確率の見える世界 〜あの子とエッチできる確率は○○%!?〜 作:tomoki/名和朋樹
【2023年6月19日】
≪じゃあ、確率がわかってたらいいの?≫
は?だれ?どこ?なに?
俺の脳に、女の子の声が聞こえてきた。
空耳にしてはあまりにも鮮明すぎる音が。
俺は部屋の中をきょろきょろと見渡す。
何度も何度も見渡す。
しかし、動く影一つすら見つけることができない。
≪ここだよ
もう一度同じ声が聞こえてきた。
はっきりと鮮明に、しかも俺の名前が呼ばれた。
明らかにその声の元は俺に対してしゃべりかけている。
声から考える俺の予想では結構かわいい女の子って感じだな。
でも、その声の元はやはりどこにも見つけることができない。
俺の部屋は完全にいつも通り。
いや、ゴミ箱のティッシュの山はいつもより高い。
そろそろ片付けとかないと。
じゃなくて、君はどこにいるんだ?
≪あ、そっか見えないのかぁ。忘れてたぁぁ。テヘっ☆≫
なに?ぶりっ子してんのか?
てか、見えないのかぁじゃないのよ。
じゃあ、姿を現せや。
≪お望み通り姿を見せて、ア・ゲ・ル☆ ちょっと目を瞑って~≫
なぜの声に言われるままに目を瞑る。
何が?何が起こるんだ?
目を瞑ってて黒い視界が、強烈なライトを当てられたかのように白く染まった。
あまりの眩しさに目をぎゅっと閉じる。
しかし、その眩しさはほんの一瞬だった。
視界が再び漆黒に戻ったとき、また謎の声が聞こえてきた。
≪じゃあ、目を開けてもいいよ~。こんにちはあつし君☆≫
目をゆっくりと開けた先にいたのは、女の子のような見た目をしていた50cmほどの生き物だった。
あどけないロリっぽい顔のパーツに、青がかった紫色の髪の毛に、紫色の瞳。
上半身に着けている服はめちゃくちゃデカいおっぱいを隠すような青色のランジュリーだけで、ほとんど裸のよう。
乳首のあたりは隠れてるけど、巨乳の7割以上は隠れていない。
下半身は、紫の超絶ミニスカートに黒のタイツ。
さらには、角に羽に尻尾まで。
見れば見るほど、俺の持っているサキュバスのイメージにぴったりすぎる。
は?これ幻覚?夢?時間が経てば経つほど異次元の情報量に頭が混乱して思考が停止してしまう。
あ……、なんでそもそもこいつがいるんだよ。
俺何かサキュバスに喧嘩でも売りましたか?
俺が今日働いた悪事は、学校の帰り道で何気なく蹴った石が誰かの車にあたったくらいだと思う……。
さすがにその車にとりついてたサキュバスって線はないだろうし。
≪あつし君それはよくないよ。見てたけど。それと、私はサキュバスじゃない。悪魔。あ・く・ま≫
へぇえサキュバスじゃなかったんだ。
どう見てもサキュバスなんだけど。
あと、ロリっぽい見た目に巨乳は結構俺のタイプだったんだけどね。
てっきり何か吸い取られるのかと思ったよ。
色々な意味で。
てかそれより悪魔とか自分で言うのか?
自分のことを『悪』っていうやつは中二病くらいしかいねぇよ。
しかも男ならまだしも女となればただのやばいやつだろ。
≪ちゅーにびょーとか言わないで。そもそも、悪魔って呼んでるのは人間でしょ。私たちは、私たちが『悪』なんて一つも思ってないし~~≫
あっそ。まぁこいつが悪魔かどうかなんてどうでもいいや。
てか、なんで俺はこいつと話してんだよ。
あと、なんで話せてるんだよ。
そもそも、何用だ。
ふわふわ浮かびながらこっちをじろじろと見てくる巨乳のサキュ……間違えた。悪魔を睨みつける。
困ったように両手を挙げてやれやれというポーズをとる悪魔。
何?そっちが押し掛けてきたくせに舐めてんのか?
