清澄高校の合宿所では基本的にお世話係りに徹していた悟は久からメールを受けた。
後輩の京太郎に後を任せて、久の呼び出しに応え近くの滝のある川へと向かうのだが……。
「こっちこっちー」
合宿所を出て少しの距離、悟の視界に片手を上げて呼びかける明灰色の浴衣をまとった久の姿がはいってきた。
清澄高校が部活動の合宿にも利用している施設棟、そこからほど近い場所にある河原で、遊歩道も整備されており、さらに滝も存在していてちょっとしたスポットになっているのだが、如何せん人家からは距離もあり、整備されているにも関わらず利用者は少ない。
だからこそこうして、久は逢い引きの場所に選んだのだ。
「遅れた、ごめん」
「いいのよ、急に呼んでごめんなさい。私もさっき休憩に入れたの」
「俺の仕事はほとんどないようなもんだから構わないけど、良かったのか? 四校も集まったんだ、対局相手には困らないだろ」
「どうせ夜遅くまでやるんだから、これぐらい良いの。といっても、一時間ぐらいしたらさすがに戻んないといけないけどね」
からからと笑ってみせる久、彼女がかなりの意気込みでこの合宿に臨んでいることを知る悟としては少しばかり心配であったが、本人はこうして自然体でたたずんでいる。
「それにね」
「うん?」
「麻雀は楽しいけれど、それだけだと疲れちゃうわ。身も心もちゃーんとリラックスさせないとね。よく動き、よく学び、よく遊び、よく食べて、よく休む、っていうでしょ?」
「天下一武○会にでも出るんかーい。まぁ久がそれでいいなら、俺もつきあうよ」
「ふふふ、ありがと。それじゃ、ちょっと歩きましょうか」
そう言って、悟の腕を取ると自身の腕を差し入れ、隣に並んでゆったりと歩き出す。
遊歩道の段差を一段一段、ゆっくりと降りていく。
すでに温泉に入ったのだろうか、木々を抜ける風にのって彼女の側からシャンプーの香りが鼻腔をくすぐる。
「なぁに?」
悟より頭半分ほどしたから、久の声がする。どうやら、無意識に彼女を見つめていたらしい。
若干、気恥ずかしそうに悟は答えた。
「いやね。ここ最近は合宿の準備で色々忙しくしてたから、こうして二人きりでいるのは久しぶりだなって」
「ごめんなさいね、彼氏をほったらかしにする恋人で」
「謝ることなんてないよ。久が本気で全国目指してるのはずっと見てきてるんだ、男にうつつを抜かしてる時じゃないよな」
「……ありがと。でもそうね、抜かしてるっていうか、私はヌいてあげてるほうよね?」
欲しい言葉をさらりと言ってくれる嬉しさに胸一杯になりながら、久は意味深な笑みを浮かべて唇をぺろりと舐め、親指と人差し指で輪っかを作るとスコスコッと振ってみせる。
学生議会長には似つかわしくない下品な仕草だが、悟を除いた他人の前では決してしないあたり、二人の関係は特別深いものだった。
「うッ、そうでした」
「(んふふ、私も同じくらいしてもらってるから、人のこと言えないけどねぇ)」
ご機嫌な久は足取りの重くなった彼氏の二の腕に、ぎゅうっと胸を押しつける。よいおもちをおもちである。少なくとも、悟には防御貫通で効く。
「うりうり」
「グワーッ」
「ほら、いきましょ? ご褒美あげちゃうわよ」
抱えられた腕を引かれて、悟は鼻歌を奏でそうな彼女につれられ歩道を降りていく。
滝はもうすぐそこだ。
「きれいねぇ」
「何でこんな観光名所みたいな場所に、高校の合宿棟があるのか」
「さぁ、創立者が土地もってたんじゃない?」
轟々と落ちる滝の水量をながめながら、二人はしばし静かに立ち止まっていた。
「ね、写メ取りましょ。滝をバックにツーショットで」
「いいけど、待ち受けは止めといてくれよ? 教師に見られたらいらぬ詮索を受けかねない」
「見えるところには出さないし、ちゃんと鍵つきのフォルダに入れるわよ」
学生議会長である久は教師受けもいい、そうした場合は男である悟に矛先が向かうだろう。
「さとるは私の際どい写メはとらないのかしら? そういうの好きでしょ、男の子って」
「どこで写真が流出するか分からないからな、それなら最初からない方が一番だ。それに」
「それに?」
「俺だけが知ってればいいだろ、その、ひさのことは」
ちょっと恥ずかしそうに悟は視線を明後日へと向ける。耳が赤く染まるのを指摘しないのは、久の優しさでもあった。
「これが独占欲の強い彼氏ってヤツ? 私、束縛されちゃうわ」
「人並みだとは思うけど……いや、他人と比べたことないしな」
「冗談よ。心配してくれてありがとう」
そんな悟の気遣いに、久は胸が暖かくなるのを感じ、そっと身体を寄せて顔を男の胸に埋めた。
悟は彼女を優しく抱きとめ、髪を優しく撫でおろした。
そうして二人は甘ったるい空気をかもしつつ、パシャリパシャリと携帯で写真を撮った。
一枚は普通に顔を寄せて満面の笑み、もう一枚は久の不意打ちのキスショット。
「おい」
「いいじゃない、さとるにもメール送ってあげるから」
「……まぁいいか」
楽しそうに携帯画面を眺めている久をみて、悟も追求をやめた。
