三日ほど経った。
言峰から受ける授業は上手くいっている。八極拳だって筋がいいと褒められた。
そこまでは律してできるようだ。
けれど宝石魔術は未だ成功していない。どうにも集中できていないのだ。
休憩中、凛は思い当たる原因を見て溜息をついた。
言峰は他国の言語で書かれた本を開いて次の授業をどうするか考えているようだった。
やっぱりこう見ていても凛は言峰が嫌いだ。
(顔はそんな悪くはないんだけど、いっつも無表情で何考えてるかわからないし
声は低くてよく通るけどなんか暗いし、授業はわかりやすいけどお話すると意地悪だし
背が高すぎて顔見てると首痛くなるんだもん)
――になんてなるわけないのだ。
実は武術の最中はちょっとだけかっこいいとか思ってたりもするのだが。
踏み込みだけで地面が割れたり木に手を当てたまま衝撃で枯れ葉を全部落としたりと凄い。
視線に気づいたのか言峰が凛へと顔を向ける。
光すら飲み込みそうな、黒い眼差しが凛を見つめた。
「何か質問でもあるのか」
「な、ない。全然ない!」
ぷいっと凛はそっぽを向いて視線を外した。
しばらく経ってから、横目で少しだけ見る。
(うー、おかしいおかしいわよ)
クラスメイトの女子がこんなふうになっているのを見たことがあった。
隠しているようで全然隠れていない、一人の男子を追う視線。
球技大会のサッカーで活躍した男の子がいて、――になってたみたいだった。
それが自分に振りかかるなんてあるわけない。相手が綺礼だなんてありえない。
けれど強い精神集中を要求される魔術はちっとも上手くいかなくなってしまったのだ。
心の中にあるぐるぐると渦巻いては沈んでいく何かが気になってしまう。
綺礼を見ていると少しだけ落ち着いて、それがもやもやに変わってしまう。
悪循環だ。
気持ちが悪いし、魔術がうまくならないというのも嫌だった。
(えっと、もしも、仮に。うん、仮にね。私が綺礼を――だったとして)
もしそれを伝えたら綺礼はなんというだろうか。
考えてみる。
・
・
・
なんだろう。最悪な気がした。
「そうか」
こんな感じに頷いて無言が続きそうだった。
きっと逃げ出してしまう。
凛だけが恥ずかしい思いをして、次の日になっても何も変わらないのだ。
こうとも言いそうだった。
「わかった。ではどうしてほしい」
わからない。そんな風に言われるのも困るのだ。
(やっぱり無理……)
そう考えてしまうのは凛自身が子供だとわかっているから。
本気に取ってもらえるわけがないし、そもそも言峰とどうしたいかわからない。
中途半端だった。なまじ聡明なばかりに失敗する理由ばかりを思いつく。
(なんで私ばっかりこんな気持ちになってるのに綺礼は平気なのよ)
悲しくて、悔しくて、なんだか逆恨みまでして
凛は怒ったような表情で涙を零してしまっていた。
「どうした。凛」
「な、なんでもないのっ。その、最近宝石魔術が上手くいかないから、つい」
とっさに別の言い訳をしたが嘘ではない。理由が一つではないだけだ。
「ふむ。次の授業を語学から武術にするのはどうだ?動けば気が紛れるだろう」
そのほうがいいかもしれない。
凛もそう思ったが、時間が経てばまた悩んでしまうのはわかっていた。
根本的な解決か状況が動かないとこのままなのだ。
「あのね……綺礼、前言ってた魔力を高める方法なんだけど……試してみたら宝石魔術ができるようになるかな?」
俯きながらもか細く問うた。
それは魔術師の精液から魔力を得る方法。
凛は状況を変えるほうを選択した。
「急がなくても大丈夫と言ったはずだ。今できなくてもいずれできるようになる」
「そうかもしれないけれど、私は今できるようになりたいの。苦しくて、辛くて、いってもたってもいられなくて」
魔術ができないからだけではなく、言峰を想っての事だ。
言峰は顎に手を当てしばし間を空けた後頷く。
「わかった。凛が本気ならば私も協力しよう」
言峰が立ち上がり、顔を上げた凛に影がかかり、ビクッと凛は身を震わせて目を瞑る。
が、しかし言峰は凛に近寄ってそのまま横を通り過ぎた。