まぁ、それよりも何のために俺の前に現れたのかを教えてくれよ。
確率がなんとか言ってたよな。
そっちの方が気になるわ。
≪あぁぁそれ? 聞いちゃう? 聞きたいの?≫
そういうこと言われるとなんか、聞く気失ったな。
わざわざそういう風に言われると腹立つしこいつつまみだすか。
ベッドのふちに腰かけていた俺は、目の前の悪魔をつまみだそうと目の前の空間に手を伸ばす――――。
あれ?ここにいたよね?
無情にも手はどこにも触れることなく空を切った。
≪ざんね~ん☆ 私空想上の悪魔だから、実体はどこにもないんだよね~。私はあなたの脳にいるの。まぁイメージするならAR(拡張現実)的な感じ? 特定のデバイスを通じてじゃないと見えないのっ≫
じゃあ、俺はなんで見えてるんだよ。
ゴーグルとかスマホとか、何も使ってないぞ。
≪それは、あつし君の目がデバイスになってるからだよっ。さっきいじらせてもらったの≫
さっきの謎の眩しい光がそれってことか。
こんな奴が見えるんだったらあんま嬉しくないなぁ。
正直見えなくても何も問題ないわけだし。
生きていくにはこういうやつと関わらない方が良さそう。
だけど現実問題、なぜか見えるようになってしまった。
それに、俺の目がデバイス代わりになってるなら他の人からは見ることができないってことなのか。
≪ぴんぽーん☆ せいかい☆ ちなみに、私の声もあつし君にしか聞こえないよ。よかったね。独り占めじゃーん≫
もう突っ込む気力なくなってきた。
なんだよこの悪魔は。
つまみだすことも視界から消すこともできないんだったら、早く要件を済ませてくれ。
≪はいはい、ごめんごめん。それじゃあ本題入るね。君って確率って言葉は知ってるでしょ≫
まぁ、学校で習う数学的な話なら。
≪その確率がわかってたらって思ったことはない? まぁ、あるよね。君が大切な大切な幼馴染にフラれた時の話だよ。あ、今は元大切な幼馴染かな?≫
『そもそも、私と付き合える
意地悪く笑う悪魔の言葉につられるように、この言葉がリフレインしてきて、苦虫を嚙み潰す。
まぁ確かに、確定でフラれるとわかってたなら絶対告ってない。
そのせいでこういう風にメンタル的にも引きずってるわけだし。
何なら俺は90%以上の確率で成功するって思ってたくらいだから。
なるほど確率は確かにわかるに越したことはないかもしれないか……一理はあるな。
≪そう。確率って人の目には見えない抽象的なものだけどさ、重要な要素なんだよね。そこで一つ、悪魔からのプレゼント。もう一度目を瞑ってよ≫
と言われましても。
変なもん掴まされないかかなり心配なんだけど。
悪魔に力を授けられるなんてシチュエーション、嫌な予感しかしないだろこれ。
せめてもの抵抗と目を開けたまま悪魔の方を見ていると、悪魔はふわふわッとこっちに飛んできて顔の前にいる。
近い、近すぎる。状況が状況ならキス待ちって感じだぞ。
≪キスしてほしかった?≫
別にそうとは言ってない。
≪まぁいいや。これは私の独断と偏見によってすでに決まったことだから☆ 目瞑ってよ≫
そういうと、悪魔は20cmの身体に対してはあまりにもデカすぎるおっぱいを目に押し当ててきた。
そして視界が柔らかい脂肪によって漆黒の闇に包まれる。
うわっ、やわらけぇぇ……じゃなくて、なんで当たってる感覚があるんだよ。
俺からは触れないのに、どうなってんだ?
