【R18】冴えないエロゲの作り方(イラスト付き) 作:きりぼー
本年もありがとうございました。
四月も下旬。もうすぐゴールデンウイークの連休になる。
前世での予習がいきて、俺は六天場モールの話題を餌に加藤とデートの約束をした。一方で英梨々の機嫌も損ねていないので別荘へのお誘いも来ている。
そんな俺は陽気に浮かれたアホだった。
部屋でカレンダー眺める。同じ日に印がついている。物理的に離れた場所なので両方を選ぶことできない。
その事実に気が付いた瞬間。俺の脳裏に選択肢が浮かんだ。
『加藤恵のイベントが解放されました』
『澤村スペンサー英梨々のイベントが解放されました』
ほむほむ・・・なるほど、好感度+1のイベントだな。それで内容は・・・?
① 『恵と一緒にショッピングデート 初キッスは観覧車で』
② 『英梨々と川下りデート ラッキースケベは風邪に気を付けて』
ほむほむ・・・。えっ、選ぶの?どっちも進めるんじゃないの?すでに攻略分岐が決まってしまうのか・・・
①はすでにキスが保証されている展開なのか・・・
②は川下りとラッキースケベと風邪の組み合わせを考えるに水に落ちそうだな・・・
英梨々とキスがないのはやはり恋愛的な発展はしにくいのかもしれない。加藤とはずいぶん急速に距離を縮める感じになるが・・・
英梨々のラッキースケベも気になる・・・。あいつはエロ同人を描く変態腐女子のくせに自分自身は少女のままで隙をみせないからな・・・。
30 ピコ~ンと数字が浮かび上がった。
25・・・20 どんどん減っている。どうやら勝手にカウントダウンがはじまったようだ。選ばないと両方のイベントが喪失するのだろうか。
10・・・9・・・8・・・
うわぁ~、優柔不断なんだよぉぉぉぉ!
7・・・6・・・5・・・
ゲーム作りのためにも加藤とのイベントを進めないわけにはいかないよな・・・
4・・・3・・・2・・・
英梨々にはあとで謝ろう・・・
1・・・!
・・・俺は、加藤とのイベントを選択した。チューしたい。精神的には美智留とキスした気がするが、あれは前世のことだ。
というか、加藤ってチューとかするのか?あのフラットフェイスでデートして、どうしてそういう雰囲気に発展するのかさっぱり想像がつかない・・・
これが器用なハーレム型主人公ならなんだかんだとヒロイン達と平行にイベントを進めていくのだろうが・・・
ぼんやりとカレンダーを眺めながら、深くため息をつき、英梨々との予定の方にバッテンをして消した。
※ ※ ※
決まった以上は英梨々に連絡入れないとな。
トゥルルル・・・トゥルルル・・・トゥルルル・・・
「何よ。こんな時間に」
「実はさ、大事な用事があって」
「はぁ?それなら昼間にいいなさいよ。今立て込んでるから手短いにしてよねっ」
「ああ、うん。あのさ、ゴールデンウイークの予定なんだけどさ。ちょっと取材の用事がはいっていけなくなったんだけど」
「はぁ?なんの取材よ?」
「六天場モールなんだけど・・・なんか流行っているらしくってさ・・・」
「・・・」
「聞いてるか?」
「・・・何よ。で?」
「いや、だから英梨々と別荘いけないんだけど・・・」
「あっそ。バカ!死ね!」
ガチャッ。
うわっ。もうこれダメな奴じゃん・・・直接会って土下座した方がよかったかな・・・
『英梨々の好感度が-2に下がりました』
ふぁ!?+1から-2だとぉ・・・一気に3も下がったのか・・・
そ・・・そりゃそうだよな・・・約束たがえてしまったし。フラグが折れるときはこんなものかもしれない・・・
こうなったら感情を殺して、加藤ルートを攻略してやる。なんかサイコパスみたいんだな・・・
鏡を見たら目が真っ赤になっていた。
※ ※ ※
ゴールデンウイーク前の最期の登校日も英梨々は学校を休んだ。俺は直接謝るチャンスがなかった。
加藤とのデートの日を迎えた。頭の片隅に英梨々のことが引っかかっている。
六天場モールはとても混雑していて、そんなことを考える余裕はだんだんなくなっていった。
加藤はピンク色のカーディガンを羽織っていたが、日中の暖かくなった時間には白いブラウスで過ごしていた。
2人の会話が盛り上がるということもなかったけれど、沈黙の時間も悪くはない。加藤といろんな店を巡るのは楽しかった。
洋服をみたり、小物を選んだりしているとあっという間に時間は過ぎていく。3時には人気スイーツ店に並んでたっぷり生クリームのかかった焼きたてのワッフルを食べた。SNSに写真を撮ってアップするには映えそうな盛り付けだ。
加藤はあまり笑うことはなかったけど、機嫌がいいのは伝わる。
最期に帽子屋で行った。いろんな帽子が合って、2人で合わせているだけで自然と笑顔になっていく。
「どれか記念に贈ろうか?」と、俺は提案した。
「いいよ。そんな気を使わなくても」と加藤は言う。
どっちだろう。加藤も少し迷っているような感じはする。帽子を選ぶことでなくて、俺に贈ってもらうことに気が引けるのだろう。
「ほら、今日の取材は役立ったし・・・」
「ううん。いいの」
「そっか・・・」
加藤は俺の二度目の提案も断ったから、そういう気分でもないのかもしれない。
