昨日に引き続き、パトロールを兼ねて小高い丘の頂上まで登ってみる。イリス・フレイヤ・エゲリアの3人も一緒だ。
「あ、あっちで、ひとがいっぱいいます。」
フレイヤが南西の方角を指差す。
「エゲリア、何か見える?」
「何も見えませんよ。全然分かんないです。」
「うーん、どうしよう。あまり村に近い所にいる盗賊は、排除しないと危ないよなぁ。とりあえず偵察するか。」
フレイヤが指を指している方向で、自分の視力で見える限界の木の幹に、ワープの出口を指定してみる。近くの木の幹と、見える限界の木の幹の間で、黒い空間が繋がった感じが分かる。入ってみて慎重に移動したつもりだったが、危なかった。出口が地面の高さが50cmぐらいあった。
「うーん、視界ギリギリの移動だと、精度が出ないなぁ。」
見通しが良く、ワープの出口に設定できる木の幹がある場所に、この移動を9回繰り返す。見える範囲が1回の移動距離の限界だが、自分の視力では1km先は絶対に見えてない。ワープ9回の総移動距離は4〜5km程度しか無いだろう。
「旦那様、なんか、街道沿いに人が大勢いますね。キャンプしてるのかなぁ?」
エゲリアが何か見えたみたいだ。地球は丸くて地平線があるから、限界まで遠くても2km以上先の地面が見えることは無い。異世界が、地球と同じ大きさの惑星だと仮定すればの話だが・・。
「フレイヤ、何か聞こえる?」
「にんげんごで、なにいってるか、わからないです。」
もう1回分、ワープで近づいてみよう。
「皆武装してます。汚いので騎士団じゃないですね。盗賊だと思います。」
「エゲリア、人数を数えられる?」
「えーと・・・、見える範囲で59人まで数えられました。盗賊団というより傭兵団に近い数です。どうしますか?」
「どうもこうも、盗賊達がキャンプしてる街道は、ソマーラの村に繋がっている街道とは異なる。村に危険が及ばなそうなら無視だよ。村から直線距離で5kmは離れているだろうし、道も繋がってない。おそらく、ソマーラの村とは違う村か町を狙って集まってるんじゃない?」
「この辺だと、ベイルぐらいしか大きな町は無いですよ。他の村だってソマーラの村と大差無く困窮してる状態ですから、村を襲うのに、こんな大人数を集めたら採算が合わないです。」
「うーん、なるほど。ベイルの町には騎士団もいるし、城壁の内部に内通者が居たって襲うには人数が少ないなぁ。あれ、明日は春の13日で、ベイルで市が立つ日じゃん。何処かの商人が大儲けを狙って、隊商を組んだんじゃないか? それで、何故かこの街道が通り道なのが盗賊にバレてるんだ。物流が寸断されて食料価格が暴騰してるから、荷馬車ごと食料物資を奪って転売する、そんな所かもしれない。」
「「・・・・・・。」」
「やるなら落武者狩りかな。商人もリスク承知で隊商を組むのだろうから、それなりの護衛戦力を用意してるでしょ。我々は、盗賊が返り討ちになった時に、追い討ちするのが一番美味しいよね。隊商の護衛は盗賊を追撃出来ないから、狩り放題だよ。うん、そうしよう。明日は早起きしなくちゃ。」
「襲われた隊商の方が負けたら、どうします?」
「何もしないよ。隙があればファイヤーボール撃ち込んで、荷馬車ごと燃やすけど。」
「えっ!」
「戦利品が無ければ盗賊集団は維持できないから、四散する可能性も出てくる。盗賊が小集団だったら、ソマーラの村に近寄って来ても返り討ちにできるよね。少なくなった獲物を争って同士討ちしてくれるのが最高だが、そこまで期待するのは贅沢かな。とにかく、荷馬車を壊しちゃえば物資は運べないよ。ファイヤーボールの射程まで、安全に近付ければの話だけどね。」
最後にワープで出た木の幹をプロットし、同じ木からワープで家に帰る。
