夕方、帝都の図書館は日没前には閉館になる。
イリスとソフィアを迎えにワープで図書館のロビーまで飛ぶが、閉館前のお迎えタイムで混雑していて、乗合タクシー替わりの冒険者が客が揃うのを待っている。図書館を利用する=字が読める=比較的裕福なのだろう、@銀貨1枚として5人で500ナール、割りの良いバイトだ。
「ご主人様、お待たせしました。」
イリスとソフィアが、見つけてくれた。入館保証金の返金も既に終えてるそうだ。
「お疲れ、今日一日で魔導師の研究は大分進んだよ。イリスとソフィアはどうだった?」
「イリスは、チェインメイルと新しい武器のイメージや製造レシピが掴めました。それより、ご主人様にお詫びする事が起こってしまいまして・・。」
「「申し訳ございません!」」
「いやいや、全く意味不明なんだけど?」
「昼にイリスと食堂で軽食を取っていたら、ヒルデガルドさんに瓜二つの女性が側を通りまして、その〜、ソフィアが目を合わせてしまって・・。向こうから『マモル様の所のソフィアさんかしら?』と声を掛けられ、しらばっくれる機転がきかず・・。その女性は、ベルガー様の一番奴隷のアーデルハイトと名乗り、ヒルデガルドさんの姉だそうです。」
そう言えば、以前、ベルガーは当主と従兄弟であるが義理の兄弟でもあると言ってたな。
「どうやら、明日から臨時の諸侯会議が始まるらしく、いくらザビル辺境伯家でも、上級貴族は諸侯会議を無視できません。諸侯会議への出席は当主本人でなくとも問題無いので、ベルガー様が出席する様です。一番奴隷のアーデルハイトさんと一緒に、昨日から帝都屋敷に出て来たと言ってました。」
「それで、『是非、帝都屋敷に遊びに来て!』と言われてしまって、あれ社交辞令じゃなく完全にマジです。パピルスのメモに、手書きの地図まで書かれちゃいました。重ね重ね、申し訳ございません! 後ほどイリスと二人で罰の顔射を浴びますが、今は早急に辺境伯家を訪問する準備をしませんと・・。」
「手土産は、ソマーラの村で採れたキュピコで十分だよね。明日にでも行こうか。訪問するメンバーはどうする?」
「いえ、夕食を一緒にぐらいの勢いでしたから、今から行かないと・・。ご主人様の他にベルガー様と面識のあるのは、イリス・ソフィア・アルフリーダ・フレイヤ・ヴァニーユです。5人全力で、ベルガー様をチヤホヤします!」
う〜ん、あのヒルデガルドの姉で、ベルガーの一番奴隷なんだろ。同じ一番奴隷でも、イリスやソフィアとは格が違ったって状況か。どうやら、選択の余地は無さそうだ。
「分かった。ならば、速攻で帰宅して準備しなきゃね。」
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「という訳で、アルフリーダ、訪問メンバー5人に小綺麗な服を用意して。靴はハイヒールにしよう。装備は佩刀だけして、他はアイテムボックスに入れとこうか。5人は、シャワーをサッと浴びてね。」
「エマ・ミラ・ノラ、手土産のキュピコを用意しなさい。タライで冷えてるのを全部持ってくわ。保冷に、氷水で濡らした手拭いを、キュピコの上に乗せるのよ。」
ご主人様もシャワーを浴びると、ユリアが、数日前に服屋で作ったシャツとズボンとジャケットを出し、着替えを手伝ってくれる。『こんな事もあろうかと』で、作っといて良かった。
ワープで、商人ギルドのロビーに飛ぶ。
イリスに渡された地図によると、ザビル辺境伯家の帝都屋敷は、帝都図書館と商人ギルドの中間にある。地図を頼りに、商人ギルドから一本奥の通りを歩いて向かう。
「ご主人様、ここですね。」
ほほ普通の商家と同じ作りの建物だが、『ザビル辺境伯家帝都事務所』の表札があった。奥まった場所ではあるが、帝都の一等地だ。しかし、小さな真新しい表札は、大貴族にしては変だな?