「安芸くんに拾ってもらった帽子が二つあるから・・・」
加藤は小さくそう呟いて店を出た。俺はあとをつけながら「ふたつ?」と聞き返したけれど、加藤は何も答えなかった。
あらかじめ予約していた時間に近づいたので観覧車へと移動する。今時は人気のアトラクションでも長蛇の列を作ることはない。
夕暮れ時になって、あたりがオレンジ色に染められつつあった。
列を待っている時に並んでいる加藤と手がぶつかった。何も言わずにどちらからでもなく手を握った。
加藤の手は女性らしい細さと冷たさがあった。
「加藤・・・少し冷えてきたからカーディガン羽織った方がいいんじゃないか?」
「・・・そうだね」
せっかくさりげなく手をつないだのに離してしまった。カーディガンを羽織った加藤は「なんで気が付かなかったのかな・・・」って、少し笑った。
もう一度手をつなぐには短い距離で、静かに順番を待った。
※ ※ ※
「安芸くんのメインヒロインってこんな感じかな?」
観覧車に乗り、昇り始めると向かいに座った加藤が言った。
「すっかり忘れてた」
俺は素直に答える。一応取材名目だった。効率よく店を回ることや予約をとることに専念してしまった。おかげでいろんなことをできたと思うが、いいエスコートだったかはわからない。
「もっといろんなこと考えてきたんだけど・・・なんか全部忘れちゃった」
加藤がクスクスと口元を手で隠しながら笑った。こんなに笑うんだと俺は妙に感心してしまった。
「俺はぜんぜん考えてこなかったけど・・・なんかゲーム攻略みたいで楽しかったぞ?」
「そう。うん。わたしも安芸くんが最初のデート相手で良かった」
ズキュンとストレートでくる。
加藤はやっぱり俺のことが好きなんだろうか?特に何をした覚えもないのだけど・・・
「それでね・・・安芸くん・・・」
「うん?」
「あっ・・・夕日が見える」
加藤が指をさした。山沿いに沈む夕日が輝いて雲を赤く染めていた。観覧車はそろそろ一番上のあたりかもしれない。
「綺麗だな」
「うん」
「えっ・・・」
加藤が返事と共に俺の手を両手で握った。
「あのね、安芸くん。わたしねずっと考えていて、こんなことを言うのも変だし、まだ早いかとも思ったんだけど」
加藤にしてはえらい早口でしゃべっている。トーンが少し高くて澄んだ綺麗な声だ。耳にくすぐったい。
「ど・・・どうした?」
「ここで・・・キスしてくれる?」
「おっ・・・おっ・・・」
俺は言葉がすぐに出なかった。そういえばイベントフラグでキスと書いてあったな。だいたいあれは現実なのか?頭の中のイベント分岐は俺の勝手な妄想のはずだ。なのにこうしてキスイベントが回収されようとしていた。
「俺で・・・いいのか・・・? 確かにメインヒロインになってくれとは頼んだけど・・・」
「うん・・・安芸くんがいいの。わたしね・・・ずっと前から・・・」
加藤が手を離して固く握って膝の上に置いた。それから瞳を閉じた。
【画像11 加藤キスシーン】
「安芸くんのことが好きだったから」
・・・ずっと前?去年ってことか・・・?去年は加藤と何かあったか?記憶にほとんどないぞ・・・名前すら曖昧だったし・・・
と・・・とにかく今は目の前のイベントに集中だ。キスと言われても困ってしまう。
けど、加藤は可愛い。
なんだよ、この反則的な可愛さは!何もかもぶっとぶぞ!?
それにずっと気になっていたけど、胸が大きい。確かな膨らみが服の上からも確認できる。
「んっ・・・?」
加藤がウインクして片目を開けた。
「・・・俺も、加藤のこと好きだ」
それから、そっと唇に近づいて・・・加藤がぐっと息をとめているのがわかった。
チュ。
キス。軽く唇と唇が触れ合うだけのキス。なのにすごく甘くって、頭がクラクラとする。
俺はきっと選択を間違えていて、世界が暗転して終わるんだとどこか思っていた。キスの瞬間、英梨々のことが頭をよぎったからだ。
取材といったが、今日会ったことをすべて書いて英梨々に見せるなんてできない。
キスを終えて、加藤にうながされるまま隣に座った。
加藤は何もしゃべらずに俺にもたれかかるように肩をくっつけた。腕を回して抱き寄せたくなるが、それが正しいのか、やりすぎなのかわからない俺は、チキンにもまっすぐ硬直したままだった。
観覧車がゆっくりと下っていく。夕日が綺麗だった。
加藤の方をみると、加藤も俺を見ていた。
「安芸くん。倫也くんって呼んでいい?」
「いいけど・・・」
「わたしも呼んで」
「名前?」
加藤が小さくうなずいた。
「めぐみ・・・」
「はい」
はい、と返事されても・・・
そして加藤はまた目を閉じた。俺は体を曲げてまた加藤・・・恵にキスをする。
さっきよりも深く口づけをした。加藤の唇の柔らかさや、リップの少し張り付くような感触があった。
舌をいれるなんてできなかったけど、お互いに息をじっと殺して、そのあとがまんできなくて小さく呼吸をして、それでも唇をずっと付けたままでいた。
観覧車がずっと回っていればいいのに・・・と思いながら。
(続く)
お陰様で本作は今のところ順調に500名ぐらいの読者がいるようです。いつも失速する英梨々にしては珍しい(汗
よいお年を。