確率の見える世界 〜あの子とエッチできる確率は○○%!?〜 作:tomoki/名和朋樹
【2023年6月22日】
『今日家に友達呼ぶからちょっとゆっくり帰ってきて』
妹とのLINEの画面を見ながらこれからのイメージを繰り返す。
まずは同じクラスの巨乳美少女千春ちゃんと一緒に帰ってカラオケに向かう。
そして、カラオケで距離を詰める。
で、おうちにお持ち帰りよ。
正直女の子と2人きりでカラオケの経験とか、妹のまりなか、幼馴染のさやかかしかないけど正直そこらへんはどうにかなるでしょ。
俺には最強の能力があるしな。
にしても、千春ちゃんやっぱかわいいなぁ。
俺は斜め前で板書を写している千春ちゃんのことをじっと見つめる。
千春ちゃん――――
160cmくらいの身長でありながら高校生にしてはなかなかな巨乳の持ち主。
少なくとも妹のまりなとは比較にはならないほどである。
ちなみにまりなのブラジャーをこっそり見た時はCカップだったような気がする。
そっから逆算して考えるとFカップくらいか?
なんとなく俺の両手を開いて動かしてみたけど揉みたいとか考えてないよ。
授業中だしね断じて考えてないよ。断じて……。
性格は結構優しい感じだし、おっとり系。
セミロングの艶やかな黒髪に、少し内巻きの触覚ヘア。
話し方はかなり上品な感じだけど、なんだかあんまり告白するってイメージとはつながらないんだよなぁ。
そこら辺をうまく引き出せたら一気に懐に入れそうな気がする。
まっ、やるだけやってみるだけよ。
あくまで俺の目標はあくまで中出しまで持っていくこと。
そしてセフレ化すること。それだけ。
あれ?やっぱ俺クズですか?
「千春ちゃん行こうかっ」
いつも通っている通学路を可愛い女の子と並んで歩く。
その当の可愛い女の子は、少し緊張気味だったのかなかなかこっちの方を見てくれない。
「ねぇ、部活さぼってもよかったの?」
「さぼらせたの紫門君でしょ」
「ありゃ?そうだったけ」
「うん……。でも、昼休みの時言ってたじゃないですか。今日のうちに全部話して切り替えようって。あの言葉ありがたかったんです」
「嫌なことは話した方がやっぱ良いんだよ。俺は話せずに抱え込んで病んでたからな。可愛い子にはそういうふうになってほしくないってだけだよ」
「かわいいだなんてお上手ですね」
「ちゃんと本気でそう思ってるって」
「ありがとうございますね。それより見ましたか?さっき腕組んで1年生の教室の前を通っていったカップルを」
あのありえないほどのラブラブ感を醸し出しながら見せつけるように通っていったカップルね。
おそらくあの感じだと、女の人の方が彼氏を見せつけるために連れ回してたんじゃないかな。
わざわざ連れ回さなくてももうこの学校の9割は君たち2人が付き合ってること知ってるんだから……。
で、そのカップルの男の人の方が……。
「私、あの男の人に告白したんです」
知ってた。
一言一句聞いて見てた。
「彼女いるからって言われて断られたんですが、まさか学校内にいたなんて……」
「そうだったんだ……。それは確かに辛いね」
まぁ好きな相手が彼女持ちだったは辛いだろうな。
そう言われてもすぐに吹っ切るっていうのもなかなか難しいだろうし。
「それで小耳に挟んだんだのですが、あの2人が付き合ってるのって有名だったみたいです」
「うん。僕も噂では知ってたな」
「女の子の間では誰がそんな人に告ったのか、まるで犯人を捜してるかのようなテンションで探していたのを聞いてしまって……」
「だから部活サボろうって思ったのか。吹部は女子ばっかだから。女子の噂ほど怖いものはないしな」
「うん……」
「まぁまぁ、俺はこう見えて口硬いからなっ! 友達がいないともいうけど。だから俺でいいならいくらでも話してよ。俺も昔の失恋話話してあげるし、そんなのも今となっては笑い話よ」
