※この作品はR-18です。

もう一人の自分(ボク)   作:koneneko

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第三話 終わりの日 後編

 ナザリック地下大墳墓第十階層、玉座の間。

 モモンガは、傍らで祈る様に手を組み期待に目を輝かせているやまいこを横目に席を立ち、玉座のある壇上へ足を向けた。

 

 

「おーいいね。早速見せてくれるんだ」

 

「ええ、もちろん。ヘロヘロさん達には見せる機会がなかったですからね。俺もちょっと楽しみにしてたんです。実は使う際の練習もしてました」

 

「ははは、モモンガさんらしい。これは期待できそうだ」

 

 

 玉座の前に立ち、ローブを翻しながら振り返る。やまいことNPC達を視界に収め、ギルド武器を高らかに掲げ言い放つ。

 

 

「見るがいい……そして恐怖せよ!これが私の真の姿だ!」

 

 

 セリフを発すると同時に飛行(フライ)を使い、体を浮かせてからスキルを発動する。瞬間、周囲に紫の雷光が走る。スキル発動に伴うエフェクトだ。ダメージはない。続いて足元から闇が噴出しモモンガの体を覆っていく。顔まで闇に覆われると盲目耐性を持つはずのモモンガの視界が完全に闇に染まった。

 

 外の様子は見えないが、モモンガはどういうエフェクトなのかを把握している。やまいこから見れば、モモンガは暗黒の球体にすっぽりと覆われ、その周りに紫の雷光が走っているはずだ。あと数秒。そうすれば全てが完了する。

 

 発動完了までの僅かな時間。モモンガの脳裏に、このスキルが登場した当時の記憶が瞬いた。

 

 

 

 

 

 

 既に下火になっていたユグドラシルで、ある噂が立った。それは次のアップデートで変身スキルが追加されるというものだ。見た目、種族、職業を一瞬で変更できる、そんなスキル。

 

 一笑に付す者が多かった。

 日を追うごとに衰退していくユグドラシルにそんな大規模な変更を行う訳がない。バランスを崩壊させるような真似をすれば今いるプレイヤーからも見放されてしまう。そんな意見が大半だったが、逆にプレイヤーの流出を抑えられない今だからこそ、大きな変更を行う可能性もあるんじゃないか、という意見もあった。

  しかし所詮噂だ。せいぜい話の種にするくらいで皆本気にしていなかったのだが、運営から公式に新スキルが追加されるという告知がなされ、ユグドラシルとその攻略情報サイト、各種SNS、掲示板は騒然とした。そして詳しく情報が公開されるにつれプレイヤー達は狂喜した。もちろんモモンガもだ。

 曰く、

 

 

スキル:『もう一人の自分(ボク)』

・本来の姿とは外見、種族、職業が異なる『もう一人の自分(ボク)』に変身する。

・『もう一人の自分(ボク)』は本来の姿とは別に装備を登録でき、変身と同時に装備が変更される。同じ装備が使えれば装備の共有もできる。

 

 

「ゲームバランスが崩壊する」「ついに自爆覚悟で賭けに出たか」「終わりだよこのゲーム」

 

 など、必ずしも好意的な意見ばかりではなかったが、理想の『もう一人の自分(ボク)』の外見やクラス構成等を語り合ったり、このスキルの活用法などを話し合ったりと、プレイヤー達が大いに盛り上がったのは間違いない。何より変身はロマンだ。

 

 プレイヤー達がこの変身スキルに求めていたもの、それは第一に見た目の変化だろう。本来の姿とはかけ離れた異形の姿に変身する。醜い化け物から可憐な少女に変身する。幼い子供から大人へと変身する。実装を待つプレイヤー達は皆、そんな理想の変身について語り合っていた。

 

 第二に強さ。何せ種族、職業が変わるのだ。という事は能力、装備可能な装備の種類、スキル、魔法も変わる。取れる戦略が一キャラ分丸々増えるという事である。

 実装以前からガチ勢の間でも、そうでない者達の間でも戦術議論が盛んに行われていた。本来の姿の弱点を補う耐性を持った種族、装備にする。攻撃特化した本来の姿で攻撃し、防御特化した変身後の姿で防御する。魔法詠唱者でMPが尽きるまで魔法を打ち、戦士に変身し接近戦で戦う。

 まだ未実装だというのにあらゆる議論がなされ、実装後の戦闘の定石なども固まりつつあった。

 

 

 そして実装の日を迎え、その糞仕様ぶりからこのスキルは一瞬にしてネタスキルと化した。

 

 

