快晴で、夜中で月明かりと星明かりは出ているが、村の入り口で篝火を焚いている。
今日は、ベイルの定期市に初めて野菜を売りに行く日だ。村人を総動員して用意した野菜を、荷馬車2台に積み込んでいる。しかし、いくら農家の朝は早いと言っても、深夜2時の作業。ユリアも、よく村人を動員出来たな。
「村のみんな、有難う、ベイルの町で野菜を売って物資を仕入れてくるから、楽しみに待ってて。行ってくるわ!」
ソマーラの村から荷馬車で3時間、ベイルの町には5日おきに定期市が立つ。レストランの奥さんの宣伝が成功していれば、途中で荷を奪いに盗賊が襲ってくれる筈で、返り討ちにするのが予定だ。
「ユリア、悪阻(つわり)は大丈夫なの? 留守番の方が良いんじゃない?」
「旦那様、何言ってるんですか。ソマーラの村の女は、悪阻(つわり)ぐらいじゃ仕事を休みません。ユリアも一緒に行きますからね!」
昨日の午後の迷宮もユリアはお休みして、代わりにノラが入り、ソマーラ22階層を突破した。ユリアが留守番を納得しないこともあって、結局ベイルには、11人全員で行くことになる。盗賊との戦闘だけならパーティメンバー6人で行くのだが、荷馬車があるので、どうしても人手がいる。ユリア・アルフリーダ・エマ・ミラは、ヴァニーユの探索者でパーティ編成するが、出来るだけ戦闘には参加させないで済ませたい。
荷馬車1:マモル、フレイヤ、ヴァニーユ、ユリア、エゲリア
荷馬車2:アルフリーダ、エマ、ミラ、ノラ
ロバ1:イリス
ロバ2:ソフィア
フレイヤとヴァニーユが先頭の荷馬車で索敵して、イリスとソフィアは、ロバの背に乗り最後尾を守っている。
「ヴァニーユ、猫人族って、どのくらい夜目が利くの?」
「今晩くらい月明かりが出ていれば、昼間と大して変わらないですね。むしろ遠くの灯りは、夜の方が目立ちます。街道のずーっと向こうで焚き火の火が見えますから、あれ、盗賊かもしれませんね。」
「え、何にも見えない。フレイヤは何か感じる?」
「虫の音しか聞こえないよ。全然わからない。」
「えーと、兎人族は解りませんが、人間族や狼人族は夜目が利かないから、しょうがないですよ。エステル男爵家のお屋敷でも、夜の警備は、猫人族の奴隷メイドの仕事でした。刺客や泥棒って、人間族なのに、何故か夜に来るんですよね。こちらは見えてるの、知らないんでしょうか?」
「ヴァニーユは、夜戦に向いてそうだね。じゃあ今日は、ヴァニーユとフレイヤの二人が、横槍を入れる役にしようか。正面は、自分とイリス・ソフィア・エゲリア・ノラの5人で突撃するよ。ユリア・アルフリーダ・エマ・ミラの4人は、後ろから詰めてもらおう。ところでノラ、昨晩入れた時も痛そうだったけど、走れそう?」
「はい、大丈夫です。今も旦那様の硬いのが股に入ってる感じがしますけど、死ぬほど痛かった処女の時に比べれば、2回目だし、痛みは慣れました。今日は走れます!」
「ノラ、旦那様のは凄く太いから、最初の頃は股に入ってる感じが抜けないの。今だけの感覚だから楽しみなさい。エゲリアもユリアも、その感覚は分かるわ。旦那様、痛いのも思い出なんですから、”手当て”を掛けちゃ駄目ですからね。」
ちなみに、竜革は4枚集まり、竜革のサイハイブーツが1足作れた。(空き)スロットは3つも付いてる。ただ、イリスはMP切れを起こしたので、竜革装備を作るには鍛冶師のレベルがギリギリなんだろう。今回のイリスの鍛冶には、フレイヤから借りたボディークリップに加え、ダルマティカを着せ、ひもろぎの聖銀ミサンガも付けさせた。これが効いたと思いたいが、検証には莫大なコストが必要だから、思うとしか言えないのが現状だ。
