「ご主人様〜、どうしよう、死なない?」
「フレイヤ、大丈夫、死にはしないよ。それより、他に人がいないか、鋭敏で調べて。人がいたら、戦利品は放り出して逃げるよ。」
剣士と僧侶を入れ替える。BP(31)のフラガラッハを解放して、MP回復速度十倍にしよう。出血が酷いな。
手当! 手当! 手当! 手当! 手当!
「イリス、印籠に入ってる滋養丸、飲ませて。手当だけじゃ足りない感じだわ。」
口移しで、滋養丸を3個飲ませてもらう。血が止まるまで、もう少し横になってるぞ。戦利品の鹵獲は任せた。
「ご主人様、この階層には、もう誰もいない。魔物と私達だけだよ。」
「よし、イリス・フレイヤ、急いで凶賊Lv21から剥ぎ取りだ。全部むしり取ってやれ。終わったら、床に転がってる装備品を集めて。もう少ししたら動ける様になるから。」
手当! 手当! 手当! 手当! 手当!
よし、動けるかな。しかし、3人掛かりで凶賊Lv21がギリギリかぁ。これじゃ、聖騎士Lv49 とか、魔導士Lv51とか、百獣王Lv34とか、現状では確実に勝てないわ。ザビル辺境伯家とは、絶対に敵対しちゃ駄目だ。細心の注意を払わなきゃ。
手当! 手当! 手当! 手当! 手当!
自分の印籠に入ってる、滋養丸と強壮丸も飲んどくか。MPを空にする訳にもいかないからな。
よし、立てる。が、なんかフラフラする。回復魔法でHPを回復しても、物理的に失った血液は回復しないのか?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ご主人様、剥ぎ取り終了しましたが、こいつ、盗賊なのに指輪してましたよ。ひょっとして固定じゃないでしょうか?」
鑑定!
アクセサリー:いかりの指輪(攻撃力五倍)(空き)
「うわぁ、よく勝てたな。『いかりの指輪』だよ。物理攻撃力五倍が付いてる。こんなの、固定だろうな。いや、『いかりの指輪』を装備してたから、『身代わりのミサンガ』が無かったのか。逆に助かったのかも知れないね。」
「攻撃力五倍って、デュランダルや、フラガラッハと同じですよね。そんなアイテム、ご主人様以外にも持ってる人が存在するんですね。イリスの鍛冶師じゃ、作れる気がしません。」
「(空き)も一つ付いているから、ダメージ逓増が付けられる。『いかりの指輪』は、イリスの装備にしよう。」
「ええ〜、物理攻撃力五倍なんて超レア装備品ですから、ご主人様が使いましょうよ。イリスには勿体無いです。」
「イリスは、デュランダルやフラガラッハを出せないじゃん。『いかりの指輪』で槌の攻撃力を強化しようよ。ウチの一番奴隷だしさ。恐らくイリスの槌は、史上最強の攻撃力になるんじゃない。この部分では、セリーを抜いたかもしれないね。」
イリスとフレイヤが、散乱してる装備品を集め、山積みになって来てる。おいおい、これ何人分なんだ? 山賊やら冒険者やらのリュックも集まってる。こっちはアイテムボックスに入らないから、何往復かしなきゃ運べない。
「ご主人様、ミサンガの切れたのなんて、いらないよね。」
フレイヤが、切れたミサンガ6本を見つけて来た。
「うん、いらない。しかし、パーティ全員が『身代わりのミサンガ』を持ってても、凶賊Lv21には敵わないんだ。『身代わりのミサンガ』は、不意打ちで死なないのが最大のメリットで、根本的な戦力は底上げしないからなぁ。まあウチは、闘兎のフレイヤとアルフリーダがいるから、不意打ちは受けないけどね。不意打ちは、する方になろうね。」
靴だけを、装備品の山からアイテムボックスに突っ込んでいって数えると、各種合わせて23足あった。4パーティ分の装備品かぁ。明らかに破損している物以外、とりあえず回収して、細かくはソマーラの村に帰ってからだ。
それじゃ、回収漏れが無いよう、最後に小部屋中をチェックして帰ろう。
鑑定! 鑑定! 鑑定! 鑑定!
