昨日の夕食は、山盛りのフィッシュフライだった。ユリア達、セカンダリーパーティが集めたオリーブオイルで揚げてるのか。やば、今までも作りたかったけど、控えてたのかな?
「ヴァニーユ、玉子の在庫は無いと思ったけど、何で衣をくっつけたの?」
「水でスライムスターチを溶いて、白身にパン粉を付けるんです。エステル男爵家の台所で覚えた手法で、皆にも伝授しました。玉子は高いですから、お金持ちじゃないと、そうそう使えないんですよ。」
「これはこれで美味しかったよね。溶き玉子なしに揚げ物を作る方法は、知らなかった。勉強になったよ。」
いつもながら、フィッシュフライは大人気だ。テーブルの上には野菜の天麩羅も出されているが、フィッシュフライは揚げられるはしから、消えていった。女の娘がフィッシュフライをガツガツ食べる。もっと身体を大きくしたいし、お尻に肉も付けたいから、今は好きなだけ食べさせよう。
フィッシュフライの味付けは塩と柑橘の汁で、長靴国やヒスパニア国やヘラス国と同じだ。これがブリテン国だと寒いから酢になるけど、我が家では採用してない。
定番のタルタルソースは、マヨネーズが面倒なんだよ。あれをブレンダー無しの手で乳化させるとか、自家製マヨネーズは、奴隷といえど他人にやらせるのは精神的にキツいわ。ブラック過ぎる作業だもん。おそらく、『手廻し式泡立て器』を作る方が、順番的に先なんじゃないか?
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朝立ちは、アルフリーダの膣で抜かれた直後、更にソフィアに咥えられる。ヴァニーユの乳を吸いながら、ソフィアの口に2発目を出してしまうハーレムで、スッキリ空っぽになる。
「ご主人様、帝都の探索者ギルドに行く時は、あらかじめ教えて下さいね。イリス達で、サクッと抜きますから。ハニートラップ対策は大事って、ヒルデガルドさんも言ってました。」
イリスから念押しされる。一昨日、探索者ギルドで接触してきた受付嬢のジャンヌの事を、アルフリーダから聞いたのだろう。一番奴隷のイリスにとって、警戒するのは当然の職務なのかな?
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ソマーラの28階層は半分近くマッピングが終わってるし、早朝の迷宮で問題なく突破できるだろう。29階層には上がっとくとして、エゲリアの両手剣のアップグレードはどうしよう?
「イリス、自分達でスキル結晶を獲るのって、大変だよね。もっと積極的にアレックスに発注した方が良いのかな?」
「う〜ん、そこは微妙ですよね。ソマーラの1階層で『ウサギのスキル結晶』が獲れますが、33階層までで魔物の種類は1周して、再び34階層で、1階層のボスのラピッドラビットが通常魔物として出てきます。上の階層の魔物ほどスキル結晶を残し易いですから、34階層で新しく出るボス魔物を周回してスキル結晶を狙う手もあります。今の私達の力なら、34階層は早晩上がれるでしょう。34階層の探索だったら、経験値的にも悪くありませんし。」
1日1階層のペースで突破すると、5日後には34階層に到達する。なら、今から『ウサギのスキル結晶』の落札を依頼するのは微妙だな。
「分かった。とりあえず28階層のロックバードのドロップ品は”羽毛”だし、弱点魔法も無いので美味しくない。29階層の魔物を見てから、また検討しようか。」
【マモル】 硬革の帽子・手袋
武器 :吸精のダマスカスステッキ(MP吸収)
胴装備:ダルマティカ(空き)
足装備:駿馬の硬革靴(移動力増強)
アクセサリー:ひもろぎの聖銀ミサンガ(知力二倍)(ダメージ逓増)
4ジョブ(7) キャラクター再設定(1) 詠唱省略(3)
獲得経験値二十倍(63) 必要経験値二十分の一(63)
MP回復速度二倍(3) ワープ(1) 鑑定(1)
合計142
魔法使いLv44:知力(小上昇) MP(微上昇)
英雄Lv31:腕力HP体力MP知力精神器用敏捷(中上昇)
神官Lv33:MP(小上昇) 知力(微上昇)
遊び人Lv13:知力(中上昇)
【イリス】硬革の帽子・手袋 革のサイハイブーツ
武器 :強権の槌(詠唱中断)
胴装備:ダマスカス鋼のプレートメイル(空き)(空き)(空き)(空き)
