火力なブランチだが、ギルド買取価格1本10ナール(ギルドでの販売価格1本40ナール)するので、普通は日常使いする物ではないらしい。
アルフリーダが言うには、ソマーラの村の辺りは比較的乾燥した気候らしい。ならば気化冷却式の冷蔵庫が使えるはずだ。理屈そのものは単純で想像に難くないけど、躯体の大きな素焼きの壺なんて店売りで入手可能なのだろうか? ウサギの毛皮を帝都の高級服屋に売りに行く時、散策して探してみよう。
「今日も朝食まではソマーラの迷宮に入ってくる。フレイヤも一緒に迷宮に行こう。そろそろウサギの毛皮が100個貯まるので、朝食を食べたら売りに行く。フレイヤのブラヒム語の勉強は午後に回してくれ。」
「「「かしこまりました、ご主人様。」」」
「ユリアとエゲリアは、柳の枝を取りに行くのかい?」
「はい、刈り取った枝は、そのまま挿し木にして根付くのでしょうか?」
「いや、枝の切り口の方を数日水に漬けておく、枝から出てくる根が見えるから、それから土に刺した方が良いと思うよ。」
「分かりました。いよいよ化粧水ですね。楽しみです。」
「夕食前に、その辺のことを含めて、少し打ち合わせしよう。」
「「了解しました、旦那様!」」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
今日もウォーターウォールで生活用水を補給をしてから、昨日の続きだ。
イリスとフレイヤと一緒に、ソマーラの迷宮1階層、ボス部屋の待機室までワープする。
「ご主人様、スローラビットのボスのラピッドラビットって、私イリスの得意な奴です!」
「えー、ラピッドラビットって動きが速くて攻撃が当たらないから、難しい魔物じゃないの?」
「大抵の場合、ドワーフは武器を力任せに振り回すだけなので、ラピッドラビットには、ほとんど攻撃を当てられません。攻撃が体当たりだけのラピッドラビットは、何もしなくても向こうから突っ込んできて、最後にジャンプして体当たりしてきます。空中で方向転換はできません。ですので、体当たりを待って最初から武器を構え、コツンと武器を当てる程度でダメージが入ります。簡単ですよね。味方の足元にラピッドラビットを弾き落とせれば、味方が攻撃してくれるので更に楽です。槌を盾のイメージで使うのがコツですね。」
「それ良いね。ラピッドラビットに槌を当て俺の方に飛ばしてもらって、魔物が避けられない空中で攻撃を叩き込もう。ボスは通常の魔物の2~3倍の経験値が得られるらしいから、イリスの戦法で効率的にレベルアップできれば凄いことだよ。」
【マモル】 4ジョブ(7)
フラガラッハ(31) キャラクター再設定(1)
獲得経験値十倍(31) 必要経験値十分の一(31)
詠唱短縮(1) ジョブ設定(1)
合計103
探索者Lv5:体力(小上昇)
英雄Lv3:腕力HP体力MP知力精神器用敏捷(中上昇)
魔法使いLv5:知力(小上昇) MP(微上昇)
剣士Lv1:腕力(小上昇) HP(微上昇)
【イリス】 武器:槌
鍛冶師Lv2:腕力(中上昇) 体力(小上昇)
【フレイヤ】 武器:ダガー
剣士Lv2:腕力(小上昇) HP(微上昇)
昨日の午前中にベイルの1階層を攻略した時は『単体魔法1発+デュランダルでラッシュ2発+イリスの槌2発 』だった。今日は、昨日の午前中より強化されてる分だけ少ない攻撃回数にできる理屈だ。
「それではご主人様、イリスが先行しますので行きましょう! ラピッドラビットがイリスに突撃してきたら、ご主人様はスルスルっと前に出て下さい。ご主人様の方にラピッドラビットを飛ばします。」
英雄のオーバーホエルミングを使えば、フラガラッハでスラッシュを3発叩き込んで煙になり、ウサギの肉が落ちた。マニュアル化できたな。このまま、ベイルの1階層のボス部屋を周回しよう。
「×××××××××××!」
「*********。」
「××××××××××××!」
「*********。」
「ご主人様、フレイヤもやりたいって言ってます。ラピッドラビットの動きは感じられたから大丈夫だって。」
フレイヤは、ダガーを両手でしっかり握ってラピッドラビットを叩き返すつもりのようだ。足元のステップや位置取りが、イリスより細かい。なんてこと無く、フレイヤもラピッドラビットを飛ばしてきた。
「ご主人様、たのしいです。もっとです!」