本当は笑い話なんかじゃないんだ。
今でもその子のことをずっと考えてるくらいに。
「千春ちゃんも今日の話が笑えるくらいになってくれたらうれしいな」
千春ちゃんの為に放ったこの言葉は、何となく自分に対しても言っているように感じた。
俺は本当にあの悪夢を笑い話に変えることができるんだろうか。
でも、そのためには目の前の千春ちゃんを堕とすしかない、か。
ダメだ、目標を見失うわけにはいかない。
そのためには使える女はすべて使う。
もっと俺は非情にならないと。
カラオケに入るや否や、小一時間ハチャメチャに歌って踊った。
それは今日初めてちゃんと話したとは思えないぐらい。
1人は今日の失恋を覆い隠すために。
1人は裏の策略を覆い隠すために。
そして、一通り歌い切ったところから、2人は会話を交わしていた。
「そろそろ、紫門君の失恋話聞いてみてもいいですか?」
「もちろん! 僕も話す約束だからね。ちょっと長くなるかもしれないけど良いか?」
「聞きたいですっ」
めっちゃくちゃ食いつきいいなおい。
やっぱみんなこういうお年頃なんだなぁ。
俺もだけど。
「なら、ドリンクだけ取ってきてからにしよう。千春ちゃんは何がいい? オレンジジュースまた飲む?」
「じゃあ、オレンジジュースお願いします」
ドリンクを取って戻ってきた俺はさっきまで座ってた対面ではなく、千春ちゃんの右前に座る。
ストローに口をつけながら千春ちゃんは、期待もあるのかこっちをまじまじに見つめてくる。
少し上目遣いなのがかわいいな。
さて、どこから話すか……どこまで話すか……。
今もその子のことを思っているっていう情報は、家に連れ込むとしたら邪魔になりそうなのはなんとなくわかるけど。
「今から話すのは2人の内緒の話な。約束だから千春ちゃんにはぶっちゃけるけどさ」
人差し指を口元に寄せて内緒なのをさらにアピールしといた。
これで彼女は特別だと錯覚してしまうはず。
全ては俺の計算通りに動かしてやる。
「僕の初恋は3歳の時だったんだよ。あれは幼稚園に通っていたとき――――
十数年前。
いつも通りマンションの目の前に止まった幼稚園のバスに、妹のまりなと一緒に手を繋いで乗り込む。
そしていつもの席――――後ろから2番目の右側に2人で並んで座る。
座ってパッと横を見ると、通路を挟んで逆側に座っていた男の子と女の子2人が目に入った。
ぎゅっと男の子の手を握って震えている女の子。
その子を励ましている男の子。
9月の初めだから、多分今日が初めての登園なんだろうな。
最初いやいや言いながら不安そうに俺の手を握りしめながら登園していたまりなのことを思い出した。
そんなまりなのことを見ているような感じがして、思わず声をかけた。
今思えばなかなかマセてたガキだったなって思う。
でもその時に一目惚れしたんだ。
声に反応してこっちを向いた女の子に。
胸につけられたバッチには“さやか”って書いていた。
それからは4人で遊ぶことが多くなっていた。
4人というのは俺たち双子と、さやかとその兄。
さやかも俺たちと同じ双子で、兄の名前は“たくみ”だった。
「双子が双子と仲良くなるって珍しいですね。しかもどっちも兄妹だったなんて」
「僕も生きてきて今まで男女の双子はこの2人しか出会ってないからな。相当珍しいんじゃないか?」
そのあとも、4人の思い出話を身振り手振りを加えながらしていった。
千春ちゃんも相打ちをよく打ってくれたから話は盛り上がっていった。
そして、失恋の場面にまで話は進んだ。
「こっから大失恋の話になるんだけどさ。昨年の5月くらいだったかな? さやかと喧嘩しちゃってね。ほんのくだらない話だったんだけど、顔を見せないくらいに距離が一気に離れちゃって。でも、そこで気づいたんだよね、僕には彼女が必要なんだ~ってさ」
