【R18】冴えないエロゲの作り方(イラスト付き) 作:きりぼー
こんな作品でも投稿が完了するとホッとする。
人間なんていつ何があるかわからないから
せめて物語の中で英梨々が幸せになってくれたらいいなと思う
割と真面目にそんな感じ。
最期まで付き合っていだたきありがとう。
ご意見・感想・評価等いただければ幸いです。
締め切りとは重要なものだと思った。ゲーム作りに完成はなく、どこまでも細部にこだわりたくなるし、文章は読見み直すたびに推敲したくなった。
今日の終業式を約束の日にして、なんとかゲームを完成させる。別段難しいプログラムは組んでないのでデバックも楽で、大きなバグは見当たらない。ただゲームをプレイしてみるたびに誤字や脱字が見つかったから、小さなミスはまだあるだろう。
一方で英梨々は夏のコミュケの準備があり、毎日忙しく過ごしていた。
英梨々の両親はコミュケ初期からある老舗サークルを運営していて、そこでの出会いから結婚に至った経緯がある。ある意味では本業よりも大事なのだ。
毎年、俺も駆り出されている。それなりの役割が決まっているので、自分のゲームの為にお休みするわけにもいかず、ちょくちょくと英梨々の家に通っては手伝っていた。もちろんバイト代も出るのでお年玉と並んで大事な資金だ。
俺のゲーム作りは一段落したので、あとは英梨々にプレイしてもらえばミッション完了だ。その後は本格的に夏コミュケの手伝いに参加する予定だ。
このあと英梨々が来るわけだが、なんだかいつも以上にソワソワとして落ち着かない。
※ ※ ※
英梨々はピンク色のキャミソールにモスグリーンのミニスカートをはいていた。夏らしい装いだがパステルカラー調なのは珍しい。英梨々は原色っぽいハッキリした色が多い。特にフェミニンを前面に出すようなピンク色の服はなかなかお目にかかれない。
俺の部屋に上がるとテレビ前のクッションにペタンと座った。やる気充分である。
ノートPCの電源を入れ、画面はモニターに出力する。ワイヤレスのコントローラを英梨々に渡した。
このコントローラーはレトロ仕様の物で、古のコンシューマーであるフェミリーコンピューターと同じ形をしている。ボタンの数が少ないので実用性には乏しいのだが、今日みたいな紙芝居ゲーなら充分だ。持つのに軽くていい。
ピコーンと音が鳴ってゲーム画面が表示された。音源はフェミコンと同じものを流用しているので、音を聞いているだけでタイムスリップしたような気分になる。作曲は美智留がしたものを俺がゲーム音源に直した。
「何か飲むか?」
英梨々は正座して真剣である。もうちょい気楽にプレイしてもらいたい。審査じゃないんだから。
「レモンスカッシュの砂糖抜きで」
「あいよ」
オープニングはそこそこ凝った仕様になっていて、英梨々に内緒で作った2Dのドットキャラがショートコントのように遊んでいる。
主人公が女の子に近づくと、金髪ツインテールが追いかけてきて引き離すのだ。登場する金髪以外の4人のパターンが存在する。
英梨々もわきまえたもので、タイトルが表示されてからコントがループするまで確認している。
話のわかるやつだ。
キッチンに降りて、英梨々にリクエストされたレモンスカッシュを作る。作るといっても半分に切ったレモンから種を抜き取り、ギュッと氷の入ったグラスに絞ってから皮ごと放り込む。ペリエはあとから英梨々自身でで注いでもらう。ストローを添えて完成だ。
俺は麦茶を入れて部屋へ戻った。
英梨々が真剣な表情でゲームをしているので、テーブルの上にレモンスカッシュを置いておく。どこかのタイミングで自分でやるだろう。ペリエの栓はそれまで抜かない。
文章が流れる時は、テュロロロ・・・テュロロ・・・と鳴る。もちろん技術的にはAI音声で読ませたり、あるいはボイスチェンジャーを使ってアテレコすることもできる。
ただそこまですると手間暇が膨れ上がるし、それが必ずしも作品を良くするとも限らない。想像の余地を残しておくことは大事だ。
俺はベッドに寝そべりながら英梨々の後ろ姿を見ていた。ほっそりとした首。うなじの毛はしっかりとまとめられている。ツインテールは硬質な感じがしながら、窓から入る風でふわふわと揺れて優しく輝いていた。