夕焼けが綺麗だ。今晩は雲が無いな。
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夕食は、ハラミ肉の薄切りソテーと付け合わせ野菜で、肉は一人400gくらいある。貯水池で昨日採取したクレソンは、これで全部使ったそうだ。
「ユリア、盗賊の集団を見つけたよ、5kmくらい先に60人くらい。」
「また盗賊ですかぁ。こっちに来そうですか?」
「いや、勝手な読みだけど、狙いはベイルの町に向かう隊商だと思ってる。明日の早朝に襲う予定じゃないかな。」
「ご主人様、ベイルの町はますます食料価格が上がりますね。」
「そうだねアルフリーダ、村の畑にまだ野菜はあるの?」
「今は端境期なので畑の野菜は底を突いてますが、もう5〜6日ぐらいで春野菜が収穫できます。あとは山菜ぐらいでしょうか。」
「最初に収穫した野菜は、またベイルの町のレストランに持って行こう。恩は高く売れる時に売らないとね。あと、タラの芽の天麩羅は美味しいから、入手できる様だったら皆で食べようね。」
エマ・ミラ・ノラの3人が食事を始めたが、一度に肉をこんなに食べるのは、生まれて初めてだと言っている。逆にタラの芽は、去年も一昨年も茹でて食べたが、たいして美味しい物では無いらしい。まあ油も高いからなぁ。天麩羅で食べると感動する、大人の味覚だぞ。
「ご主人様、明朝は隊商が襲われるのを見に行きますか?」
エゲリアは殺る気満々だな。うちの女の子達は、基本的に皆イケイケだ。
「そうだね、午前3時ぐらいに起きて行ってみよう。アルフリーダごめんね、明日はお弁当も欲しいんだ。」
「それなら、今からアルフリーダの身体を使って抜いて下さい。今なら気絶しちゃっても、夜中には起きられますからお弁当作れますね。」
エマ・ミラ・ノラの3人が顔を見合わせている。が、言葉は何もを発しない。
アルフリーダから『ほむらの銅剣』を借りて、シャワータンクの水をお湯にする。シャワー室の水瓶の水もお湯に変えとこう。アルフリーダが準備をしてやって来て、目の前で服を脱いで全裸になり、自分の服も脱がしてくれて、一緒に温水シャワーを浴びる。
エマ・ミラ・ノラの3人はまだリビングに居て、これから食事の後片付けだけど、良いのかな? とも思ったが、アルフリーダを堪能して、盗賊戦の前にスッキリできた。
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夜中の3時に、アルフリーダが起こしてくれた。
ベッドルームの燭台で、ロウソクに火が灯っているから、夜中だが十分に見える。
ユリア、エゲリア、イリス、フレイヤも目が覚めたようだ。シャワールームの水瓶に給水し、お湯を作って顔と下半身を洗う。アルフリーダが朝立ちに気づいて、チャチャっと手で抜いてから洗ってくれた。アルフリーダは名器な上に、彼女の手コキは、膣以上に早く出せるくらい上手だ。もう手放せないな。
リビングのテーブルには、お茶とビスケットの様な焼き物が用意されていた。
アルフリーダによると、パームオイルとコボルトスクロースとコボルトフラワーを一緒に錬ると、ライ麦でも美味しいビスケットになると言う。むしろライ麦だと、これ以外は美味しくならないとまで言ってる。まあそうかもな、ドイツから東欧のライ麦で本気に作ったパンやクッキーって、硬くてビックリするからなぁ。
薄切りパンのサンドイッチと、ステンレス水筒にお茶も用意してくれた。これはエゲリアがリュックに入れると言っている。
対人戦用の設定に変更し、戦闘メンバー4人全員に錬金術師のメッキも掛ける。
下弦の月が南中して雲も無いので、夜明け前の散歩には絶好だ。さあ行こう!