ユリアは産休に入るし、竜革のサイハイブーツはノラの装備品にする。
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村を出て1時間ほどで、フレイヤとアルフリーダが「話し声が聞こえる」と言い出した。
荷馬車を止め、小休止を取ることにする。11人で果物を食べながら、作戦会議だ。今のうちに7ジョブに変更し、魔法使い・英雄・神官・戦士・剣士・農夫・盗賊のジョブに付け替えておく。パーティ編成は、ソフィアの探索者でやる。
「ご主人様、ほぼ間違い無く盗賊ですね。『女だらけの商人だから楽しみだ』って言ってます。『売り飛ばす前に回して味見しよう』ですって。奥さんが宣伝したの、伝わってますね。お化粧しとけば良かったかしら?」
「う〜ん、イリスは油断しました。ヒラヒラのスカートを履いてくれば良かったです。」
「真っ赤なルージュならソフィアが持ってるわ。どうせ夜だし、口紅だけ塗って狩りに行きましょうよ。」
こいつら、既に楽勝だと思っていやがる。先に発見してるから、圧倒的に有利なのは確かだけどさ。さて、どうしよう?
「ご主人様、ちょっと偵察に行ってくるね。ヴァニーユ、一緒に行こ。ノラ、メッキ掛けて。」
偵察とか言っても、隙あらば、二人で襲撃しかねないだろ。ヴァニーユは妊娠してるけど、行くんだろうな。BP3を使って出したボーナス装備の『決意の指輪』を、ヴァニーユに装備させる。”対人強化”と”攻撃力上昇”が付いたアクセサリーだから、対人戦には極めて有用だ。フレイヤとヴァニーユが街道を走っていくが、月明かり程度だと、程なく姿を見失うな。
が、10分ほどで、アルフリーダがフレイヤの声を聞き取った。
「ご主人様、『全部で17人だけど見張りも立ててない』って、フレイヤが言ってます。『これから林に入って盗賊の背後に回る』ですって。」
「あ〜、盗賊の方々、自分達が襲う方だと思って舐めてるね。じゃあ、我々から襲撃することにしよう。イリス・ソフィア・エゲリア・ノラ、静かに歩いて接近するよ。ユリア・アルフリーダ・エマ・ミラは、戦闘が始まってから、荷馬車とロバを連れて突入してね。エマ・ミラ、全員にメッキを掛けといて。余裕があれば、馬やロバにもメッキをお願い。アルフリーダ、フレイヤに『突入のタイミングは任せる』って言っといて。」
徒歩で暫く進むと、焚き火の灯りが見えてきた。本当に見張りを立てず、焚き火を囲ってやがる。おや、1人立ち上がってこっちに歩いて来た。あ、立ち小便か。
「突撃するよ。エゲリアは、立ち小便の男に一撃入れといて。ラッキーだね。」
オーバーホエルミング!
突撃発起点から焚き火まで50メートル程度、駿馬の硬革靴とオーバーホエルミングの組み合わせなら一瞬だ。
鑑定!
奥に盗賊Lv40がいる。こいつが首領だろう。多分届く、狙ってみるか。
ブリーズボール!
まだ立ち上がってもいない盗賊Lv40に着弾し、そのままフラガラッハを突き立てる。オーバーホエルミングが切れるまで、もう少し時があるな。更に1人、フラガラッハで首筋を袈裟懸けに切った。
鑑定!
探索者Lv16を見つけた所で、オーバーホエルミングが切れる。
等量交換!
探索者Lv16が爆ぜ、盗賊達が何が何だか分からず固まっている所を、スラッシュで2人、切り捨てる。
フレイヤとヴァニーユの2人が、街道の反対側から音も無く突入してきた。うん、完璧な夜襲になったね。ダガーと剣鉈が、盗賊に刺さる。おいおい、ヴァニーユの体捌きが尋常じゃない。スピードこそ瞬発力上昇を使ってるフレイヤに劣るが、動きのキレで圧倒している。身体が柔らかいのか?
