※この作品はR-18です。

迷宮資源で奴隷娘とハーレムを   作:prime67

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春の45日 午前



77.アイエナの破綻

「ベルガー殿、なんの話かは解りませんが、お断りします。」

 

「いやいや、マモル殿、愚痴ぐらいは聞いてくださらんか。」

 

「マモル様お願い、働くのはベルガーで、アドバイスだけ欲しいの。今日の昼食も奢るから、私達、友達でしょ!」

 

ヒルデガルドがグイグイ来て、普通に押し切られる。ベルガーから状況説明された話を整理すると、

 

・昨日、ザビル領の隣のアイエナで、政変が起こった。

・当主の弟の一派がクーデターでの権力奪取を狙い、当主の居城にフィールドウォークで突入。

・突入自体は成功するものの、当主側も集結して奇襲とはならず、斬り合いに。

・当主自身は生き残ったものの、戦闘で双方ほぼ相打ちの状態。当主の弟は討死しクーデター失敗。

・相打ちの戦闘により、アイエナの統治機構が事実上消滅し、無政府状態になる恐れ。

・生き残った当主は、自らの家族と奴隷を引き連れ、持ち出せる限りの資産と共にペルマスクに亡命。

・まだ、帝国政府の動きは確認できてない。

 

「当家からアイエナへの貸付金の合計は500万ナール程度だったので、諦めは付きます。それより、アイエナ領が統治者不在なのがマズイんですよ。盗賊共が湧いてきて、流民の多くもザビルを目指すでしょう。小麦の生育も良くないのに、そんなの面倒見切れないですよ。」

 

「緊急避難的に、ザビルの騎士団で保障占領してしまえば宜しいのでは?」

 

「それをやると、クーデター騒ぎの黒幕が当家だと思われてしまいます。我々ならクーデターなど一撃で決めますが、貴族社会では、口実があれば事実など些細なことなんです。これ幸いと帝国政府が介入してくるでしょうな。アイエナ領など押し付けられたら、目も当てられないですよ。」

 

「マモル様、貴族家のクーデター自体はよくある事なんだけど、今回は、双方相打ちなのがマズイのよ。奴隷の主人と相続者が同時に死んじゃうと、遺言が無くて自動的に殉死になっちゃうの。だから今頃アイエナ領は、労働力の奴隷の何割かが失われてる。その上、開発にお金を使わなくて元々貧しい上に、資産は当主が持って逃げちゃった。こんな領地は誰も欲しくないから、押し付け合いよ。」

 

「それなら、領地境に流民キャンプを作って、流入を食い止めるしか手が無いのでは? 人頭税を払う住民が散逸しなければ、まだ誰かに押し付けられる可能性が残るかもしれません。で、費用はペルマスクに請求するのです。『出さなかったら、流民をペルマスクに送り込むぞ!』ってね。もちろん、何らかのジョブなり技術なりを持ってる流民には、多少の支度金を貸し付けて、先にザビルで受け入れてしまいましょう。」

 

「そんな理不尽な要求に、ペルマスクが従うでしょうか?」

 

「仮に、1,000人の流民を、ペルマスク冒険者ギルドの国境ゲートから送り込んだとして、入市税@100ナールですから、10万ナール程度のコストしかかかりません。実行するハードルは低いですね。また、別にペルマスクが従わなくても良いのです。帝都で『クーデターの黒幕である、卑劣なペルマスクの製品を使うのは貴族として恥ずかしい。』などの噂を流す、理屈付けになりますからね。ペルマスクの産業は、辺境伯家が3代かけて技術を育てたガラス製品と鏡でしょ。代替品をザビルで生産しているなら、商家はザビルで仕入れるでしょう。」

 

「しかし当家は、帝都の社交とは長らく疎遠にしていて、そのような噂を流してくれる貴族家に当てがありませんが・・。」

 