【マモル】皮の帽子・鎧・手袋
武器 :デュランダル(63)
足装備:駿馬の硬革靴(移動力増強)
アクセサリー:決意の指輪(3)
キャラクター再設定(1) 6ジョブ(31)
詠唱省略(3) 鑑定(1) ワープ(1)
MP回復速度三倍(7) パーティ項目解除(1)
合計111
探索者Lv13:体力(小上昇)
英雄Lv6:腕力HP体力MP知力精神器用敏捷(中上昇)
魔法使いLv13:知力(小上昇) MP(微上昇)
錬金術師Lv3:知力(小上昇) 器用(微上昇)
色魔Lv5:精神(中上昇) 知力(小上昇) MP(小上昇)
僧侶LV3:精神(小上昇) MP(微上昇)
【イリス】皮の帽子 皮の鎧
武器 :槌(空き)
腕装備:鋼鉄のガントレット(空き)(空き)(空き)
足装備:皮のサイハイブーツ(空き)
鍛冶師Lv8:腕力(中上昇) 体力(小上昇)
【フレイヤ】
皮装備(帽子・鎧・手袋) 皮のサイハイブーツ
武器 :ダガー(空き)
剣士Lv8:腕力(小上昇) HP(微上昇)
【エゲリア】
皮装備(帽子・鎧・手袋) 皮のサイハイブーツ
武器 :鉄の剣
淫乱Lv5:精神(中上昇) 知力(小上昇) MP(小上昇)
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最後にワープした木の幹に、再びワープの出口を作った。
月明かりが出てるので、歩く分には歩けるが遠くは見えない。盗賊が焚き火をしてくれてたので助かった。火は7つあるな。
「エゲリアは見えるの?」
「流石に、満月じゃない月明かりでは無理です。焚き火の周囲の人影ぐらいまでですね。」
「フレイヤ、人の気配が一番多いのは、どの焚き火?」
「まんなかのひです、ぜんぜんおおいです。」
フレイヤが、指を差し場所を教えてくれる。
「じゃあそこが盗賊の主力で、街道を石か何かで塞いで、隊商を止めて襲うんだろうな。そして突破された時の予備に、ベイルの町側に厚く人を配置するだろう。ベイルの町と反対側の隊商が来る方向は、盗賊が少ないハズだ。馬車は、戦闘中に向きを変えられないしね。」
右側の盗賊の配置が薄いと思われる側に移動しつつ、ワープに使えそうな立木に目星を付ける。一番右端の盗賊グループの焚き火の近い立木まで移動して、様子を窺うことにする。
「エゲリア、日が昇ったら、この距離で見えそう?」
「見えると思います。うーん、5人じゃないですかね。」
「フレイヤ、は分かる?」
「ごにんぐらいです。」
「そうか、偵察はこれで十分だ。少し離れて日の出を待とう。フレイヤは、盗賊が隊商が右側から来るのに気づいたら教えてね。」
盗賊の主力が隊商を襲って注意が隊商に集中した後、端っこの盗賊5人を狩って人数を削っておこう。
「ばしゃがうごいてます。さんだいです。」
兎人族のフレイヤが感じる、早期警戒装置が有ると無しじゃ話にならないな。
「イリス、お弁当を食べよう。あの木の陰で大丈夫かな?」
「そうですね、あそこなら日が昇っても盗賊からは見えないでしょう。」
3人とも楽しそうだ。
地面は夜露に濡れてるので、持ってきたバスタオルを敷いて固まって座る。右手にエゲリア、左手にフレイヤ、膝の上にイリスだ。薄切りパンには、野菜と焼いたハラミ肉が挟んであった。サンドイッチを食べて、ステンレス水筒の熱いお茶を皆で飲む。寒いからエゲリアとフレイヤの肩を抱き寄せる。ドワーフのイリスは体温が高いから助かるな。あったかい。
朝日が昇ってきた。
「ご主人様、ばしゃがきました。」
フレイヤが指を差す先は立木だが、最後に見た盗賊の焚き火の方向だ。
「もうすぐ、盗賊と隊商の戦闘が始まるだろう。ワーワー言い始めたら、ワープで盗賊の後ろに出る。オーバーホエルミングで動いて、盗賊の後ろから切りつける。イリスとフレイヤは、倒した盗賊の武器を拾ってくれ。時間が無いので剥ぎ取りはしない。エゲリアは周辺警戒が役目だ。背中を守ってくれ。街道の右端にいる盗賊のグループを狩ったら、最初にワープして出た立木までワープで撤退する。」
3人は無言で頷く。
抱き合って待機してから10分ぐらい経った。
左側からワーワー言う声が聞こえて来る。
「始まったようだね。予定通り、盗賊を削りに行こうか。」
立ち上がって、敷いていたバスタオルを畳みリュックに入れる。ステンレス水筒はエゲリアが持つそうだ。ゴミも残さず回収し、痕跡を最小限に消す。ワープで、一番右端の盗賊グループの焚き火の近い立木から出ると、街道に近い位置に大きな立木が見えた。ラッキーだ。
大きな立木の幹からワープで出る。
盗賊は全員、左側の隊商との戦闘の方を向いていて、周辺警戒をしていない。無言で、マモル←フレイヤ←エゲリア←イリスの順に一列で走り、盗賊の後ろから駆け寄る。意図した訳でなく、単純に走破スピードの違いで自然と一列の単縦陣になった。むろん自分が先頭を走っているのは、駿馬の硬革靴のおかげだ。
鑑定!
見える範囲には盗賊しかいない。なら、問答無用で狩って問題無いな。
気付かれず、いちばん後ろにいる盗賊の背後を取れた。
オーバーホエルミング!