アクセサリー:いかりの指輪(攻撃力五倍)(ダメージ逓増)
鍛冶師Lv24:腕力(中上昇) 体力(小上昇) 器用(小上昇)
【フレイヤ】 硬革の鎧・手袋
武器 :強権のダガー(詠唱中断)
盾 :木の盾 (空き)
頭装備:硬革のカチューシャ(空き)
足装備:革のサイハイブーツ(空き)
アクセサリー:頑強のボディークリップ(物理ダメージ削減)(ダメージ逓増)(空き)
闘兎Lv23:器用(中上昇) 敏捷(小上昇) HP(小上昇)
【エゲリア】
武器 :強権の鋼鉄剣(詠唱中断)
頭装備:硬革の帽子(空き)
胴装備:硬革の鎧(空き)
腕装備:鋼鉄のガントレット(空き)(空き)(空き)
足装備:竜革のサイハイブーツ(空き)(空き)
アクセサリー:増撃の指輪(ダメージ逓増)(空き)
淫乱Lv24:精神(中上昇) 知力(小上昇) MP(小上昇)
【ソフィア】 革の帽子 硬革の鎧
武器 :激情のレイピア(攻撃力二倍)(麻痺添加)(空き)
盾 :身代わりの鉄盾(身代わり)
腕装備:硬革の手袋(空き)(空き)
足装備:駿馬の革サイハイブーツ(移動力増強)(回避力二倍)
アクセサリー:頑強の指輪(物理ダメージ削減)(ダメージ逓増)
探索者Lv43:体力(小上昇)
【ノラ】 硬革の鎧・手袋
武器 :強権のダマスカス槍(詠唱中断)(麻痺添加)(空き)(空き)
頭装備:ダマスカス鋼の鉢金(空き)(空き)(空き)(空き)
足装備:頑強の竜革サイハイブーツ(物理ダメージ削減)(空き)(空き)
アクセサリー:増撃のイアリング(ダメージ逓増)(空き)(空き)
錬金術師Lv20:知力(小上昇) 器用(微上昇)
28階層では、ブリーズストームの2連射*3回=6発を撃ち込んでいる。ブリーズストーム5発の時点で風が弱点魔法のサイクロプスは煙に消えるが、ロックバードやノンレムゴーレムは残っている。だが、残る魔物にはフレイヤが”状態異常耐性ダウン”のアクティブスキルを発動し、ソフィアとノラの攻撃で”麻痺添加”を狙う。コンスタントに1匹は麻痺にしてるので、最大魔物数は5匹だから、最初だけ凌げば、数的優位下での袋叩きパターンになる。
2時間弱でボス部屋を発見し、突入前に小休止する。
「ソフィア、ボス魔物のファイヤーバードって、燃えてるのかな?」
「いえ、火魔法を使う鳥なんで、ファイヤーバードと名付けられたそうです。ドロップ品はオストリッチという高級皮革で、乗馬ブーツや鞄に使います。ロックバードは土魔法に耐性がありますが、ボスのファイヤーバードは火魔法が耐性って、珍しいパターンですね。弱点魔法はありませんから、ご主人様は引き続きブリーズストームでお願いします。ファイヤーバードの相手はソフィアとノラで、麻痺を狙ってみます。」
ああそっか。ソフィアのレイピアには”詠唱中断”が付いてないから、ノラと一緒の方が良いな。
「じゃあ、お付きの魔物は、イリスとエゲリアが正面でお願いね。フレイヤ、念の為、ファイヤーバードには毒針を投げといて。」
ボス部屋に入り、女の娘達が突撃する。オーバーホエルミングを発動し、ブリーズストームを2連射。自分は、エゲリアが正対してるロックバードの背後に回り、吸精のダマスカスステッキで殴りまくる。オーバーホエルミングが切れたタイミングで、更にブリーズストームを2連射し、吸精のダマスカスステッキで殴り付ける。さらにブリーズストーム2連射を重ねたところで、ロックバードを煙にした。イリスが正対してフレイヤが背後から囲っているロックバードも、程なく倒れる。イリス・フレイヤ・エゲリアもファイヤーバードの囲みに入ったところで”麻痺”が発動した。
「ご主人様、終わりました。吸精のダマスカスステッキで、MPに変えちゃって下さい。」
「ありがと、ソフィア。28階層のボスでも麻痺になるのが確認できたね。まだまだ上の階層に行けそうだな。」
ソマーラの迷宮29階層は、ブラックフロッグだった。
「水魔法を撃ってくる攻撃が多いね。エゲリア、早めに前線を突破して、背後から魔法のキャンセルを優先できると助かる。フレイヤ、ブラックフロッグは火魔法が弱点だけど、サイクロプスは火魔法に耐性があるんだ。麻痺はサイクロプスに当てて片付けよう。」