フレイヤは昨晩も凄かったけどウサギなのに肉食系なのか? 兎人族は戦闘職に向いてないとか言ってなかったっけ? ウサギの肉が10個溜まったところで、ボス戦を切り上げた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ソマーラの迷宮2階層の魔物には、ナイーブオリーブが出現した。通常ドロップ品がオリーブオイルだ! これで石鹸が作れるし、食生活も豊かになる。ソマーラの迷宮は良い魔物配列じゃん。
「フレイヤ、2階層からは魔物が2匹出てくるから、無理せず攻撃してね。」
「イリス、しばらくは、一振りで一度に2体を攻撃する練習をしてみよう。イリスはドワーフの中ではリーチが長いから向いてる攻撃法じゃないかと思うんだ。チャンスがあったら積極的に使って。今後の武器の選択の参考にもしたいから。」
「「はい、ご主人様!」」
探索者と魔法使いのレベルも上がっているし、魔法戦闘に切り替えよう。帰る直前に『禁欲攻撃』で精力発散させるのを忘れずにしなきゃ。
【マモル】 6ジョブ(31) ワンド
キャラクター再設定(1) ワープ(1)
パーティ項目解除(1) MP回復速度二倍(3)
獲得経験値十倍(31) 必要経験値十分の一(31)
詠唱省略(3) ジョブ設定(1) 鑑定(1)
合計104
探索者Lv6:体力(小上昇)
英雄Lv3:腕力HP体力MP知力精神器用敏捷(中上昇)
魔法使いLv6:知力(小上昇) MP(微上昇)
色魔Lv2:精神(中上昇) 知力(小上昇) MP(小上昇)
僧侶Lv2:精神(小上昇) MP(微上昇)
商人Lv3:知力(小上昇) 精神(微上昇)
魔物1匹の時はファイヤーボールを一発放って、イリスとフレイヤが挟撃する。
魔物2匹の時はファイヤーストーム二発放ってから、自分も銅の剣に持ち替え全員で物理だ。
ここまでの魔物の攻撃で『かすった』ことはあっても直撃はしていない。十分にバランスは取れている。
オリーブオイルが10個溜まったところで、朝食に戻ることにした。ナイーブオリーブ1体を3人で包囲殲滅する。禁欲攻撃を放って精力を解放しとかなきゃならない。禁欲攻撃してから色魔のジョブを外すのが順番だ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「「「ただいま!」」」
「「お帰りなさいませ、旦那様。」」
「お帰りなさいませ、ご主人様。」
たった今、ユリアとエゲリアも朝食を食べに戻ったとのことだ。
卵を入手して目玉焼きが食べたい欲求を抑えて、今日の朝食も硬いパンとスープだ。
「ソマーラの迷宮は凄いよ。1階層のウサギの肉のみならず、2階層からオリーブオイルが取れた。食料供給の面から見て、優秀な階層配列になってる。ソマーラ村にとっては良かったんじゃないかな。」
「2階層から油が入手できるので、石鹸が作れる。とりあえず、今日は皆で石鹸の試作品作りを始めよう。錬金術師のジョブが取れるからね。」
「「「「「・・・・・・。」」」」」
また、やっちまったようだ。
「旦那様、錬金術師のジョブって何ですか?」
どういうことだ? エゲリアが錬金術師のジョブを知らない?
「・・・・・・・。」
何かおかしい。考えろ。
「ユリア、食事中にごめんね。膝の上に乗ってくれない?」
想定外の事態だ、ユリアの乳を揉みながら熟慮しよう。
「かしこまりました、旦那様!」
ユリアは得意気な表情だ。嬉しそうにシャツのボタンを外し、膝に跨ってくれた。
「イリス、ドワーフに錬金術師はいた?」
「ご主人様が言ってる錬金術師とは『金鉱石から金を精錬する人』の意味では無いですよね。錬金術師なんて言葉は、聞いたことないです。」
「アルフリーダ、商人は石鹸をどうやって入手するの?」
「帝都の大商会の直営店で小売されていますが、裕福な家や大貴族を顧客とするような店で、主に贈答品として使われています。時々オークションにも出ますが、大商会の息がかかった仲買人が落札します。安定した石鹸の仕入ルートを持つ商家は帝都の大商人だけで、普通の商人は商っていません。」
「イリス、ギルド神殿って何か知ってる?」
エレーヌの神殿のことはアルフリーダが知っていたな。
「ギルド神殿は迷宮ボスを討伐した時に出てくるドロップ品で、重要で貴重なアイテムです。各種ギルドを開設する時に使います。」
イリスの認識は、セリーの認識と同じだ。
「エゲリア、石鹸の用途は?」
「皮膚病の治療と、重度の便秘での浣腸と、衣類の染み抜きです。余裕がある家は手洗いにも使います。旦那様のように高価な石鹸を体を洗うのにも使用することは、非常に贅沢な行いで一般的ではありません。」
「ユリア、石鹸を使わずにどうやって体を綺麗にするの?」
「んっ・・。 布でゴシゴシして垢を落とします。私はエゲイラにゴシゴシしてもらい、エゲイラは私がゴシガシしてました。」