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ドアノッカーを叩くと、見るからに壮年の男性が現れ、アルフリーダが対応する。これって、執事ってやつか?
しばらくすると、小走りでベルガーが現れた。
「マモル殿、事情はアーデルハイトから聞いているが、まさか当日中に来訪いただけるとはのう、いやはや嬉しい事じゃ。」
流石はベルガー、出来る男だよ。心にも無い事を息を吐く様に語るのが、詐欺師と生成A Iだ。そして、その傾向は貴族も同じだから軽く流す。おや、後ろに女性が控えてるな。
「初めまして、私、ベルガーの一番奴隷でアーデルハイトと申します。マモル様のことは、ベルガーとヒルデガルドから聞いていますわ。そちらの猫人族のお嬢さんがヴァニーユね。会えて嬉しいわ、私も繁殖で生まれた奴隷なのよ。」
鑑定!
アーデルハイト:百獣王Lv35 47歳 女 狼人族
ヒルデガルドとアーデルハイトは、姉妹だけあって顔は似ている。ヒルデガルドの百獣王Lv34に対して、レベルも一つ高い。しかしヒルデガルドと異なって、フェロモンを撒き散らしている。ほぼノーメイクで、見た目は20代後半にしか見えないのになぁ。いくら年齢の割に若く見える獣人とはいえ、ヒルデガルド以上に美魔女だ。
「いや、申し訳ない。初めまして、アーデルハイトさん。私、マモル・モノベと申します。アーデルハイトさんの、あまりの華麗さに見惚れてしまい我を忘れてしまいました。いや〜、流石はベルガー殿の一番奴隷だ。」
「そうじゃろ、マモル殿の石鹸を得てからはアーデルハイトを毎日風呂に入れての、教えてもらったリンスも使わせている。風呂上がりには保湿剤を塗ってからマッサージしての、そしたら、20年前の初々しい頃と同様に蘇ったわ。それでの、帝都の貴族どもに我が一番奴隷を自慢してやろうと思ってのう、まあ、これも政治の一環だな。」
「なるほど、この美しさなら誰もが振り返るでしょう。ところでベルガー殿、つまらない物ですが、キュピコを持って来ました。ちょうど旬の季節ですし、お口に合うと良いのですが・・。」
「キュピコとは珍しい。帝国の東の方では、気候が乾燥しすぎていて上手く育たないのですよ。おお、こんなに沢山、それも冷えてるではないですか。早速、切らせますから、ワインと一緒に頂きましょうぞ!」
その後は軽い食事、いや、ほとんど飲み会になり、侍女服を着た40代の女性が給仕している。その中で、アルフリーダとアーデルハイトだけが高度な接待トークをやっていて、二人とも満面の笑顔が怖い。ベルガーは、実に楽しそうじゃないか。良かったな。
「まあベルガー様ったら、堂々と一番奴隷を引き連れて諸侯会議に出向くなんて、男らしくて素敵ですわ。それに、何が策がありそうですわね。」
「そうじゃろ、そうじゃろ、帝都の貴族どもに負ける訳には行かないからの、アーデルハイトに見惚れてる貴族どもの足元をすくってやるのが必勝パターンなんじゃ。貴族社会は魑魅魍魎の世界でのう、アーデルハイトは実に抜け目なくやってくれている。」
「アーデルハイトさんは、諸侯会議の随員といった所ですか。才色兼備とは羨ましい。いや、文武両道でしょうかな。」
「まあ、マモル様ったら嬉しいわ。諸侯会議は貴族の晴れ舞台で、私は主人のベルガーが十分に活躍できる環境を整えるだけの、随員兼護衛よ。私も、昔はメイド服にハイヒールで刺客を仕止めてたの。諸侯会議の時は太腿に剣鉈を装着するけど、ダンスのお相手をしたってバレないわね。」