最も数が多いブラックフロッグをファイヤーストームの連射で倒せるので、28階層より戦闘時間は短い。魔物が3〜4匹の時だと、麻痺が出ずに殲滅するケースもある。ただし、ブラックフロッグはドロップ品を落とさず、美味しくない魔物だ。なので29階層は、さっさと突破すべきだ。一番多く採取してるドロップ品が、羽毛じゃなぁ。
小部屋を見つけたところで、朝食に帰る事にする。
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朝食は、ヴァニーユがヤギの肉のシチューを作った。迷宮のドロップ品が食材なので、いつも同じ美味しさの肉だ。
元の世界で、南西諸島で食べたヤギ汁は獣臭が強くキツかったが、中東や南アジアで食べたヤギ肉のピラフ(ビリヤニ)は美味しかった。現地の人とヤギ肉の臭さの話をすると笑われ、『信頼出来ない肉屋で買う方が悪い。』らしい。『ヤギは、去勢してない雄♂の肉と、前日に捌いた古い肉は臭い。最高に美味しいのは、捌きたての未出産の雌♀ヤギの肉だ。』と言われた。ヒツジ1頭よりヤギ1頭の方が高く、ラクダ1頭=羊10頭以上の価値だとか。何となく分かる感じがしたな。
「ソフィア、朝食後には、帝都の高級服屋に”仮縫い”に行かねばならないんだ。ついでに、ヴァニーユにも絹地の貫頭衣を作ろうと思うんだけど、妊婦用の貫頭衣ってあるんだろうか?』
「はい、貴族家の婦人は妊娠したお腹を隠す習慣ですが、性奴隷の場合は隠しません。むしろ、お腹の膨らみは積極的に見せるんです。帝都の高級服屋なら、おまかせで作ってもらえると思いますよ。」
「では、ご主人様が帝都に行ってる間に、イリスは28階層の迷宮地図を仕上げちゃいますね。ソフィア・フレイヤ・エゲリア・ノラ4人でのパーティ編成は組めますので、また、10階層のホワイトキャタピラーを周回させてはどうでしょう。エゲリアとユリアの剣を交換して使えば、”麻痺添加”の武器3本で運用した場合の実験にもなります。」
「あ、それ賢いね。ユリア、エゲリア、悪いけどお願いして大丈夫かな?」
「「旦那様、かしこまりです!」」
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ヴァニーユを伴い、帝都の高級服屋の裏口の壁にワープする。
「おはようございます、ご主人。陽が昇るのが早くなってきましたね。今日は”仮縫い”にやってまいりました。」
「これはこれは、マモル様。お待ちしておりました。おや、お連れの女性は初めてですかな?」
「ええ、先日、新たに購入した家事奴隷のヴァニーユと申し、非常に気に入っている娘なんです。ただ、身籠った状態で売られてまして、これから腹が膨らむでしょう。ソフィアから、『御店なら妊娠した奴隷用の貫頭衣を仕立てる』と聞きましたので、本日はヴァニーユを同行させました。」
「それは素晴らしい、身分に関わらず子は宝ですからな。なに、別に妊娠した奴隷専用の服という訳では無いのですが、妊娠してもコルセットを使おうとする貴族家のご婦人方からは、お腹を開放した服は貫頭衣に見えるのですよ。では、ヴァニーユさん、女性スタッフが採寸しますので、別室にお入り下さい。マモル様は、”仮縫い”ですので、試着室の方でチェックしてしまいましょう。」
自分用に仮縫いしてる服は、『全てお任せ』でオーダーしている。どうやら、ごく軽い夏物ジャケット、ズボン、絹地のシャツを作るらしく、一式着用させられ、軽く歩かされた後、剣を構えてみるように言われる。少し焦ったが、必要経験値二十分の一(63)をデュランダル(63)に入れ替え、小声でアイテムボックスの呪文を唱えつつデュランダルを出し、正眼に構えた。なるほど、異世界のフィッティングとはこういう感じか。そりゃ”長時間の会議でも肩が凝らないスーツ”じゃないよな。
「お疲れ様でした。多少修正しますので、次の納品日の明後日までに仕上げておきましょう。次は春の50日ですな。」
デュランダル(63)はもう必要無いので、MP回復速度二十倍(63)に入れ替えておく。
しばらく世間話をしていると、ヴァニーユも、いつものマダムに連れられ、顔を赤くして出てきた。全裸に剥かれ、隅々まで採寸されたんだろう。
いつものように、高級服屋の裏口から店を後にし、裏口の壁にワープの黒いゲートを作る。