ブリーズボール!
立っていた盗賊の1人に、単体攻撃魔法を撃ち込む。残り半分の盗賊の注意がこちらに向いたタイミングで、イリス・ソフィア・エゲリア・ノラが突入できた。結果的に、盗賊の意識の背後から切り込む、時間差攻撃になっている。勝ったな。
残り5人になった盗賊を、7人で包囲した。ユリア達も到着したな。包囲に加わり、これで5対11だ。単体攻撃魔法を撃ち込みながら、1人ずつ削って終わりだ。
「待ってくれ、降伏する。抵抗しないから、奴隷商人に売り飛ばしてくれ。」
「ダメよ、盗賊は死になさい。」
ソフィア、怖えー。有無を言わさず、戦意を失ってる盗賊にソフィアが切り込んだ。イリス・エゲリア・ユリア・フレイヤも続き、盗賊は皆殺しになる。よし、うちの娘達の被害は無いようだな。完勝だ。
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「ご主人様、最後のソフィアの台詞、カッコ良かったね。」
「そうだね、フレイヤ。戦闘を見られてるから、始末したんだよ。でもあの台詞は、大人の女が言うから痺れるんだ。フレイヤにはまだ早いかな。あと10年くらい女を磨こうね。」
「あとね、ヴァニーユって凄いんだよ。盗賊を襲う時、気配や音が全然しないの。鋭敏を使っても、ギリギリまで気付かないかも。」
あ、それヤバイな。繁殖で品種改良種になった奴隷だと、うちの早期警戒網を突破される可能性があるって事じゃん。猫人族の種族特性が強化されてるのか?
「あの〜旦那様、鹵獲品はどうしましょう? 汚いから、食料を積んでる荷馬車に載せるの、嫌ですよね。」
「エゲリア、武器や防具はワープで村に運び込もう。あと、返り血を浴びた人は、気持ち悪いから、シャワーを浴びて着替えたいよね。服に縫い付けてる貨幣だけ、剥ぎ取って買い物に持っていこうか。」
エゲリアが、エマ・ミラ・ノラに左腕の落とし方を教えている。迷宮の外だし必須じゃないと思うけど、盗賊のインテリジェンスカードを集める異世界だと、普通に教育の一環なんだろう。全員で剥ぎ取りを終え、盗賊の死体はソマーラの迷宮まで、ワープで捨てに行った。56階層まで育てるのが中期目標だから、面倒だが、迷宮への餌やりだ。
最初にソフィアとフレイヤの2人をワープで家に置いて、シャワーを浴び着替えさせる。
順番に数往復し、最後の盗賊をイリスと2人で捨て終わった。さて、返り血でベタベタだ。石鹸で髪を二度洗いし、着替えて荷馬車に取って返す。東の空が白み始めた。急がなくっちゃ。
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夜か空け切った頃、荷馬車はベイルの町に到着し、奥さんが東門で待っていた。
「あ、マモル様、無事到着して良かった。御者台に乗せて、予約を取った市の区画に案内するわ。」
「おはよう、奥さん。お手をどうぞ。」
「まあ、マモル様ったら紳士なのね。それで首尾はどうでした?」
「奥さんのお陰で上々かな。17人に襲われたけど、無傷で返り討ちにできた。荷物も無事だよ。強過ぎず、手頃な相手だったな。」
「それは良かったわ。じゃあ後は野菜だけね。このくらいの量なら、2〜3時間もあれは売り捌けるでしょ。」
「アルフリーダ、『迷宮の淑女』は善良な商会ってことで、後は任せて良いかな。」
「了解しました、ご主人様。控え目な値付けにしときます。売り上げは、奥さんと7:3で分けますね。」
市に荷馬車を停め、駄獣4頭は馬小屋に預けて、水と飼葉を買い与える。今日は早起きしたし、疲れたな。
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屋台でレモネードを3つ買い、広場のベンチに座り休憩している。