う〜ん、微妙に話を変えたし、貴族の晴れ舞台とか思ってる人種じゃない。ベルガーは、アーデルハイトに諸侯会議を任せるみたいだな。しかし、アーデルハイトの上目遣いで見つめる技は凶悪だ。これで百獣王Lv35だぞ、悪魔みたいな女かもな。
「そうだ、マモル殿、諸侯会議が終わるまでの間、アルフリーダ殿を貸してくれまいか? 辺境伯領は帝国の最東端だけあって、騎士団の連中も脳筋ばかりでのう、わしとアーデルハイトの二人だけで帝都の貴族どもと渡り合わねばならん。どうにも手が足りなくてのう、アーデルハイトはどう思う?」
「流石にマモル様の主計官というだけあって、アルフリーダさんは油断ならない頭の切れです。その上、あの形の崩れてない巨大な乳は、男どもを手玉に取る武器ですよね。巨乳なのに頭が切れるなんて、初見の男にとっては最悪な交渉相手です。ふふふ、私とアルフリーダさんがご主人の後ろに控えているのですよ、諸侯会議だろうが夜会だろうが、侮ってくる相手は全て返り討ちにできますね。」
うわー、これが本命で、アルフリーダを出向させろって話か。子会社じゃないんだけどなぁ、どうすべぇ。
「マモル殿にも利益は大きかろう。帝国政府や貴族社会の情報を入手できるし、アルフリーダ殿の経験にもなる。奴隷が積んだ経験は、すなわち主人の経験じゃからの。うん、そうしよう、Win-Winの取引じゃ。アーデルハイトとアルフリーダ殿がいれば、多少バチバチやっても切り抜けられるじゃろ。諸侯会議が楽しみじゃな。」
「アルフリーダ、ごめん、なんか断れそうに無いや。」
「え、全然平気ですよ。商人だった頃も、貴族の方々とは時々お取引させていただきました。皆、素直な方ばかりですよ。ちょっと谷間を見せてあげるだけで、高く買ってくれるんですもの。始末に負えないのは、いきなり襲って来る、貴族家の若い御子息の方々ですね。」
「ちなみに、貴族家の若君が襲って来たら、どうしてたの?」
「普通に蹴り上げるだけです。襲おうとした女に股間を蹴られたなんて人には言えないですから、安心ですね。あ、ベルガー様、大丈夫です。夜会では、お尻ぐらいなら触らせてあげますから。」
「あら、それって凄く良いわ。辺境伯家の家宰でも触ってないお尻に手を出したなんて、使い勝手の良いネタよね。うふふ、脅し放題だわ。私って、妹のヒルデガルドがあんなので顔が似てるものだから、手を出し辛い噂が出回ってるらしいのよ。15年も昔の話なのに、ほんと、あの子ったら迷惑よね。」
ヒルデガルドは何やったんだ? こいつら、大丈夫なのか? ほぼ確実に、アーデルハイトの方がヒルデガルド以上に危ない女だろ。クソ面倒な貴族社会なんて関わり合いになりたく無いし、ヤバい女と関わるのも鬼門なんだよなぁ・・。
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軽い食事も出て来たが、ベルガーとアーデルハイトは、冷えたキュピコが甚く気に入った様子だ。
「ふふ、我が主人も逃げずに帝都に来ていれば、キュピコを楽しめたものを、不憫よのう。ワインにもスパークリングにも合う、冷えたキュピコとは良い果物ですな。」
「辺境伯様も忙しいのですか?」
「まあ内政も嫌いでは無いのだが、自由が効かない貴族家の当主など、貧乏くじですな。本当はヒルデガルドと一緒に迷宮探索に入るのが一番好きなのだが、今頃は書類と闘ってますぞ。」
アーデルハイトは、ウチの女性達との会話を楽しんでいる。辺境伯家No2の一番奴隷だから、対等に話せる女友達ってのは難しいんだろう。ヴァニーユのお腹を触って喜んでるし、もはや女子会なのか?