 主な要因は、個々のプレイヤーが望む『もう一人の自分(ボク)』を得るのが困難である点だ。

 このスキルを覚えるには『王の書』を使用する必要がある。『王の書』は当然、課金アイテムであり入手確率が低い。が、これはまぁいい。ライトユーザーには厳しいかもしれないが、キャラをレベル100まで育てる熱意のあるプレイヤーならたいして痛くもない出費だろう。入手確率が低いといっても、モモンガがボーナスをつぎ込んで手に入れた超々レアアイテム『流れ星の指輪』よりはよっぽどマシだ。それに、変身というロマンを叶えるアイテムなのだから、その位の希少価値はあって然るべきだ。問題なのはこの次だ。

 

『王の書』使用時に変身後の種族、種族レベル、職業レベル、外見がランダムで決定される。

 

 運営の悪意が詰まった仕様だ。ここに、このスキルが忌まわしい呪いのスキルだと言われる理由が集約されていると言ってもいい。

 当然ながらユグドラシルは阿鼻叫喚と化した。可憐な少女を夢見ていた者は渋いオッサンとなり、スタイリッシュな異業種を夢見ていた者はピンクの肉棒と化した。

 

 特に、このスキルに強さを求めていた者達の落胆ぶりは凄まじかった。望んだ種族や職業を取得できる確率があまりに低いのである。特に問題なのは職業レベル。取得条件が無視されており、上級職は超低確率でしか取得できない仕様だ。

 ほとんどの場合、取得クラス一覧が種類の多い基本職で埋まり、能力が低い上に低位のスキル、魔法しか使えない弱キャラが完成する。運良く上級職を引き当てたとしても、その他がガチビルドには程遠い為使い物にならない。

 あまりにも弱いので『もう一人の自分(ボク)』の姿だけで競う大会が催された程だ。

 

 決定した『もう一人の自分(ボク)』を変更するには再度『王の書』を使用するしかない。『王の書』は当然使い捨てだ。数をこなそうにも課金して引き当てなければならず、入手できてもそこからさらに望みの姿、種族、職業を引けるかはランダム。容姿が気に入ったから容姿だけ固定するといった事はできない。ワールドアイテムでさえ『もう一人の自分(ボク)』を変更するのは不可能だ。

 

 スキル発動にも制限が付いている。『もう一人の自分(ボク)』発動から10秒間は動けず、スキルや魔法を新たに発動する事ができない。そして再度『もう一人の自分(ボク)』が使用可能になるまで30分かかる。

 この仕様により、戦闘中にこのスキルを使用するメリットがほぼ消失した。10秒間殴り放題のサンドバッグになる上、細かく性能を切り替えながら戦う事ができない。苦労して発動しても出てくるのは弱キャラだ。

 

 

 運営の元には仕様変更を望むプレイヤーの声が大量に届いていたはずだが、運営は頑なに変更しようとしなかった。その仕打ちにプレイヤー達は運営に失望し、このスキルを呪いのスキルとして忌み嫌い各種SNS、掲示板、情報サイトに怒りと怨嗟の声をふりまいた。期待が大きかった分、落差もまた大きいという事だろう。

 そして、名のあるガチ勢達がビジュアル重視で『もう一人の自分(ボク)』を決定し始めた頃、このスキルは完全なネタスキルとなった。

 

 相手に発動された時、不思議と変身を見届けたくなる魅力があるので、闘技場などで負けを確信したプレイヤーがネタ目的で使用するのがお決まりだ。「いつから俺が全力だと錯覚していた?」「私はまだ一回の変身を残している」「これが俺の真の力だ」などのセリフと共に発動すると観戦者が大いに盛り上がる。

 また、相手の変身完了を待たずに攻撃を加えたプレイヤーは、観戦者からブーイングを受けるだけでなく「礼儀知らずのゴミ」として晒された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 モモンガの意識が過去から返ってきた時、ちょうど変身が完了する所だった。

 

 モモンガを覆っていた闇が硝子の様に崩れ落ち、光となって消えてゆく。薄紫のオーラを纏いながら、その場にふわりと着地し変身完了だ。

 

 

「ククク……右目が疼く。崩壊が始まる……終わらせよう!世界が闇に覆われる前に!」

 

 右目を抑えながら不敵な笑顔を浮かべ、左手を突き出した。

 

「うおおおー」

 

 

 やまいこが大げさに拍手しながら感嘆の声をあげる。

 正直、彼女の反応はモモンガが想像していたリアクションとは違った。恥ずかしさを我慢して受けを狙ったのに普通に感心されたのだ。余計に恥ずかしい。

 

 

「いや、笑ってやって下さいよ。恥ずかしいじゃないですか」

 

「はいはい厨二乙。じゃなくって!思ってたのと全然違うんだけど!普通にカッコいいじゃないか!」

 

(ああ、そういう事か……)

 

 

 彼女は、このスキルに関する知識を持っているのだろう。調べればいくらでも出てくる。このスキルを覚える為に必要なアイテムである『王の書』の仕様と、それに対するプレイヤー達の怨嗟の声。望みの姿どころか、ある程度許容できる外見を引き当てる事すら難しい鬼畜仕様。

