【R18】冴えないエロゲの作り方(イラスト付き) 作:きりぼー
これで面白くなさそうと思った方は、画像だけチェックするのでいいかもしれない・・・
ホームルームが終わって放課後になった。
新クラスになって2週間。そろそろ新しいグループができている。
いそいそと帰る奴、部活へ向かう奴、なんとなく集まっておしゃべりをしている奴。いろんな奴がいる。
俺は時々ちらりと加藤をみる。加藤も俺をちらりとみる。
誘って一緒に帰るには気恥ずかしさがあるし、みんながいるところで・・・いや、英梨々がいる前で女子に声をかけるのも躊躇する。
そういうわけでお互いに周りに悟られないように目配せしながら、教室が落ち着くのを待った。
英梨々も立ち上がって美術部の方へ向かっていった。
まだ教室の後ろには5人組の女子生徒が談笑をしている。ぽつんと教室に残っているのも怪しいし、いつまでもマンガを読んだふりもできない。
加藤は手持無沙汰にノートを広げて勉強したふりをしているが、傍から見ると後ろのグループに加われないボッチに見えなくもない。
本人はいたって無表情で気にしていない様子だが、俺としてはそろそろなんとかしないといけない。鞄をもって立ち上がった。
「場所、変えていいか?」
「・・・うん」
返事が聴こえたか聴こえないかぐらいの声だった。俺がそのまま教室を出ると、加藤が後ろからついてきた。なんか奥ゆかしい。
「学校なら視聴覚室が使えるんだが・・・いろいろ問題もあってな。外でもいいか?」
加藤は素直にうなずいた。
階段を降りて下駄箱で靴を履き替える。ここまできて加藤と距離をとって帰るのも変だろう。意識しすぎか。
加藤がよく磨かれたローファーに履き替えるのを待って、並んで校舎を出た。
「加藤って、どの辺に住んでいるんだ?」
場所を聞くと、家は俺とそう遠くはない。ローカル線が同じで途中までは一緒だった。
「なら、一駅歩こうぜ」
「わざわざ?」
「いいとこがあるんだよ」
学校の最寄り駅から一駅歩く途中に喫茶店がある。ここなら他の生徒はまずこないし、先生もわざわざ見回りなんてこないだろう。
「奢るからさ」
俺は加藤に喫茶店のことを告げて誘った。
「うん」
加藤はこくりと小さくうなずく。表情があまり変わらないので何を考えているのかよくわからない。
ちなみにこの喫茶店は英梨々と一緒に発見した。もちろん英梨々と二人で学校帰りには寄っていないが、合格後の下見のあとに一度利用し、去年も夏休みに学校へ用事があった時に待ち合わせに使った。
「純喫茶っていうんだっけか、レトロな雰囲気がいいんだよ」
「へー」
相槌は打ってくれるが興味をもって喰いついてくる感じでもない。さっきから俺が一方的に話をして、加藤はうなずくだけだ。
最寄り駅から外れれば、ほとんど学校の生徒はいなくなる。
ぽかぽかといい天気だった。
「散歩日和だな」
「うん」
声出す時もあれば、そうでない時もある。
「そこのさ、小倉トーストが美味いんだよ」
「学校帰りに食べるの?」
「小腹がすく時間だろ、ぜんぜん腹減ってない?」
「そうじゃなくて、学校の帰りにそういうところに寄ったことないから」
「まぁ・・・そうだよな」
普通の生徒ならそうだろう。コンビニぐらいには寄るだろうけど、なかなかお店には入らない。
線路沿いの通りからは一本なかの道に進む。閑静な住宅街に喫茶店と街中華の店が並んで営業している。
「なんでこんなところに店があるか不思議だろ?」
「そう?」
「そこは、不思議に思ってくれよ」
「うん。不思議」
「だろ・・・元々は駅からこっちへ商店街が続いていたらしいんだよ。でもだんだんと寂れていって、ここが残ったらしいんだ」
「うん」
「・・・」
「ありがちだよね」
「・・・そう?」
「うん」
「まぁ、すごくいい店だからさ。中華屋の方は知らんけど」
「うん、だから残っているんじゃないかな」
「だよな」