ベルガーが言うに、辺境伯家は帝都の貴族社会とは距離を取っていたが、この所の出来事で、情報収集力の弱さを自覚したらしい。今までは帝都に出て来てもホテル暮らしだったが、情報収集と帝都での宿を目的とした拠点を構える為、この家を借りたそうだ。なんだ、俺のせいか。
「ところで、マモル殿、今の帝国をどう思われるか?」
この爺さん、酔ったふりしてるだろ。そんな事、しれっと聞いてくるなよ。
「いやいや、私ごとき一介の冒険者に、天下国家など理解が及ぶ筈がありません。」
「ふむ、ならば言い方を変えましょう。迷宮の侵略から、人類の生存圏はいつまで保つと思うかの?」
全くもう、何が何でも答えさせたいんだな。何か言っとかないと、帰してくれないか。
「討伐不可能な階層まで育ってしまった迷宮の数は、時間経過とともに増えます。構造問題ですので、避け難い現実です。今でも全体として迷宮を討伐したり維持管理する力は不足気味ですし、迷宮の管理を”貴族の責務”などと封建的な領地単位で行う統治組織では、力の劣った領地から人類と迷宮とのバランスは崩れるでしょう。短期的には、迷宮がボコボコ出てくると住民は周囲の町に疎開しますから、潤う領主が出ます。一部の冒険者は、迷宮討伐の功績により叙爵されるでしょう。しかし長期的視点だと、フィールドウォークの中継地が徐々に迷宮に侵食され、人類は分断されますよね。最後には、自然と各個撃破される形になるのは想像に難くありません。」
「いやはや、これは、想像以上の回答だ。一介の自由民がここまでの認識では、大半の貴族は用済みになってしまうの。マモル殿の言う通り、帝国はおろか人類の未来も暗いのだろうな。」
「ベルガー殿、適当に言ってるだけですし、あくまで基調の話です。それに、ベルガー殿や私が生きている間くらいは保つと思いますから、クーデターとか帝室打倒とかには協力しませんよ。邪魔はしませんけどね。」
別に難しい話じゃないから、ベルガーと似通った思考の貴族はいるだろうし、飢饉とか来た時に爆発する奴も出て来るだろう。しかし、9割9分ファーストペンギンは死ぬ。帝国政府だって、皇帝直属の帝国騎士団を温存してるしな。万が一、我々が巻き込まれそうになったら、奴隷や愛人達を連れてワープで逃げるだけだ。うん、問題ない。
さて、そろそろお暇するか。
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お開きの後、それぞれの陣営
【ベルガー側の会話】
「アーデルハイト、マモル殿はどうだった?」
「とても一介の冒険者とは思えません。ジョブも解りませんし、イリス・ソフィア・アルフリーダの3人は、並の一番奴隷の水準を超えてます。ヒルデガルドの直感通り、あんなの、取り込むのは無理だと思います。」
「やはりそうか。敵に回さず、友人として味方に留める方向性は正解だったな。まあマモル殿は、帝国や貴族の権威などという幻想を、全く持っておらぬ。我々以外の貴族家と、懇意になるのは難しいじゃろうがな。」
「ご当主様も、ご主人様も、貴族としては変わり者ですからね。マモル様とは気が合うと思いますよ。」
「そこも変なのだが、彼の頭の中身は、とても20代そこそこの若者とは思えぬ。まるで同年代の者と話してる様に気が合うのだ。それに、アオサとミドリシャミセンガイが肥料になるという知識、調べた限りの農学書には載ってない。しかも、マモル殿が惜しみ無く話してくれたのは、彼にとっては秘匿するほどの情報では無いのだろう。不思議よな。」
「マモル様は計略もやれる御仁ですが、帝国政府や貴族家については、ソフィアから得た以上の情報は持ち合わせていない様子です。その点で、自ら一介の自由民とおっしゃる通りで嘘はついてませんね。諸侯会議にアルフリーダを同伴することで、彼らに情報を与えられますから、やっと互恵関係が成立します。」