 

 それに対し、モモンガの姿は二十前後の整った容姿を持つ男性だ。ツンツンとした黒髪に長く尖った耳と、透き通るような白い肌を持つ、小顔で手足の長いイケメンである。

 右目はモモンガの紋章が入った眼帯によって隠され、左目には魔法円が描かれた碧い瞳を持つ。左右の頬には、目元から下顎にかけて牙を模した紅の紋様が刻まれている。

 体は細かい板金が組み合わされてできた禍々しい鎧で覆われている。この鎧は、死の支配者(オーバーロード)の装備と同様、黒を基調としており、下品ではない程度に銀の装飾が施してある。腰にはシンプルな長剣を差し、背中には鍔の無い分厚い大剣背負っている。

 さながら魔王の息子、あるいは魔王の側近といった具合のビジュアルだ。

 

 

「フッどうですか?俺の好みとは方向性が異なりますが、それなりに様になっているでしょう?」

 

 髪をかき上げ紋章が入った眼帯を見せつける。

 

「正直、驚いた。オッサンとか女の子とか変な化け物が出てくると思っていたからね。一体いくらつぎ込んだの?」

 

 

 やまいこが腕をブンブン振って言った。『王の書』の仕様を知っているなら当然の疑問だろう。

 

 

「びっくりする程簡単に引き当てましたよ。っていうか一発でね。『王の書』も、この姿も。むしろ『王の書』が余ってるくらいです」

 

「えぇ…」

 

「『流れ星の指輪』につぎ込んだボーナス分が返ってきたんだって思ってますよ」

 

 

 ドン引きするやまいこの側へ戻りながら肩を竦めた。『流れ星の指輪』、かつてモモンガがボーナスの大半をつぎ込んで手に入れた課金アイテムである。それをやまいこは昼食一食分程度の金額で引き当てた。それも今や、懐かしい思い出だ。

 

 

「んふふ。確かに、あの指輪の為に支払うには大きすぎる代償だったからね。それならしょうがない」

 

 やまいこも思い出した様だ。彼女は立ち上がり、戻ってきたモモンガの周囲を回りつつ、姿を観察し始めた。

 

 

 

「これ、エルフ?」

 

「……当たらずとも遠からずって所でしょうか。古森妖精粘体吸血鬼(エルダーエルフ・スライム・ヴァンパイア)だそうです」

 

「何それ?」

 

「分かりません」

 

 

 これも、当然の疑問だろう。そして、モモンガはその質問に対する答えを持ち合わせていなかった。

 

「種族説明を表示しても空欄なんですよ。見た方が分かりやすいでしょう」

 

 

 コンソールを操作する。やまいこの前に『もう一人の自分(ボク)』のステータスを表示し、種族と種族レベルの欄を指し示す。

 

種族:異業種(精霊粘体アンデット)

種族レベル

・古森妖精粘体吸血鬼(エルダーエルフ・スライム・ヴァンパイア)

・古代森妖精聖浄粘体吸血祖神(エンシェントエルフ・セイクリッドスライム・ザ・ワン)

 

 古森妖精粘体吸血鬼。

 個々の種族は普通に存在する種族だ。エルフの祖とされる異業種である古森妖精(エルダーエルフ)に、メジャーな異業種である精粘(スライム)と吸血鬼(ヴァンパイア)。だが、このステータスを見る限り個々の種族を取得している訳ではなく、古森妖精粘体吸血鬼(エルダーエルフ・スライム・ヴァンパイア)という一つの種族として取得している。上位種族と思われる古代森妖精聖浄粘体吸血祖神についても同様だ。

 

 

「なんだよ、これ」

 

「たぶん、エルダーエルフとスライムとヴァンパイアの混血かキメラって事なんでしょう」

 

「っていうか長い!それに吸血祖神(ザ・ワン)の癖に混血とか意味わかんないよ!」

 

 やまいこが頭を抱えてうめいた。

 

「運営の仕込んだイタズラってところでしょうね。それか不具合で没種族を取得したとか。後者の可能性は低いでしょうけど」

 

「なんで?」

 

「ほら、これ」

 

 少し画面をスクロールさせ、素の能力値を表示する。

 

   HP:200

   MP:110

物理攻撃: 90

物理防御:110

 素早さ: 80

魔法攻撃: 90

魔法防御:110

総合耐性:120

  特殊:90

カルマ値:200

 

「うわ、硬。っていうかつっよ」

 

「それもそうですけど、明らかに意図された数値ですよ」

 

 

 やまいこの言う通り、圧巻の能力値だ。合計値は平均的なレベル100のプレイヤーの能力値の1.5倍はある。そして切りがよすぎる。明らかに何者かの意思が介在している。それを隠す気もない。