「……あれ」
パチクリと瞬きをして疑問符を浮かべる凛。
「その前に身を清めねばならない。汚れていないほうがいいだろう」
「う、うん。そそそうだよね」
無理もないだろう。ビクビクと落ち着きが無い様子だ。
言峰はドアを開けてから凛へと振り向き
「くるか?」
脱衣所のほうを腕で指し示した。
凛は一瞬キョトンとした顔をしたあと
「行かないわよ!!!」
理解が及んだのか真っ赤な顔で怒鳴る。
「そうか。では寝室で待っていろ」
何事も無かったかのように言峰は出て行った。
後にはいきなり大声を出しためか、荒く息切れる凛の姿。
「うーやっぱり言わなきゃよかった……」
いきなり後悔している凛だが、それでも先ほどよりは元気そうに見えた。
教会の豪華とは言えないベッドに凛は腰掛けていた。
座っているだけなのに鼓動は高鳴り止まらない。
両手は赤いスカートの上で強く握りしめられている。
決意の瞬間に始まればこうはならないだろうに
待っている事でより緊張が深まってしまっていた。
ドアが開いて言峰が現れると凛の鼓動はより激しく打ち鳴らされる。
「なななにそれ!」
黒く毛羽立った生地が言峰の全身を覆っており、胸元は緩く開かれて露出している。
袖は二の腕が見える程度で、丈は長く足首までを覆っている。
それは漆黒のガウン。
異様に似合ってはいる。だがそれよりもただただ胡散臭い。
どう見てもやる気溢れる臨戦態勢の言峰だった。
「脱いでいないとできないだろう」
「わかってるわよ……!」
凛は顔を両手で覆っている。
武術の練習中に法衣を脱いて上半身裸の言峰を見たことはある。
でも今は半裸の言峰を見るのがとても恥ずかしいのだ。
そんな凛を気にせずに言峰は近寄っていく。
「隠すな」
ベッドの縁に座る凛の目の前に立ち、隠す手を剥がした。
言峰は容赦するつもりがないらしく結ばれた帯を解いて前を開く。
「ひぃっ……」
眼前には勃起はしていないが、180cmを超える言峰の体躯に見合った大きなモノ。
嫌でも雄を連想させ、幼い凛ですら羞恥と若干の恐怖で身体を硬直させた。
それは以前に言峰が性教育を施したせいでもあったのだが。
凛の表情は驚きと戸惑いで固まったまま動けない。
その様子に言峰はわずかに息をつく。
「そうまで怖がられては私も傷ついてしまうな」
「へっ……あ、うっ、ん。ごごめんなさい」
何気に謝ったのは初めてかもしれなかった。
「宝石魔術を成功させるのだろう。お前がやらねばならない」
「えっとー……どうすればいいの?」
不安そうだが目的を思い出したのか、まだ怯えがある瞳に意思の光が灯る。
「手で軽く握ってみろ」
「……わ、わかったわ」
言峰は半歩寄って触れやすいようにすると、凛は思わず上体を後ろに傾けた。
恥ずかしいのだろう。
左手で赤くなっている顔を覆いつつも、右手でそっと柔らかいままの幹に触れた。
「わわわっ……!」
思わず手を離してしまう。
あまりの熱さにびっくりしたのだ。
「熱いんだ……」
恐る恐るとしながらも、親指側を言峰のほうに向けて握り
「前後に動かせ」
言うとおりに凛は動かし始めた。
紅葉の葉のような小さい手が浅黒い幹を半分ほど包んだ。
擦ると刺激のためかモノが硬度を増していく。
「ななな、なんかおっきくて硬くなってる!」
「教えたろう。それが勃起だ。こうして準備しないと射精ができない」
「でもこんなに大きくて大丈夫なの……?女の人に入れる、んだよね……?」
「セックスをするつもりならばそうだな」
凛は言峰に教えてもらったセックスの知識を思い出した。
あの日聞いてから自分の所をちょっとだけ見たり触ったりしたけれど
とても何かが入るとは思わなかったのだ。
それで言峰のモノを見てしまうと、何やら想像したのか不安げな表情をしてしまう。
(大人になったら大丈夫なのかな……)
そんな事を考える自分には疑問を持っていないようだ。
凛は言われる通り、手を動かしていく。
そうすると上へと竿が持ち上がっていった。
前後の動きは上下へと変わっていって、凛は握り方を変えた。