デュランダルで盗賊の首筋を3人刺せた所で、効果時間が切れる。
20m弱ぐらい先から2人、盗賊がこちらに気づいて向かってくる。
背後でフレイヤ、エゲリア、イリスが追い付いた気配を感じる。
一呼吸おいて、再び、オーバーホエルミング!
正面から一人を斬り、返す刀でもう一人を刺せた。左側で隊商と戦っている集団まで50mぐらいある。気付かれてないかも、と観察したところでオーバーホエルミング効果時間が切れる。
手早くキャラクター再設定でデュランダルを収納し、落ちている盗賊の剣を拾う。もう一つはフレイヤが拾った。最初の3人の盗賊の武器は、イリスがアイテムボックスに回収している。
「撤退だ!」
再び、出て来た大きな立木まで走る。追い抜かさないよう配慮して走る。走りながらワープで空間を繋げる。最後に、ソマーラの村からワープした木の幹から、再び出る。襲撃成功だ!
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「皆、お疲れ。怪我は無いかな。」
「ええと、怪我する訳ありません。あれがご主人様の戦術なんですね。」
「うん『ヒットアンドウェイ』と言って、故郷では割と知られた戦い方だ。3分以上同じ場所に留まる奴は、死ぬって言うよ。」
「あれじゃ襲われた方は、状況を理解する前に死んでます。」
「そうだね、死んだ事にも気付かれないで倒すのが理想とされてる。こういう小さな襲撃を繰り返して大軍を翻弄するのを『ゲリラ戦』と言って、相手より戦力が少ない時に使う定番の戦略かな。あ、いつものことだけど、内密にね。」
「「はい、ご主人様。」」
「当然です、旦那様。」
「この後の行動は、様子を見て決める。フレイヤ、隊商と盗賊はまだ戦ってる?」
「ワーワーいってます。きんぞくのおとがガンガンします。」
「そうかぁ。あとイリス、戦利品の武器を並べてくれる。」
鑑定!
鋼鉄の剣
鉄の剣
鉄の剣
銅の剣(空き)
銅の剣
「盗賊なのに良い武器を持ってたね。鋼鉄の剣が1本あるし、銅の剣1本には(空き)がある。イリス、アイテムボックスに全部しまっといて。良い装備持ってる盗賊だから、もう少し狩りたいな。」
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木の陰に隠れて20分ぐらい休憩したが、街道での戦闘は終わってない。
「エゲリア、イリス、フレイヤ、戦ってる人数が確認出来る距離まで近づいてみよう。危なかったら速攻で逃げるから、離れないでね。」
3人が無言で頷く。
目の前は森や茂みが無い原野なので、基本的に隠れる場所が無い。街道の左右を俯瞰すると、襲撃ポイントは周囲より少し小高い場所だ。蛸壺のような穴を地面に掘って隠れれば、明け方に街道を進む馬車からは見えない仕組みか。
エゲリアを先頭に、早足で近づく。どっちみち弓矢や鉄砲が無い世界で、遠距離攻撃は魔法とせいぜい投石ぐらいだ。発見されても逃げる時間は十分ある。ワープポイントがある立木から300mぐらい前進した、僅かに地面が低い場所で、エゲリアが腰を屈めた。
「隊商側で戦っているのは5人で、盗賊側は40人ぐらい残っていますね。」
当初、盗賊は60人いたと仮定して、うちのパーティで5人削った。隊商の護衛で15人倒したのか。隊商側も頑張ったけど、残り5人じゃ全滅は時間の問題だ。もう少し削るか。
「盗賊を攻撃する。隊商側で戦っている人も、援軍が来たとなれば士気が上がり、もう少し戦えるだろう。あと、ファイヤーボールの射程の限界を知る実験もしよう。横隊で姿を見せて前進する。盗賊から何人か向かって来たら、ワープポイントがある立木の方に逃げて、盗賊の本体から引き剥がす。盗賊の人数をもう少し削れるんじゃないかな。」
3人が無言で頷いたので、立ち上がり、普通に歩いて前進する。自分の視力じゃ豆粒ぐらいにしか見えないが、エゲリアが見えてるんだから、目の良い盗賊からは見えてる前提で考える。
「旦那様、7人、こっちにやってきます。」
鑑定!
うーん、盗賊としか出ない。距離があるせいか、Lvが表示されない。
キャラクター再設定!
デュランダルとワンドを交換する。
ファイヤーボール!
