確率の見える世界 〜あの子とエッチできる確率は○○%!?〜 作:tomoki/名和朋樹
――――昨年5月
桜並木から鮮やかなピンクは消え、少しずつ緑の息吹が感じられるようになってきた木々の下で、俺は幼馴染のさやかを待ち続けていた。
しょうもない口喧嘩から1週間、ほとんど口を利かず放課後も別々に帰る日々を送る中で、自分の中での彼女の存在価値は大きいことに気づいた。
心なしか笑顔が減った。口数も減った。
明確にテンションが下がっていた。妹からも相当心配される始末。
そして決心がついた。
今日俺はさやかと仲直りをする。そして恥ずかしくて、勇気が出なくて何度も言おうとして言えなかった思いを伝える。
正直なことを言えば、この告白は失敗する未来が見えない。
俺とさやかが両思いなのは俺たちの関係性を知っている人間なら周知の事実ではあるし、幼馴染という名札が『彼氏』『彼女』に変わるだけ。
その小さいようで大きい一歩を踏み出して、晴れて12年越しに結ばれる。
ただ現れた彼女の出で立ちは、そんな想像していた俺の脳みそを混乱させるには十分すぎるほどだった。
「ねぇ何用? 喧嘩してる相手急に呼び出してさ、謝るならLINEで良くない?」
いきなり喧嘩腰で来たさやかに、俺も少し苛立たざるを得ない。
俺もさやかの気になった点をすぐに言い返してしまった。
「おいさやか、どうしたんだよそれ」
艶やかで太陽の光をよく反射する艶やかな黒髪は、いつの間にか青紫色のような色に染められていた。
その色も見る人が見れば綺麗と思うかもしれない。
けれど俺の中では負の印象しかなかった。
あの黒髪を捨ててまで、彼女がイメチェンする理由なんて何時間考えても思いつかない。
そしてそれ以上に、このことを先に相談してくれなかったことに失望する。
いつもなら「どんな髪型がいいって?」とか聞いてきてくれるのに。
「どうしたって?何が?」
「何がって、髪の色に決まってるだろ」
「あはは、似合う? どうかな」
「どうって……どうしたんだよそれ!なんで染めたんだよ」
「うーん、ちょっと色々あってね。そんなことよりほら、見てよこの新しいヘアスタイル」
「そう言うことを聞いてるんじゃないだろ……」
つい声に怒気がこもってしまう。
何のことかわからないようで首を傾げながらヘラヘラしているさやかに、怒りが爆発しそうになった。
その行動が俺が好きな『さやか』という人間を自傷して楽しんでいるように見えて、憤怒の情が芽生える。
「髪染めるのはいいけどさ、相談ぐらいしてくれたってよかったんじゃないのか?」
「え?何であつし君に相談する必要があるの?私の髪の毛なのに?」
正論だった。正論だったけれど、さやかはそんなこと言わない。言うわけない。
けれどこれ以上俺が感情を吐露してしまえば、彼女も言いたいことが言えずに困ってしまうだろうという予感はあったのでぐっとこらえた。
けどやっぱり苛立ちは収まらない。
早く仲直りがしたい。一刻も早く元の関係に戻りたい。今ここでどうやったら仲直りできるのか、それだけしか考えないようにした。
すると彼女は笑ってこんなことを言った。
「はいはい。ごめんごめん。今度はちゃんと相談するし私が悪かったね。で?わざわざ呼び寄せてなんかあるの?」
その目はどこか違うところを見ていて、俺をからかっているようだった。
あんまりにもこけにされたような笑顔だったものだから、俺も流石に憤りを隠せなくなった。
その言い方に、表情に無性に腹が立つのだ。
何がとは言わないけれど何かを見透かされているような態度はどうしても許せない。
そしてつい、キツく当たってしまう。
「お前ほんとにどうしちゃったんだよ……学校でなんかあったのか?」
「何?心配してくれてるの?」
ニヤニヤしながら茶化すように質問してくるさやかにますますイライラしてしまって、俺は怒鳴ってこう言ってしまった。
「……当たり前だろ……!」
「あははっ!心配してくれるんだ……ありがとう、嬉しいなぁ」
「はあ……何なんだ今日のお前は……」
俺は昔からさやかの笑顔が好きだった。ずっと見てきたんだ。だから分かるんだよ、今日の笑顔は違うって。
どっからどう見ても作り笑いにしか見えなかった。
お願いださやか、俺を失望させないでくれよ……いつもの笑顔で俺に話しかけてくれよ……。
「……何かあったなら言ってくれよ」
「何もないってばー。それよりもさ、早く要件言ってよ」
俺はこんな状態のさやかに告白するのか?