今日の護衛をソフィア・エゲリアの2人がしてるのは、『旦那様は強そうに見えませんから、人が多いベイルの市ではトラブルに巻き込まれ兼ねません!』と、エゲリアが強硬に主張しての結果だ。まあ、そうだから反論できない。
「ソフィア、盗賊戦でのヴァニーユの動き、夜目が利くだけじゃないね。動きが速いと言うか、確かに身体能力が尋常じゃないわ。本人は奴隷メイドとか言ってるけど、貴族家のメイドって、皆、戦闘訓練やってるの?」
「いえ、普通の貴族家では、見目美しい性奴隷をメイドに揃えるのが好まれますし、下級貴族の娘が奉公に上がる場合も多いです。どちらにしても、メイドに戦闘訓練なんてする時間は、普通ありませんよ。お屋敷の仕事は、山程ありますので。」
「そうなんだ。とすると、やっぱりヴァニーユは、高性能を目指した品種改良種だって認識で合ってるんだろうな。獣人の貴族家には、戦闘能力が高い繁殖の奴隷がゴロゴロいるのだろうか?」
「いえ、繁殖の奴隷の男は、長生きしませんから。貴族家が繁殖で強い奴隷を作る理由は、高Lvの迷宮に入る時、先頭で探索させる為なんです。例えば20年前、ベイルの迷宮の討伐作戦で、エステル男爵家の当主パーティは全滅しました。ならば当然、つゆ払いが役目の戦闘奴隷達も、全員死んだでしょう。次の世代が育って戦力回復するまで、20年はかかります。消耗が激しいので、増え難いんですよ。それに、種が当主の繁殖の女だと、有力者の愛人用途として、贈り物にします。」
奴隷制と一夫多妻制と封建制が組み合わさると、こうなるんだろうな。価値観が異なる社会なんだから、非難すべき筋合いじゃない。ここは宗教もポリコレも無い社会だから、正義感の押し付けは普通に悪い事だし。
「エゲリア、昨晩、ユリアに悪阻(つわり)が来たじゃん。戦闘メンバーは、ユリアとノラを入れ替えようと思うんだ。」
「そうですよねぇ。戦闘中に、オエってなったら攻撃を受けちゃいます。エゲリアも、ノラとの入れ替えが良いと思います。そうなると、(空き)スロットが複数付いた槍が欲しいですよね。」
「そうだね、期待は薄いけど、市に出ている武器屋をチェックに行ってみようか。」
しかしながら、ダマスカス鋼の槍は店に出ていないばかりか、鋼鉄の槍でも(空き)1が最高では、買う価値が無かった。やはり、装備品の充実はコツコツやるしか無いか。聖槍の入手は遠いかもしれないなぁ。
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野菜を売り切るまで、まだ1〜2時間はかかるだろう。
さて、滋養丸と強壮丸の買取価格が高い間は、こまめに換金売りをしときたい。一昨日は帝都の冒険者ギルドで処分したので、今日は帝都の探索者ギルドだ。おそらく、冒険者ギルドも探索者ギルドも買取価格は同じだろう。談合しないで、買取価格を青天井にする理由は無い。そんなの、薬草採取士ギルドが喜ぶだけだ。
冒険者ギルドまでワープで飛び、大通りを3人で歩いて探索者ギルドまで行く。
「すみません、滋養丸と強壮丸と売りたいんだけど、買取価格はいくらかな? 値が上ってるって皆が噂してるんだけど・・。」
「通常は@20ナールが買取価格ですが、うちも今は@30ナールで買い取ってます。薬草採取士ギルドが出し渋ってるんですよ・・。ドホナの町に送らなきゃならないのに、酷い話ですよね。」
「ソフィア、アイテムボックスの中身、一つ残らず出しちゃって。」
青が滋養丸が94個、赤が強壮丸が93個出てきた。端数を印籠に入れてある生薬で補充して、@30ナール*(100+100)個=6,000ナール、銀貨60枚の稼ぎだ。
「お待たせしました。確かに滋養丸と強壮丸です。こちらのトレーが買取代金になります。良ければ、また持ってきて下さい。ウチは口が固いですから、大丈夫ですよ。」
好都合な事に、どっかからの横流しだと思ってるな。大丈夫と言ってるし、次回も帝都の探索者ギルドで売り捌くとしよう。
