確率の見える世界 〜あの子とエッチできる確率は○○%!?〜 作:tomoki/名和朋樹
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【2023年6月24日】
あまりに気まずい沈黙がこの家のリビングを支配している。
まだ、少しだけ聞こえる水音があるだけましなのかもしれない。
リビングのテーブルに置かれた4つの椅子は、買った時は家族4人分のはずだった。
この家に引っ越してきてから、仕事やらで全員が揃うことはほとんどなく、家族4人で埋めたことはなかった気がするけど。
その4つの椅子の内、2つは俺と千春ちゃんが向かい合わせになるように埋めている。
ただ、少し気まずかったのか、千春ちゃんはスマホを眺めている。
もっともその画面をスクロールさせているようには全く見えないのだけれども。
そして空いてある残る2つの椅子の内、おそらく自分の右横に今シャワーを浴びているまりなが座ることになるだろう。
彼女もまた気まずそうにシャワーを浴びに行っていた。
で、残る一席。俺から見て右前の席に視線を送る。
君はなんで椅子に座ってるのかな?ラプラス。
≪そりゃぁ修羅場を見るために決まってるじゃん☆≫
相変わらずの悪趣味な悪魔。
明らかに大きさが見合っていない椅子に座っているのは可愛いけれども、いつもの行動の数々を考えると全くもってかわいくない。
それより、一応もう一度聞いとくけど、本当に君はあの2人に姿を見せても大丈夫なのかい?
≪だってそうしないと、中出ししてくれる回数が減ってしまいそうなんだもん☆それは困るし仕方ないからね☆そのかわり、ちゃんと仲直りしてからは中出ししてよね☆≫
はいはい分かったわかった。
そっからは、俺もラプちゃんも口を閉じた――――俺はもともと閉じてるけど。
そして湯上がりの顔をテラテラ光らしながら、まりながリビングに入ってきた。
3人が揃い俺が口火を切る。
「まず、俺が話をしても良いか?」
「いいよ」
横でまりなは一言だけ呟き、目の前の千春ちゃんはスマホをポケットにしまってからゆっくり頷いた。
「今から言う話は、少しおかしい空想のおとぎ話のようなものだ。ただ、俺は一切嘘をつかないことを宣言しておく。俺は今、とある確率を司る悪魔に憑りつかれている。名前はラプラスというらしい」
「悪魔ですか?」
千春ちゃんが何を言っているんだという表情でこちらを見つめてくる。
「あぁ。その悪魔によって、俺は確率を見ることができる能力を手にしている。例えば、『今、君たちが俺の話を信じている確率』とか」
そう話しながら、少し確率を表示させようと意識するとデジタル数字が2つ出現した。
千春ちゃんの頭上には―4%―、まりなの頭上には―7%―と表示されている。
やはりこんな話を信じろって言う方がおかしいか。
「ちはるは4%、まりなは7%。やっぱり全然信じてはいないようだね」
「そりゃあ、悪魔とかなんとか言われてもわかんないもん」
首を捻ってこちらの方を向いてくる妹。
半分呆れたような表情にも見える千春。
仕方ない。
「じゃあ、実際に悪魔に姿を現せてもらうことにするよ。ラプラスいいか?」
≪もっちろん☆妹さんも千春さんも目を瞑ってもらっていいかな?≫
「うわっっなんの声!?」
「あつし君?今の声が悪魔の声なんですか?」
おそらく何かのスイッチが入ったのだろう。
ラプラスの声が急に2人の元にも届くようになったみたいだ。
驚くのも無理はない。
現に居ないはずのところから、急に鮮明に声が聞こえてくるのだから。
2人ともきょろきょろと部屋の中を眺めて、今の声のもとを探している。
勿論探しても見つかるはずがないので、早く姿が見えるようにしてもらわないと。
「あぁ。そうだな。まぁ説明は後だ、一旦瞑ってもらっていいか?」
俺の声に促され、2人は目を瞑った。
そして、目をぎゅっと抑えていた。
おそらく、あの強い光が放たれたんだと思う。
そして、それと同時に2人にも姿が見えるようになったはずだ。
「わっ!びっくりしたぁぁ」
「あなたが悪魔なのですか?」
≪そう☆私が確率の悪魔のラプラス☆ラプちゃんって呼んでほしいなっ☆≫
悪魔には似合わずちょこんと椅子に座っているラプラスは、ちゃんと自分で自己紹介をしていた。
そして2人の頭上の数字は、悪魔の姿を見たことにより一気に増えた。
これまでは明らかに非科学的で意味の分からない話をしていたはずなのに、おかしな生物が急に現れたことで一気に真実味が増して、『俺の話を信じてる確率』が一気に急上昇したんだろう。