混乱している俺の黒い視界が、また強烈なライトを当てられたかのように白く染まった。
あまりの眩しさに今度は目をぎゅっとおっぱいに押し当てる。
眩しいからね。これは不可抗力だ。
しかし、その眩しさはほんの一瞬で、サキュバスみたいな悪魔のおっぱいに目を押し当てている高校生男子という状況だけが残った。
いっっっっっっっっってぇぇぇぇぇぇぇ!!!
なんで俺が叩かれてんだよ!!!
≪はぁぁ???? 女の子のおっぱいに顔うずめてるからでしょ!!! このエロガキがぁぁぁぁあ≫
最初はそっちがおっぱい押し当ててきただろうが!!
あと、眩しかったらぎゅっと手で押さえたりするだろ、それがおっぱいだったってだけだろうが。
あの光もお前のだろ。お前が悪い。
≪はいはーい。わたしがわるかったですーーだ☆ それでね、これであなたは確率を知れるようになりました。おめでとう☆≫
と言われましても。
えっと何も変わってないですよ?
部屋の中を見渡しても、やはりおかしい点は何も無かった。
あ、そこで飛んでる悪魔を除いてだけど。
≪じゃあせっかくだし試しに面白いもの見せてあげる。とってもびっくりすると思うよ☆≫
ついてきてといわれて向かった先は妹の部屋だった。
某男性アイドルグループのポスターやらグッズが並べられているその部屋に、俺の妹の後姿が見えた。
ピンク色を基調にしたもこもこのパジャマを着ている。
我が妹よ、部屋着とはいえ威力高いな。
スマホか何かで動画を見ているが、妹の身体が邪魔で何を見ているのかわからないし、有線イヤホンをちゃんとつけているので音声も聞こえてこない。
俺みたいにちゃんと差し込まずに使ってるわけではなさそうだ。
――――って、これドアをちょっとだけ開いた隙間から、こっそりのぞき見してるのばれたら怒られるわ……。
さっきちょっと喧嘩っぽくなったからなおさら気まじぃぃ。
そこのサキュバスか悪魔かよくわからん奴は見えてないだろうから良いんだけど、俺はもちろん生きてるし見えてるから普通に怒られるな。
いくら双子とはいえ、高校生の女子の部屋を覗くのは犯罪なんよ。
で?こんな犯罪までして何を見せてくれるのかな?
≪言ったじゃん。確率が見えるようになったって。あの妹さんについての面白い確率見せてあげるよ☆ 驚かないようにねっ☆≫
妹に関する面白い確率ってなんだ?
例えば、妹に好きな人ができる確率とか?
≪それも結構面白そうじゃんっ☆ じゃあ先にそれを見てみよう! 期間は無制限だとだめだから、一か月にしよっか。あつし君、心の中で『一か月以内に妹に彼氏ができる確率は?』ってイメージしてみて≫
まぁ、そう言われたからにはイメージしてみるか……。
俺的にも妹に彼氏ができるかどうかは気になるっちゃ気になるし。
渋々という表情を浮かべつつ、内心では結構気になりながら、頭の中でイメージする。
『一か月以内に妹に彼氏ができる確率は?』
って、そんなことを考えても確率がわかるなんて――――。
―18%―
えっ…………
急に妹の頭の上にデジタル表示の18という2桁が現れたのだった。
これホントの数字???
≪うんっ☆ これはほんとでまじでガチの数字だよっ! 18%かぁ。妹さん結構かわいい顔してるのに思ったより低いなぁ≫
いやいやいやいや18%って結構大きくね?
だって6回に1回以上は彼氏できてるんだぜ。
そんなレベルで付き合うの?高校1年生が???
いや、でも、低すぎるよりはマシなのか?
それだけ魅力あるってことなんだし……。
まぁ、今はいいや。
もし、変な奴に捕まりそうなら何か手を打てばいいわけだし。
残りの82%は大丈夫なんだから。
いや違うな、先に変な奴に捕まる確率を知っとけばいいんじゃないのか?
おい悪魔、それ見れんのか?