小柄で華奢な容姿はまだまだ少女の趣が残っている。それでも女性らしい曲線も出てきて、後ろから抱きしめたくような感情は起こる。
「倫也」
「なんだ?」
「紙と書くものちょうだい。ここ間違ってる」
「悪いな」
ノートとシャーペンを渡すと、英梨々は適当に開いて間違いを記録する。ゲームの完成度とは地道なデバック作業の質によるのだ。
英梨々はポチポチとボタンを押しながら読み進める。オート再生機能はついているし、速度も選べるようにはなっているのだが、英梨々は手動が好きだ。
長文などはどうしても斜め読みしたくなるし、文章を読むというよりは見るような感じで理解する。
しかし、物語に入り込む時はやはり現実と同じ速度で黙読する方がいい。セリフには間が必要なのだ。それはひとそれぞれの感じ方があるし、オート再生では無理な話だ。
のどかだな~と思いながらあくびを一つする。実にけっこうな文章量になっているのでこのペースなら2時間以上はかかるだろう。
英梨々が最初の分岐になったところでセーブをした。オートセーブ機能もついてはいる。
そこでコントローラーを置いて、ペリエの栓を開けてレモンスカッシュを作りストローでくるくるとかき混ぜた。
特に感想もいちゃもんも言わない。まるで審査されているような気分になる。だいたい雰囲気からして創作時と同じような近寄るなオーラを出しているので、俺も無駄口は叩かずにいる。
レモンスカッシュを一口飲んでから、英梨々はまたコントローラーを持って分岐を選択した。最初に登場する分岐は幼馴染かメインヒロインかの重要な分岐だ。
俺の書いたシナリオは何度もやり直すような形でループする。そのため二股分岐とはいえ膨大数になり、すべての分岐を作ると数千のシナリオが必要になり事実上無理だ。
そこで強制選択のような形をとる。要するに進んで欲しくない方の分岐を選ぶと、主人公が何やら呟いて分岐にもどり、もう一方の正解ルートしか選べないのだ。
こうすることで事実上の一本道にすることができる。
英梨々もそれに気が付いたようで、幼馴染ルートを選びながらメインヒロインルートしか進めないことを知ると、後ろを振り返って俺を睨んだ。
簡単なサブヒロインの幼馴染ルートシナリオをリクエストされていたが、結果的にはそうならなかったのはしょうがない。
英梨々をモチーフにしたサブヒロインをサブヒロインとして完成させることが俺にはできなかった。
サブヒロインとみせかけたメインヒロインポジションであり、メインヒロインとみせかけてサブヒロイン。これこそがこのゲームシナリオの肝なのだ。
英梨々にはたくさんのイラストを描いてもらったし、過去のイラストや同人マンガからセレクトしたものを修正もしてもらった。絵だけでもある程度は予想がつきそうなものだが、英梨々が美術部と連載ショートマンガとイラスト投稿とおまけにコミュケの準備で謀殺されていて、俺の依頼を分析する暇はなかったかもしれない。
だから、メインヒロインルートのウェディングからの大どんでん返しの夢オチを気が付かないことを期待する。
俺は少し目をつぶった。レトロ音源が耳に心地よかった。夏休みの始まりにしては今日は過ごしやすい陽気で窓からの風が気持ちがいい。時々通る車の音以外はあまり気にならない。
セミはまだ遠くで申し訳ない程度に夏を告げているだけだった。
※ ※ ※
「倫也」
耳元で英梨々の声がした。しばし眠ってしまったようだ。
「終わったわよ」
俺は起き上がった。モニターにはENDの文字が表示されていた。きっちり2時間といったところで、映画一本分だ。
「ふぁ~~あ」
俺は背伸びをしなら大きなアクビをした。英梨々のグラスは空になっている。
「まぁ・・・良かったわよ」
「そうか。それは良かった」
英梨々がベッドに腰をかけた。それから足を少しさすっているのは長時間座りっぱなしだったからだろう。
「ちょっと最期がよくわからないのだけど・・・」
「ん?」
「全部夢オチで、最初の喫茶店で幼馴染を選ぶじゃない」
「うん」
「それで一緒に帰るところで終わるわよね」
「そうだな・・・」
「・・・どこがエロゲーなのよ・・・」
「途中で妄想のエロが沢山出てたろ」
「そりゃ出てたわよ。でも肝心の幼馴染としていないのはおかしくない?」
「それがいいんだろ・・・」
「なんでよ」
「なんでって・・・お前なぁ・・・」
なんでだろ?