「さぁ、こっちよ」
「川を渡るのか?」
悟の手を取り、久は向こう岸へと誘った。
右手には滝の轟音が響いて、少しばかり水しぶきが足下を濡らしている。
「飛び石があるから大丈夫よ。それともお姫様だっこしてくれる?」
腕を悟の首へと絡める久は、さぁどうぞといった顔で催促してみる。
「山間の農家の息子を舐めないでもらおうか」
どうれ、と気合いを入れて彼女の膝裏と背中に腕を通し、ぐぐっと抱え上げてみせた。
その拍子に久の浴衣の裾がずれ落ちてしまい、白く悩ましい太腿がチラリズム。本日はパステルブルーですか、やりますね。
「あら、ごめんあそばせ」
「良いものを拝見させていただきまして」
はだけた裾を戻されると、残念そうに視線を久の顔に向けるが、途中で胸元に止まってしまう。
抱えられたことで窮屈になった胸元で谷間がこんにちは。ショーツとお揃いのパステルブルーが視界の真ん中で自己主張。ごっつぁんです。
「お嬢様におかれましてはシャツの一枚ぐらいお召しになってはいかがデスワヨ」
「どっから出てくるのよ、そのエセお嬢様言葉は」
このままでは気もそぞろになって危ないからと、悟は久を地面に降ろした。
そのまま彼女の手を引いて飛び石を渡っていく。
少し湿っているが、川に落ちることはなさそうだ。
「まったく、誰かに見られたらどうすんだ」
「女子麻雀部の集まりよ?」
「俺や京太郎がいるだろう」
「あなたはいいのよ。須賀君は……まぁのどかのおっぱいでもチラチラみてるんじゃないの?」
「あいつもなぁ……もうちょっと押さえろよなぁ」
「ちょっと、さんざん私のおっぱいを弄んでおいて他の女の話?」
「こんな飛び火のしかたってある? いでで」
突然沸いた地雷処理を見誤った悟の尻が、久の細い指でつねられた。
「もう行くわよ、時間押してるんだから」
「俺のせいですね、分かります」
岸から林に入って十メートルも進まない距離で、大人が両腕を回しても指先がつかない程度の太さの幹をもった木の裏側。
川の方からはいい具合に藪と木々で視界が遮られ、そこに居ると分かっていないと見つけられないようなそんな場所。
そこで向かい合った悟に寄りかかるように、久は両手を彼の肩に置いた。
普段の雰囲気よりもそれなりにしおらしく、小さく艶めいた声で男の名を呼んだ。
「さとる」
「ひさ……」
すぅっと瞼を降ろし顎を上げ、唇を小さくとがらせ突きだした。
悟の両手が彼女の背中に回されると、その細い身体をそっと抱き寄せ唇を重ねる。
「んっ、ちゅ……んむ」
温かな柔肉の感触を唇で感じながら、優しく吸いつき、少し離れて、また重ね合った。
久のあえかな唇を甘くはみ、開いた隙間に差し込んだ舌先をつるりとした歯列に滑らせる。
暴れる舌先が、熱っぽく潤んだ口内粘膜を責め立てていく。
「はふ……れろ……あむ、ぢゅる」
久も進入してうねる舌を受け入れ、ざらつくベロを押しつけ合い、つつき、こすり合い、絡ませて、より深く混じりはじめ、溢れる唾液をすすりあった。
淫猥な舌使いはとどまることをしらなかった。
呼吸で開く口の隙間を惜しむように、鼻息が荒く強くなる。
「んっ、んふっ」
熱をまとった吐息が互いの顔を撫でつける。
濃厚な口づけにのめり込んだ二人は、首を互い違いに傾げより深く相手を求めあった。
快美な触感が口内粘膜を犯し広がっていく。
混じり合い溢れかえった唾液が、音を立ててすすられるが、それでもこぼれた透明粘液がとろりと久の口角から垂れ落ち、ぬめった筋となって顎を伝う。
「はっ、はぁっ、はあ」
「はぁっ、はぁ。ひさ」
「さとる……」
ひとしきり口唇愛撫を交わしたところで、荒い息を吐きながら唇を離した。
二人の間には混じり合っていた唾液が粘性の糸となって垂れさがり、艶やかな光を反射させている。
久は物足りないというように再び顔を寄せ、肩に置いていた手をそろそろと悟の身体をなで下ろしながら下腹部へと伸ばす。
悟の浴衣をかき分け、下着の中に鎮座するそれをそっとさすった。
「ち、ちょっとたんま。ひさ、まって」
「んちゅ……何よ、痛かった?」
「そうじゃ、なくてね」
しまったなと、悟の顔がわずかに歪んだ。
「ゴム、鞄に置いてきてしまって……合宿所に戻らないと」
「あら、困ったわね」
そんな会話をしながらも、久の手のひらは悟の股間をまさぐるのを止めず、次第に膨張をはじめているペニスの熱を感じ取っていた。
「なんてね、大丈夫よ」
久は自分の懐からポーチを取り出すと、その中から一つのパッケージを取り出した。
四角い銀色のそれには内側に丸い輪っかが浮かび上がっていて、まぁいわゆる男女のエチケット用品である。
「あるんかーい」
ついつっこみが飛び出る悟であったが、下着にテントを張って腰が引けている姿はちょっと様にならない。
「あなたとのセックスの時に、もう在庫がないのに辛抱たまらんってなった場合の保険用よ。ま、必要になったことは幸いにも無かったけどね」
「……きみを失望させなかったことは嬉しいよ」