「そんなの、どうとでもなりますよ。例えば、帝都の適当な大商人に、ザビル産のガラス製品と鏡の独占販売権を、辺境伯家から下賜するのです。勝手に適当な噂を流してくれますよ。ネガティブキャンペーンと言って、故郷では多用されていた手法です。」

 

「マモル様、ジョブ持ちの流民なら、別に支度金を貸し出さなくても自分で何とかするんじゃない?」

 

「ヒルデガルドさん、無理矢理にでも貸し付けた方が得なんですよ。ザビル領で受け入れる流民なんだから、貸し付けた資金はザビル領で使われ、経済が回ります。仮に返せなかった場合は債務奴隷か盗賊ですが、裕福な辺境伯家なら盗賊より奴隷になる道を選ぶ人が圧倒的でしょう。どっちにしろ、儲かるんです。」

 

「なるほど、マモル殿は権謀術策もできるとは、恐ろしい。やはり、儂らは脳筋だったのだのう。」

 

「それと、アイエナへの貸付の500万ナール、貸付証書を、当主の亡命先であるペルマスクに150万ナールで売ってはどうでしょう。ペルマスクは、亡命当主の身柄を押さえて、持ち出した資産を合法的に没収し、利益にすると思いますね。」

 

「素敵、流石はご主人様です。ベルガー様、当主と一緒に奥方や子女もペルマスクに亡命しているのであれば、取引のある奴隷商人にも情報を流してはいかがでしょう。魔法使いのジョブ持ちなら、奴隷オークションで白金貨1枚以上の値が付くのは確実ですわ。ペルマスクが貸付証書を入手する利点を、奴隷商人が、有る事無い事吹き込んでくれるでしょう。ベルガー様のお仕事が減りますね。」

 

「なるほど、アルフリーダのアイディアは使えるね。さてベルガー殿、昼食の対価としては十分かと。ヒルデガルドさん、お腹も減ってきたし、どこか美味しいお店に案内してください。イリス、ベルガー殿にお土産の石鹸をお渡しして。」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

ベルガーも一緒に行きたそうだったが、『仕事が山積みなので、ランチボックスで済ますしか無い』と愚痴っている。仕事はデキる奴の所に集まってくるから、そりゃしょうがないわ。

 

ヒルデガルドに連れて行かれたのは、貸し切りにされた、ごく小規模なレストランだった。

 

席に座ると、すかさず飲み物のメニューが配られ、数種類のアペタイザー(オードブル)がサーブされる。食事は全てお任せでメニューは飲み物だけの、この世界での一般的な形式だが、かなり接待慣れしている。この店も、辺境伯家の経営じゃないの?

 

「私は、エールにするわ。アルフリーダが教えてくれた”冷えたエール”って最高よね。お酒がお好きな人は、遠慮なく頼んで大丈夫よ。ベルガーが働いてる時間のお酒は、特に美味しいですものね。」

 

「では、イリスには”ドワーフの水”を。皆はスパークリングワインで良いかな?」

 

飲み物が揃うと、何故か、皆がこちらを見ている。

(ご主人様が、一番身分が上ですから、乾杯の音頭をお願いします!)

(おお、そうなんだ。イリス、ありがと。)

 

「それでは、皆の長寿と繁栄を、乾杯!」 

 

 

「ソフィア、マモル様なら、帝都での権謀術策でも戦えるんじゃない? 根本的にはベルガーも武闘派だし、ザビル辺境伯家では敵わないわ。ブルーノ伯爵家はどうだったの?」

 

「そうですね、伯爵様が生きていれば、ご主人様と気が合ったと思います。ただ、御子息の現当主は凡庸な方ですから、戦闘でも術策でも、ご主人様の相手にならないですね。」

 

「ねえ、マモル様って貴族にならないの? 誰も実効支配してない場所に迷宮が出たら、教えるわよ。」

 

「貴族って身分とか慣習とか政治とか、面倒臭いじゃん。毒殺とかされちゃうんでしょ。それに、ヒルデガルドさんと友達の方が気楽で楽しいしね。」

 