加藤は素直にうなずくけど、愛嬌があるわけではない。言いたいことは言うタイプなのかもしれない。ノリは良くないと思うし、あんまりというか、ほぼ笑わないのも気になる。
「加藤ってさ、もう少し笑ったら可愛いと思うんだけど・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・いや、ごめん」
「謝られても困る」
「・・・」
「・・・」
変なことを口走ってしまった。思春期の女子生徒を捕まえて可愛いなどと言ってはダメだろう。チャラい男に思われてしまったかもしれない。
情緒ある木造の入口は、けっして古くて汚いわけではない。ガラスも綺麗に掃除されているし、ショーウインドウの飾り付けやサンプルも埃をかぶってなんかいない。季節にあった彩りがされていて、今は桜関係の商品を宣伝していた。
「この桜あんのトーストもいいな・・・」
「うん」
ドアを押して開ける。もちろん手動だ。ベルがなる。正面がカウンター、2名を告げると奥の窓際へ案内された。他の客は2組ほどが離れたところに座っている。
加藤を窓の外と店内が一望できる壁際に座ってもらい、俺はその少し斜め前に座る。どちらもソファー席なので荷物をおいてもゆったりと座れる。
4人掛けを案内されたということは、この時間はそんなに人がこないのかもしれない。
メニューブックも重厚で悪くない。しっかりとデザインされていて、手書きのようないい加減なものは入っていない。食事に関しては写真もついていて親切だが、そこまで種類は多くはない。
「これこれ、小倉トースト」
「けっこうボリュームあるね」
「そうだな。まぁ高校生ならペロリだよ」
加藤は静かにメニューをめくって読んでいる。
「安芸くん、小倉トースト食べる?」
「そうだなー」
「なら、わたしは・・・桜あんのほうにしてみようかな」
「ふむ、飲み物は?」
「紅茶で」
オーダーが決まったので店員を呼ぶ。呼び鈴もあるが手を上げればすぐにきてくれる。ここの奥さんなのか、パートのおばちゃんなのかはわからない。家族経営にしては店が少しでかい気がする。
「小倉トーストと、桜あんトースト。それをセットにしてもらって、温かい紅茶と、アイスカフェオレでお願いします」
「紅茶にはレモンかミルクをつけますか?」
「レモンで」と加藤が答えた。はっきりとしている声だ。
「かしこまりました。トーストはカットしましょうか?」
「お願いします」
面白いのはこれを紙の伝票に手書きではなく、電子端末を使っているところだ。調べてみてもチェーン店ではないし、個人店での導入は珍しいと思う。
店内には昭和のJPOPが静かに流れている。クラシックやジャズでないから、知っている曲が時々聴こえてくる。CMに使われた曲なのだろう。
「これ、生花なんだね」
「せいか?」
「本物のお花ってこと」
窓は少し出窓になっていて、そこには鉢植えの観葉植物と花が交互に並んで咲いている。
「加藤は花が好きなの?」
「うーん、どうかな?人並の女の子程度には好きだと思うけど」
「好きな花とかある?」
「やっぱり桜かな~」
「ああ、桜ね」
なんか普通の雑談っぽい。いい感じだな。自然と話題が広がっていく、気を付けないとアニメについて一方的に話してしまうからな。自重しなければ。
そういえば出会ったのも桜の下だったな。出会ったというのは違うか・・・去年も同じクラスだったし。
「そういえば加藤はあの日、どうしてあそこにいたんだ?」
「うーん。どうしてだろ・・・」
俺が新聞配達をしていた早朝だ。6時は過ぎていたと思うが・・・始発は出ていたんだろうか。いろいろ謎である。
「あの日、夜更かししてて眠れなかったんだよねぇ」
「加藤にもそんな一面が」
「普通の高校生だもん。夜更かしぐらいするよ」
「アニメを一気見したとか?」
「前日に昼寝を長くし過ぎて、ダラダラと動画配信見ていたような・・・」
「はははっ」