「男子高校生の性欲を考えたら要るかなーと思ってたんだけど、その前に結構な頻度で発散してるから、出番がなかったわ。もしかしてやりすぎかしら」
「そ、そんなことはあらへんがな」
「あなた、どこの人よ」
そんなバカな会話をしている間にも、久の両手は男の股間を愛撫するのを止めず、カチコチに反り立ちはじめたペニスを愛おしそうに撫でまわし続けた。
「じゃあパンツ脱がせまーす」
「ちょ」
久は悟の返答も耳を貸さず、有無を言わせない勢いで浴衣をめくり下着を足下まで引き下ろしていった。
やや強引におろしたことで、下着の縁で引っかかった陰茎が勢いよく跳ね上がり、久の眼前に掲げられた。
高く反りあがって浮き出た血管が脈動し、膨れ上がった亀頭の先端から小さくぷくりと分泌物が光る。
「今日も元気いっぱいみたいね」
屹立した肉棒にチュっとキスをして、脱がせた下着を悟の浴衣の袂に押し込むと、久は彼の背中側に移動して後ろから抱きつくように身体を密着させた。
「ひ、ひささん?」
「ゴムは一枚しかないんだから、最初から本番はだめよ。もっと、気持ちを高めてからにしないと」
「り、理論はしってる」
「なら後は実践よね」
悟の男らしい大きな背中に胸を押しつけながら、久の手が彼の身体をまさぐりはじめた。
右手が下半身へと伸ばされ、浴衣の裾をはねのけると、硬く膨れ上がった肉の剛直の根本を鷲掴み、パンパンに詰まった睾丸を優しく揉みはじめる。
同時に左手が懐に侵入していき、へそのあたりから胸の位置まで女子とは異なる筋肉質な硬い身体を撫でつけ滑らせる。
「うぉ」
陰部と身体を愛撫される悟は、情けない声を発して腰が引けながらも、久の行為を受け入れた。
陰嚢が揉みしだかれ海面体にきゅうっと血液が一気に凝集するのを感じる。
久の細い指先が優しく悟の乳首をさすり、硬いしこりとなって浮かび立ちはじめる。
「それ、くすぐったい感じ」
「その辺の反応は女の子と一緒ね。ただ男の子と違って、女の子はおっぱいでもっと気持ちよくなっちゃうわ。好きな人と気持ちを通わせてると、とくにね」
「ひさは……これまでどうだった?」
「ええ、もちろん。あなたに触れられると、ドキドキするし、気持ちよくなって疼いちゃうもの」
「そういうの、ひさはストレートに言ってくれるよな」
「そりゃあデリケートな事だもの、羞恥心で顔だって赤くなっちゃうわ。でも、私は私のことをあなたにもっと知って欲しいし、私もあなたのことをもっと知りたい。──例えば、さとるの部屋には私に似てる女子高生モノのエッチなマンガが隠してあるとか」
悟はこんな状況でぶっこまれるオカズの暴露に愕然とした。
悟の悟はシコシコとしごかれ元気モリモリであったが。
「ご冗談でしょ(震え声」
「おばさまに教えてもらったの。鍵のかかった引き出しの陰に、磁石で鍵を張り付けておくのは止めておいた方が良いんじゃないかしら?」
「なんてことだ、裏切りは身内にいた」
「つまり、さとるは半分くらいの頻度で性癖どストライクなエッチをしてたってわけよねぇ」
「コロシテ……ロシテ」
「やぁーよ」
恥ずかしさから顔を両手で隠してしまいたい悟であったが、久によって固められている状態ではそれも難しかった。
そんな中でさえ、もどかしい淡い刺激を受けて元気な肉槍が自分の物でも憎たらしい。
「ねぇさとる」
「……もう俺のライフポイントはゼロなんだけど」
「私のね、中学の頃の制服、きっとギリギリ入ると思うのよね。あなたが良ければなんだけれど、どうかしら?」
返事の代わりに、悟の逸物がビクンと跳ねる。
腰の奥が疼きだし、亀頭が赤く膨れてさらに勢いよく血液が巡るのを感じた。
「うひひ、こっちは正直者ねぇ」
「──よ、予約でお願いしもうす」
「はーい、予約はいりまーす」
観念した悟の言葉にニヤリと笑みを深め、二つの球体を転がしていた久の手はそのままに、胸板を堪能していた手を下腹部へと合流させた。
親指と人差し指とで輪っかをつくり、それでカウパー腺液でぬめった亀頭を包み、肉鞘ごと握りしめた。
輪っかの指の根本あたりでカリ首にひっかけ、そっと撫でるように刺激した。
ニュルニュル、ずるり。
透明なぬめりの分泌物で、久の手のひらは濡れ光り、少しずつ速度を速めていく。
ちゅく、ちゅく。
久の手とペニスのわずかな隙間でカウパー液が淫猥な水音を立てる。
悟の両手が空をまさぐり、指先に触れた久の浴衣をぎゅっと握りしめる。
彼女の下腹に触れている悟の尻肉がきゅっと強ばり、男の限界が近いことを察した久は、陰茎を握る手の力を少し強めながら、先端から根本まで更にしごいていった。
「ひさっ、ひさっ! 射精るッ!?」
「我慢しないで。いつでも出しちゃってよ」
竿全体を亀頭から裏筋から全部を粘液まみれの手でしごきあげられ、玉袋まで揉みしだかれた悟は、猛々しく反りたった男根の根本の更に奥で、何かが弾けたかと思うと、射精感が一気に爆発した。
腰が強く震え、睾丸がつり上がり尿道をせり上がるように駆け抜けると、膨れ上がった亀頭の鈴口から噴水のように白濁液が噴き上がった。
ビューッ、ビュルルルッ!!