「ヴァニーユ、次は帝国の東端の町、ザビルの冒険者ギルドまで長距離ワープするよ。随伴者がヴァニーユ1人だけだから大丈夫だとは思うけど、万が一MP不足で倒れたら、印籠から強壮丸を飲ませてね。」
ワープ出口にザビルの冒険者ギルドを選択し、ヴァニーユと一緒にゲートをくぐる。
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「ふう、キツいわ。」
キツいけど、MPの底には至ってなく、気持ち悪くなる手前だ。随伴者がヴァニーユだけで、2人とも手ぶらだし。前回、帝都からザビルの冒険者ギルドに飛び倒れた時は、ソフィア・アルフリーダ・イリスの3人が随伴者だった。一緒に移動させる質量も消費MPに影響してるのは確実だが、前回4人→今回2人でも消費が半分にはなってない。MP消費が少し減ってるのは確実だから、距離の影響が6割、質量の影響が4割ってとこなのか? データが足りないわ。まだまだ実験が必要だな。
冒険者ギルドロビーの長椅子が空いていたので、ステンレス水筒のお茶を出して休憩しておく。
「マモル様、おはようございます。ベルガー様からマモル様に、騎士団事務所までお越し願いたいとの”言付け”です。」
「ああ、おはよう。”言付け”は、聞かなかった事にしたいな。」
「もう無理ですね。すでに”先触れ”を騎士団に走らせましたから。」
前回、『アイエナの破綻』の件でベルガー達と話したのが3日前、何か進展があったんだろう。仕方ない。
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「おお、マモル殿、おはようございます。気持ちの良い朝ですなぁ。」
騎士団の事務所に入ると、ロビーでベルガーに出迎えられる。ベルガーが元気だが、何故か騎士団の人は疲れてる感じだ。ベルガーに応接室に案内されるが、嬉しくてたまらない様子が見て取れる。ああ、これ過労の限界値が高い偉い人が、手加減しないで働いてる奴だ。ブラック企業の定番だよな。
「マモル殿の策で、ペルマスクが釣れましたぞ。都市国家のペルマスクは王を持たない政体で、”参事委員会”と名告る、有力貴族の合議で運営されています。で、討ち取った違法人身売買組織の者どものインテリジェンスカードを精査しましたら、”参事委員会”を構成する貴族の末端に連なる者が、5名も見つかりました。そこで、ペルマスク冒険者ギルドの国境ゲートに、ヒルデガルドが騎士団を引き連れて、”わざわざ”死体を返還してやったのが効きましてのう、賠償金800万ナールで手を打ちましたわい。」
「それは上々ですね。アイエナ領はどうなりました?」
「ついでに、ペルマスクに亡命したアイエナ領主を、叩き返させました。ペルマスクから500万ナールの新規融資を付けさせましたから、しばらくは保つでしょう。帝国政府に聞かれたら、『復興資金をペルマスクから調達した』と口裏を合わせるストーリーでも合意してます。早めに決着できたので、アイエナとの領地境の流民キャンプは、300〜400人程度で済みそうですな。現在は、炊き出しと、我が領で使えそうな人材の選別を、ウチの騎士団にやらせています。」
「それは良かった、その程度の流民の数でしたら、どうとでもなりそうですね。流民が盗賊になってしまっては勿体無いですよ。どうでしょう、アイエナの統治が混乱してる今なら、普通なら買えない権益が入手可能かもしれません。亡命するような領主でしたら、アイエナ領に思い入れも無いでしょう。そうですね、領地境から半日程度までのアイエナ領に、ザビル辺境伯家の警察権=盗賊討伐権を認めさせては?」
「うん? おお、それは妙案ですな。辺境伯領の行商人の商圏が、アイエナ領に半日の距離まで拡大する。それに、領地境を根城にする盗賊も根絶やしにできるし、領地境に迷宮が新規発生しても、いち早く発見しアイエナに討伐させるのですな。なるほど、”権益”をそのように解釈するとは、勉強になりました。」
「まあ、ザビルの税収増にまで繫げるには時間がかかるでしょうが、確実に利益になるスキームだと思いますよ。ギルド神殿が余っていれば、領地境の町に、新しく商人ギルドを増設するのも手かもしれませんね。ついでに、アイエナの冒険者ギルドの経営権なども買えれば最高でしょう。」