「そうだな。マモル殿にすれば、辺境伯家など切り捨てても大して惜しくない存在だ。もう少し、互いに重要で深い関係にならんとな。しかし、金や権威で取り込めない者とは厄介よの。やはり、女も駄目だろうな。」
「あれだけの性奴隷を抱えていては、マモル様にハニートラップは効かないでしょう。あ、そうだ。ご主人様が死んだ時の遺言でアーデルハイトは『死後解放』にしてもらってますが、『マモル・モノベに死後相続』に変更して頂けますか?」
「アーデルハイトは、そんなにマモル殿が気に入ったのか。少し嫉妬するの。まあ主人が死んだ後の一番奴隷は苦労するから、マモル殿の所に行くのも良かろう。ブルーノ伯爵の一番奴隷、ソフィアと言ったか、彼女も幸せそうだしな。短い間だろうが、我が当主とマモル殿が義兄弟の関係になるのも望ましい。ふふふ、マモル殿にアーデルハイトが役立つ女なのを、知らしめねばの。」
「ご主人様、ありがと、愛してるわ。今夜の夜伽もたっぷり奉仕するわね。」
【マモル側の会話】
「いや〜、疲れた。辺境伯家には化け物が何人いるんだ? アーデルハイトは百獣王Lv35だった。その上、あの頭の切れと色気は反則だろ。まともにやり合ったら、まず勝てないわ。辺境伯・ベルガー・アーデルハイト・ヒルデガルド、こんなのが組んでるパーティと対人戦やる羽目になったら、悪夢だな。」
「ご主人様、ヒルデガルドさんは気配を垂れ流しだけど、アーデルハイトさんって気配を殺すのが上手いよ。鋭敏を発動しないで感じるのは困難かも・・。」
「う〜ん、フレイヤ、マジかよ。あ、そういう事か。ヒルデガルドが囮を兼ねて正面から突っ込んだら、気配を殺したアーデルハイトは好き放題だわ。二人の外見が似てるのも、混乱するだろうな。」
「でも、ご主人様、ソフィアは諸侯会議に出た事がありませんから、アルフリーダを通じて帝国政府や貴族社会の情報が取れるのは大きいです。我々を使い潰すつもりでは無さそうですから、ここは協力すべきです。」
「そうだな、ソフィア。情報が取れる機会は何より魅力的だ。ベルガーに引き摺り込まれた感もあるが、最も危ないのは逃げ遅れることだからね。アルフリーダ、今後はどうすれば良いのかな?」
「明日の朝食を取ったら、辺境伯家の帝都屋敷に送って下さい。とりあえず2泊3日の予定なので、忘れずに迎えに来て下さいね。そうだ、今晩は思いっきり突いて下さい。明日の朝立ちも、アルフリーダの口で抜きますよ。」
「アルフリーダが居ないベッドは寂しいな。ヴァニーユはどうだった?」
「あの、ご主人様にメイド服を買ってもらえって、怒られました。アーデルハイトお姉様も太腿に剣鉈を隠すって言ってましたけど、繁殖の女が奴隷メイドで刺客を始末する時は、スカートの中に隠した武器を使うんです。せっかくの技術だから、ご主人様の為に使えって。あと、メイド服を着るとベルガー様は喜ぶから、ヴァニーユもメイド服姿でご主人様に入れさせてあげろって。ご主人様ぁ、怒られて無茶苦茶に怖かったです。アーデルハイトお姉様なら、ヴァニーユ程度は瞬殺ですよぉ。」
「そうかぁ、メイド服は気が回らなかったな。今度、ヴァニーユのメイド服を、高級服屋に作りに行こうね。」
「ご主人様、キュピコですけど、あの二人の様子では帝国東部だと珍しい果物のようです。来年はソマーラの村の作付面積を増やして、辺境伯家に売ったらどうでしょう?」
「イリス、それは良い考えだな。来年の今頃ならソフィアも冒険者ジョブを取ってて、上手くいけば、ザビルの町まで飛べるかもしれない。一度に移動できる人数が増えれば、十分な量の荷物を運べそうだしね。」
「それと、アーデルハイトさんからですが、アイエナ領の件やドホナの迷宮の件や海産物肥料の件など、辺境伯家が借りを返し切れてない事を気にしてます。早めに精算したいので考えておいてくれと、言付けられました。」
向こうも報酬に悩んでるのかな? 本音としてはスキル結晶が欲しいが、露骨に欲しがるのもな。さて、どうしようか? 可能なら利子を雪だるまにしたいんだが、欲張ると駄目な相手かも。
春の55日 夜