糸を引くようなゼリー状の白濁粘液が、木の幹に存在した洞に樹液となってべっとりとまとわりつき、ゆっくりと表面を汚しながら垂れていった。
「うわっ、すご」
久は快美感に震える悟に斟酌せず、何度も何度も搾り取るように手を動かした。
その度に悟の肉棒が脈動し、腰を震わせながら大量の精液を放った。
木の根本にある腐葉土には、悟の欲望のはけ口が何度も降りかかった。
脈動を繰り返す悟のペニスをしごきあげていると、吐精の勢いが収まり、尿道内の残滓がだらりとこぼれ落ち久の手にまみれて汚していった。
鎮まった射精感と快美感の余韻に悟は浸っていた。
そのため自分の前に移動して屈んだ久に気づかなかった。
精にまみれた手をそのままに、久は大きく口を開いて、たったいまザーメンを放ち終えたペニスをくわえ込んだ。
「おおうっ」
「あむ……れろれろ」
青臭い匂いに鼻腔と口内を犯されながら、肉鞘にまとわりついた男の分泌物質を根本からカリ首まで丹念になめ回し、かき集め、ごくりとのどを鳴らした。
「んん、んぐっ……ぢゅるる──」
そうして、最後には根本まで深く飲み込んで、吸い上げるようにゆっくりと持ち上げていくと、尿道に残っていた精子がぴゅっと飛び出し、久の口内粘膜を犯した。
「ちゅぷ……ぷは。へへ、きれいになったね」
「はあ、はぁ……。ひさ、ありがとう」
「いいのよ、これでも好きでやってるんだから」
実際彼女は、悟のちょっと情けない反応と、口の中で如実に感じられるペニスの反応を楽しんでおり、精液の味や匂いはさておき、フェラチオといった行為に拒否感はなかった。
定期的にやってくるあの期間中では、部室や校舎内でこうやって隠れてヌいてあげることもあり、きまって悟は彼女に対して従順になって、久の薄ら暗い感情をぞくぞくと刺激し満足感を得ていた。
二人は常に対等な関係であったが、行為の際には久が主導権を握ったり、逆になったりと、ジェットコースターのように簡単に入れ替わりが行われ、その落差のギャップが久には堪らなかった。彼女は業が深いタイプであった。
「ねぇ、ポーチにウェットティッシュが入ってるから取ってくれるかしら?」
「お、おっけ」
「ありがとう」
渡されたティッシュで手を拭うと、これまたポーチに入っていたゴミ袋へボッシュート。
「そんなに色々入るようには見えないのになぁ」
「女の子のポーチには、いろいろあるのよ」
ポーチと袋を地面に放置したまま、久はちょっと待ってねと言い、浴衣の裾をたくしあげると、そのままショーツを脱ぎさった。
小さく畳んだそれを懐に入れ、久は耳と頬をほんのり桜色に染めながら立ち上がる。
「俺は脱がされたのに」
「だぁめ。下着は必要な分しか持ってきてないんだから、さとるに任せると濡れ濡れのショーツになっちゃうじゃない」
「そんなことは……なきにしもあらず」
「そっちは次の機会にとっときなさいな」
すくっと立ち上がった久は、浴衣の裾をチラリと開いて悟へと見せつけた。
すらりと伸びたしなやかな細い下肢があらわれ、もじもじと膝同士を
擦り付けていて、恥丘には赤茶の茂みが綺麗に整えられていた。
薄皮に包まれた陰核と縦に閉じたピンク色の花弁が赤く充血しはじめている。
悟は思わずごくりとのどを鳴らした。
うなだれた男根が力を取り戻しつつある。
「ちゃんと、準備……おねがいね?」
「うっす」
体育会系のような返事を返した文化系所属の男は、下半身を晒したままの久の前でかがみ込むと、手のひらを伸ばして、白い膝頭へと触れた。
「んっ」
そして、手のひら全体を押し当てると、そろそろときめ細やかな白い太腿を撫でつけた。
膝から鼠蹊部まで触れたかと思うと、柔らかな内腿をなで下ろし、膝裏から臀部まで滑らせる。
「はぁっ、いやらしい、触り方するじゃないっ、んッ」
「ひさのここ、何かやわっこくて、ずっとこうしてたい」
「もう、これ結構恥ずかしいの──ひゃんっ」
久の言葉を聞き終える前に、悟は彼女の白い太腿に吸いついていた。
薄く脂肪ののった甘く艶やかな白い肌に、跡を残さない程度のキスで触れ、唇でやさしく甘噛みしていく。
遠慮なく音を立てて口づけを落としていく悟は、彼女の下肢をそっと割るように力を込め、久もその力に逆らうことなく膝を開け放った。
「ああぁ……」
彼女の秘所がさらけだされ、薄く開いた淫裂の隙間は、滲みはじめた蜜で潤いつつあった。