これだけでも、姿を現せさせた甲斐があったもんだ。
「まぁ、これで俺が悪魔に憑りつかれているっていう話が嘘ではないのが分かっただろ。視覚でも聴覚でもあのサキュバスみたいな奴の存在がわかるんだから」
「うん……。それより、そのおっぱい触ってみたいっ。ものすごくおっきい……そこの女よりもね」
≪いいよ~~☆男の子には触らせないけど、かわいい女の子なら大歓迎だもん☆≫
ラプラスはテーブルの上を飛んで行き、まりなの前に止まった。
そして妹は宣言通りおっぱいを揉んでいる。
「あら、おっきい胸に目がないのね。あっそっか、ちっちゃいまな板では自分の胸を揉むことすらできないですもんね」
急に不穏な空気を感じ取ってしまった。
女同士の争いはやめてほしいところだ。
「あのさ、一旦喧嘩はやめてくれるかな。まだ、話は終わってないんだ。ラプラスも戻れ」
ちょっとつまんなさそうに、まりなとラプラスが椅子に腰かける。
「こっからは、俺が悪魔によって使える能力について説明する。といっても、さっきちょっと言ったように確率を見ることができるということなのだが……ちょっとラプちゃん説明してくれないか」
俺はこの場に及んでラプラスに投げることを選んだ。
≪え~~なんで私に丸投げするの~~☆≫
「だって、女の子にああいうこと言いたくないじゃん。あと、これはラプちゃん側の事情もあるわけだしちょっと頼んだ」
≪まぁいいよ☆こっからは私が説明するね☆
まず、私は憑りついた男の子が中出しした相手から出てくるフェロモンを栄養にしているの。つまり、君たち2人のフェロモンってことね≫
俺が中出しを繰り返している2人の女の子たちを見回す。
その表情から見える感情が、俺にはよくわからなかった。
≪そして、フェロモンは私にとっての栄養でもあるんだけど、私が管理している確率を司る力の復活にも使われているんだ☆≫
力の復活?そんな話は俺も初耳だった。
「おい、俺そんな話知らないぞ」
≪いや、君も知ってるでしょ。確率が操作できる幅が広がっているの。あれが能力がどんどん復活している証拠よ≫
慌てて問いただしたが、確率を操る力がそれだったようだ。
≪少し2人に分かりやすく教えると、私が彼に与えている能力には確率を操作できるものもあるの。確率を操作すると、操作した分世界がねじ曲がって本来あるべき世界から外れていく≫
操作した分世界がねじ曲がる、か。
確かにおかしなねじ曲がり方をしているからこそ今のこの関係が発生しているのかも知れない。
本来関係を持つはずのなかった2人は、真剣にラプラスの方を向いて、その言葉の1つ1つを聞き逃さないようにしていた。
≪例えば、そこのエロガキは『1分以内にイク確率』を見ながらエッチしてた。そして、イク確率を本来の確率より上昇させるとその数値に合うように勝手に快感が増幅されて、イきやすくなるの≫
「はぁぁ?だから初めてのはずなのにあんなに気持ちよかったってこと!?勝手に操作されてた!?」
≪あら、最初の時は確率の操作はしてなかったよ。だから、イッたのはあなたの中の本性よ。それを数値化してわかりやすくしたに過ぎないの。それに、あなたが『お兄ちゃんとエッチしたい確率』が93%もあったからああなったんだけどな~~≫
初めて兄妹で交わったときのことを思い出したのか、まりなは恥ずかしそうに俯いている。
≪少し話が脱線したけど、確率を操作する力は本来はもっと強力で使い放題だった。ただ、今はいろいろあって1日1回、コントロールも少ししかできない。私の目的はこの能力を復活させることなの≫
「質問してもいいですか?その能力を復活させるには何をすればいいんですか?」
≪さっきも言った通り、彼に中出ししてもらうこと。中出しの回数1回につき1%ずつこの能力が復活して、確率操作の幅も1%増える。そして中出しの回数が100回に到達すれば、ひとまず第一段階まで復活☆そうすれば、確率を完全に操作することができるの。中出ししていない人には1日1回しか使えないけどね≫
ここまででラプラスの説明が終わった。
そして、なんとなくではあるが、ラプラスが俺にさせたいことも理解できた。
どちらにせよ、中出しを繰り返さざるを得ないようだはあるけども。
≪こっからは、あつし君の番でしょ☆あとはよろしくっ≫
「あぁ。まず、ちはるに謝らなきゃだな。実は俺はこの前カラオケで話をしていた中で一つだけ嘘をついていた。あの話に出てきた女の子――――さやかのことを俺は諦めきれてないんだ」
その言葉を口にしたとき、罪悪感と開放感を覚えた。
これ以上だますようなことはしたくなかった。やっと言えた。
