※この作品はR-18です。

確率の見える世界   〜あの子とエッチできる確率は○○%!?〜   作:tomoki/名和朋樹

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7% 【6-1話】  千春ちゃんとのデートを邪魔された

【2023年6月24日】

 

 俺のこの能力が開花してから6日目。初めての土日を迎えていた。

 潸潸と降りしきる雨の中、俺は学校の最寄り駅の近くで傘を差しながらとある女の子の帰りを待っている。

 そして、ピンクのかわいらしい傘を差しながら現れた制服巨乳美少女こそ、待ち合わせをしていた千春ちゃんなのであった。

 千春ちゃんは、午前中部活動をしてきていて直接来てもらっているので後ろにリュックを背負っていた。

 

「あつし君っ。お待たせしました。結構待ちましたよね?」

 

「待ってないよ。楽しみにしてたから待ち時間もなかったようなもんだよ」

 

「やっぱりあつし君慣れてますよね。でも、嬉しいです」

 

 実際には雨の中30分くらい待っていたので少しだけイライラしていたが、そんなのは千春ちゃんの笑顔で一発吹っ飛んで行った。

 その笑顔にかわいらしい声。最初は利用しようと思って近づいたはずなのに、どうしても違う感情――――恋愛感情が渦巻いてきてしまう。

 

「今日はどこに行きますか?」

 

「さっき調べてたんだけどさ、評価高くておいしそうなカフェあったからそこ行こうか。ここから3分くらいで行けるし、口コミだとパンケーキがおいしいみたいでさ。千春ちゃんもお昼まだでしょ?」

 

「お昼何も食べて無くておなかペコペコです。それじゃあそこのパンケーキ、食べに行きましょうか」

 

 駅前のアーケードを並んで歩き出すとすぐに、すっとお互いの手が微かに触れあった。

 ほんの一瞬の出来事ではあったけど、その一瞬の感触に俺はその手に意識を向けざるをえなかった。

 

 ふとまたぶつかる。今度は明確に感触があった。

 俺は千春ちゃんの手を少しまさぐるようにして無理やりつないだ。

 その小さな手からは、確かに温かい体温のぬくもりとほんの少しの手汗を感じた。

 

 最初に家に連れ帰ったときも手を繋いでいたけど、それはある意味逃がさないようにという悪い意味があった。

 でも、少なからずの好意を持ち始めている今となると、それがかえって少し緊張してしまう。

 俺たちの間には恥ずかしさの混じった沈黙が流れていった。

 

 

 

 

 目的のカフェにつくと、そっからの時間はすぐ過ぎていった。

 おいしそうなパンケーキを一緒に食べたり、SNSにあげる用の写真を撮ったり、あの忌まわしきイケメンに告白した噂がどうなったのかの話を聞いたり。

 これは傍から見たらカップルみたいなんじゃないかって、口にしようとは思わなかったけれども、そう思い始めていた。

 それこそ俺の目的がなかったら、本当に彼女彼氏としてなってもよかったのではないかと思わされるくらいに。

 ただ今置かれている状況と、明確に好意を抱き始めていることを自覚している今の自分とにギャップが生まれていて、少しだけ悩んでしまう自分もいることは否定できないけれども。

 

「ちょっとお手洗い行きますね」

 

 カフェにいるのもそこそこに、そろそろ次の場所に行こうかなと思い始めたところで千春ちゃんがお手洗いに立った。

 男の僕としてはなかなかいいタイミングに立ってくれたので財布をバックから掴みだす。

 多分千春ちゃんは純情で、こういうのも慣れてなさそうだからそんなことは考えてはないのだろうけれども。

 

 そんな隙に会計を済ませようとしたのだが、そこを邪魔してきたのがあの超絶キラキラエフェクトだった。

 

≪あつし君☆ 何してるの☆≫

 

 突如現れては、時々邪魔をしてくる悪魔――――ラプちゃんの姿が目の前に現れた。

 今さっきまで千春ちゃんがいたところに座らないでくれる?