しかし悟はそこには直接触れることはせずに、鼠蹊部の薄い皮膚をたっぷりと唾液をまとわせ舐めまわした。
「はぁん、そこゾクゾクしちゃう」
「む……っれろ」
「あンッ、だめぇ」
悟の舌が開きはじめた蕾を捉えた瞬間、久の腰が小さく震えた。
腰が引けそうになる快美感に、久は身体を支えるように悟の頭をつかんで引きつけた。
悟も顔を女性の秘処に押し当てられる感覚を覚えながら、浴衣の内側に手を伸ばして、久の小さく引き締まった桃尻肉を鷲掴みにして、薄桃色の谷間を割り広げた。
鮮やかなコーラルピンクの花弁が花開き、彼女の深部に続く薄赤い粘膜のトンネルから熱いぬめりが生み出されていく。
ざらついた悟の舌が、大きく張り出して愛液で潤いはじめた淫裂を舐めあげた。
強ばりを解きほぐすように丹念に押し当てられた女の肉花弁が、悟のねちっこいクンニリングスによってほころんでいき、膣分泌液でぬれそぼった膣口が小さく侵入孔を解き放つ。
「んっ、んぅッ」
城門がたやすく陥落した久は敏感に反応した。
腰から膝まで、悟の愛撫に合わせて小刻みに震え、次々と溢れてくる官能のさざ波で上半身をくねらせ、甘ったるい吐息となって吐き出される。
悟の熱い舌が尖兵となって差し込まれ、入り口近くの潤んだ肉襞を蹂躙する生き物ようにうねった。
「ああぁッ! だめッ、私っそこ弱いのよぉ……」
「(知ってるよ)」
そんなことは百も承知だった。
どんどん湧きだす甘い滴を、悟は音を立てて吸いついた。
淡い酸味の熱いたぎりを、のどを鳴らして嚥下する。
「ぢゅ──」
「はああアァアンッ……ふっ、ふぅん」
久は一際大きな嬌声をあげ、鼻を鳴らすようにして下唇を噛んだ。
悟は震える久の腰をがっちりと引きつけたまま吸い続けたが、それでもあふれ出る滴が口元から流れていき、悟の喉や久の小さく震える白い内腿を筋となって伝い落ちていった。
「さとるぅ、もう、いいでしょう?」
荒い息づかいを繰り返す久は、頬をから首もとまで薄紅色に染め上がり、玉のような汗を額に浮かべながらそういった。
悟はずっと桃尻を揉みしだいていた手を離し、愛液で濡れ光る口元を拭った。
「ひさ、後ろ向いて」
「うん」
悟が渡された避妊具をガチガチに張りつめた男根に取り付けている間に、言われたとおりに後ろを向いた久は、浴衣の裾をつまみ上げ帯に挟み込んで引き締まった桃尻をさらした。
そして右手を木に添えて身体を支えると、両足を少し開いて左手を後ろに回し、突きだした自分の臀部をグニッとつかんで青い果肉の割れ目を広げて見せつけた。
濡れそぼった淫裂から一滴の粘液が、淫猥な糸を引きながら地面に落ちる。
悟はごくりと喉を鳴らした。視線が魅惑的に差し出された腰つきから離れない。
「ねぇ、じらしちゃ嫌よ」
「おう」
首をよじって後ろを見やる久の言葉に我に返ると、一歩近づいて尻肉の間に固く勃起した陰茎を押しつけ、臀部の柔らかさを堪能しつつ美麗な肉花弁に先端をあてがって潤滑油を纏わせていく。
「くっ、ぅん」
充血しきったラビアに肉鞘を押しつけると、悟は両足を開き膝を曲げ腰を少しばかり下げ、粘液にまみれた陰唇に擦り付けながら彼女の股の間に剛直を差し入れた。
「ひゃんッ」
久の視界では、愛液にまみれた股の中心から列溝を撫でつけながらクリトリスまで刺激され、突然朱黒い肉の槍が飛び出してきたように見えていた。
反射的に久の身体がビクンと震えて、一瞬の強ばりをみせた。
熱くたぎる熱杭が自分のいやらしい女の谷間に、ピタリとはまり込んだ錯覚を覚える。
天高く反り返ろうとする肉の塊が、久の秘処を疼かせ、両手のひらで木の幹に触れて、無意識に腰を悟へと押しつけていた。
悟の下腹に押しつけられた臀部が、つぶれるように形を変える。
「ひさ、挿入るよ」
「きて」
若干腰を引いた悟は、ぬめり気を帯びた柔肉の合わせ目に膨れた亀頭を押し当てると、先程まで自分の舌で解きほぐしていたくぼみを探しだし、先端を埋め込んだ。
「はうぅぅ……おっきいぃ」
すでに受け入れ準備は整っていたようで、先端部は抵抗も少なく愛液でぬめる膣粘膜に挟まれ、亀頭が温かい感触に包まれる。
そしてこじ開けられたトンネルの入り口から、深部へと侵入しようと腰を前へとゆっくり動かしていく。
太い剛直が肉襞の蠢く洞穴をかき分け進んでいく。
進む度に久の膣粘膜が締め上げるようにまとわりつき、悟の陰茎に心地よい摩擦感を発生させた。
さらに沈ませていったところで、男の張りつめた砲口が女の最深部の門にぶつかった。