「アルフリーダ、今の、私チヤホヤされた? 辺境伯家の一番奴隷とかやってると、そんな機会無いから、ドキドキしちゃうわね。」

 

「ええ、ご主人様は優しいから、女性をチヤホヤするのがお好きなんです。でも、ご主人様にハニートラップは効きませんよ。一番奴隷のイリスを筆頭に10人もの女がいますから、私達が必ず阻止します。」

 

「10人は凄いわね。流石、マモル様だわ。うちは、正妻1人に側室3人に性奴隷の私を入れて5人ね。ベルガーの所も同じよ。ハニートラップは年中仕掛けられるから、毎朝、空っぽにしとかないと危ないものね。マモル様は狙われ易いタイプだから、手を抜いちゃ駄目よ。性奴隷の一番大事な仕事なんだから。」

 

食事は、スープと手が込んだ肉料理で、食後にケーキとミルクティーが付いた。手の込んでいる料理は、なかなか家では作れない。たまには接待も良いな。

 

デザートを楽しみながら、アルフリーダとヒルデガルドが石鹸の話をしている。どうやら『家に帰ったら石鹸で手を洗う』習慣に興味を持ったようだ。補足して、ガンガン使わせよう。

 

「つまり、細菌とかウイルスとか言う、病気の原因になる目に見えない小さな生き物を、石鹸で殺すってことね。」

 

「そうそう、石鹸を使って清潔にするのは気持ち良いけど、病気にかかる確率を減らすのが真のメリットだよ。特に子供と老人は病気で死に易いから、手洗いの効果は高いよ。あ、出産直前の妊婦も石鹸で洗っとくと、新生児の死亡率が下がる。あと料理人の手洗いを徹底させると、食中毒が減るかな。」

 

「石鹸って戦略物資じゃない。ねえマモル様、石鹸、もっと欲しいわ。辺境伯家の家紋が入った石鹸の型枠は、12個用意したの。石鹸を作るのに、どれぐらいの時間がかかるの?」

 

「型枠に流し込んで、鹸化反応が終了して安定するまで10日は必要かな。他のやり方もありそうだけど、今のところ、時間を使わないと品質が上がらないんだ。」

 

「量産して! 辺境伯家の家紋が入った型枠は、あと30〜40個作らせるわ。マモル様、対価に何が欲しい? お金や女なら楽なんだけど、そんなのじゃ駄目よね。」

 

「お金は、ザビルの町で買い物して帰れる程度貰えれば十分ですよ。それより、ヒルデガルドさんに信頼できる店を紹介してもらう方が嬉しいかな。あと、騎士団の資料室には、今後も時々入らせてほしい。それと可能なら、ザビルの騎士団で余っているスキル結晶を買い取りたいな。アルフリーダ、こんな所で良いかな。」

 

「ヒルデガルドさん、グリセリン保湿剤はどうでした?」

 

「あれも、女なら誰しもが欲しがるわ。それに、ご主人様やベルガーも歳だから、肌が乾いて痒くなるのが治ったって言っての。これも、辺境伯家の贈答品として使えるわね。グリセリン保湿剤も量産できるの?」

 

「贈答品として使うのなら、瓶が重要ですね。辺境伯家の家紋が入った綺麗な小瓶だったら、素敵な贈答品になると思いますよ。」

 

「そうよね、専用の小瓶を量産させるわ。贈答品は、見た目で有り難みが増すものね。」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

レストランを出ると、お買い物の時間だ。

 

旧市街の、以前にガラス製品を買った店のあるエリアは、辺境伯領の行政府が再開発し、商店からは地代を取っているそうだ。近郊の町村からの買い物客や商人が集まる商業地区で、集客と客層の良さに定評がある場所と、ヒルデガルドが自慢している。

 

「以前も思いましたが、商品の値段が安いし、すごく活気があって、買い出しの人が多いよね。この人達は、どこからやって来るの?」

 