これも一種の処女信仰みたいなものだろうか。たぶんそうだ。肉体関係にすぐ溺れてしまう他のヒロインとは一線を画している。
「こう・・・プラトニックなんだよ」
「わかるわよ。処女がいいってことよね」
「・・・まぁそうだな・・・って処女とかいうなよ・・・」
英梨々はド変態エロ同人作家だけあって言葉のセレクトに関しては美少女の上っ面とのギャップがひどい。
「でも、これじゃオチがいまいちスッキリしないと思うんだけど」
英梨々は納得がいかないらしい。『R18』とみせかけて一般版のようなオチではやはりダメなんだろうか。
「でも、あれで結ばれるとこまで描写したら俺は蛇足だと思うし、すぐにそういう展開にしたら他の『安いヒロイン』と同列になるだろ」
「だから、そこが一番肝心なんじゃないかしら」
「そうだけどな・・・」
ある意味で英梨々のリクエストというのは、そこから先を描くことにあるのだから、文句があるといえば当然か。
「これ、隠しルートやもう一度やると別な分岐がでるとかじゃないわよね?あたしのイラストは全部でてきたし、ギャラリーも埋まってるし」
「うん」
ギャラリーというのは、出てきたイラストをあとから見直すことができる昨日だ。
「あんた幼馴染とエッチしたくないわけ?」
「それ、すげぇ誤解を生むような聞き方だな。そうじゃないけど、なんか照れ臭いだろ」
「何がよ」
「何がって、なんで英梨々にプレイしてもらうのに、英梨々とエッチしている描写描かないといけないんだよ」
「はぁ?あんたバカなの?死ぬの?なんであたしなのよ」
「だって、このサブヒロインのイメージはお前だぞ?」
「そんなのわかってるわよ」
「わかってるならわかれよ」
「わからんないわよ」
「ええっ~」
なんでこんな怒られているのかわからない。女心が複雑なのか、英梨々の変態性に俺がついていけないのか。はたまた別の原因があるのか。
「とにかく、あたしはこのオチじゃ納得しないし、プレイヤーも納得しないと思うのよね」
「プレイヤーがお前だから、まぁお前が納得しないならそうだろうよ・・・」
困った。こんなに長々とシナリオを作ったのに期待に添えないなんて。
「だいたいこの幼馴染ヒロインのエロシーンなんてパンチラ一枚だけじゃないの」
「ふむ・・・」
言われてみればそうかもしれない。英梨々がぶつぶつと文句を言っている。いっそ幼馴染ヒロインを欲望のまま犯すようなシナリオの方がよかったか。英梨々の同人マンガの傾向からするとそうかもしれない。
「そこでだな・・・英梨々。俺は思ったんだが・・・」
「何よ」
「こうして無事にゲームを完成させた見返りはあってもいいと思う」
「何あんた金とるの?」
「とらん」
「金とるならあたしのイラスト代支払いなさいよ」
「それ、バランスが気にになるな・・・」
「で、見返りってなによ」
「見返りは見返りだよ・・・」
「だから何よ」
「えっと・・・例えば・・・『キス』とか・・・」
セミが鳴きやんだ。空には飛行機が飛んで長い雲を作っている。
【画像34 英梨々】
「な・・・なんでそうなるのよ・・・」
何でと言われても困る。
「物語っていうのはだな・・・相思相愛の男女がキスして終わると、それっぽく完結するからだよ」
「はぁ・・・バカじゃないの」
「嫌ならいいよ」
「べ・・・別に嫌とは言ってないでしょ」
英梨々が顔を赤らめてモジモジしている。日光に当たって髪が輝きすぎて天使みたいになっていた。
「だいたい相思相愛ってなによ」
「確かにそうだな・・・それはわからんよな・・・」
なるほど、避けては通れないらしい。こんなに長い作品作っても告白に思えない英梨々は鈍感なんだろうか?
「英梨々。好きだ」
英梨々の隣に座って、目をじっと見ていった。
英梨々の顔がどんどん真っ赤になる。
「ふぁっ・・・」
もうちょいツンデレならツンデレ風に反応しろ。こっちまで照れる。
英梨々がモジモジしたり、長いツインテールを指でクルクルしたり、挙動不審になった。
俺はその小動物のような英梨々をじっと見つめていた。英梨々は今日もカワイイ。
唇を波のように歪ませていると八重歯がちらりと見えた。
「わ・・・わかったわよ・・・なら、目を閉じなさいよ」
英梨々の気持ちは聞いてないのだけど・・・俺は黙って目を閉じた。鼻にくすぐるような日向のような香りがする。
唇に触れた。
俺が目を開けると英梨々は目を閉じてキスしている。それは唇を唇を合わせただけの何かの儀式のようにも思える。
キスってこんな感じなんだなっと妙に冷静な感想を抱いてしまった。
唇には質量があって、その感触を感じた。温度は俺よりも少し低く冷たかった。『甘い』と表現される理由がよくわからない。
英梨々がそっと離れた。俺は目を閉じたままにする。途中で開けたことバレないように。
時間がすぎる。セミの声とゲームのずっと流れるエンディングテーマだけが聴こえる。
「あんたいつまで目を閉じているのよ」
目を開けた。
英梨々がいる。
顔がまだ少し赤い。
金色のツインテールは壮麗ですらある。
深いサファイアブルーの瞳が少し潤んでいるように見えた。
幻想的な君がもっとも夢に近い気がするけど、もう死に戻りする事はなかった。
(完結)
【あとがき】
長い間くだらない作品に付き合っていただいてありがとうございました。
500人前後で推移したことに驚いております。しかもそんなに読者減らしませんでした。
エロ絵は偉大だね(結論
オチに関してはピンと来た方もいらっしゃるかと思いますが、英梨々のキスの褒美を倫也が迷った末に拒否をして「また夢になるといけない」という芝浜オチを採用しようと思ったのですが、長い物語になってしまったので綺麗にまとめました。
英梨々とのエロを期待していた方には申し訳ないです。
英梨々のエロに関しては昨年の夏作品がありますので、そちらをご利用?ください。
次は夏向けに作ってみたものの、話が迷走してまとまりきれなかった作品を連載します。そちらは全33話で本来はボツ原稿なのですが、絵も作ってしまいましたからね。
よろしければまたお付き合いください。