単体攻撃の照準が出ないなぁ・・・・、あ、照準が出た。30mぐらいが射程か。
盗賊に向けファイヤーボールを発射、先頭の一人目が倒れて、残り6人。
打ち合わせ通り、ワープポイントがある立木の方に全員で逃げる。残り6人の盗賊が、こちらに向かって走り出り出す。が、相対距離は少しずつしか縮まらない。
逃げながらファイヤーボール! 二人目が倒れて、残り5人。
「逃げるの中止、息を整えて俺の後ろに固まれ。盗賊と正対する。」
盗賊が全力疾走で迫ってくる。魔法使いがいるなら、呪文の詠唱が終わる前に距離を詰めたいよね。
ファイヤーウォール!
戦闘を走っていた2人が炎の壁に突っ込んだ、残り3人。
キャラクター再設定!
ワンドをデュランダルに交換する。
オーバーホエルミング!
最初の襲撃でも思ったが、『駿馬の硬革靴』の効果とオーバーホエルミングの効果は、重なってる気がする。今度は効果を意識して確認する。やはり、オーバーホエルミングのゆっくりした時間の流れの中でも、敵に向かい『駿馬の硬革靴』で加速している。全く別々の理屈(装備品のスキルと魔法)だから、効果は重複するのかな。
盗賊3人を叩き斬るのは、難しくなかった。
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「エゲリア、イリス、フレイヤ、今倒した盗賊から『剥ぎ取り』をしてくれ。」
ファイヤーウォールに自分から突っ込んだ盗賊2人は、息絶えている。死んだ盗賊の剣2本を拾い、アイテムボックスに収納する。
逃げながらファイヤーボールを撃って2番目に倒した盗賊は、火傷で重傷だが死んでなかった。デュランダルで止めを刺し、武器をアイテムボックスに収納する。
最初にファイヤーボールを当てた盗賊が倒れている位置は、ちょっと盗賊本隊に近すぎる。3〜4人がこっちを見ているのが視認できるが、近づいては来ない。エゲイラを手招きで呼ぶ。
「隊商側には、まだ戦ってる人いる?」
「まだ3人、生き残っていますけど、肩で息してますね。ヘロヘロです。」
「じゃあ、もう少し頑張ってもらおう。エゲイラは、こいつの剥ぎ取りやっといて。」
デュランダルを手にしたまま、一人でゆっくり歩いて進む。こちらを見ている盗賊が6人に増えた。
今少し歩き、最初にファイヤーボールを当てた盗賊にデュランダルを突き刺し、左手を切り落とす。盗賊の武器を拾ってアイテムボックスに収納し、180度、踵(きびす)を返す。盗賊から切り落とした左手は持ったままだ。
明らかに誘ってる状態なら、向こうから襲って来ない可能性が高いだろう。そのまま歩いてエゲイラと合流する。
「旦那様ぁ、ヒヤヒヤですよ。なんで盗賊は向かって来なかったんですか?」
「盗賊の目的は略奪だろ。強い奴と戦ったら損じゃん。7人返り討ちにしたから、強そうに見えたんだと思うよ。蛸壺に仲間を入れといて、我々が突っ込んで来たのを待ち伏せる手だったかもね。」
切り取った盗賊の左手を渡し、剥ぎ取り装備品をアイテムボックスに収納する。
「隊商側で戦っていた人、どんな感じ?」
「1人切られて、あと2人生き残ってます。」
「分かった。荷馬車を焼くのは諦めて撤退する。」
もうエゲイラは『剥ぎ取り』のベテランだ。盗賊のズボンやシャツは、ビリビリに切り刻まれてチェックされている。左手を2本持っても特に何とも思わないらしい。
イリスとフレイヤの所まで戻ると、彼女達は盗賊5人分の剥ぎ取りを終えていた。エゲイラが左手2本を地面に置き、全部で7本だ。
「エゲイラ、まだこっちを見てる盗賊はいる?」
「なんか増えましたね。7〜8人がこっち見てます。とうとう隊商側が全滅したみたいですね。誰も立っていません。」
「うをーって、うれしそうなこえがします。あ、インテリジェンスカードです!」
時間が経ったので、盗賊の左手からインテリジェンスカードが出て来てる。フレイヤが嬉しそうに、つくしを摘む様に回収していく。左手はこのまま放置していいだろう。
ソマーラの村から最初にワープで出た木の幹に、再びワープポイントを作り、帰宅する。
インテリジェンスカードは、2〜3日間を置いてから換金するかな。全滅した隊商の報復で、商会が褒賞金を上乗せするかもしれないし。
春の13日 朝