正気かどうかすらもわからない今の状態の彼女に。
いや逆か?少し自暴自棄になってきている彼女を支えてあげられるのは自分しかいないと思う。
俺がちゃんと心を開くことで、彼女の本音を聞くことができるんじゃないか?
「ねぇー、どうしたの?急に黙り込んだりして。何もないなら帰っていいかな?」
だったら俺の答えは決まっている。
仲直りするんだ。俺が一歩踏み出して彼女と付き合うことで、彼女の抱えている何かを取り除いてあげるんだ。
「俺と付き合って……」
「あはははは」
俺が意を決して言おうとした瞬間、彼女の笑い声に先を越される。
その目は黒く淀み、俺の手の届かないどこかへ行ってしまったようだった。
「私が君と付き合う?あははっ!ないない、何でそんな発想になったの?私と君が釣り合ってるとでも思ってたの?」
呆然として彼女の顔を見るしかできなかった。
その間も彼女は語り続ける。
「だってそうじゃん。君って地味でかっこいいわけでもないし、勉強も運動もできない。性格が良いかと言われたらそうでもないし、所詮ただの幼馴染。男としてみたら下の下の下じゃん」
こんなこと、俺は望んでない。こんなことを言われて付き合いたいだなんて思えるはずがない。
けど彼女は語り続ける。
その表情には今までのどの笑顔よりも嫌悪と憎悪が浮かんでいた。
「あと私彼氏いるから。あと、あんた童貞でしょ。それに顔はカッコ悪いしモテないしキモイし隣居られると邪魔。私の彼氏に何一つ勝ってないから。目障り。私の前に二度と姿を現さないで。そもそも、私と付き合える
【2023年7月30日】
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛もうっ!!!
ベッドに横になっていたはずの俺は、いつのまにか呼吸が荒く、汗がだらだらと流れてきている。
自分の身体なのに自分でコントロールできない。
悪夢だ。そして黒歴史だ。もう何百回見たかもわからない。最近は見てなかったのに。
告白のことを意識しすぎた結果、無意識のうちに寝ている間にもフラッシュバックしてきてしまったか……。
人生の中で2つトラウマをあげろと言われれば、そのうちの間違いなく1つ。
そのトラウマは今日払拭して、半分止まっていた時計の針を動かしてみせる。
そう覚悟した俺の脳みそは気づけば眠気から覚めていた。
時計を見ると、もう9時を過ぎていた。
昨日から今日の深夜にかけてなかなか寝付けなかったし、いろんな体力が回復しきってなくて正直身体はきつい。
けれど時間は待ってくれない。
今日さやかに告白するという事実は、変えることができない決まった未来。
色んな人を傷つけ自分勝手の都合で動いてきた以上、もう後戻りはできない。
「おにいちゃんおはよー。下でパン焼いてるから早く来てね」
妹のまりながピンクのモコモコパジャマで様子を見に来てくれた。
多分俺が叫んだのを聞いてのことだろう。
けれどそこにはいちいち触れずに、普段の日常を演じてくれている気遣いに感謝しかない。
「おはよう」と返すのが精一杯だったけれど、今できる最大限の笑顔をして見せることができたと思う。
彼女のおかげで心は少しばかり軽くなった気がした。
リビングに行くとまりながキッチンでパンを焼いていた。
俺が来たのを見るや否や「もう少しで焼けるから」といつもの声で俺を出迎えた。
最近だと距離感バグが起こってたような気がするのだけれど、今日はそういうこともなく、ただ普通の兄妹の距離感だった。
そんなまりなに少しばかりの寂しさも覚えながら、洗面台に向かって顔を洗う。
ふと鏡の中の自分と目が合った時、フラッシュバックのように告白した時の彼女の言葉が脳内再生される。
『私と君が釣り合ってるとでも思ってたの?君って地味でかっこいいわけでもないし――――』
確かに俺はいわゆるイケメンには程遠いと思ってる。