「近郊すべての町村との、街道を整備したのよ。もちろん、盗賊が出たら根絶やしにするわ。そうしたら、物や商人は勝手に集まってくるの。4年前から騎士団は迷宮探索専門にして、町の治安維持は専門の警備隊を作ったわ。うちの町に巣食うダニは全部潰してやりたいんだけど、あの手の連中って、潰しても新しいのが寄ってくるのよ。迷惑よね。」

 

今日は、雑貨屋を紹介してほしいとお願いしているが、ヒルデガルドと一緒に通りを歩くと、兎に角目立つ。モーセが海を割るが如く、人々が道を空けるのは日常の風景なのだろうか? 何やら、ヒルデガルドが右手を挙げると、警備隊とおぼしき若者が駆け寄ってくる。

 

「右前の服屋の隣の店の店員が、私の姿を見たら、慌てて店の奥に引っ込んだわ。貴金属店かしら? 何か悪い事をしてるわね。今すぐ、立ち入り検査を入れておきなさい。」

 

「イエス、マム!」

 

ああ可哀想に。警備隊の人達、イエス、マム!しか許されない雰囲気だな。ヒルデガルドの性格からして、賄賂なんか取ったら瞬殺されるんだろ。”八丁堀の旦那”で小遣い稼ぎするのは無理だな。ザビル騎士団に残れた人達、対魔物戦専門の方が気楽で幸せかもしれん。

 

雑貨屋では、帝都では見なかった横長の七輪が置いてあった。ヒルデガルドが一緒なので、当然、店主自らの接客だ。まだ正札販売が定着してない商習慣だから、店主が出てくると話が早くて助かる。

 

「ご主人、この七輪の材質は何ですか?」

 

「はい、珪藻土と申しまして、この辺りの海岸近くの地層から切り出しています。断熱性能が高いですから、台所の薪の量が半分で済みます。ただ焼き物ですし、そこそこの重さですので、荷馬車で大量に運ぶと輸送費がかかってしまうのですよ。なので、ザビル以外では入手困難な品だと思います。」

 

「アルフリーダ、お願い。」

 

「横長の七輪、在庫はどのくらいあります?」

 

「え、今持ってる在庫は、全部で4台ですが・・。」

 

「では、全部頂戴して帰ります。一台、お幾らかしら?」

 

「@800ナールですが、4台全部なら・・、2,700ナールでいかがでしょう?」

 

「あら、安いのね。ヒルデガルドさん、良いお店を紹介していただいて感謝しますわ。ご主人、横長の七輪はもっと欲しいわ。近いうちにまた買いに来るから、多めに在庫を持って大丈夫ですよ。」

 

(ふぅ、助かった。ヒルデガルド様の連れてくる客だから、失礼な商いと判断されたら瞬殺されかねないからな。また買いに来てくれる口振りだし、重いけど、明日にも仕入れに行かなきゃ。自分の店なのに、緊張するなぁ。)

 

 

「失礼します! ご来客のところ、申し訳ありません。例の違法人身売買組織の拠点を発見し、緊急包囲を始めました。火急の用件ゆえ、ご報告に参上いたしております。」

 

「マモル様、ごめんなさいね。仕事が入っちゃったみたい。」

 

「人手は多い方が良いでしょ。我々も手伝うよ。ご主人、銀貨27枚置いていくから、商品はしばらく預かっといて。」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

雑貨店の裏手を100mほど進むと、4階建ての建物を警備隊が包囲しつつある。

(アルフリーダ、警備隊って何人ぐらい感じる?)