俺は今にも吐きそうになっていた。
この時を思い出すといつもそうだ。
でもこれくらいは計算の内。
今の俺はその時をもう吹っ切ったって
大丈夫、千春ちゃんは違和感には気づいてないと思う。
「それでさ、彼女のことを離したくなくなって、いままでのなぁなぁな関係からちゃんと付き合った関係に変えようって思い立ってさ。呼び出したんだ、小さい時からずっと遊んでいた公園に」
目を閉じて一つ深呼吸をする。
「そして告白したんだけど、なんて言われたと思う?」
「う~ん。失恋したって話だからごめんなさいってされたんですか?それか、彼氏としては見れませんとか?でも、デートみたいなこととかお互いの家に行くとかしてたってお話しされてたので違いますかね……」
「そんなレベルならまだよかったんだけど。正解はね『私彼氏いるから』だったんだ」
「えっ……。それさやかさんは二股していたってことなんですか?」
千春ちゃんは信じられないといった表情を口元に置いた両手で隠している。
そこまで驚いてるのには、ここまでカップル成立する前の焦ったい時期的な話をしていたのも理由にあったかもしれない。
もちろん俺も、その時はあまりにもびっくりしすぎて瞬きすらも忘れて動けなかったんだから。
「いや二股はしてなかったはず。その子の親とも仲良かったからよく話してたけど、家に男の人連れてきたり、僕以外の男の子の話をするとかは、全くしていなかったらしいんだ」
事実を淡々と述べていく。
「さらに彼女は急に素行が悪くなって外泊したり学校サボり始めた。それまでは真面目な才女って感じで、僕らの通ってる高校には余裕で受かるって言われてたのに偏差値45くらいの学校に今通ってる。いや、ちゃんと通ってるのかすらわからない。ただ、それが始まったのが僕のフラれた時期と一致してるんだ」
俺の好きだったはずの彼女が日に日にいなくなっていくその感覚はもう思い出したくない。
ある時から人付き合いが悪くなった。
ある時から制服が着崩され始めた。
ある時からピアスの穴が急に空いた。
ある時から髪の色が急に変わってた。
ある時から学校にすら来ない日が出来た。
俺が10年以上見ていたはずの女の子が、こうも一瞬で変わっていってしまうのか。
それも明らかに悪い方向に崩れていってしまうのか。
間違いなく彼氏の影響だろう。
俺ならそんなふうにはさせなかっただろうっていう後悔が募るようになっていった。
どうにかこっちに引き戻したい気持ちが強くなっていった。
でもどうすることもできなくなっていた。
俺の力は本当に無力だった。
そして見始めるようになってしまった。あの時の悪夢を。
「これでわかるでしょ。俺は1週間も経たないうちにポッと出の男に12年好きだった相手を取られたんだ」
「私が失恋したのがどうでもよくなるほどの大失恋ですね……」
千春ちゃんは、普通ならまずあり得ないほどの大失恋に、手を合わせて天を仰ぐかのようなポーズをしている。
優しい性格の彼女のことだ。その時の心境を考えてしまって心を痛めてるんじゃないかと思う。
「しかも、言われたんだよ。童貞だろって。言い換えれば私は処女じゃないけど、エッチしましたけどって。気づいたら心も身体も取られてたんだ。よく考えたらキスすらもできて無かったのにさ」
急に生々しい話が出てきて千春ちゃんは少し顔を俯かせた。
そして、俺はその反応をじっと眺めている。
最初からここからの流れで勝負するつもりだった。
ここで乗ってくれば簡単にその流れに持っていけるはず。
「あっ、ごめん、下ネタって大丈夫だった?」
「だ、だいじょうぶだよ。よく女子の中で話してるの聞いてるので……」
どっちだ、どっちの反応だ。
下ネタ好きなのかわからない、聞いてるけど自分からは話さないって感じの反応か。
どうする、もっと押すか?一旦時間置くか?
『サーチ』能力使うか?