大きくなった肉棒はとても掴みきれないからだ。
「もう少し強く握れ」
指の先に力が篭り、裏筋を親指が抑えながらも上下に擦っていく。
「こういうのでいいの?精液が出るの?」
「それでいい。だがこれは命を生むためのものだ。そう簡単には出ない」
厳密にはそうでもないのだが、凛の技法では早く至るものではない。
とはいえ了解を得て、自信を得たのか強張っていた凛の表情が幾らか緩む。
引いていた身体を前に傾け胸元付近まで惹きつけてから行為を続けるようになった。
幼く小さな手は柔らかくて、すべすべとした触感が竿を包み込む。
しゅっしゅっとリズムよくも単調な動きだが変化はある。
「精液出てきた……!」
「違う。それは尿道球腺液だ。簡単に言えば男性器への刺激で射精する前に分泌されるものだ」
叫ぶ凛をあっさりと言峰は否定する。
他人事のような言い方だが感じないわけではない。
「じゃあもう少しで射精するの?」
言峰を見上げて問う凛は恐怖や戸惑いが薄れてきてるようだ。
子供らしい好奇心を取り戻し無邪気な様子を見せてきている。
「それは凛次第だな」
「うん。頑張る」
素直に行為を続ける凛。
顔を隠していた左手も伸ばして両手で奉仕をし始めた。
マイクを両手で持つかのように肉棒を携えて上下に扱く。
先走った液に触れると、ねちゃっとくっついて糸が伸びるのに少し嫌そうな顔をしたが
ぬちゃぬちゃとしてると擦る音が変わって面白いのか笑顔を見せた。
ちょんと左手の指で尿道に触れて、先走りを幹まで伸ばす。
そうして右手で扱き始めた。
張りのある子供の肌が、液を潤滑油にしてより大きな快感を生み出すのだった。
言峰自身の欲求は高いどころか低いほうだが肉体はそうでもないようで幼くもつたない奉仕に関わらず、液を零して凛の手を濡らしていく。
「……っ」
幹の根元から亀頭までの裏筋を親指で擦られて、言峰がわずかに吐息を吐いた。
「綺礼、どうしたの?痛かった?」
凛は動きを止めた。
見上げれば無表情なのは変わらないのだが、どこか様子が違っている。
「いや、気持ちがよかった。凛はなかなかにうまい」
「き、きもちいいんだ…………」
ドキッと鼓動が高鳴った。
よくわからないままやっているが言峰が褒めてくれたのだ。
(気持ちいいんだったら喜んでくれてるんだよね)
それはなんだか嬉しかった。
子供だし、多分告白なんてしてもダメだと思う。なにをしたいかもわからない。
けれど子供の自分でも喜ばせる事はできるのだ。
凛の手がまた動き始める。
気持ちいいと言われた尿道付近を重点的に、親指でクリクリと押し揉むように圧する。
柔らかく弾力に満ち溢れた指で精の通り道が内部までほぐされていく。
上下に揺れる度、ぐちゃりぐちゅりと音を立てて先走りが溢れていく。
「そろそろだ凛。口を大きく開け頭を下げろ」
長らく触れ合いがなかったためだろう。言峰は短い時間で限界を迎えたようだ。
「えっ、あっ……うんっ」
凛は言われるがまま射精を迎える体勢を取ると幹を握る両手に言峰の手が被せられて同時に頭へ手を置かれて位置を調整された。
ベッドに座る凛の頭が、立っている言峰の股間のとこまで下げられる。
ビクビクと脈動する肉棒の先へと、丸く開かれた凛の口が数cmほどまで近づいて
「出るぞ」
握った両手から伝わるほどの勢いで射精が始まった。
「……ふぁっ!?んっう!うっんんんっ!!??」
薄いピンク色の舌に一回、二回と白濁した濃いものが撃ち出される。
さらに数回の震えとともに言峰の射精が終わると凛の口内はヨーグルトを
ぶちまけたかのように白く染められていた。
「ひ、うぐっ…………!?」
その間、凛は嗅いだことのない生臭い匂いと、表現できない味で涙目になりながらも
口を開けたまま彫像のように固まって受け入れるがままだ。
「全て飲み込め」
とはいえ言峰は容赦なく次の指示を下す。
凛は言われて首をプルプルと横に振るが、当然許してはくれない。
「お前が決めたことだ」
「むぐぅっ……!」
口元を手で閉じられ飲み込めというように上向きに頭を抑えられた。
(無理ーーー!!!)