 

 

「ねぇ、職業レベルの方はどうなの?」

 

「なんかそっちも『世界』(ザ・ワールド)とかいう謎のクラスを持ってます。あとは可もなく不可もなくって感じでしょうか。大抵の武器防具も装備できますし」

 

「それって強いの?」

 

「強い事は間違いないですね。耐久値が桁違いですから。あと、始原の魔法とかいう見覚えのない魔法も使えるみたいです。ただ…」

 

 

 始原の魔法。魔法欄にいきなり現れた項目だ。世界移動、世界断絶障壁など、多種多様だ。基本的に、MPの代わりにHPを使って発動する。経験値を消費するものもある。

 

 

「ただ?」

 

「はっきり言って俺には向いてないみたいです。時間や空間魔法は豊富ですけど、攻撃魔法なんかはほとんど七位階程度のものしか使えないんですよ。それ以上のものはせいぜい現断(リアリティ・スラッシュ)くらいで」

 

 

 現断(リアリティ・スラッシュ)。相手の魔法防御をほぼ無効化して放たれる、第十位階の中でも特に威力の高い魔法である。ただ、効果範囲はそれほどでもないし、MP消費が激しい。

 

 

「ちょっと外で戦ってみたんですけど、MPが尽きて囲まれたらてんやわんやですよ。レベル80台のモンスター相手でも手こずる有様でした。俺の技術じゃ宝の持ち腐れです。たっちさんの様にはいきませんね」

 

 

 モモンガの得意とする距離置いた遠距離戦では、知識と経験、それに相手の情報がさえあれば、詰め将棋の様に相手を追いつめる事が可能である。しかし、近接戦闘ではそうはいかない。

 キャラクターを自分の手足の様に操る技術。受けと攻め、目まぐるしく変わる攻防に対応する反射神経。僅かなチャンスをものにする思考の瞬発力。知識や経験では補いきれない生まれ持ったセンスが必要になるのである。それはモモンガに欠けているものだった。

 

 モンスター相手にかなりの回数戦闘をこなしてみて、それがよく分かった。ある程度は戦えるが、このキャラクターのスペックを引き出せているとは到底思えない出来だったのだ。

 

 

「……ふむふむ。現断があれば十分な気もするけど、なかなか上手くはいかないんだ」

 

 やまいこは、顎に手を当てながら頷いた。

 

「これってさ、変身した時のHPとMPはどうなるんだっけ?前後で数値が違うだろう?」

 

「変身前の割合がそのまま変身後にも適用されるんですよ。変身前に残りHPが50%だったら変身後も残りHPが50%みたいな」

 

「ふうん。なんか悪い事できそうだけど。前後の数値によっぽどの差がないとそうでもないのかな」

 

 

 確かに何かしら使い道はあるだろう。突出して能力が低い『もう一人の自分(ボク)』が役に立つ事もありそうだ。わざわざ実践するほどのメリットがあるとは思えないが。

 

 

「モモンガさんはさ、この『もう一人の自分(ボク)』を人前で使った事ないんだよね?闘技場でこれ使ったら今頃ヒーローだったよきっと」

 

「ふふ、確かに能力値だけでも話題になったでしょうね。でもプレイヤー相手に使う気はなかったですよ。ここまで強いとアンフェアな感じじゃないですか。チートを疑われても面倒ですし」

 

 

 確かに話題にはなっただろう。変身後どころか、モモンガが把握しているユグドラシルプレイヤーの能力値の中でもダントツトップの能力値なのだ。ただ、モモンガは目立つ為にユグドラシルをしていた訳ではないし、変に目立ってせっかく引いた当たりを運営に修正されるのも嫌だった。

 一発で引き当てたこの『もう一人の自分(ボク)』は、モモンガのコレクター魂を十二分に満足させる外見と能力を持っていたのだ。

 

 

「それに、闘技場で相手の変身中に攻撃したら『礼儀知らずのゴミ』っていう風潮はあまり好きじゃありませんでしたからね。まぁ気持ちは分かりますけど。でもわざわざ待ってやる必要も非難される理由もないと思います」

 

「相手に使われた事ある?」

 

「ええ。『王の書』狩りに遭いましてその相手に使われました。遠慮無く変身中に魔法ぶち込んで、変身完了と同時にHP0にしてやりましたよ。ついでにドロップで『王の書』も手に入れました」

 

「あはは、そりゃ酷い。それでこそ魔王だ」

 

 

 やまいこが手を叩いて喜んだ。

 

 『王の書』狩りとは、『もう一人の自分(ボク)』導入後に一時期流行った『王の書』のドロップを狙ったPKである。

 モモンガに一人で襲い掛かってきたのは一目で大した相手ではないと思えるプレイヤーだったが『王の書』がどうのと言ってたから『王の書』狩りで間違いないだろう。トレードで一攫千金を狙っていたのかもしれない。