(15人程度しかいませんよ。建物内の人数は25人前後いると思いますけど、バカ話をしてて包囲に気付いてませんね。女の泣き叫ぶ声がしますから、お楽しみ中の男もいます。)

 

「マモル様、違法人身売買組織って儲かってるから、結構人数は多いと思う。20〜30人はいるんじゃないかしら。警備隊の連中って、必ずしも戦闘は本職じゃないの。可哀想だけど、犠牲が出るかもね。」

 

「え、屋内戦闘なら囲まれる心配は薄いし、20〜30人なら手頃な人数だと思うけど・・。正面からの突入部隊を、ウチが引き受けようか? ヒルデガルドさんは精鋭2~3人連れて裏口から入って封鎖して。警備隊の人は、どさくさに紛れた逃亡者を捕えるために、建物を広範囲に包囲だね。まだ相手に気付かれてないから、今なら奇襲になるよ。」

 

「対人戦ですので、先頭はイリスがやります。ご主人様、アルフリーダ、ソフィアの単縦陣で突入しましょう。」

イリスもソフィアも、アイテムボックスから防具を出して配り、装着を始めている。アルフリーダは、剣鉈を武器にするみたいだな。

 

「ヒルデガルドさん、準備できた?」

 

「え、なんでそんなに早いの、慣れてるのね。あと2分待って。」

 

「じゃあ、ゆっくり突入しとくよ。裏口の方をよろしくね。」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

(ご主人様、正面入り口の前に立ってる男、怪しいですね。見張りかしら?)

 

鑑定!

商人Lv23 男 人間族

 

(どうしよう、盗賊じゃなくて商人だ。)

(あ、もう一人、室内から出てきます。)

 

鑑定!

盗賊Lv18 男 人間族

 

(後から来たのは盗賊だよ。二人とも殺っちゃうから、アルフリーダは囮をよろしく。)

 

建物の外だから両手剣のデュランダルを出しとくが、人目もあるしオーバーホエルミングは止めておこう。囮もいる奇襲で距離も無いから、駿馬の硬革靴(移動力増強)で事足りるだろ。アルフリーダが、左右順番に鎧に手を入れ乳寄せし、見張りと思われる男に近づいて、満面の笑みで声掛けしている。

 

「こんにちは、お兄さん達、溜まってない? 一人銀貨4枚よ。」

 

「お〜、いい女だな。でも銀貨4枚はボリ過ぎだろ。しかし、あの乳はたまんねぇ、銀貨3枚でどうだ?」

 

「え〜、どうしよぅ、銀貨4枚ならサービスで咥えてあげるのになぁ。」

 

ブシュッ! アルフリーダを囲っていた左手の男の視線の外に、駿馬の硬革靴のスピードで回り込んで首を飛ばす。右手の男が「えっ、」と驚いてる刹那、股間をアルフリーダに蹴り上げられ悶絶した。念の為、デュランダルで喉を切っておけば終了だ。

 

鎧は身体のラインがそのまま出て、アルフリーダの巨乳を支えている機能美だ。落ち着いて考えれば、娼婦が皮の鎧を着ている時点で怪しいのだが、乳寄せされた谷間が目の前に現れれば、思考停止して覗いちゃうよね。鎧は身体のラインが出るから、そんな街娼もいるのかもな?

 

室内戦へ移行するので、両手剣のデュランダルを収納し、武器は刃渡りの短い剣鉈に変更する。イリスとソフィアも入り口ドアの前まで進出し、イリスの槌でドアごと押し破り、建物1階に突入する。よかった、相手に気付かれずに突入できてる。防具を装着してない敵に、勝ち目は無いだろ。装備の差は埋めようが無い。

 

 

イリスの槌は室内戦に不向きかと思っていたが、攻撃力五倍の『いかりの指輪』を装備して槌を振り回すものだから、触れた人も物も区別なく吹き飛ばす。英雄のオーバーホエルミング、闘兎の瞬発力上昇と鋭敏、武器は剣鉈、この辺は室内戦闘に向いている。イリスが粗々に当てて、ご主人様とアルフリーダが、剣鉈で確実に無力化する。剣鉈には、剣士のスラッシュが乗るのが判明したぞ。

 

1階フロアに、動いてる敵がいなくなった。ウチは、誰も攻撃を受けず無傷だ。

 