ついでに、帝都の探索者ギルドに、どの程度『ソマーラの迷宮』の情報が伝わっているのか、エゲリアに開示情報を調べてもらう。とは言ったものの、情報が無い事が情報だった。
「旦那様、『ソマーラの迷宮』の名前は存在しましたが、迷宮発見の段階で情報が止まっていて、探索階層も出ていません。1階層のスローラビットの魔獣名も出てませんから、ベイルの騎士団は、ソマーラには一度も来てませんね。これって、完全に放置されています。ご主人様がソマーラを拠点にして迷宮に入らなかったら、今頃は、迷宮から溢れる魔物に村が襲われてたんじゃないですか?」
「なるほど、だいたい、想定通りだね。」
「ご主人様、『ザビルの迷宮』の情報が凄いですよ。66階層まで到達してて、探索終了宣言も56階層まで出してますね。」
「それって、爺さん達、66階層までしか進む気が無いかも。67階層以上は3周目に入って、魔物が大幅に強化される上、2周目のボス魔物が7匹も通路に出てくるんだ。67〜77階層の魔物は、1〜12階層の魔物の最上位だから、蟻とコボルトを除いて弱点魔法が無い。相当、難易度が高いと思うよ。」
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ベイルの町に戻り、アルフリーダ達と合流する。
「あ、ご主人様、おかえりなさい。野菜、全部売れたよ。もっと持ってくればよかった。」
「おお、それは良かった。あれ、ユリアとイリスとノラの姿が見えないね。」
「ユリアが、売上金をお皿とか麻布とか農具に換えて、村に持って帰るんだって。買い物に行っちゃった。」
「そうなんだ。ところでフレイヤ、朝が早かったし、お腹が空いたよね。皆に、屋台で何か買ってきて。買い食いしよう。」
「うん、分かった。エマ、ミラ、一緒に行こ!」
3人とも楽しそうだ。アルフリーダが、胸の谷間から、お金の入った皮袋を取り出してフレイヤに渡している。
「マモル様、今日はソマーラ以外に近隣の村から荷馬車が来なかったから、野菜は独占販売だったわ。ところで私、本当に3割も貰っちゃって良いの?」
「うん、余所者が売るより、地元の奥さんとの共同販売の方が、信用度が上がるからね。で、儲かったのかな?」
「そうね、アルフリーダさんは、1年前の倍ぐらいの値付けをしたわ。それでも、物が無いのだから飛ぶように売れるの。これ以上安くすると転売が出るから、良心的な価格設定だったと思うわよ。それよりアルフリーダさん、例の件、マモル様に相談してよ。絶対に損はさせないわ。」
「ご主人様、さっき奥さんと話したんですが、麦を製粉した時に出る”フスマ”の仕入れルートを作れそうです。奥さんの幼馴染に粉屋がいるそうで、トラブルが多い業界ですから、奥さんを間に挟んで買った方が無難でしょう。ただ、奥さんは中間マージンを要らないと言ってるんですが、石鹸と保湿クリームを自分が使う量だけ欲しいそうで・・。うちの女が、全員ツルツルのスベスベだったので、バレちゃいました。どうしましょう?」
「う〜ん、動機が単純明快だし、奥さんが個人で使う量だったら、利権を持ってる人にバレる可能性は低いと思うけどな。レストランの常連客が気付いたら、エステ行ったとか、適当なこと言っとけば誤魔化せるでしょ。」
「マモル様、エステって何? ツルツルのスベスベに、まだ何か秘密があるのね!」
「ご主人様も、やっちゃいましたね。大丈夫です。取引は段階を踏んで深耕していくものですから、奥さんも先の楽しみができました。」
ユリア達が戻ってきて、荷馬車に何か積んでいる。盗賊が出るようになってから、ソマーラの村には行商人が来なくなった。今日の野菜は、不足してる物資の購入代金として、村人から拠出させたそうだ。
フレイヤ達も戻ってきた。揚げパン?いやチュロスか。何のフリットか不明だが、一口大の揚げ物も沢山買ったな。何かのパイも、ホールで買ってきてる。こんなに食べられるのか?