 

 

「ふふ、あれのせいなのか何故か俺も『礼儀知らずのゴミ』リストに入ってますよ。ダンジョン内だったし周りに人はいなかったんですけどね」

 

「んふ。なんかモモンガさんらしいね」

 

 

 優しい声色で言われて、モモンガはちょっと照れ臭くなってしまった。今まで誰ともこのスキルについて話せなかった反動か、怒涛のようにぺらぺらと語ってしまったのだ。

 

 彼女は今、楽しんでくれているだろうか。『もう一人の自分(ボク)』の話題を出したのは彼女だが、だいぶ長い事このスキルについて話している気がする。

 

 

「というかさ、スライムとヴァンパイア要素はどこ行ったんだい?エルフ要素しか見当たらないけど」

 

「それなら……」

 

「うわっ気持ちわる!」

 

 

 やまいこが身を引いた。モモンガがスキルを発動したからだ。粘体化だ。肘から上をスライム状に変えてウネウネと動かしてみせた。この種族はエルダーエルフの姿が基本らしく、スライムの姿になるには粘体化を使うしかない。

 

 

「うわぁ……ぺロロンチーノが喜びそう」

 

「ははは、『これもうエロゲじゃん』とか言いそうですね」

 

 

 言ってみたが、ぺロロンチーノの姉であるぶくぶく茶釜はスライムだったので、姉を連想させるスライムには反応しないかもしれない。

 

 

「確かにね。それで、吸血鬼要素は?」

 

「これですかね」

 

 

 モモンガは右目を覆っている眼帯をずらす。そこには本来白目であるはずの部分が黒い異様な目が隠されていた。瞳は紅く、左の瞳と同様に魔法円が描かれている。紅い瞳は吸血鬼の特徴である。

 

 

「ああこれはいいね、いかにもって感じだ。こっちに眼帯をしたのは正解だと思う。頬の紋様が紅色だから、瞳も紅だとちょっとくどいからね」

 

「嬉しいですね。俺も色々迷った結果、やまいこさんと同じ結論に至りましたから」

 

 

 眼帯をつけるのは確定として、統一感を重視し碧い左目を隠すか、色合いを重視して紅い右目を隠すか、という問題だった。あれこれ悩んだ結果、普段は紅い右目を隠す事にしたのだ。

 

 

「その種族、何か固有のスキルとか持ってたりするの?」

 

「上位種族の方に、眷属創造(精霊・スライム・吸血鬼)っていうのがありましたね。アイテムを生贄に配下のNPCを作りだすスキルみたいです」

 

「NPCを?それは便利そうだね」

 

「そうでもないんです。神器級を生贄にしてもレベル70半ばでしたからね。全然割に合いません」

 

「神器級をつかったのか。贅沢な話だね」

 

「神器級装備三つと『王の書』のトレードを希望しているプレイヤーがいたんですよ。それで交換した神器級の中で一番使えなそうなのを生贄にしたんです。まぁ結果は微妙でしたが」

 

 

 『もう一人の自分(ボク)』が追加されたばかりの頃は『王の書』の価値が高騰していた。まだ皆、理想の『もう一人の自分(ボク)』を諦めていなかったのだ。それにしたって神器級を安売りしすぎな気もするが、リアルマネーを消費するよりマシだと考えたのかもしれない。

 

(そういえばあのNPC、胸が大きかったな…)

 

 そろそろ『もう一人の自分(ボク)』の話題も尽きてきた。やまいこもおっぱいと言えなくて退屈しているかもしれない。今までモモンガから胸の話題を振る事はなかったが、今日くらいはこちらから話題を振ってみるのもいいだろう。

 

 

「作った眷属を召喚してみます。絶対、やまいこさんは気に入りますよ」

 

「ボクが気に入る?」

 

「いいからいいから。見てのお楽しみです」

 

 

 スキルを発動させる。眷属創造(精霊・スライム・吸血鬼)で作成した眷属を召喚するスキルだ。今のところ対象は一人しかいない。魔法陣が浮かび一人の女性が現れた。灰色の髪をした二十歳前後の女性である。

 白金のティアラ、純白のドレスに白い手袋とまるで花嫁の様な姿をした吸血鬼。モモンガが作成したNPCだ。名前はフリアエ。当然豊かな胸を持っている。

 

 

「ああ、なるほど。確かに見事なおっぱいだ。珍しいじゃないか。モモンガさんからボクにおっぱいを供給してくれるなんて」

 

「なんというか、そろそろやまいこさんがおっぱいの話をしたくなる頃なんじゃないかって思いまして」

 