久の身体が小さく震えた。
悟はそんな彼女を知ってか知らずか、両手で久の細い腰元をがっつりと掴んで、今にも暴れ出しそうなペニスを思い切り押し込んだ。
その瞬間、一段と強く締め付け絞られた。
「んはっあああァッ!? はぁっはぁっはっ」
突然の暴挙にたまらず悲鳴をあげた久は、たったいま自分の深部まで刺し貫いた極太の熱い肉棒の持ち主を、ゆっくりと肥大化していく甘い戦慄に眉をゆがめながら視線を投げつけた。
対する悟の側も、強い締め付けに快美感が一気に襲ってきており、ぎゅっと目を閉じて堪え忍んでいる。
そして彼女の力がゆるんだところで、ゆっくりとした動作で抽送を開始した。
たんっ、たんっ、たんっ。
ぐぽっ、ぐぽっ、ぢゅぽっ。
下腹が桃尻へと打ちつけられ、ペニスの出し入れに応じてヴァギナとの狭い隙間から泡立ちはじめた分泌物のぬめり気をおびた淫猥な音が、次第に大きく激しくなっていった。
滝の轟音と木々のざわめきでかき消されているが、二人には自分たちの奏でる艶やかな騒音しか聞こえていない。
「あっあっあぅッうん!」
「はっはっ、はぁッ」
リズミカルな抽送が、一層激しく揺すりたてられはじめた。
そして、久の左腕を強引に引き寄せ身体をよじらせると、自分の首に絡ませた。彼女の右手は所在なさげに揺れていたが、そのまま悟の首に同じようにすがっていった。
悟の右手が身体を支えるように彼女の前に回されるが、弛みつつあったひさの浴衣の襟元をはだけさせられ、パステルブルーのブラを乱雑にずりあげられた。
美しくハリのある白い乳房が大きく露出した。
悟の激しい前後運動に、弾力感のある青い果実が大きく揺れ動き、きれいな桜色の乳頭があわただしく跳ね回っている。
そんな柔らかな肉の果実が悟の大きな手のひらに捕まり、荒々しく鷲掴みにして揉みしだいていった。
激しく腰を打ちつけながら、悟の右手は彼女の乳房を求め、右へ左へと節操なしに動き回り、ぎゅうっと絞るように握ったかと思うとそのまま小刻みに揺すりたて、さらに固くしこった乳首を器用に指先でこね回し、弾き、転がしていく。
美しくツンと上向いた双丘に対する荒々しい愛撫と、背後からは激しい突き上げを下半身に受け入れる久。
深い官能の刺激に、眉尻を悩ましそうに垂れさせて可愛らしい顔を歪ませる久の顔に、悟は自分のそれを寄せて舌を求めるように差し出した。
「ひさッ、舌、だして」
「さとるぅっ! はげっしいぃッ、うむぅぅッ!」
身体を強く揺すられ荒い呼吸で口を開いている久の唇を、悟は強引に重ねて舌を差し込んで、彼女の舌に擦りつかせこねくりまわし、混じり合った唾液を求め合った。
「はぁっんむ! んんれろッ、ぷはっ!」
「んんっぢゅるるッ! ひさっ、左足あげて」
口を離し涎で口唇をぬとつかせた悟が、久に懇願した。
「だめッ、倒れちゃう」
「絶対支えるから」
この間も、久は全身の性感体を激しく愛撫され続けており、身体を支配し始めた快楽に理性が削られ、甘美な快感に圧倒されつつあった。
「んッ」
悟の願いに簡単に陥落した久は、彼の首に回していた腕に一層の力を込めると、身体を右足で支えつつ左足を持ち上げた。
その左足の膝裏に悟の腕が差し込まれ、ぐいっと持ち上げられる。
悟と久の陰部が激しくまぐ合いぶつかる姿が完全に晒され、あふれ出る愛液が乳白色の泡立ちを伴って内腿に幾筋もの跡を残し、地面を湿らせていく。
久はそんな自分の淫らな姿に激しい羞恥心を覚えたが、深い官能の刺激によって倒錯した快美感に上書きされ、陶酔しきった表情を浮かべ、たかぶる情欲に全身を委ねていった。
「アアぁッ! さとるッ、さとるッ!」
久はしきりに恋人の名前を叫んで、より深く交わろうと自身の身体を悟へと押しつける。
悟も自身の理性が、限界まですり切れつつあるのを感じていた。
自分の分身が極限まで張りつめて、痛いほどに脈打つのを下腹部での深い部分で察していた。
悟の右手がさんざん弄んだ彼女の乳房から離れ、今まさに欲望が弾け飛びそうになっている下腹部へと伸びた。
右足、太腿、鼠蹊部、そして濡れ泡だち充血した陰唇に添えられた。
そして溢れ続ける膣粘液物質を指に塗りたくる。
最後にクリトリスへ指先が触れそうになるところで止まった。
「あぁッ、だめっ! いま触られたらスゴいのきちゃうッ!!」
「はぁっはぁっはッ、──いいよ、俺もイクよ。ひさも一緒に」