胸中で叫ぶ。味も匂いも舌触りも最悪なのだ。
だが頭と口を言峰の両の手に封じられて動かすことはできない。
恨めしげに言峰の顔を見ると射精を終えたためか、いつもより熱っぽい目で
見ているかのように凛は感じた。
飲まないと離してはくれないだろう。
それで踏ん切りがついたのか
(魔術師になるんだから!)
しばらくたってから、大きな涙の滴を零しながらもこくっと小さく喉が動いた。
粘りが強くて飲みにくいものを何度かに分けて飲み下していく。
「ぷはぁっ……はぁっ……はぁっ……」
三十秒以上をかけてようやく唇が開放されると、開いたままのの口内は唾液と精液が
混じった残滓がわずかに残っているだけでほとんどを嚥下しているのがわかった。
「よくやった凛」
「まじゅい!」
労いの返事に泣き怒りながらも凛はポコスカと叩き返すが言峰は小揺るぎもしない。
「こんなにまずいなんて聞いてないわよ!」
まだ苦味が残ってるのだろう、目をつぶって口元をひん曲げるが
「そもそも飲むものではないのだからな。……それよりも魔力はわかるか」
言峰は非難をあっさりと受け流し本題に入った。
「えっ……うっんんっ!?」
言われてすぐに、胸の内が酷く熱い事に気づく。
飲み下した精液が内蔵から吸収され、純粋な魔力塊が体内で激しく流れているのだ。
「うっあ……」
凛は身を縮めて受け入れたばかりの魔力に慄いた。
言峰自身、魔術師として腕は低いと言っていたが成長途上の凛には過ぎた魔力量だ。
魔力が枯渇していたわけでもなく、身体が余剰の魔力で弾けてしまいそうな感覚に襲われ恐怖で苦しげな吐息を吐きだす。
「っあっはぁ綺礼……こわい……」
「おちつけ。今なら私が魔力を制御する事ができる」
「あっ……」
言峰は凛の胸元にある赤いリボンに指をかけた。
硬い無骨な手がリボンを解いて丁寧に一つ一つボタンを外していく。
ほどなくシャツも肌着も脱がしてスカートだけになって
膨らみともいえない、なだらかな胸がさらけ出された。
小さすぎる乳輪は色素が薄く桃と白が混じった色をしており、中心の乳首は
ほんのりと色づいていて微かに自己主張をしているようだった。
「やだっ……」
未知の魔力に怯えている凛も、裸ともなると頬が林檎色に染まり恥ずかしそうだ。
とはいえ拒否できるだけの余裕もなく凛は目をきゅっと瞑る。
言峰が凛を背後から抱くようにすると、むしろ安心したのか険しい表情が少し緩められる。
「ふっ、うぁ、あああっ……んぅぁっ……!」
そうして胸を撫でられて凛は甲高い声をあげた。
痛みほど強くはなく、くすぐりほど弱くはない。
そんな体験したことのない不思議な感覚が体内を走っているのだ。
同時に奥のほうで荒れ狂っていた魔力が言峰の手によって流れを定められていく。
凛の中で順応しきれていない魔力を自身のものとして言峰が操っている。
心霊医術に長けた言峰以外には成し得ないだろう技法だった。
「ぁっ、んっんぁ……!」
背中の首筋から背骨をなぞるように言峰の指が下っていくと
凛はぞくぞくっと背筋を伸ばして顔を上向け無意識に声をあげてしまう。
「ああああぁっあっっ!!?」
続く衝撃に凛は絶叫した。
体の中心を言峰の魔力が通り抜けていったのだ。
まるで背骨が弾けて魔力を溢れさせたかのように全身へ魔力を廻していく。
「っ…………」
一瞬、意識が飛んだのか凛の目が茫洋と虚空を映す。