「く、あはははは。それでボクに気を遣ってくれたのかい?相変わらず、モモンガさんは不器用だね。ボクがおっぱいの話をするのはモモンガさんの反応を楽しむ為だったのに、モモンガさんから言い出したら意味無いじゃないか」

 

 

 やまいこが頭と腹を抑えて笑い出した。なかなか酷い言い草だが、肩を震わせて笑う彼女を見ているとそこまで悪い気もしない。

 

 

「知ってましたけど酷い理由ですね。普通にセクハラですよ」

 

「ぷくく、まぁそういう面もあるね。でもぺロロンチーノやタブラさんみたいに一線は超えてないつもりだよ。ただおっぱいと言うだけなんだから。それに、今日はモモンガさんの方からおっぱいを持ち出してくれたからね。これでおあいこだ」

 

 

 ぺちぺちとモモンガの肩を叩きながらそんな事を言ってくる。

 

 

「嬉しいよ。モモンガさんが成長してくれて」

 

「成長なんですかね」

 

「成長さ。できなかった事ができる様になったんだから。でもちょっと不思議に思ってる。モモンガさんはさっきまでおっぱいの話を避けていただろう?ボクが話を振ってもつれなくしていたじゃないか」

 

 

 その通りだ。あえて胸の話は避けていた。以前ならもう少し話に乗っていただろう。

 

 

「最初は、最後の日だからギルドの皆やこのゲームの思い出を語るべきだ、なんて思っていたんですよ。……でも、もうおっぱいでいいかなって。その方が楽しく終われそうだ」

 

「……なるほどね」

 

 

 終わりを匂わせたからか、やまいこの声が少し沈んだ。

 

 

「それで、モモンガさんはこの中で誰のおっぱいが一番好きなんだい?」

 

 

 続いて投げかけられる問い。これだけおっぱいが並んでいるのだから当然の問いだろう。モモンガの中で、答えはハッキリと決まっている。迷うはずが無かった。

 

 

「ユリですね。正直ユリの話になった時、ユリの大きくて柔らかそうなおっぱいに顔をうずめてそのまま抱きしめられたい、そう思ってました」

 

「うおおおー、そうも素直に答えられるとなんだか照れるね」

 

 

 やまいこは体を抱いて身をくねらせた。いかつい半魔巨人(ネフィリム)の姿でそんな事するものだから、見るに堪えない有様になっている。それが、モモンガを愉快な心地にさせた。

 

 

「はは、なんでやまいこさんが照れるんですか」

 

「言っただろう?ユリはボクの理想だ。言ってみれば彼女はボクの理想の『もう一人の自分(ボク)』なんだ。だから自分が言われているような気分になるのさ」

 

「なるほど」

 

 

 少し、周囲のNPCについて話をした。大きくてハリがあり、ツンと上を向いたルプスレギナの生意気おっぱい。手触りが良さそうで揉むのに丁度いいサイズのナーベラルのおっぱい。ビッチではなくなったアルベドの上品なおっぱい。羞恥心を捨てれば案外簡単に言葉が出てくるものだった。

 

 やまいこも茶化さずにモモンガの意見を聞き、自らの意見と感想を述べてくれた。彼女が今まで胸について詳しく語らなかったのは、女性経験が乏しいモモンガが許容できる一線が分かっていたからだろう。一度踏み越えてしまえば遠慮はなかった。

 

 穏やかで楽しい会話が続いた。それも、もうすぐ終わる。

 

 

「……なんかあっという間だったね。ようやくモモンガさんとおっぱいについて語り合えるようになったのに……」

 

「ええ本当に。どうして今までこうしなかったのか、不思議ですよ。……やまいこさん」

 

「なんだい?」

 

「やまいこさん、結構ユグドラシルの情報チェックしてたんですね」

 

 

 それは、彼女との会話で心に引っかかっていた部分だった。口にするべきでは無いと思っていたが、どうしても抑えきれなかった。

 

 

「まぁ……ね、気になるよ。引退したけど、ここはボクにとっても大切な場所だったからさ」

 

 

 大切な場所。その言葉に喜びを覚えると同時に、消え失せていたはずの想いがまたモモンガの胸に湧き上がってくる。どうして戻って来なかった。気にしていたのならどうして。そんな想いが。

 

 やまいこは真っすぐにモモンガを見ていた。

 

 

「時間ができた時に顔を出そうと思った事もある。でもやめた。暇な時だけ顔出してメンバー面するなんて迷惑なだけだろう?」

 

「そんな事ない!俺は、いつでも歓迎しました!待っていました!」

 

 

 すがる様にモモンガは言った。

 

 

「ううん。中途半端が一番いけないって思ったんだ。そんな事してたら大切な思い出も薄れてしまうって。他の人達もきっと一緒だ。ペロロンチーノはわかんないけど」

 

「ふ、はは、そうですね。……すいません。最後なのにこんな話をしてしまって」

 