≪もっちろん☆ 『1か月以内に妹が変な奴に捕まる確率』ってイメージしたらいいよ。ちゃんと君の嫌なタイプの人間で判定されるから≫
俺の嫌なタイプがなぜわかるんだ?
いやいやそれより今は妹の方よ。
いくら喧嘩気味でも、変なチャラチャラしたやつに捕まって急にギャル化されたら無理。
それか、ヤリチンに堕とされて毎日外泊とかなったら絶望するわ。
ともかく、俺は兄としてこの確率は知っとくべきなんだよねぇ〜。
全く意味もない言い訳をしつつ、頭の中でイメージを固める。
『1か月以内に妹が変な奴に捕まる確率』
―12%―
うおぉぉぉぉそれはいやだわ。
18%で彼氏ができてその内12%はクソごみカスに捕まっちゃうってことかよ!!!
それはさすがに無理だぁ……。
とりあえず、交友関係洗っとこ。
それよりも、この能力――――やばくね?
普通にやばい。やばすぎるにもほどがある。やばいしか言えない。
≪そっ☆ この能力はマジでやばくてやばいんだよ~~~☆≫
あの、お前まで語彙力なくしてどうすんのよ。
もうちょっと説明をくれ、説明を。
≪説明は後でいいでしょ。本当の話はここからっ☆ 次は、『今、妹が俺とSEXしたい確率は?』ってイメージしてみて≫
ん?いもうととおれがせっくす????
なにをいってるんだ??このあくまは????
≪何って、言葉の通りだよっ☆ ほらほらイメージしてみて~~≫
いやいやダメだって。
そんなの絶対だめだから。
近親相姦まっしぐらじゃんか。
もし確率が0%だったとしてもそんなこと許されないでしょ。
≪しょうがないなぁ。じゃあ、勝手に確率見せてあげるね。『今、妹が俺とSEXしたい確率』どーーーーん☆≫
無邪気にはしゃぐ悪魔の声とともに、妹の頭上に数字が出現した。
さっきと同じデジタル表示で2桁――――
―93%―
????????????
妹が、まりなが、俺とセックスしたいってことなのか???
しかも、今。今まさにやりたいってことなのか???
いや、それ以外に解釈できない……。
いやまてまてまて、これは自分で確率を見ようとしなかったのに対する悪魔の嫌がらせの説がある。
自分の意志で確率を見たら変わるんじゃないのか???
『今、妹が俺とSEXしたい確率は?』
―93%―
変わんねぇ……。
この能力が本物なら、妹が近親相姦になるのをわかってる上でやりたいってことなのか……。
いや、さすがにそれはないって……。
真面目でいつも笑顔でご飯とかもよく作ってくれてるかわいい妹が、俺にそんな……。
その時、少しだけ開いていたドアに体重をかけすぎたのか、ドアが大きく開け開く。
「あ、やっべ……。」
ドアが開いた時の物音で気づかれたのか、妹が上半身だけこっちの方を向いていた。
「キャっぁぁぁぁあ!!!!!! おにいちゃんのエッチぃぃぃぃぃ。なんで覗いてるの!!!!!」
「あっ。いや、その……」
妹は見ていたスマホの画面を勢いよくバタンと倒す。
その時――――。
『あぁぁっん♡♡ おにいちゃんちゅき♡♡ ちゅき♡♡ もっとっ♡ もっとっ♡♡ おにいちゃんのちょうだいっ♡♡♡』
この部屋は一瞬にして凍り付いた。
俺も、妹も、誰も一歩も動くことができなかった。
動いていたのは、これを予想していたのかニヤニヤしているクソ悪魔と、イヤホンが外れて暴走しているスマホのスピーカーだけだった。
『おにいちゃんちゅきっ♡ おにいちゃんでイッちゃうっ♡♡♡ イクっ♡♡ イクぅぅぅぅぅ♡♡』
あ ああ 修羅場確定やんこれ……。
とりあえず音量下げろや。