「それで、あの桜坂って有名だし、ちょっとローカルテレビでニュースになることもあるし、気になってて・・・」
「ふむふむ」
「徹夜明けの妙なテンションで・・・」
「あるよな、そういうこと」
「携帯で調べると始発はもう出ていたし、早朝なら誰もいないからいいかなーって」
「なるほどなー、じゃあ、あの後は家で寝たんだな」
「どうだったかなぁ」
加藤とそんな話をしていると時間が立つのが早かった。
「お待ちどうさまです」
そういって、ウエイトレスのおばちゃんが飲み物を運んできてくれた。テーブルに並べる。それから往復してトーストも置いていった。オーダーが終わったことを確認して印刷した伝票を置いていく。
餡のたっぷりのったトーストは斜めにカットされていた。サラダも申し訳ない程度にもりつけてある。ココットには生クリームがたっぷりと入っていてサービスがいい。
「交換するか?」
「・・・うん」
加藤がちょっと恥ずかしそうにした。ナイフで下から支えてフォークで抑えて皿から移した。加藤は桜あんのトーストを同じようにもちあげてスペースを作り、俺が置いたあとに俺の皿へと移動した。
無事に交換が終わった。
「いただきます」
「いただきます」
ここはしっかり挨拶をする。アイスカフェオレにはガムシロをたっぷりいれるのが好きだ。それからストローをさしてかき混ぜる。
加藤は紅茶のはいったポットの蓋を開けて中を確認し、少し揺らしてからカップへと注いだ。それからレモンを入れてすぐに取り出す。砂糖は入れないようだ。
俺はアイスカフェオレを一口飲み、それから加藤がどうやって小倉トーストを食べるか悩んでいるのがわかったので、皿をもって近づけ、豪快に片手にもってかじりついた。
「・・・クスッ」と加藤が笑った。
「これは上品に喰うもんでもないだろ。ナイフとフォークで切り分けてパンケーキみたいに喰うべきなのか?」
「さぁ?」
加藤はナイフとフォークを両手でもって切り分けようとしていたが、それを置いて、俺と同じように皿を持って口元に近づけた。
ガシュリッ・・・と少し重たいパンをかじる音が心地よく響いた。
「・・・どうだ?」
「うん。おいしいよ」
「リアクション薄いな!」
「そう?」
でも、加藤は口元を抑えて少し笑った。
とても可愛いと思う。
これは・・・掘り出し物だなと思った。どうして今までこんなにも印象に残っていなかったのか不思議なぐらいだ。
それから、俺はトーストをかじって食べたが、加藤はナイフで切り分けて上品に食べていた。まぁ恥ずかしい気持ちもわかる。
英梨々は一周回ってトーストをかじって食べていた。それも豪快に。美味しいものは美味しいままに余計なことをしないで食べるのが好きらしい。それでも様になるのが英梨々なんだが。
トーストを半分ほど食べ終わり、桜あんについても適当な感想を言い、一段落ついた俺は本題を切り出すことにした。
「それでだな、加藤・・・大事な話があってだな」
「ああ、うん。そうだったね、なんだっけ?」
「ゲーム。アドベンチャーゲームって知ってるか?」
「よくわからないけど」
「いわゆる紙芝居ゲームといわれるものだ。物語が進んでいくと、選択肢が現れて分岐する。それによってクリアを目指す作品だな」
「うん」
「いろんなジャンルがあるんだけどな。一番人気なのはギャルゲーと呼ばれるジャンルだな。恋愛シミュレーション」
「へぇー」
「ドキメモ」って聞いたことないか?あとはリトラブとか」
「なんか聞いた事ある気がするけど」
「まぁそういう系統のゲームだよ」
「ふーん?」
一般人がこういうものだとは思わなかった。類は友を呼ぶというが、俺の周りにはオタクが多い。英梨々はもちろん立派な腐女子だが、出海ちゃんもオタクだ。それに霞ヶ丘先輩も流行のラノベを書くためにオタク文化も詳しい。ただこの人の場合はオタクだけでなくあらゆることに詳しいが・・・
「で・・・だな・・・」
さて、俺は加藤に何を頼むのだろう?