「そうですなぁ。まあ、今年の夏の収穫がどうなるかも不透明ですし、この辺で混乱を収束させたいものです。ところでマモル殿、軽く飲みながら話しませんか? 賓客の接待なら、大手を振るって酒を楽しめますからな。食事も用意させるので、猫人族のお嬢さんも安心しなされ。」
ベルガーの配下であろう騎士団員から、パーティ編成の招待が届く。どうやら、断る選択肢は無いらしい。
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フィールドウォークで連れて行かれたのは、レストランと言うより”バル”といった軽い感じの店だ。ベルガーは、飲む気満々じゃん。潮の香りがするから、海が近いのだろうな。
テーブルに着くと、何も注文してないのに、大量の小皿のオードブルが運ばれてくる。今日も客は我々だけ、貸し切りにしたのか。
「マモル殿、辛口のシードルを開けませんか? 海鮮料理には合いますぞ。」
「それは良いですね。ヴァニーユは妊娠してるので、りんごジュースにさせますよ。」
「それでは、互いの繁栄の為に、乾杯!」
「「乾杯」」
「ベルガー殿、海鮮の小皿が、辛口のシードルに合います。やはり、新鮮な海の幸を食べられるのは、良いですね。」
「おお、マモル殿はこの味が分かりますかぁ。魚を好んで食べる者は少ないので、嬉しい限りですよ。」
「このモヤシに似た貝は、ミドリシャミセンガイですね。珍しい。羨ましいですよ、領内で畑の肥料が取れるなんて。」
「マモル殿、肥料とは一体どういう事でしょう?」
「え? 見た目は貝に似てますが、ミドリシャミセンガイは貝と別種で、貝殻は骨と同じ成分です。ですから、畑に使えば骨粉肥料と同じ効果が有りますよ。確か、限られた暖かい干潟に生息している種です。東方の島国では、肥料貝などと言われてるそうですよ。」
「なんと、知らずに貝殻を捨ててますぞ。貝殻が高価な骨粉肥料になるとは・・、勿体無い事をしてました。」
「もしかして、岩場で採れる海藻が肥料になるのも・・、特に暖かい海で採れるアオサなど、通常の肥料成分に加え、マグネシウムという物資も多く含まれる貴重な海藻です。干してそのまま畑に撒くだけですから、楽ですよ。いや、この辺りは雨が少ないから、水で洗って塩抜きしといた方が無難ですね。」
「なんと、アオサは、海の雑草だと思ってました。せいぜい、海辺の者がスープの具にするくらいです。その、マグネシウムとは一体?」
「植物が太陽の光を取り込んで、葉や実を作るのに必須な成分なんです。麦の日照不足対策には少し遅いかもしれませんが、何もしないよりはマシかもしれません。」
「誰かある! 大至急、この辺りの女子供を動員し、アオサを集めさせるのじゃ。辺境伯家が、全て買い上げるぞ。内陸の穀倉地帯まで運ぶ荷馬車も確保せよ。人手が足りなければ、騎士団も動員して構わん。急げよ!」
決断が早いなぁ。やっぱ、この爺さんは出来るわ。
「ベルガー殿、ひょっとして、隣のアイエナ領にも、干潟や岩場があるのでしょうか?」
「ええ、ウチの海岸線から続いて・・、なるほど、海から採れる肥料の価値が広まる前に、採取権なり漁業権なりを二束三文で買い取ってしまうのですな。マモル殿、これは、お宝ですぞ!」
「ふふふ、流石はベルガー殿、利権を思い浮かべ飲むシードルは、甘いですね。」
「まさに、甘露。なのに海鮮に合いますなぁ。ふふふ。」
シードルの瓶が1本空いたのでお開きにし、ベルガーと一緒に、店の前の海岸に視察に出る。波が無く、遠浅の岩場が広がって、結構な海藻が浮いている海岸だ。領民の女子供や、騎士団らしき人も集まりつつあるな。
「ヴァニーユ、少しで良いから、海藻を採ってきてくれる?」
ヴァニーユが皮のサイハイブーツを脱ぎ、膝まで海に入って、海藻を採って持ってくる。
「ベルガー殿、これがアオサで間違いありません。日が長い時期なら繁殖力が旺盛ですから、ここなら管理して採取すれば、そう簡単には取り尽くせないでしょう。いや〜、良い海ですね。」
アドバイザリー料の相談は、畑の収穫量の実績が出てからにした方が有利だろうな。
海藻を採ったので、ヴァニーユは、”海女”のジョブが取れてるのでは? 帰ったら確認しなくちゃ。
春の48日 昼