けれど髪型のおかげか、今までの自分の中では一番格好良い気がする。
『それとあんた童貞でしょ――――』
確かにあの時の俺は童貞だったよ。
けれど俺には100回の経験がある。
確かに他の人に誇れるようなものではないけれど、この積み重ねてきた回数はあの時の言葉を乗り越えるには十分すぎる材料だった。
『それに顔はカッコ悪いしモテないしキモイし隣居られると邪魔。私の彼氏に何一つ勝ってないから――――』
さやかをあんなふうに作り変えてしまった彼氏より、俺が劣っているわけがない。
今まで沢山頑張ってきた。ずっと努力してきたつもりだ。
『私の前に二度と姿を現さないで』
……それは流石に辛いけれど、乗り越えてみせる。
俺だってそれなりに覚悟を決めてきたんだ。来るところまで来た以上、やるしかない。
鏡の前の自分もそう頷いてくれたような気がする。
「ねーさやかちゃんはさぁ、今日本当に来ると思う?」
まりなはジャムを塗ったパンを咥えながら俺に聞いてくる。
「来るよ、絶対」
さやかなら絶対来てくれるというどこから来たのかわからない自信はある。
それにさやかの母親からのメッセージで、ちゃんと今日は家で寝ていたことを確認済みだ。
「それなら大丈夫だね。目に届く範囲に来てしまえばあの『能力』が使えるんでしょ?」
「そうなるな。俺としては『能力』を使わないで済む方が助かるんだけど」
「確かにねー。せっかくならナチュラルなさやかちゃんと付き合いたいもんねー」
まりなは笑いながらパンにかじりついた。
「ナチュラルってなんだよ」って突っ込みを入れつつ俺もパンにかじりつこうとする。
けれど口に近づけた俺の手が震えているのに気づいてしまう。
そんな状態の俺を見てまりなも心配そうに呟いた。
「おにいちゃん……緊張してる?」
「ちょっとな……」
そう素直に白状する他なかった。
情けない話だけど今こうやって気遣ってくれる存在がいてくれるだけで、少し救われている自分がいる。
まりなはパンをもう一口食べたあと、にっこりと笑ってこう言ってくれた。
「大丈夫だよ。だっておにいちゃんは最近はずっと格好良いもん。さやかちゃんも見直してくれるよ」
「……そっか……ありがとな……」
「それに『能力』があったら付き合える確率―100%―なんでしょ。ちょっとだけ試してみない?」
「試すって?」
「告白の練習、まりなにしてみてよ。それに『能力』もちょっと試し打ちしてみようよ」
と目を輝かせながらまりなは俺に言った。
正直『能力』の実験をしたかったのは事実だし、願っても無い提案だったのでやってみることにした。
「じゃあいくよ……俺は君のことが好きだ。付き合ってほしい」
「え?やっぱり相思相愛だったんだ!おにいちゃんのことまりなも好き!両想い!結婚しよ!」
「いやいや待て待て。まりな、お前それがやりたくて誘導したな」
「ちぇ。ばれたか」
と舌を出していたずらな笑顔を見せた。
全く、そのあざとさに何回引っかかったか……けれど救われる気持ちも沢山あるから怒るに怒れないんだよな。
「しょうがないから断る。ごめんなさい。ほら早く『能力』使って」
「ちゃんと断るつもりでいろよ」
そう言ったのと同時にまりなに意識を集めて、『能力』を起動させる。
『まりなが告白を受ける確率』
―39%―
おい。思ったより高いな。
ただ残り61%を選択する可能性は十分にある。
その数字の上にある矢印に意識を向けると、一気にこの数字が大きくなっていく。
そしてその数字の増加が止まった。
―100%―
「付き合ってほしい」
「え?やっぱり相思相愛だったんだ!おにいちゃんのことまりなも好き!両想い!結婚しよ!」
発言はさっきと全く一緒。
けれどまりなの表情が女の顔をしているというか、なんというか。
目がとろんとして一瞬で恋に落ちたような、そんな印象を受けた。
一瞬でこんなに変化するものなのか?