 君はそんなに純情じゃなければ性格がかわいくないから。

 胸だけはラプちゃんの方がデカいのは間違いなさそうだけれども。

 

≪うわ~~。女の子とデート中にほかの子の胸をガン見するなんてひどいの~~☆≫

 

 悪かったな。俺も男なもんで。

 

≪それにしてもちょっと話してない間になかなか順調そうじゃん☆≫

 

 順調といえば順調だな。

 言うても話すの2日ぶりだから大きく進捗が進んでいるわけでもないけれど。

 あと俺としては、どうせすべての行動を見られてるんじゃないかと思いながら過ごしてるから、話す機会がなくても正直あんまり変わらないぞ。

 

≪で?その千春ちゃんっていう子は君のタイプなの?確かにさやかちゃんとは雰囲気が似てる気もするけどさ☆≫

 

 そう言われて、まだ染められていない頃のさやかを思い出す。

 身長やスタイルの感じはそこまで似ていないけれども、確かに優しくて一緒に居たらなんでか心が安らぐ優しいオーラは似通ったところがある気がする。

 それと後姿が似ているような気がする。

 艶やかなセミロングの髪形は、ぱっと見の印象だと同じように見えてしまう。

 

 そう言われてみれば、なぜ気づかぬうちに少なからずの好意を抱いてしまうのかには説明がついてしまうような気がする。

 俺が好きだった女の子のあの頃に、失われたあの時と似ているのだから。

 

≪ふーん。君から見てもそう思うんだ。それで、あの子と一緒になってもいいかなとも思っていると≫

 

 まぁ、全くそのことを思っていないわけではない。

 確かに、さやかのことは今でもずっと追い求めている。

 俺が人生で一番好きだったのはさやかだって言い切れる自信がある。

 でも、それだけじゃ報われない恋だって世の中には山ほどある。

 人生の中で最も好きな人と結婚したなんて言うのは、現実にはほとんどないといっても過言ではないのではないか。

 

 そんな現実的な考えをしてしまうと、今となっては疎遠となっているさやかを落とすために今していることは、わざわざまっすぐな好意を向けてくれている女の子を弄んでまですることなのか、という疑問が、昨日からずっとぐるぐると頭の中を支配していた。

 これがどうでもいい女の子ならこんな考え方はしなかっただろうし、使うだけ使ってやろうと思ったけれども。

 

≪はぁ……。それだから君みたいな意志の弱い人間はダメなんだよ。二兎を追う者は一兎をも得ずってことわざくらい君も知ってるよね≫

 

 知ってはいるし、俺は踏ん切り付けてさやかのことをきれいさっぱり諦める未来もありかなとも思っている。

 二兎を追うくらいなら、確率の低い方は切り捨てるのも正解ではないのか。

 それがもし自分の中で永遠に1番の女の子だったとしても。

 

≪だから、本来の目的忘れてない?それ困るんだよね。私としてもさ≫

 

 そんなこと言われてもだけど……。

 それに、中出しした女の子のフェロモンを吸収するために俺に憑りついてるんだろ。

 それは十分妹と千春ちゃんがいるこのままの状態でも達成できる。

 おまえは一体何が言いたいんだ。

 

≪君の役割は私のためにフェロモンを集めてもらうだけじゃないの。君は私(・)た(・)ち(・)悪(・)魔(・)側(・)の命運をも握っている。そんな君に逃げられるわけにはいけない≫

 

 悪魔側の命運?俺はそんなものを請け負った記憶はないぞ。

 

≪君はそうかもしれないけど、私たちにも大きな事情があるの。我々の進むべき道を外れるというのであれば、少し強引に矯正しないといけないようだね≫

 

 う゛う゛っっっっっ……。

 キーーンという嫌な高音のノイズと共に急に目の前のおしゃれなカフェが、またしてもモノクロの世界へと色を変える。

 見えている世界がバラバラと崩れ去り、あの公園の風景へと再構築された。

 この温度、この空気、この服装、この場所、一年前のあの時と同じ――――。

 そして何度見てもこの記憶の最後にあるのはあの言葉……。

 

『私彼氏いるから。あと、あんた童貞でしょ。それに顔はカッコ悪いしモテないしキモイし隣居られると邪魔。私の彼氏に何一つ勝ってないから。目障り。私の前に二度と姿を現さないで。そもそも、私と付き合える確(・)率(・)は0(・)%(・)だから』

 

 ただこの記憶には続きがあった。

 いやこれは正しい記憶ではない。

 本来なかったはずの、絶対に存在することができない新たな音声が追加されていた。

 

 ――――ある人が目の前に現れてこう言い放った。

 

『君は僕との約束を破るつもりなの?』

 

 そう言った人にはノイズがかかり、なんとなくのシルエットしか見ることができなかったがおそらく――――。

 

 

 

「あつし君、大丈夫ですか?急にうめき声をあげだしたんですよ」

 