【ここまでの確定情報】
・ミチオ君は、石鹸を作って錬金術師のジョブを入手した。
・この世界は、ミチオ君が来てから約100年後の世界である。
・錬金術師のジョブは、少なくとも一般人は存在を知らない。
・石鹸は存在するも、帝都の大商会が独占的に扱う贈答品。
・ギルド神殿やエレーヌの神殿のシステムは、100年前と同じ。
・石鹸は非常に高価で、一般には普及していない。
「・・・・・・・。」
話さなくても前に進めるが、話した方が効率的だろう。
「錬金術師とは、化学反応を利用した作業を行うと得られるジョブだ。スキルはメッキと言って、受けるダメージを一回だけ軽減してくれる。メッキは『身代わりのミサンガ』に比べれば効果は大幅に低いが、メッキを掛け直せば、何度でも使用することが出来る。」
「つまり、石鹸を作ると錬金術師のジョブが得られて、防御力を強化できるんだ。」
「ご主人様、そんないいことなのに、なんでなやんでいるの?」
フレイヤの素朴な疑問は分かり易い。
「フレイヤは賢いな。石鹸で手や体を洗って清潔にすると、病気を予防できる。石鹸の原料も迷宮から豊富に手に入るから、作ろうと思えば安価に大量生産可能だ。生活水準が上がるなら、ソマーラ村の人々に安価で売っても構わない。でもそれをやると、石鹸を売って大儲けしてる人から恨まれるだろ。面倒くさいことに巻き込まれる可能性が高いと思うんだ。」
「「「「「・・・・・・。」」」」」
「石鹸製造みたいな化学反応の知識が広まると利益も独占できなくなるから、錬金術師も、結果的に知られないジョブになったんだろうな。薬草採取士とは違って、別に錬金術師じゃなくても石鹸は作れるから、貴重なギルド神殿を使って錬金術師ギルドを作る動機は、すでに石鹸を独占販売してる人には無いよね。」
「ユリア、これらの情報も内密にすべきだろうか?」
乳房と乳首の感触をを楽しんでる手は、離さない。
「んっ、あぁ。今は内密にしなければ危ないです。ただ旦那様とユリアは自由民ですので、自力救済の権利があります。将来的に極論すれば、既得権益者が攻めてきたら返り討ちにすれば良いのです。富国強兵です。」
流石に天下布武はマズイが、富国強兵なら自力救済の範囲で普通の考え方なのかな・・。
「あの、ご主人様、石鹸の市場に参入しなければ、既得権益とバッティングせずに売れるのでは?」
アルフリーダの発想は商家だ。
「アルフリーダはすばらしい、気づかなかった。化粧品とか美容品としてベイルの市で売れば、ある程度の期間は石鹸製造がバレないかもしれない。バレた時に、事業ブランドは既得権益者に売却するとか、返り討ちにするとかの判断をすれば良いな。そこでまた時間は稼げる。」
当面の資金が稼げて十分にレベルが上がった頃には、鍛冶師が稼げるから業態転換すればいい。資金を稼ぐ→装備の充実→強くなる→さらに資金を稼ぐ TCAサイクルとか、PDCAサイクルとか、これにも名前が欲しいな。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
まずは、自家消費用に石鹸を自作してみよう。
「まず最初は、強アルカリ性の水溶液を作ります。今回は大量生産じゃないので、台所の五徳の下に溜まっている『ブランチを燃やした白い灰』を使います。灰を集めて水に溶かし、十分に掻き回します。半日ぐらい放置すると灰が下に沈み、上澄液が強アルカリ性になります。」
「旦那様、アルカリ性とは何でしょうか?」
エゲイラの素朴な質問で、林檎を知らない人にアップルパイの説明をする気持ちが分かる。
「水溶液の性質を表す言葉で、アルカリ性の反対を酸性と言います。酢とレモンとかの酸っぱいものが酸性です。アルカリ性には汚れて不要な油分を分解する働きがありますが、髪の毛に着くと流しにくいので、髪の表面を痛めてしまいます。だから石鹸で髪の毛を洗った時には、アルカリ性と反対の酸性の酢で打ち消しあって、髪の毛を守ったのです。酢のリンスをした髪は、サラサラヘアになりましたよね。」
ユリア、エゲイラ、イリス、アルフリーダ、フレイヤ、5人全員が灰を溶かした瓶をかき混ぜた。念の為、5人全員に錬金術師を取らせるつもりだ。
「灰の沈殿を待つ間、帝都の高級服屋にウサギの毛皮を売りに行きます。帰ってきた頃に強アルカリ性の上澄液が取れるので、オリーブオイルと混ぜて熱すると石鹸の素ができます。簡単だよね。」
フレイヤ以外は大人の理科実験だ。
帝都には、ユリアとエゲイラも一緒に行きたいとのこと。5人連れて帝都までワープできるMPがあるのか不安もあるが、調整すれば大丈夫だと信じたい。
春の5日