どっちにするか決めかねている恋愛弱者を差し置いて、先に口を開いたのは千春ちゃんの方だった。
「ちょっとだけ話してみたいことあるんだけど話してもいいですか? あつし君なら受け止めて良い意見くれそうなので」
「あっ、うん。いいよ」
どうしたんだ急に?
俺の計算には全くないぞそれ。
「エッチしたら恋愛感情ってわかると思いますか?」
へ?
想定外すぎてやばいけどこれは大チャンスじゃないか。
イケるぞイケるぞ。
「私あんまり好きとかいう感情を持ったことがなくて、それがコンプレックスなんです。周りが好きな人と付き合ったんだとか言ってるのが羨ましくて。でも、私は好きが分からなくて」
「わからなくもないな。僕も失恋してからというもの、誰かを好きになるってことはなかったから。でも、今日告白してたんだよね。好きってよくわからないならどうして……?」
「付き合ったりしたら好きって気持ちが分かるかなって思って、かっこいいと思った人に告白してみたんです。でも、いざ断られてみると私のことがいらないって言われた気がして。自業自得なのはわかってるんです。でも、なんか悲しくて。その時に声をかけてくれたのがあつし君だったんです」
へ~俺なかなかヒーロームーブしてるじゃん。
かっこいいぞ俺。
「紫門君と話している内に、彼氏いる友達がエッチしてるとき彼氏に愛されてるんだ~って思えるんだよねって言ってたのを思い出しました。もしかしたら、エッチしてみたら何かわかるかもしれないなって思ってたんです」
「それで俺としてみたいのか?」
「いえいえいえ、そんなことはさすがに言いません。でも、エッチした相手に恋愛感情持つのかなって男の人の話も聞いてみたいんです。多分私と同じ感じなんだと話聞いてて思ったので。それにこの話は内緒にしてくれそうなので……」
手をもじもじさせながら視線をそらしている千春ちゃん。
多分恥ずかしいこと言い過ぎたなって思ってるんじゃないかな。
でも、心の中ではなにかクリティカルな答えを求めてそう。
この返答はかなり重要な局面。『サーチ』能力使うか。
まぁ俺の最終目標はお持ち帰りなわけなので『今日エッチしてもいいと思っている確率』でいくか。
『今日エッチしてもいいと思っている確率』は?
―68%―
なるほど、これ攻めたらいけそうだ。
でも、ここまで思わせたのはずっと誠実な感じで来て、同じ目線にいると思わせてるから。
そこをぶらさないようにしないとだ。
「うーん。僕としてはやってみないと分からないところはあると思う。僕も全然経験ないし、恋愛というのも今はする気がないから」
これは嘘ではない。
ここ最近毎日やってるのを除けば。
まぁ恋愛ではないしな。
「でも……。」
ジッと千春ちゃんの方を見つめる。
千春ちゃんも見つめ返してくる。
最近妹とやりまくってなかったら絶対照れてたと思う。
ただ、俺はもう童貞ではないし能力もある。
これが絶対的な自信を俺に与えてくる。
顔を少し近づけてみる。
照れてるのか視線を外してはいるが、拒絶するような反応はなかった。
イケるな。
俺は千春ちゃんに口づけを交わした。
ほんの1秒すらも触れていない軽いキスを。
みるみるうちに千春ちゃんの顔が紅潮してきた。
そして、もう一度軽いキスを落とす。
今度はあえてチュッと音をたてた。
「嫌じゃなかった?」
「紫門君なら……。だいじょうぶかも」
「そっか。じゃあ、もっとしてみようか」
「んっ……」
千春ちゃんの唇を、半開きの唇で包む。
チュッという軽い吸着音とともに、そのしっとりとした唇の触感が伝わってくる。
「しもん……くん?」
はぁはぁという呼吸音と共に名前を呼ばれた。
その瞳は上目遣いで潤んでいる。
「続き……してみる?」
千春ちゃんは小さくうなずいた。
1人はまだ見つからない「好き」という感情を
1人は消えた幼馴染への「好き」という感情を追い求めて――――。