上層階の様子もアルフリーダが察知し、報告が来る。

 

「ご主人様、2階にも4人ほどいる気配ですが、気付かれました。何かを引き摺る音がしますから、階段の上部にバリケードを作ろうとしているんだと思います。」

 

「ご主人様、片手剣は室内戦闘に比較的有利と言われてるのに、1人しか倒せませんでした。ソフィアは修行が足りません。」

 

 

まもなく、裏口からの突入組のヒルデガルドが現れ、血塗れの床を、唖然として見ている。

 

「あ、ヒルデガルドさん、お疲れ。1階の制圧は終わったよ。まだ2階に4人程度いて、バリケードを作ってるね。抵抗するつもりだから、殺っちゃう? それとも、面倒でも生け取りにした方が良いかな?」

 

「私、まだ見張りしか倒してないのにぃ。2階にはウチで突入するわ。あんた達、行くわよ、後ろから付いてらっしゃい。」

 

あ〜、百獣王Lv34のヒルデガルド、呪文を詠唱しながら階段を上がっていく。ビーストアタックの上位版を観察できそうだな。おお、椅子や机で作ったバリケードなど、力で粉砕して突破してるぞ。出鱈目な破壊力だな。デュランダルでスラッシュ撃つより、ヒルデガルドの一撃の方が、確実に威力が上だ。倍以上あるパワーかな。彼女、正攻法で強いわ。

 

 

3階は『お楽しみ用』もしくは『味見用』の部屋が並び、明らかに性的倒錯者向けの部屋も1室あった。他人の趣味には全く興味無いが、あの手の趣味って何が楽しいのか全く理解できない。

 

4階で、商品であろう娘達を9人保護したが、拉致誘拐されて監禁されてたんだろう。全員が幼い獣人で酷いな。

 

「ヒルデガルドさん、こういう組織は多いの?」

 

「小娘を無理矢理に手篭めにするのが好きな変態は、一定数いるのよ。奴隷契約する時、『所有者には、奴隷に住まいと食事を与え、また税金を支払う義務がございます。これらの義務を放棄したり、奴隷を著しく不当に扱った場合、契約が破棄されることもあります。』って宣言されるでしょ。『奴隷を著しく不当に扱うこと』をやりたい変態は、奴隷契約が破棄されちゃうから、性奴隷を買わずに、こういう違法組織を使うの。あの子達は救出が間に合ったんだけど、国外に輸出されちゃったら助ける術は無いわ。」

 

「なんか、世も末だね。顧客名簿って押収できないのかな?」

 

「人間族って性欲が肥大化する種族でしょ。こういうのを利用するのは、いわゆる富豪と言われる人達なんだけど、100%偽名なの。その中でも、幼い獣人を無理矢理するのが好きな奴ってガチだから、慣れてて追えないのよ。」

 

「参考になるか分からないけど、この手の変態って、何故だか、記録に残したがる性癖なんだ。で、ザビルの町にも、貧乏絵描きっているでしょ。密かに接触して金を与えれば、何か情報が得られるかもしれないよ。別に変態全員を捕える必要はなくて、一人か二人、財産没収して晒せば見せしめには十分でしょ。」

 

さて、全身が返り血でベトベトだ。対人戦やると洗濯が面倒になるのだけは、いつも申し訳ないと思ってる。どこかで身体を洗いたいな。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

買い物した横長の七輪は、警備隊の人が、冒険者ギルドまで運んでおいてくれるそうだ。

 

とりあえず、身体を洗おうということになり、ヒルデガルドの部下の冒険者が来てくれた。フィールドウォークで飛んだ先は、騎士団事務所の中庭で、奥に、汗を流すシャワーがあるそうだ。

 

シャワーは水だったが、対人戦の後は身体がたぎっているからか、気持ち良い。ところが、自分とイリス・ソフィア・アルフリーダが並んでシャワーを浴びている所に、ごく当然の如く、ヒルデガルドもシャワーを浴びにやって来た。当然、お互いに全裸で丸見えだ。美味しそうな引き締まった裸体だが、見て大丈夫なんだよね。