加藤がゲームシナリオを書けるわけないし、プログラムだって無理だろう、音楽?いやいや、仮にピアノができたからといってアニソン系が作曲できるわけがない。
「加藤には・・・」
加藤を見つめる。小さく切り分けた桜あんののったトーストに生クリームをフォークで掬ってのせ、それを口へと運んだ。ずいぶんと上品に食べる。
俺がじっとみていたせいか、口元を手で隠して噛んでいる。
可愛い。
こう、清楚で可憐。桜のようなピンク色よく似合う。そんな女の子だった。
だからといって幼い印象はない。胸だって・・・うん。それに歩いている時のスカートからのびる太ももだって・・・なんかこう、出るとこは出て、ひっこむとこはひっこむというか・・・
俺は何を言ってるんだ。
ここは清く正しく妄想しなければ、もとい、インスピレーションを膨らまさなければ・・・
加藤は部活はしていないようだが姿勢もいいし、きっと家でストレッチなどの運動はしているのだろう。ということは、レオタードなんか似合うかも知れない。
ほわわわ~ん
【画像 加藤のストレッチ】
「安芸くん・・・?」
「あっ、うん。すまん。えっとだな。加藤にはその、なんていうか、『メインヒロイン』になって欲しいんだ」
その瞬間、音楽鳴りやんだ。静寂に包まれる。加藤はゴクリと飲み込んだ。目を大きく開けて驚いている。
「メインヒロイン?」
「そ・・・そう」
「えっと・・・?何のこと?」
「そうだな・・・えっとだな・・・ゲームをだな、作ろうと思っていて、ゲームというのはアドベンチャーゲームなんだけど、えっと、さっき説明したよな。それを俺はプログラムで組むことができるんだけど、そのなんというかゲームを作って見たくて、ゲームを作るのが子供頃からの夢で、それでアニメとか見てて、ゲームもたくさんやったし・・・」
「安芸くん・・・」
「だからその加藤にはだな、その登場人物のモチーフとしてメインヒロインをやってもらってだな・・・具体的にどうこうはないんだけど・・・それはすごく大事でさ」
「安芸く~ん」
「ああ、うん?」
「落ち着いて。何言ってるかわからないよ」
「えっと・・・ごめん」
ああだめだ。やっぱり一方的にしゃべってしまった。何を話したか自分でもよくわらかない。メインヒロインになってくれってなんだよ・・・
「安芸くんはゲームが作りたいと?」
「うん。そう」
「それがアドベンチャーゲームで、プログラムもできるんだ?」
「そう。うん、そういうこと」
「すごいね」
「いや、まだできてないんだけど。というか、何も始まってないんだけど」
「うん」
店内の音楽がいつの間にか切り替わっていて、クラシックが流れていた。時間帯によって変えるんだろうか。静かなメロディーが流れている。
「それで、メインヒロインって何をすればいいの?」
「受けてくれるのか?」
「それは内容にもよるんじゃないかな」
内容・・・
英梨々はエロゲーを作れと言っていたが、まさかそんなことを言ったら断られるのが当然だろう。
「これ・・・なんかいい曲だな・・・ぜんぜんクラシックはわからねぇけど」
「うん?これは、ラフマニノフかな」
「ラフマ・・・なんだそれ」
「この曲作った人」
「ほう・・・」
「ほら、安芸くん・・・」
加藤が目線で俺に後ろを向くように知らせた。
俺が振り向くと、ウエイトレスのおばちゃんが目を反らした。
「きっと、勝手な思い込みで音楽を変えたんじゃないかな・・・」
「な・・・なるほど・・・」
俺らをカップルか何かと思ったのか、おばちゃんが気を利かせてくれたらしい。大きなお世話ともいう。
「そういうわけでだな・・・加藤にはメインヒロインをだな・・・」
「わたしの質問に何も答えてないよ?」
「ふむ。だからだな。そのメインヒロインが何なのかを含めて、加藤にも考えてもらってだな・・・」
「ふーん・・・」
「一緒にゲーム作ってみないか?」
「うーん・・・」
ダメならダメでしょうがない。行き当たりばったりすぎた。そうだよな、まずは企画書を作って、メインヒロインが何のか考えるのが先か。いや、違う。加藤がメインヒロインなんだ。
「あの日、加藤にあってさ。俺はゲームを作りたいって心底思ったんだよ。ずっと作ろう、作ろうって思ってたのにぜんぜん手がつかなくて、今も手がついてないんだけど。それでもいまはやる気スイッチだけは入ったというか」
「あの日?」
「加藤に桜の下で出逢った時」
もうこれ、告白じゃねーか??
いや、ただのゲーム作りの話だ。そうだよね。エロゲーは無理でも一般ギャルゲーなら加藤をメインヒロインにシナリオが書けるかもしれない。
「それってさー安芸くん」
「はい」
妙にロマンティックな音楽が流れているが、気分的にはジェットコースター。テンション高めのロックがいい。高揚している。
「付き合うってこと?」
「えっ?」
加藤には告白に聴こえたらしい。その時、俺の脳内でゲームの分岐が浮かび上がった。
①「そう。俺・・・加藤に一目惚れした!よければ俺と付き合ってください!」
②「いや、そういう意味でなくって、ただ英梨々・・・澤村とのゲーム作りのパートナーとしてメインヒロインをやって欲しいだけだ。勘違いしないでくれ」
どうもこの二択。中途半端は許さないらしい・・・
(続く)
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