 現実世界に引き戻された俺の横には、いつの間に戻ってきていたのか千春ちゃんがいてくれていた。

 腰のあたりに何かが当たっている感触があり、首を下におろすと汗が止まらない俺の身体を小さくて細い腕で優しく抱きしめてくれていた。

 

「あ……。あぁ……。とりあえず水をくれないか?」

 

 テーブルの上に載せてあったコップをもらい、ごくごくと喉に水を勢いよく通す。

 心安らぐ優しいオーラによって、急な発作で破裂しそうになっていた心臓が少しずつ落ち着きを取り戻していく。

 

≪君がそう言う風に進もうとするなら、私がそれを許さない。君の約(・)束(・)はそんなに軽いものだったのかな?幼馴染の子を守るんじゃなかった?≫

 

 お前があの存在しない、存在できない記憶を見せてきたんだな。

 あれをこんな風に使うなんて、それをするのならどんなに使える能力を与えてくれたとしても、絶対にお前のことを絶対に許さない。

 

≪あ(・)の(・)時(・)も今この時も自分の力で大切な人を守れない男が何を言ってるんだが。命を呈してでも守った方がいいんじゃないの?フラれた女に似た子と仲良くなっただけで、簡単に大切な約(・)束(・)から逃げる臆病者のくせに≫

 

「臆病者ってどういうことだっ!!」

 

「あつし君、落ち着いてください。誰とお話ししてるんですか?」

 

 ふと周りを見渡すと、怪訝そうな顔でこちらを見つめられててその視線で少しヒートアップした心が冷静になる。

 あの悪魔はほかの人からは見ることはできない。

 そりゃ急に怒鳴りだした変な男とみられてしまうか。

 一度客観視した俺の心はひとつ落ち着いた。

 

 あいつのペースに持ち込まれたらだめだ。

 

≪君が天命に背くようなら、それ相応の報いを受けてもらう。それが君の意志に反するようでもね≫

 

 腹立つエフェクトと共に目の前の空間から悪魔は消え去った。

 俺の握った拳がテーブルにのめり込むようだった。

 

「あつし君。あつし君」

 

 身体をさすられていることに気づき、横を見る。

 

「あぁぁ……よかった。戻ってきてくれた。なんかずっと目がうつろで心配だったんですよ」

 

「あぁぁ、ちょっと変な夢か何かを見てたみたいだ。とりあえず、いったん店を出よう。さすがに千春ちゃんをこの場所に居させるのは申し訳ない」

 

 さすがに大声を出した時よりは視線が減っていたが、まだまだ怪訝そうな雰囲気が出ていて居心地が悪かった。

 千春ちゃんと一緒に、その視線から逃げるように会計をして外に出る。

 そしてそのまま駅前のベンチに並んで腰を下ろした。

 この場所は屋根の下だが、まっすぐ3歩歩けば大雨の中だ。

 

「あつし君、さっきは大丈夫でしたか?お手洗いから戻ってきたら、頭抱えてうめいてたので……」

 

「とりあえずは大丈夫そうだ。なんか急に耳鳴りがしてな。心配かけてごめん」

 

 悪魔のことを簡単に言いだすことが憚られ、苦し紛れの言い訳しかできず、とても心配そうな千春ちゃんを直視できない俺に嫌気がさす。

 少なからずの好意を持っていたのに、その好意をさらに膨らますことが、あの悪夢と約束に縛られてできなくなってしまった。

 まっすぐな好意を向けてきてくれる千春ちゃんに少なからずの罪悪感を感じてしまう。

 

 あの悪魔が俺の行動が気に入らずに悪夢を見せ続けてくるというのはかなりまずい。

 それこそさやかのことをもう一度俺のもとに戻すことができなければ――――悪魔の言う天命に背くということなのだろう。

 達成できなかった時はそれ相応の罰を受けるということか。

 

 なら今の俺にはどういう打開の方法がある?

 いっそのことこの能力を説明してしまって、そっから千春ちゃんの反応を見てどうするか決めるのはどうなのだろうか。

 いやさすがにこの能力が非現実的すぎるし、純情な彼女にそんなことのために付き合っていたという風に思われるとこちらとしても相当つらい。

 

 なんにせよ、俺は今かなり重要な分岐点にいるのは間違いなさそうだ。

 選択を間違えれば、それこそ一気に奈落行きだ。

 

「あつし君。とりあえず――――

 

「おにいちゃんっ!体調悪そうだけどどうしたのっ。って、誰そこの女」

 

 

 どこからか、雷鳴が轟いた。

 それがここからの修羅場を暗示するように――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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