うん、忘れ物は無いな。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
帰宅すると、庭に、鹵獲した装備品を全部出す。使うにせよ武器庫に入れるにせよ、綺麗に整備してからの話だ。リュックも山積みになっていて、こっちは、まだ開けてもいない。
フレイヤに、村事務所からアルフリーダ達を呼んでもらう。闘兎同士だと、近距離なら常時接続状態だから便利だな。
「え〜、ご主人様、こんなに狩ったんですか。それに、全身血塗れですよ。三人とも、服を脱いで下さい。直ぐ洗わないと、血が落ちなくなります。」
「そうだね、アルフリーダ。最初に戦った盗賊が5人と、小部屋から回収したのが23人分、合計28人分の鹵獲品があると思うから、後は宜しくね。あと、お腹が減ったから、軽く食べる物を用意しといて。じゃあイリス、フレイヤ、返り血を流しに行こう。髪の毛も石鹸で洗わないと。」
返り血ってとこは、少し嘘をついてる。2〜3割は自分の血だ。食べないと、血が足りない感じだし。
先にシャワー室から出ると、ノラがバスタオルを持って待っていた。全身を拭いてもらい、新しい服に着替え、リビングに行く。多めに水を飲んで、水分補給して、果物から食べよう。アルフリーダが、サンドイッチを作ってるな。
明らかに異常事態なので、皆に話さなきゃならないのだが、状況を完全に把握出来ていない。本音としては、喋るのも面倒だ。
「ご主人様は、大変お疲れですから、アルフリーダさんには、イリスから説明しときます。フレイヤは、ご主人様のお世話をお願い。鹵獲品の整理も、イリスの方で手配しときます。」
うちの1番奴隷が、出来る女でよかったぁ。さて、日が落ちるまで時間があるし、少し休んだら商人ギルドに行ってみるか。情報が、もっと欲しいんだよ。おや、サンドイッチが完成したようだ。片手で食べられるから、フレイヤにズボンを脱いでもらって、太腿の感触も堪能しよう。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
庭で、ソフィアとエゲリアとミラの三人が、鹵獲品の整理をしている。
え、スタッフが2本もある。どちらも(空き)スロットは無いが、なんで? スタッフを装備できるくらいの魔法使いが、2人いたってことか。十中八九、別パーティだろうな。つまり・・、我々と同じ様に考えて、ベイルの迷宮に盗賊狩りに来たものの、反対に返り討ちにあったパーティが二組って事かな。凶賊Lv21が6階層にいるとか、そりゃ計算外だよね。
冒険者側6+6=12人(内、魔法使い2人)
盗賊側6+5=11人(凶賊Lv21を含む)
合流しようと後から来た盗賊、5人
でも、迷宮なんて狭い場所で、23人が乱戦なんて物理空間的に無理だろ。盗賊側11人が、6人パーティの冒険者と2連チャンで戦ったなら、まだ想像できる。割と強い冒険者だったんだろうな。それなら、スタッフを持ってたのも解る気がする。
防具はほとんどが革装備で、硬革装備は2〜3人分あった。(空き)スロットが2個付いた硬皮の手袋は、長く使えるかもしれない。
硬革の鎧(空き)*1 →エゲリア
硬革の鎧*2 →イリス・フレイヤ
硬革の帽子(空き)*1 →エゲリア
硬革の帽子*1 →ユリア
硬革の手袋(空き)(空き)*1 →ソフィア
硬革の手袋*2 →ユリア・フレイヤ
硬革の靴*2 →物置き
武器は、スタッフ2本の収穫の他は、鋼鉄か鉄の装備品で、(空き)スロット2個付きのレイピアが1本だけあった。まあまあの鹵獲品だ。村の武器庫も充実して来るし、スタッフは、ダマスカスステッキと使い分け出来る。魔法の最大火力が少し強くなるな。
レイピア(空き)(空き) *1 →ミラ
スタッフ*2 →1本はマモル、1本売却?