人の人格までを捻じ曲げられかねないこの『能力』の力は侮れない。そして怖い。悪用したら何でもできそうな気がして。
とりあえずリセット……。
「……っあれ?おにいちゃんが普通に戻っちゃった」
普通って何だ、普通って。
「どうだった?これどんな感じになってたの?」
「なんか本気で断るつもりでいたんだけど、断ろうとしたときおにいちゃんの顔が300倍くらいかっこよく見えて、将来薔薇色の幸せ生活が頭の中にどんどん浮かんできて、幸せホルモンが身体中に溜まってきて、心臓がバクバクしてきて、あんなのやれたら女の子は断るなんてできないよ。ちょっともう一回体験したい。もう一回やって!」
「まあとりあえずその実験は成功したから十分かな……」
「ええー。おにいちゃんのケチ」
頭薔薇色のまりなが何か言っていたけれど、聞こえなかったことにしておこう。
それよりも今感じている安心感が全然違う。
最悪のパターンであり、結構な確率で訪れそうな断られるパターンでも一発で巻き返せる。
この『能力』さえあれば絶対にさやかを取り戻せる。
その気持ちそのままに俺はいつもの3倍くらい入念に歯磨きをして、全身新品の服に身を包み、そわそわする気持ちを抑えながら家を出ることにした。
「それじゃあ、まりな行ってくるよ」
「おにいちゃんいってらっしゃい。後から彩音ちゃんたちと一緒に見に行くからね」
「見に来るのはいいけど、あんまりわかりやすいとこには来るなよ」
「もちろんもちろん。おにいちゃんの邪魔をするつもりはないから。それにそのあとは4人で慰め会行くって話になってるから、2人でごゆっくりね」
そんな気まずい会を開くなんて知りたくなかった……。
俺にわからないところで勝手にやっといてくれよ。
しっかり昨日で気持ちにけじめをつけたのに変に思い出したらどうするんだよ。
「とりあえず行ってくるわ。頑張ってくる」
「まりなもさやかちゃんとまた一緒に遊びたいから、おにいちゃん頼んだよ」
「ああ。もちろんだ」
まりなはいつもの笑顔で手を振って俺を見送る。
そんな笑顔を見ると不安が少し和らいでいく気がして、少しだけ勇気をもらえたような気がした。
待ち合わせ場所の松崎公園までの道のりはそこまで距離はない。
ただ一歩一歩歩くたびに、不安がどんどん大きくなっていく。
でもいつも通りを意識して歩いていると、自ずと足取りは軽くなっていた気がする。
そしてたどり着いた告白の舞台。
1年前と同じ場所、同じ時間。
昨年の借りを返すべく、全く同じシチュエーションで告白する。
あの悪夢のすべてを乗り越えて、あの悪夢から醒めて。
過去も現実も全てを乗り越えて、2人の未来に進むんだ。
そんな覚悟を胸に秘めながら待ち合わせ時間を迎えたがまださやかの姿はない。
やっと約束の時間が近づくにつれて鼓動が早くなっていく。緊張してきた気がする……。
こんな状態で告白なんてできるのか……?