「ッ! ぅん、いっしょッ一緒よ! はァッ! んんッ、はああぁあんッ! はあっあっあああぁァァアッ!!」
「うぐぐぅぅッ!!」
すでに薄皮を飛び出しぷっくりと膨れ上がった淫核に指腹が押しつけられ、激しく滑らせた瞬間、久はあまりの鮮烈な体験に奇妙な発したかとおもうと同時に、全身がわななくように震えた。
天を仰ぐように顔が跳ね上がり、上体が背後の悟に押しつけるように仰け反った。
下腹部から雷が全身に走ったような快楽の津波で意識が真っ白になる。
力強く渦巻く官能の坩堝に放り込まれ、身を溶かすような陶酔感に悶え、女性の淫猥なフェロモンを匂い立たせたしなやかな肢体を激しく震わせ、身体に中心部を刺し貫いて暴れまわる悟のペニスを、熟れきった果肉となったヴァギナが痙攣したように締め付け、精を搾り取ろうと蠢いた。
最後には薄紅色に上気しきった喉を大きく晒しだして、叫びともとれる嬌声をあげ、おびただしい愛蜜を噴き出しながら果て切った。
久が果てた瞬間、悟は最後の一突きと言わんばかりに大きく腰を引いて打ちつけた。
激しい射精感が悟の腰の深い部分で爆発、そこから一気に脳天まで突き抜けていき、口から苦悶のうめきとなって飛び出した。
猛々しく張りつめた怒張は、久によって強かに締め上げられ、容易に決壊した。
子宮口に押しつけられた鈴口からは、陰嚢から駆け上がってきた激流が解き放たれる。
二回目だというのに悟自身でも呆れかえるほどの白濁液が、脈動しつつける男根から快感を伴って何度も射出されていった。
半ば自失したような久を抱えたまま、悟は最後の一滴に至るまで白濁の濃厚な樹液を彼女の洞へと注ぎ込んだ。
激烈な射精感が徐々に鎮まっていった悟は、力が抜けた逸物を名残惜しそうに引き抜いた。
「ぁんッ」
久の秘部から残っていた滴がピュウと飛び出す。
激しく噴き出した久の体液は、シャワーのように広がって周囲を濡らしており、悟によって汚された木の幹、足下の腐葉土、彼女自身の内股にかかっていた。
内腿を濡らした彼女の潮が玉となって素肌に張り付き、筋となって垂れ落ちていく。
極太の肉棒が抜けた膣口がポカリと口を開いたまま、まだ足りないと言わんばかりに収縮を繰り返した。
抱えていた久の左足をそっと地面に降ろす。
脱力する久を抱きささえるように腕を回して、優しく引き寄せた。
「ひさ……スゴかったよ」
「はぁ……はぁ、最後のは……ずるいわよ」
返事の代わりに、悟は久のとろけきった顔に寄せて、唇を重ねた。
「んん……」
ひとしきり静かに口づけを交わした二人は、名残惜しそうに、火照った身体を離して、いそいそと後始末をした。
久はウェットティッシュで汗と体液に塗れた内股を、悟はたっぷりとザーメンをため込んだコンドームを取り去って陰茎から綺麗に拭っている。
大自然に撒かれた分泌物質はどうしようもないので放置したままだ。
脱いでいた下着を装着しあらかた始末を終えた二人は、そろって川縁の岩に腰を下ろして、素足を清流へと沈ませて涼をとっている。
火照っていた身体から、自然と熱が心地よく抜けていった。
「はあぁ~~気持ちいいわねぇ」
「少し涼んでから戻ろうぜ」
「さんせー」
浴衣の裾を膝までたくしあげ、二人はリラックスした様子で互いの手を握りあいながら、身体をピタリと寄せて座っていた。
「全国大会前にいいリフレッシュになったわ」
「余計に疲れたんじゃないか?」
「そんなことないわよ。さとるのパワーが私の力となって県大会で結果が残せたもの。それに大会直前のセックスってスゴい昂奮したし乱れちゃったわ、私。もちろん、今日のもね」
「そ、そうはならんやろ」
「ふふふ、なっとるやろがい!」
コロコロと朗らかに笑う久の下世話な冗談に、悟は恥ずかしそうに視線を逸らしている。
久はそんな悟に身体を寄りかからせた。
「ねぇ、さとる。大会期間中の予定は聞いていたわよね」
「あ、あぁ。泊まるホテルと、女子は大部屋で男子はツインが一部屋なのは知ってる」
「私たち清澄が勝ち進んでいくと、結構な時間、空きができちゃうのよ」
「対戦相手の分析とかはしないのか?」
「もちろんやるけど、せっかくの機会だもの。みんなで海に行きましょう?」
「海、あの伝説の」
「いや修学旅行で見かけるぐらいはしたでしょ」
「まぁ様式美だし」
海なし県のノルマを終えたら、久は悟の顔を上目遣いに見つめた。
「それでね、水着……どんなのがいい? やっぱりビキニかしら。一緒に選ぶ?」