先にスタッフだけ綺麗に洗い、2本とも、イリスのアイテムボックスに入れてもらった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
今日はもう迷宮には入らず、帝都の商人ギルドに行く。
イリスとアルフリーダを伴い、情報収集とオークションのチェックをする。最初にオークションの下見室を回るが、(空き)スロットが大量に付いた装備品は出品されてなかった。一回りした後、商人ギルドのロビーの長椅子に座って、アルフリーダに鋭敏を発動してもらう。兎耳のピクピクは、癒されるな。
「ご主人様、皆『勅命』がどうとか言ってますね。ドホナの迷宮の件みたいです。アレックスは誰かと話してますが、もう雑談ですので、少し待ってれば終わると思いますよ。」
ロビーの長椅子に座ってるだけで、アルフリーダの耳には勝手に情報が入って来る。美味しいけど、毎日来る余裕は無いんだよなぁ。
アレックスが、来客を”お見送り”してるな。さて、行こうか。
「あ、マモル様、丁度よく談話室が取ってあります。お茶だけ頼んで来ますね。」
商人ギルドの受付カウンターに走って行き、受付の女性に、何やら言ってるな。
「ご主人様、あの受付の女性、アレックスの口調からして彼女ですね。大店商家の若なら政略結婚ですから、職場恋愛やってるアレックスは、庶民の出身でしょう。それにしても、周囲にバレちゃ駄目でしょ。どうします、取引関係を見直しますか?」
「女に免疫の無い奴は、すぐハニートラップに引っ掛かるからなぁ。商人ギルドの受付嬢って、どっかの紐付きの可能性が高いよね。敢えて、そんな女に手を出すって、駄目駄目だよなぁ。まあ、もう少し様子を見るけど、アルフリーダも気にしといてね。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お茶を運んで来たのは、アレックスの彼女と思われる受付の女性だった。ポニーテールの人間族だ。
「マモル様、お預かりした『身代わりのミサンガ』の件ですが、相対取引で、7万ナール+『コボルトのスキル結晶』4個になりました。私への手数料も、相手から取りますので不要です。」
「素晴らしいな、アレックス殿。これまでの売却額を、実質的に上回ってる。でも実質9万ナール弱まで上がるとは、流石にバブルも行き過ぎだな。ところで、ドホナに迷宮が出た件、その後の情報はあるかい?」
「ええ、事前情報通りの勅命が、本日発布されました。ドホナの町に騎士団と冒険者が集結するので、周辺の盗賊は移動するでしょう。」
「いや待って、騎士団は分かるとして、どうして冒険者も集まるの?」
「勅命を受けたドホナ・シュポワール・ベイルの騎士団が、傘下のギルド経由で、冒険者に『要請』を掛けますからね。ほとんどの冒険者は貧乏ですから、迷宮探索の露払いと分かっていても、行きますよ。」
「うん? ドホナ・シュポワール・ベイルの騎士団は、貧乏だからババ引いて使い潰されてるんしょ。冒険者に使うような資金なんて、そもそも出て来ないよね。」
「え、マモル様、何言ってるんですか? 大した資金なんて必要無いですよ。冒険者は、自腹の装備品で活動して、結構な割合で死んじゃうんですから。」
あ、分かった。各階層の探索終了宣言を出すまで、結構な数の冒険者が魔物部屋に飲み込まれるって事か。
探索が進んでいる最上階の階層だけ、迷宮の入り口から無料で連れて行ってくれる。普段入ってる階層までなら、連れて行ってもらうよな。最初に階層突破すると、10階層なら銀貨10枚=1,000ナールだっけ。こんなの、少しレートを弄れば、冒険者の数なんてコントロール可能だもん。ある程度の冒険者を入れて、後から騎士団を投入すれば、比較的安全に探索できる。死んだ冒険者の装備品も手に入るだろう。良く出来てる仕組みかも。
「なるほど、そう言えばそうだね。勉強になった。盗賊の情報は、何かある?」