 

 意気地のない自分が嫌になる。最後までギルドマスターでありたい。皆の仲間でありたい。そう思っていたはずなのに、結局身勝手な想いを口にして彼女にぶつけてしまった。

 

 

「いいんだよ。モモンガさんがそう言ってくれるのはボクも嬉しいんだから。それにボク、ほんと言うと、今日ここに来るかずっと迷ってたんだ。途中で辞めた癖にって、そんな事思っちゃって」

 

「……やまいこさん」

 

「でも、来てみたら昔みたいに話せて嬉しかった。詳しくおっぱいの話ができて楽しかった。ありがとう、モモンガさん」 

 

「俺も、同じ気持ちです。今日、やまいこさんに会えて本当によかった。ありがとうございます」

 

 

 差し出した右手が彼女の大きな手ですっぽりと覆われる。左手もそこに重ねると上下にブンブン振られる。再会した時もこうだった。

 

 

「どうせなら、このまま一緒に落ちない?今の気持ちのままでさ。時間が来るまで待ってたら、またしんみりしちゃうよきっと」

 

 

 モモンガにも彼女の気持ちがよく分かった。彼女の言う通りこのまま二人でログアウトすれば、寂しさも虚しさも感じる事無く現実に戻れるだろう。

 しかし、モモンガにはそうできない理由があった。

 

 

「いえ……俺は最後まで此処にいます。俺はアインズ・ウール・ゴウンのギルドマスターですから」

 

「そっか、モモンガさんらしいね」

 

 

 恰好つけ過ぎかもしれない。少し恥ずかしくなるが、彼女の優しい声色がそれを和らげてくれる。

 

 

「……ボクは行くよ。フラれちゃったからさ」

 

 

 やまいこは肩を竦め、おどけた調子で言った。

 

 

「ボクの代わりに、ユリにお供をさせるよ。モモンガさんが寂しくないように。ユリはこの世界のもう一人のボクだから。いやらしい目で見たって構わないよ」

 

「はい、分かりました。遠慮はしません」

 

「んふ。モモンガさんをよろしくね、ユリ」

 

 

 

 彼女はユリの肩に手を置いた。それから一度、周囲を見回してコンソールを操作する。

 別れの時だ。モモンガはどうにか声を振り絞った。

 

 

 

「お元気で。また会いましょう、やまいこさん」

 

「うん、またね!モモンガさんも元気で!」

 

 

 

 

 手を振るやまいこの姿が光となって宙に溶けて消えた。

 またナザリック地下大墳墓に静寂が戻った。途端に寂しさがこみ上げてくる。

 意地を張らず、彼女と一緒にログアウトすればよかっただろうか?

 そんな考えが頭をよぎる。

 

 

 

 

(いや、中途半端が一番いけないんですよね。やまいこさん)

 

 

 

「立て」

 

 

 

 後は終わりの時を迎えるだけ。それにはふさわしい場を整えなければいけない。NPCを立たせて机と椅子を回収し、アイテムボックスに入れていく。

 作業が終わり周りを見ると、セバスとプレアデスが絨毯の両側に整列していた。執事とメイドである彼らは、玉座の間で明確な指示を受けずに待機しているとそうなる様に設定されているのだろう。フリアエに最後尾にいるエントマの後ろにつくよう指示を出す。

 

 腰と背中の剣を外し、『スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』を装備する。

 

(結局、『もう一人の自分(ボク)』の姿で終わりを迎える事になっちゃったな……)

 

 再使用可能になるまで僅かに時間が足りない。ノリノリで使用したが、こうなる事を全く考えていなかった。もっとも、やまいこにせがまれればモモンガは結局使っただろうから、これは考えても仕方のない事だろう。

 愛着のある死の支配者(オーバーロード)で終わりの時を迎えるつもりだったが『もう一人の自分(ボク)』の姿も玉座の間に十分マッチした外見をしている。後は……

 

 

「ユリ、アルベド、ルプスレギナ、ナーベラル、付き従え」

 

 

 モモンガは四人を従えて玉座へ向かう。やまいことの約束通り、ユリと一緒に終わりを迎える為だ。少し人数が増えたが、これはやまいこの許容範囲内のはずだ。確かにそう言っていた。

 

 ギルドの紋章を見上げ玉座に座る。体の力を抜き、傍らに侍る美しいメイドに目を遣った。

 

 ナザリックに配置された心を持たないNPC。細い眉と鋭利な目つきが彼女の美貌に冷たい印象を与えている。なのに今、モモンガは彼女に安らぎと確かな愛情を感じていた。心優しい友人がモモンガの為に遺した親愛の証だからだ。

 