 

「まあ、マモル様のペニスって立派ね。対人戦の後に立ててる男は大成するのよ。狼人族の尻尾ほどじゃないけど、人間族のペニスって分かり易いのよね。」

 

「ヒルデガルドさんの裸を見ちゃったから、しばらく治りませんよ。こんなとこ辺境伯様に見られたら、マズイでしょ。」

 

「え、なんで? 返り血を浴びたら洗って綺麗にしなきゃ。それに男に裸を見られたぐらいで恥ずかしがるなんて、相当な箱入り娘よ。」

 

「ソフィア、本当?」

 

「ええ、ソフィアも平気ですよ。むしろ自慢の戦闘奴隷は、他人に見せびらかす主人が多いですね。それに、ヒルデガルドさんの裸を見て萎えたら、それこそ大問題になります。ご主人様、ヒルデガルドさんの身体をガン見してて下さい。サクッと抜いちゃいますから。」

 

ソフィアが、手で扱いて鎮めてくれるのを、ヒルデガルドが楽しそうに見ている。貴族社会を知ってるのはソフィアだけだから、素直に従うけど、本当にこれが正解なんだよな。嘘ついてないよね。

 

「まあ、マモル様って素敵。かなりの距離飛んだし、量が多いわ。本当に若いのねぇ。ソフィアも上手よね。」

(30年前のご主人様より、勢い良く飛ぶわね。ベルガーは疑ってるけど、21歳って多分本当よ。)

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

血塗れの服の着替えは、騎士団で持ってるストックを出してくれ、至れり尽せりだ。

 

「マモル殿、すまんのぉ、先陣で違法人身売買組織のアジトに突入してもらったとの報告を受けた。アジトには25人もいたそうじゃが、おかげで犠牲者ゼロで制圧できて良かった。借りができてしまったのう。」

 

「いえいえ、ヒルデガルドさんのお手伝いができて良かった。彼女、強いですね。間近に戦闘を見れて勉強になりましたよ。それにしても、ペルマスクの息の掛かった者共の蛮行、許し難いですね。」

 

「う〜む、なるほど、なるほど、鬼畜の所業には我が主人も激昂しており、これを鎮めるには相応の誠意が必要になりますなぁ。」

 

「ベルガー、ご主人様は地方巡視で出張中でしょ。今起きたばかりの事件を知る訳ないじゃない。マモル様も、何言ってるの?」

 

「ヒルデガルド、倒した人身売買組織の者どものインテリジェンスカードは、今すぐ、ギルド神殿で調べるのじゃ。保護した獣人の幼女は、騎士団事務所で厳重に確保するぞ。マモル殿はな、どうせ叩けば出る埃なら、埃の出所をペルマスクにしろと言ってるのだ。もし、ペルマスクに連なる者が一人や二人いたら、儲け物じゃな。」

 

「ベルガー殿は忙しくなりますね。手前どもは邪魔になりますから、早々にお暇しましょう。ちょくちょく、ザビルには買い物に来ることにしますので、伝言は冒険者ギルドに言付ける段取りにしましょうか。」

 

「マモル様、待って。スキル結晶が欲しいって言ったわね。ベルガー、騎士団で持ってる在庫を全部出して。マモル様に好きに選んでもらうのよ。マモル様達は、剥ぎ取りもしなかったんだから、手ぶらで帰したら辺境伯家の名折れになるわ。」

 

「いやいや、着替えの服を頂いてるし・・。」

 

「そんなんで、釣り合いが取れてる訳ないでしょ。いい、絶対に帰っちゃ駄目よ。ベルガー、早くスキル結晶を持ってきなさいよ!」

 

スキル結晶の選択は、イリスと相談だな。疲れたし、とっとと帰りたいんだけど・・。ベルガーも大変だよ。




春の45日 夕方
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