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食事も終わり、村に向けて帰る準備も終わった。野菜の売上は1万3,000ナール程度だったので、奥さんの取り分3,900ナールを、アルフリーダから渡している。最後にレストランに寄って、朝焼いた高級パンと、ワインや押し麦、今回は蕎麦粉も入手できた。我が家でエプロンやシーツにする布は、帝都の高級服屋で仕入れるそうで、今日は買わなかったらしい。
村まで3時間の道のり、治安が悪いからワープで先に帰る訳にもいかない。往復6時間はキツいな。野菜を売りに行くのは、季節に1回程度しか無理かも。やはり、冒険者のフィールドウォークを使える人の数が重要だよなぁ。
何気なく試してみたら、荷馬車の幌の内側でも、ワープの黒いゲートが開けた。これ、ちょっとした改善じゃん。
「ユリア、先にワープで帰って、野菜を供出した村人に、調達した物資を配ったら? エマとミラも連れて行きなよ。フレイヤ、馬車を止めてくれる?」
ワープの2往復程度で、物資は運び終わる。荷馬車は軽くなったし、少しは速度も上がってるかな。
「ご主人様、なんかいます!」
フレイヤが何かを感知した。なんだろ?
「ご主人様、やばいです。ドライブドラゴンが見えます。空を飛ぶ魔物は、迷宮の外に出ると厄介なんですよ。」
ヴァニーユがいて良かった。ドライブドラゴンは迷宮なら床を這ってるが、迷宮から外に出てくると、普通に空を飛ぶドラゴンだ。う〜ん、荷馬車を隠す林が無いから、いずれ見つかるな。
ドライブドラゴンは全属性に魔法耐性があるし、そもそも単体攻撃魔法の射程じゃ届かないよなぁ。いや、ガンマ線バーストならどうだ? 文字通りガンマ線の放射なら、距離の2乗で減衰するだろうけど、遮蔽物に当たるまで飛ぶよね。実験を兼ねて撃ってみるか。
「ラバや馬が狙われるかもしれない。荷馬車を止めて、外に出よう。フレイヤ、ドライブドラゴンまで誘導して。新しい魔法で迎撃してみる。ソフィア、スタッフを出して。」
「ご主人様、あれ、こっちに飛んでくるよ。見つかったかな?」
フレイヤが指差す方向に、なんか見えた。ヘリコプターより低い高度を飛んでるな。有効射程が分からないし、可能な限り引きつけよう。
怖いけど、もう少し・・。
「ガンマ線バースト!」
よし当たった、ドライブドラゴンが落ちる。って、うわー、アルフリーダ以外の娘は一斉に突撃していくぞ。先頭はフレイヤだけど、ヴァニーユとエゲリアは、同じくらいの速さじゃん。
MPが、ごっそり減ったな。ガンマ線バーストの2連射は、確実に無理だわ。
イリスが『竜革が落ちました!』と嬉しそうだが、街道がこんなに危ないんじゃ、物流なんて発達しないよなぁ。ドライブドラゴンが1匹なのは不幸中の幸いだったが、こいつ、何処の迷宮から溢れたんだ?
「ユリア、迷宮の外に出てるドライブドラゴンは、空を飛んでるから厄介だね。こんなの、普通じゃ落とせないでしょ。」
「ドライブドラゴンには空から襲われますから、迷宮の外では討伐が難しい天災なんです。疲れて地上に降りてくるまで何も出来ませんから。でも、ソマーラの村には旦那様がいて良かったです。」
春の38日 夕方