「帝都の南の流通と村々は、盗賊と騎士団に散々荒らされましたから、もう略奪する物が残ってないんです。騎士団不在のシュポワールとベイルの町に、盗賊達が移動してくると、商人ギルドでは噂されてますね。より南にある、シュポワールの方が盗賊が集まり易いと思います。」
と、皆が思うと考えたんだろう。凶賊Lv21の盗賊団は、逆張りでベイルの町まで来たんだな。逆張りする様な奴でも、あんなに強いとはね。困ったもんだな。
「うん、アレックス殿の情報は参考になる。これからもよろしく頼むよ。で、オークションは、コボルト・サイクロプス・スライムのスキル結晶を、同じ値段で買い継続して。あと『スタッフ』の売りを1本、出品したいんだけど・・。イリス、アイテムボックスから出して、アレックス殿に渡して。」
鹵獲した、”ただ”のスタップ”だ。(空き)スロットは無いし、『スタッフ』が2本あってもしょうがない。
「う〜ん、タイミングが悪いですね。すでに明日の出品に『スタッフ』が入ってるので、少し時間を置いた方が良いです。5日後、春の36日の出品でいかがでしょう?」
「そうか。じゃあ、それでお願いするよ。次は5日後だね。アルフリーダ、精算作業してくれる。」
書類手続きは、アレックスとアルフリーダとに丸投げだ。金貨7枚と『コボルトのスキル結晶』4個を受け取り、談話室を後にする。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ご主人様、今日は疲れましたね。」
「そうだね、イリス。ヤバかったよなぁ。皆には内緒だけど、横腹に穴が空いて、結構流血したんだ。故郷では、血が足りない時はレバーを食べるんだけど、アルフリーダ、この辺でもレバー売ってるかな?」
「帝都ですから、スーク(常設市場)なら焼き鳥屋があると思います。あの、凶賊Lv21ですが、戦わず”手打ち”にして途中で撤退してたら、どうなったんですか。」
「普通に逃げられたよ、アルフリーダ。でも、凶賊Lv21がダメージ負って疲労してた状態で戦ったから、なんとか勝てたんだ。近所に凶賊なんて強いのが居たら、安心して寝れないじゃん。凶賊Lv21が万全の状態だったら、勝てる確率は相当に低かっただろうね。今考えても、戦うのが正解だったと思うよ。」
商人ギルドがらスークまで、ワープで移動する。
アルフリーダの予想通り、フードコートに焼き鳥屋が入ってた。養鶏業は存在するみたいだが、親鳥だったら硬くて嫌だな。
「イリス、アルフリーダ、味見してから買おうか。肉と心臓とレバー、一本ずつお願い。あとエールも欲しいな。」
焼き鳥は”塩”だったが、臭くなく、硬くも無く、美味だ。
「ご主人様、これ美味しいですね。全種類、思いきって買って帰りませんか? ネギ間、軟骨、つくね、砂肝、なんてのもありますね。」
「お店の人に焼いてもらって、アルフリーダ。イリスは、焼き鳥は食べられそう?」
「ドワーフは鶏を飼わないので、焼き鳥って初めて食べました。ドワーフの水が合いそうな食べ物ですよね。」
さて、本日の業務は終了だ。
今日は『身代わりのミサンガ』の売却で、金貨の他に現物充当分として『コボルトのスキル結晶』を4個入手した。まだ在庫が2個あるから、全部で6個も溜まった。この用途も考えなくちゃ。
残りの焼き鳥が、焼き上がったようだ。焼き鳥屋はラッキーだったな。メチャクチャな量が売れてるぞ。
アルフリーダが焼き鳥の入った箱を受け取って、家路につく。
夜伽は業務じゃないけど、今晩は無しだな。イリスに言っておけば、良きに計らってくれるだろう。コンドームを試してみるのも、明日以降だ。一番奴隷のイリスに預けておこう。今日は疲れた。焼き鳥を食べて、さっさとベッドで寝たい。
「ご主人様、お疲れの様ですし、今日はもう休みましょう。ソフィアが抱き枕になります。」
流石に、ソフィアは、伯爵家当主の一番奴隷だっただけある。気付いたのかぁ。
「ありがとう、ソフィア。悪いけどお願いするよ。」
春の31日 夕方