確率の見える世界 〜あの子とエッチできる確率は○○%!?〜 作:tomoki/名和朋樹
【2017年9月1日】
松崎市の松崎駅と言えば、この市の中心地でもあり一番の繁華街。
近くにあの県立高校ナンバーワンの松崎第一高校があることから、藍色基調の制服を着た高校生も通りすぎていく。
そんな駅の前の広場にて、ある双子の兄妹が小さなこどもケータイを片手に、待ち合わせをしていた。
「よぉあっくん。遅かったじゃねぇかよ」
黒髪ツーブロックで、派手柄のTシャツにジーパン。おまけにピアス――――耳に穴は開いてないけどを付けていて、いかにもチャラい感じの男の子が、歩いてきたあつしとまりなに向かって手を挙げている。
「わりぃわりぃ。ちょっとうちのママがうるさくてさぁ。4年生4人でお出かけはやっぱり危ないんじゃない?とか言ってきやがってよ」
あつしは右手で頭を擦って困ったアピールをしながら2人の元に近づいていく。
「いつもやってることなのになぁ。ったく10歳にもなるのに信頼度がねぇなぁ」
そこに真っ白なTシャツにパステルブルーのスカートを纏った女の子が割って入る。
「ねぇ、たくみ。ちょっとその前にこっちが先でしょ。あつし君もまりなちゃんもお誕生日おめでとう!」
「おぉそうだったそうだった。2人ともおめでとうな」
「ありがとう。たくみもさやかも」
「ありがとね。たくみ君!さやかちゃん!」
あつしはたくみに肩を強引に組まされ、まりなとさやかは手を繋いでぴょんぴょん跳ねている。
「本当はね、学校で言おうと思ってたんだけどね、ぜんぜんタイミングが合わなくて……。ちょっと遅くなっちゃったね」
「ぜーんぜん遅くないよねー、おにいちゃん」
「そうだな。それに言うほど誕生日って感じは無いしな」
「もうあっくんは10歳なんだな。先に10歳になりやがって」
たくみはあつしの頭をぐりぐりしながら言葉を続ける。
「最初に出会ったときが2人の3歳の誕生日だったから、もう7年だな。はえーなぁ、もうそんなかよ」
「あぁ。さやかが『ママどこ?ママどこ?』って泣いてた日から7年か」
悪戯心であつしはさやかに彼女の黒歴史を投げかける。
さやかは頬を膨らませながら口を窄めていた。
「やめてよ。それかなり前の話じゃん。あの時2歳よ2歳。そりゃあ泣いちゃうこともあるでしょ!今はもう私泣かないよ」
「この前4人でお化け屋敷入った後に、おにいちゃんの腕をぎゅっと掴みながら泣きついてたくせにぃー?」
「もうまりなちゃんもやめて!あれは本当に怖かったの!そんなまりなちゃんも観覧車に乗った時、たくみに抱きついてたじゃん」
「あはは。そんなこともあったな。いやぁ、マジであの時は焦った。まりなちゃんに急に抱きつかれた時はドキドキしたよ」
その後も、お互いの微笑ましい黒歴史の言い合いをしていて、ちっとも予定が進まないのに嫌気の差したあつしが強引に話の流れを折った。
「お前らもうそろそろ言い争いは終わりにしような。そろそろ行くぞ。家でパーティーするみたいだし帰りが遅くなるのもあんまりよくないからな」
その声と同時に言い争いをやめた4人は、仲良くかたまって駅の構内へと足を進めていく。
あつしの横の少しチャラそうな男の子は
この4人の中では一番背が高くて、体格もよく運動神経は抜群。
それにいわゆるイケメンに部類される顔をしているせいで、同級生に結構モテてる。
勉強は全然できないくせに足が速いってだけでモテてて羨ましい。
その横の女の子は
あつしと同じ小学4年生で、たくみとさやかも双子の兄妹だ。
そんなさやかは黒髪ロングにメガネを掛けていて、いわゆる委員長っぽい感じなんだけれど、みんなで遊ぶ時はかなりはっちゃけてる。
おそらく活発な兄の影響だ。
そんな世にも珍しい双子の兄妹2組の出会いは7年前の今日。
あつしとまりなが通っていた幼稚園のバスに、その日から新しく乗っていたのがたくみとさやかだった。
あつしから見て向かいの席に座っていたさやかは、兄のたくみの手を握りしめながら不安そうな目をしていたのだけれど、時間が経つにつれてバスの中で泣き出してしまった。
そんな彼女を、同じように初日に泣いていたまりなのことを思い出したあつしが、幼いながらに勇気を振り絞って話しかけ慰める。
これがこの4人のファーストコンタクトだった。
その日からちょうど7年。
家が近いこともあり、同じ双子という共通点もあり、すぐに仲良くなった4人は、親も巻き込み家族ぐるみでの付き合いを続けていた。
どっちかの家に勝手にお邪魔することなんて日常茶飯事。
部屋にだって勝手に上がり込んで、お菓子や漫画を漁って散らかしていく。
向こうの親に怒られたことなんて何十回、何百回もある。
まぁさすがに最近は怒られる頻度が減ったのだけれど。
親同士も仲がいいし、お互いの誕生日の時には二家族集まって夜に誕生日パーティーを開いてくれるというのが毎年の恒例になっていた。
それにあつしとまりなの誕生日でもある9月1日は、小学校の始業式で校長先生の長い話さえ聞けば午前中で終わるし、宿題もない。
夜のパーティーまでには結構時間がある。
ということで4人で電車に乗って遊びに行こうという話になっていたのだった。
これから4人が行くところは、海の近くで駅からもほど近いショッピングセンター。