いや、大丈夫だ。俺にはこの1年で培ってきたものがいっぱいあるから。
色んなことにチャレンジして、失敗したり成功したりしてここまで来たから。
そう自分自身に言い聞かせながら地面につかない足をばたつかせたり、胸に手を当てたりしていた。
何やっているんだと思われても仕方のない動きだが、緊張は隠せず行動に現れてしまっているのが何とも言えないところ。
はたから見たらちょっと挙動不審になっていたに違いない。
けれどさやかは約束の15分後になっても一向に現れない。
『能力』の射程圏内は自らの目で見える範囲のみ。
そもそも顔を見れなければ話すことすらもできないという一抹の不安が残る複雑な心境だ。
もしかしたら何かあったのかもしれない……。
そんな心配をしてしまいスマホを取り出して連絡を取ろうとするが、そもそも連絡先はブロックされている。
だからこそ何かがあったとしても気付くことはできない。
そんな心配ばかりが脳内を駆け巡っている。
そうこうしているうちに30分が過ぎた。
さやかを目に捉えられず、不安な気持ちがどんどん膨れ上がっていった。
そんな時だった。
遠くに女の子の姿が見えた。
自分の記憶していたさやかとは全く違う影、髪型や背丈が全く違う。
けれどなぜか瞬時にこれがさやかであると確信を得れた。
そしてどんどんと距離が近づいてくる彼女の顔をしっかりとみると、確かにさやかの面影を残していてとりあえず見間違いではなかったことに安堵する。
ただ髪の色が赤紫に変わっていたのをはじめ、見た目は大きく変わっていた。
その一番の変化がさやかの胸だった。
いや待てよ胸が馬鹿でかすぎないか?巨乳とかいうレベルですらない。
あんなのテレビとか雑誌とかでも見たことないぞ。超爆乳だ。
異常な大きさの胸をダプンダプンと揺らしながら、俺のもとに歩いてくる。
「お久しぶりね、あつし君。元気にしてた?」
「え……あ、うん。久しぶりだね」
お前だれだよ……と突っ込みを入れたいくらいの豹変ぶりだ。
いつもかけていたメガネはコンタクトに変わってるし、目元に赤いチークが入ってるし、胸は大きくなってるし、妙な色気が漂っている。
俺の知ってるさやかはもっと清楚で奥ゆかしい女の子だったはずなのに……。
「まさかあんなラブレターを急に渡してくるなんて驚いたわ。あんなにしっかりと振ってあげたのに、まだ勝手な片思いを続けてるんだ。馬鹿みたいね」
「……えっ?」
「迷惑だからやめてって言ってるでしょ!あんたには一切興味無いの」
さやかがそんな強い口調で話すなんて予想すらしてなかった。
1年前とは人が違ったような口調、性格。
これじゃまるで別人じゃないか……。
しかも俺からの告白の芽を完璧に潰してきた。
完全にさやかのペースに持ち込まれていて、俺はまったくついていけていない。
ただ俺は押されるわけにはいかない。
こんな状態になっているのは間違いなく悪い彼氏のせいに違いない。
元の彼女がこういう風に人を拒絶し、人に拒絶されることで自分の価値を下げてしまうような人間ではないことは俺が一番よく知っている。
「どうせ告白するつもりだったんでしょ?今日ここに来たのははっきりと断るため。親に付きまとわれても困るしね。もう一度言ってあげようか?君の顔はカッコ悪いし、どうせモテないしキモイしそんな奴に隣居られると邪魔で目障り。私の彼氏に何一つ勝ってないから。私の前に二度と姿を現さないで。わかったならもういい?じゃあね」
そんなことを言いながら俺の前から立ち去ろうとする。
わかったような口を利いて……お前に何がわかるんだよ……。
お前が何を言ったって俺は引き下がらないからな!絶対に引きさがってやるもんか。
「ちょ、ちょっと待って!」
そのまま去っていこうとするさやかを呼び止めると彼女は立ち止まったが、相変わらず睨みつけながら話す彼女の表情は厳しいものだった。
「まだ何かあるの?」
「あるよ。起死回生の一手がね」
睨みつけてくるさやかに意識を集めて、『能力』を起動させる。
『さやかが告白を受ける確率』
―0%―
分かってたけど実際数字になると辛いな……。
「そんなものがあるならやってみなよ」
挑発的なさやかの頭上にある―0―という数字。
その数字の上にある矢印に意識を向ける。
この矢印を押した瞬間、俺とさやかの人生がすべて変わる。
この世界を、この未来を捻じ曲げる。
でも、それでもやらなきゃいけないんだ。
どんな結果が待っているかわからないけど、やるしかない。
「いくよ……俺は君のことが好きだ」
上矢印に意識を向けて――――