ただこの瞬間から、俺のこれまでの行動はすべて打算だったと認定されることになる。
「まりなは知ってると思うが、さやかにフラれた時、こう言われたんだ。
――――私と付き合える
ってな。さやかのことを忘れたことはない。初めて出会って一目惚れしたあの日から一度も。でも俺は諦めていたんだ。この恋心を。ただ、今の俺には確率を操る力がある。付き合える
千春はうつむいてその表情を伺うことができなかった。
「だからごめん、ちはる。俺は君の気持ちにこたえることができない。本当に申し訳ない」
俺も頭を下げた。
顔を上げられなかった。
「だけどこの何日か、ちゃんと話してから3日しか経ってないけど、それでも俺は一緒に居る時間が楽しかった。居心地がよかった。久しぶりに心から笑えてたように気がするんだ。それは紛れもなく、ちはるに好意を持っていたからなんだ。だから、俺の隣で笑っていてくれないか。こんな俺だけど、これからも友達でいてくれないか」
千春が何かを言うまでは頭を下げ続けようと思っていた。
彼女にしたことによって、人生を大きく捻じ曲げてしまうことになったのだから。
「実は、あつし君が失恋を乗り越えていなかったの気づいていました。カラオケでこの話をしたときにあつし君すごくつらそうな顔をしてたから……」
気づかれていたのか……。
自分ではうまく取り繕えたと思ってたんだけどな。
「でもそんな状態で、私のことを慰めてくれようとしていたのを見て、あつし君は本当に良い人なんだなって、それで……私の方向いてくれますか」
下げていた顔を上げて、まっすぐ千春の顔を見つめる。
その顔は意を決した面持ちだったように見えた。
「それで……最終的に報われない恋だったとしても、私に新しい世界を見せてくれたから。そんなあつし君の頼みならいつまでも隣にいます」
その澄み切って綺麗な声が俺の心に響き渡る。
「それに、エッチはしてくれるんですよね。毎日顔を合わせてエッチしてくれるだけでもう十分幸せです。これからも友達として、よろしくお願いします」
千春はそう言ってこの関係を受け入れた。
彼女のその想いに俺は無言で一つ頷いた。
密かに流している細長い線には気づかないふりをしつつ。
「まりな」
次に横を向きなおり、大切な妹――――まりなに声をかけた。
「おにいちゃんはさやかちゃんのことをどう思ってるの?」
「俺にとって大切な幼馴染で、初恋の相手。俺が今一番救いたい相手」
「おにいちゃんにとってさやかちゃんが大切な人であるように、私にとっても大切な友達なんだよ。毎日さやかちゃんと、たくみ君と双子同士4人で遊んで。4人で笑って。4人で出かけてってしたはずなのに。気づけばおにいちゃんと2人しかいなくなっちゃった」
俺の目にも数々の思い出がよみがえってくる。
ある時は4人で公園で砂まみれになりながら走り回った。
ある時は4人で遠足のおやつを買いに行った。
ある時は4人でレースゲームをしたとき。
毎日のように遊んでいたはずの俺らは、あの出来事を境に4人が揃うことが無くなった。
そして今となっては、3人すらも揃うことはない。
「もうこれ以上大切な人を失いたくないの。おにいちゃんはまりなから離れていかない?」
「もちろん。絶対に。約束する」
「わかった。私もさやかちゃんのことを救うためのお手伝いすることにする。おにいちゃんがいろんな女の人とイチャイチャするのはいやだけど……」
「ごめんな。妹に嫌な気持ちをさせてしまうお兄ちゃんで。でも、ほんの1か月くらいだけでも見逃してくれ」
「1か月だけだからねっ。それ以上は許さないから。そしたら、また3人で遊ぼうね。絶対だよ」
千春ちゃんもまりなもいろいろ思うことがあるだろうけども、今の関係を受け入れてくれた。
残るはこいつだけだな。
「ラプラス。お前のことは気に入らないけどな。こればっかりは利害が一致してるからもう文句は言わない。俺に力を貸してくれ」
≪もっちろん☆じゃあ私ともエッチしてくれる?≫
「それは申し訳ないが飲めないけど、キスくらいならまぁ許さないこともないぞ」
≪ん???もうキスはしたんだけど覚えてないの?☆あっ君の寝込みを襲ったんだった☆≫
「やっぱキスもダメだな。お前はフェロモンで十分だろ」
≪え~~けちぃぃ~~≫
「お前が悪い」
こいつはやっぱ最低で最悪な悪魔だ。
でも、俺はお前のこと嫌いではないぞ。
「よし、ひと段落着いたところでもういいだろう。いがみ合うのは終わりにしよう。気持ち切り替えて楽しいことしようぜ」
「何するんですか?」
「せっかくかわいい女の子が2人いるんだから3Pに決まってるだろ」