国民の遊び場とも評されるその場所はとても広くて、誇張なくなんでもある。
なんなら近くに野球場に馬鹿でかいイベント会場だってある。行かないけど。
電車に揺られること20分。
ショッピングセンターに着いた4人がまず向かったのは映画館。
あつしとたくみがどっちも特撮好きで、その2人に付き合う形でまりなとさやかもよく日曜朝7時半からテレビの前にいることが多い。
ということで某ライダーと某ヒーローの映画を4人で仲良くポップコーンを摘まみながら見ることになっていた。
2時間の映画を見てからは、ゲームセンターでメダルゲームを遊んだり、4人でプリクラを撮ったり、太鼓をバチで叩いたり、エアホッケーで対戦をしたり。
小学生の有り余る体力を存分に使い、はしゃぎまわり疲れた4人は、Mの看板のチェーン店でポテトを摘まみながら休憩していた。
「はぁー疲れたぜ。ちょっとはしゃぎ過ぎたな」
たくみはLサイズのコーラを片手に、トレイに無造作に置かれたポテトを何本も同時に食べている。
「お前はしゃぎすぎな。でも楽しかったし良い思い出だなこれ」
「まりなも楽しかった!」
「だねぇ~。私もかなり楽しかったよ」
4人は笑いながらポテトを摘みつつ、会話に花を咲かせていた。
するとそこにたくみが一つ話題をぶち込んできた。
「で、10歳になったわけだけどよ。好きな人の1人や2人くらいいないの?ね、あっくん?」
そう。小学生同士なら絶対にやる恋バナ。
誰々が好きとか嫌いとか付き合ってるとか。
思春期始まりたてにとっては気になる質問だった。
目の前に座っているたくみから、急にそんな話題を振られて慌てふためくあつし。
あつしは一瞬チラッと斜め前を見てから、目線に気づかれないように色々なところに視線を送る。
「は?いねぇよそんなの」
「その目は嘘をついている目だな。目が泳いでんぞ。ほらいるんだろ白状しろよ」
「いてててて。まっ、まぁいるけど……あれだよ好きな人はいるけどここでは絶対に言えない的なやつだよ」
たくみに手首のあたりをつねられて観念したのか、あつしは白状する。
「ここでは言えない。ねぇ」
あつしのその苦しすぎる言い訳を聞いて、ニヤリと笑うたくみとまりな。
「てかほら見ろやっぱり好きな人いるじゃねぇか」
「おにいちゃんさすがっ」
2人の挑発がムカついたのかあつしが少し声を荒らげる。
「うっせぇなぁ!なんなんだよお前らさっきから!」
そんないつもの騒がしい3人の言い合いを見ていたさやかは、顔を赤くしながら少し俯いていた。
「あつし君好きな人いるんだ……」
「さやかちゃん?どうしたの?」
そんなさやかの様子を心配するような感じで、まりなが声を掛ける。
「まりっ、あっ、なっ、なんでもないよ!」
自分が何かを考えていたことがバレると恥ずかしいと思ったのか、手をバタバタさせて誤魔化そうとする。
その様子を首を傾げながら見ていたまりなは、さやかの隣に座り直した。
「ねぇ~、さやかちゃんもさぁ正直に言っちゃおうよぉ~。前にお泊まりした時に言ってたじゃん」
耳元で小声で囁きほっぺをツンツンするまりなを見て、顔を真っ赤にしながら知らないフリをして黙り続けるさやか。
2人を見ていたたくみが少しニヤニヤしながら口を開いた。
「もしかしてさやか……あっくんのこと好きなのか?」
それを聞いたさやかは顔を更に赤くして固まってしまう。
「そっ、そんなわけないじゃん。やめてよたくみ」
最初は言葉に力があったが、徐々に声が小さくなっていく。
そんな慌てた様子のさやかを見たまりなが、ニヤニヤしながらさやかをからかい始める。
「でも〜この前2人並んでベッドで寝た時にー『あつし君優しくて大好き!』って言ってた気がするんだよなぁ」
「それマジか?まりな」
「大マジ!」
「マジかよー。ま、あっくんになら大切な妹を任せられるな。あっくんが好きな人も大体わかるしなぁ。てなわけでそろそろ帰るか。まりなちゃん2人置いて先行っちゃおうぜ」
「了解!」
そうたくみに元気よく返事をしたまりなは、さやかの耳元に顔を近づけて嬉しそうに囁き始めた。
「頑張ってね!応援してるよ」
そんなことを言われたさやかは照れながら俯きつつも小さな声で……「ありがと……」と呟き返していた。
「あの2人絶対両想いだよね?」
「だろうな。これはこれから楽しみな展開が待ってるかもな」
夕暮れの赤い太陽が眩しく辺りを照らす中、先を行く2人の後ろ20mくらいをあつしとさやかは歩いて追いかけていた。
楽しそうな2人とは対照的に、こちらは少し重苦しい雰囲気が漂っていた。
どちらが声をかけるのか、なんて言ったら良いのか、あまり無い状況に少しばかり困っていた。
「でさ、さやか……さっきの話だけど……まりなが言ってたのって本当?」
「うん……。ほんと。あつし君のことはずっと好き……かな……」
さやかはそっとあつしの手を取って繋いだ。
その影が目の前に伸びてあつしの目に映る。
「でも、あつし君は好きな人いるんでしょ?」
「確かに俺の好きな人はいるよ。幼稚園の時に出会ってからずっと好きな人が……」
何かを言おうとしているあつしを見て顔が真っ赤になるさやかだったが、覚悟を決めたのか言葉の続きを待っている。
あつしは心を決めたのか一呼吸してから続ける
「俺もさやかのこと……」