 少し視線を下に向けるとたわわに実った豊かな胸が目に入った。横から見ると彼女の胸はそのボリューム故かやや下を向いている。その作り込みが彼女の胸にずっしりとした重量感を与えていた。隣にルプスレギナのツンと上を向いた胸が並んでいるので余計にそう感じる。

 

 

「うん。やっぱりユリのおっぱいが一番だ」

  

 

 天井を見上げた。あと一分もしないうちに、この世界は終わる。明日からユグドラシルの無い日々が始まる。それでも自分は大丈夫だ。今はそう思える。仲間たちの様に現実世界で大切な物、生きる目的を見つけなければならない。

 

 

 

 

(やまいこさん、たっちさん、ぺロロンチーノさん、ぶくぶく茶釜さん……)

 

 

 

 

 モモンガは仲間たちの姿を思い浮かべながら目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

 

 




オリ設定のまとめと補足

種族:古森妖精(エルダーエルフ)
・神樹より分かたれた森妖精(エルフ)の祖とされる異業種で、精霊に近い存在である。
・外見はほぼエルフと変わらない。デフォルトで微妙な刺青が入っていたりする事がある。
・エルフと比べ異業種である事と耐性が若干高めな事以外に種族特有の強みが無い。種族レベルがなく自由度の高いエルフやダークエルフの方が有用なのであまり選択される事がないマイナーな種族。

種族:古森妖精粘体吸血鬼(エルダーエルフ・スライム・ヴァンパイア)
・古森妖精(エルダーエルフ)、粘体(スライム)、吸血鬼(ヴァンパイア)が融合した種族。

種族:古代森妖精聖浄粘体吸血祖神(エンシェントエルフ・セイクリッドスライム・ザ・ワン)
・古森妖精粘体吸血鬼の上位種族。

スキル:『もう一人の自分(ボク)』
・『もう一人の自分(ボク)』に変身する。本来の姿に戻るには変身状態で再度『もう一人の自分(ボク)』を使用する必要がある。
・『もう一人の自分(ボク)』は本来の姿とは別に装備を登録でき、変身と同時に装備が変更される。同じ装備が使えれば装備の共有もできる。
・スキル発動時、変身後の種族に応じたエフェクトが発生する。
・発動から10秒間、動く事ができず、スキル、魔法を新たに発動する事ができない。
・使用後、再使用可能になるまで30分かかる。

スキル:粘体化
・『古森妖精粘体吸血鬼』、『古代森妖精聖浄粘体吸血祖神』のスキル。
・体をスライム化させる。

スキル:眷属創造(精霊・スライム・吸血鬼)
・『古代森妖精聖浄粘体吸血祖神』のスキル。
・アイテムを消費して眷属を作成する。消費したアイテムの希少価値、性能が高いほど高位の眷属を作成できる。

スキル:眷属召喚(精霊・スライム・吸血鬼)
・眷属創造(精霊・スライム・吸血鬼)で作成した眷属を召喚できる。

アイテム:『王の書』
・使用する事でスキル『もう一人の自分(ボク)』を取得できる課金アイテム。使い捨て。一度決定した『もう一人の自分(ボク)』の外見やステータスを変更できる唯一のアイテムでもある。
・種族、種族レベル、職業レベルの順で決定され、そこからAIによって外見が決定される。
・種族レベル、職業レベルは本来の姿の合計レベル分しか取得できない。

モモンガ『もう一人の自分(ボク)』
種族 異形種(精霊粘体アンデッド)
種族レベル
・古森妖精粘体吸血鬼(エルダーエルフ・スライム・ヴァンパイア)
・古代森妖精聖浄粘体吸血祖神(エンシェントエルフ・セイクリッドスライム・ザ・ワン)
職業レベル
・世界(ザ・ワールド)など
見た目
・見た目年齢は二十前後。ツンツンした黒髪に長く尖った耳と透き通るような白い肌を持つイケメン。左右の瞳には魔法円が描かれている。右の瞳は紅く、左の瞳は碧い。いわゆるオッドアイ。
・左右の目元から下顎にかけて牙を模した紅の紋様が刻まれている。
・身長は本来の姿と同様177cm。小顔で手足の長い細マッチョ。
装備
・右目の眼帯。
黒地に白でモモンガの紋章が刻まれている。
・細かい板金が組み合わされてできた禍々しい鎧。
黒を基調として銀の装飾が施されている。アルベドの全身鎧を参考にモモンガが製作した。アルベドの鎧と比べ女性的な丸みが薄れたフォルムになっている。アルベドの鎧と異なり全身鎧ではない。首元から腰回りまでをを覆う胴体部分、肩当と肘から指先までを覆う手甲、膝から下を覆う足甲の三つの装備から構成されている。
・竜麟製のシャツと長ズボン。
・灰色の毛皮の腰巻
・左腰に差したロングソード。
・肩に背負った鍔が無い大剣。
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