「学校指定のじゃなくていいのかね」
「やぁねぇ、花も恥じらう女子高生よ? それにね……」
久は悟の耳元に口を近づけ、ぼそぼそと囁く。
「自由時間に二人で抜け出したら、ね? 水着で、うふふ」
そんな彼女の甘いささやきに、悟の妄想がふくらむ。
青い海、白い砂浜、太陽光によって白く輝く肌に映える黒いビキニの水着。
抜け出した先で、恋人に欲望の限りをいやらしくぶつけるのだ。
東京の海が青いかどうか、そもそも勝ち進んだらという前提条件のことはともかく、色々とはかどるのは分かった。
ついでに分身がムクムクと起き上がってしまったが。
「ちょっと気が早すぎるんじゃないかしら」
「すみません。すぐ治まりますので」
「……もう時間がないし、私がヌいてあげるわ。さとるも我慢しちゃだめよ」
「あ、ひさっ」
「んれろ……ちゅる、じゅるる──」
隣に座ったまま、久の顔が悟の股間に寄せられると、浴衣に手を差し込んで悟の張り出した逸物を取り出し口に含んだ。
唾液にまみれた舌で亀頭を執拗になめ回し、激しく上下させながら遠慮なしの口唇愛撫を繰り出した。
「あぁっ、ひさっ。それヤバいって──あっ」
そう間をおかずして、悟は三度果てた。
久の手管は悟に対して特効だった、なんせ弱点など手に取るように分かっている。
娯楽の少ない田舎なので、恋人同士としてやることヤってるだけともいうが。
合宿所に戻った久は、玄関で悟と分かれると、早々に温泉へと入った。
さすがに汗も流さずに対局へ戻るのは、はばかられた。
頭のてっぺんからつま先まで、丹念に泡立たせ洗い流す。
そして少しだけ温泉に浸かって身体を温め、風呂場を後にした。
前もって消臭剤をスプレーしておいた下着と浴衣を身につけ、洗面台のドライヤーで髪を乾かしていく。
「(あとは制汗スプレーしとけば大丈夫でしょ)」
仕上げに口内をマウスウォッシュでクチュクチュして濯いでいると、入り口から誰かが足を踏み入れてきたのを感じた。
どうやらそれは、鶴賀学園の部長──とよく勘違いされる加治木ゆみだった。
なにやらそわそわしながら、久の方へと近寄ってきた。
「ここにいたか」
「あら鶴賀の部長さん」
「部長は蒲原だよ──加治木ゆみ、ゆみでいい」
「私もひさでいいわ。ごめんなさい、温泉に浸かってたら時間すぎちゃってた。ってどうしたの、そんな顔して。ちょっと顔が赤いわよ」
頬を薄く染めてチラチラと久の顔を伺う加治木に、不思議そうに尋ねた。
「そのな、えぇと。見てしまったらしいんだ、私の後輩が……。ひさと彼氏の逢い引きのあれやこれやを」
「おーまいごっと」
久はがばりと加治木に向き直り、その両肩をがっちり掴んで器用に小声で叫んだ。
「嘘でしょっ!? 人の気配なんて流石に気づくし、実際誰もいなかったわよッ」
「お、お、落ち着け。見たのはウチのモモだけだし、誰にも言うなって口止めしてあるから」
「うぎぎ、不純異性交遊で全国大会辞退だなんて不名誉すぎる」
「別に告げ口なんてしないとも」
「うぅ、信用してるわよ……」
「しかし、驚いたな。もっと麻雀にストイックなタイプだと思っていたが」
耳を真っ赤に染めてうなだれる久を落ち着かせるように、加治木が話を振った。
「いいじゃない。部活の青春も恋愛も、全力なだけよ」
「そうか。それだけの相手がいるというのも、羨ましくなくもないが」
「なによ、そういう人いないの?」
「これまでは部活が楽しくてな」
そんなこんなで機密指定条約を締結した久は、加治木を伴ってロビーに移動した。
ここなら視界も開けていて人の気配が分かりやすく、座って密談もしやすい。
「なぁ、初めてはやっぱり痛いか?」
「えぇー、それ聞いちゃうの? あなたも年相応に興味あるのねー」
「うるさいな、女子高生で興味がないなんてそれこそ不健全だろうに。それで……どうなんだ?」
「そうねぇ。まぁ痛いは痛いけど、我慢で──」
結局、話の八割方ひさによるノロケに終始した女の同士の密会は、加治木を心配してやってきた東横桃によって中断を余儀なくされた。
「彼氏とあんなことしたばっかりなのに、部長にまでッ!? 手が早すぎるっすよッ!」」
なお、盗み聞きで大体の内容を聞いていたので、耳から真っ赤に染まっていて迫力はイマイチであった。
部活、合宿、浴衣──。
抜け出した二人に何も起きないわけもなく……。
書き終わって気づく、エロゲーのシナリオで絶対みたことあるようなシチュエーションでした。