が、しかしさらなる言峰の手さばきに意識を取り戻した。
「ひぅっ……!」
新たな感覚にぴくんっと身を震わせる。
言峰の指が胸の辺りをくすぐるように撫でており、その奥にある魔術回路に
ひっかかれる感覚が走る。魔力の指が凛の中を通っていく。
閉じていた魔術回路を指で優しくほぐされているような感覚。
背中を撫でられ薄い胸を揉むように指が押し込まれて、その感覚が凛の魔術回路にも
繋がり伝わって切り開かれていく。
止まらない魔力の奔流が胸裡に広がって溶けていくよう。
「ふっ、あぁァっ……!」
紛れも無い快楽の色を帯びて声が放たれた。
大きく硬い指が幼い胸の上で踊り、回路に魔力が通っていき貫かれていく。
閉じた回路を魔力で優しくも強引に押し通されていく。
されるがままの凛は今日初めて快楽の味を知ったのだ。
快感のため小粒ながらも硬くなった乳首を撫でられる度に嬌声をあげ
唇の端から涎を零しながらも悶え続けていた。
「綺礼……!んぅっ!き、もちいいの……!」
その様子を他人が見ればそうとは信じられない光景だったろう。
幼い少女が男に抱かれて喘いでいるとしか見えないのだから。
高まった官能が凛のお腹の中で弾けそうになるその時
「通りきったか。もういいぞ凛。次は宝石魔術の実践だ」
「えっ……?」
言峰は手を離してしまった。
閉じていた魔術回路の一つが魔力で満たされているのを感じ取ったのだ。
このまま時が経てば完全に定着する。
「え、ええと……」
でもそれでは駄目なのだ。それだけでは足りないのだ。
もちろん宝石魔術をできるようになりたい。
でもこんな風になっている体と気持ちでできるはずがない。
今は魔術よりも、気持ちよさが欲しかった。綺礼に気持ちよくして欲しかった。
子供の凛には教え込まれたばかりの快楽を手放せるはずがなかった。
切なそうな凛は涙目になりながら小さな声で
「魔術はあとでいいから……触ってほしいの…………」
恥ずかしげに伝えたのだった。
「そうだな。魔力は残っているようだ。もう一つぐらい回路を開けるだろう」
逡巡する間もなく了承するがそれはほとんど嘘だった。
言峰の魔力容量ではよほどの魔力を込めないと凛の魔術回路を何本も埋めきれない。
ただ凛におねだりをさせるため、止めた振りをしただけなのだ。
まがりなりにも師であった男の愛娘が可愛らしくもいやらしく悶える様子。
悪趣味という次元を通り越している言峰の嗜好に触れるものがあったのだった。
おねだりの通りに言峰は動き出し、軽々しく凛を抱き抱える。
「あ、綺礼……」
逞しい胸板に肌が擦り合わされるだけで気持ちいいのか艶っぽい声。
言峰は抱いたまま凛をベッドの中心へと運び寝かせて
「脱がすぞ」
スカートのホックを器用に外して下ろす。
子供らしい白い下着だけの凛は快楽への期待か、言峰を見上げている。
言峰の筋張った無骨な指先は爪も切り揃えられている。
硬く無骨なそれが触れてくれるのじっと待っていた。
「んひゃぅっ……!」
言峰は無言の要望に応えて、綿生地で包まれた秘部へ手をあてた。
魔術回路から性感を引き出されたためか、未成熟な身体にも関わらず濡れている。
くすぐるような動きは薄い布地越しに快楽をしっかりと伝えている。
「ふっ、んぅ、そこきもちい…………」
触られる行為を恥ずかしいと思うよりも気持ちよさが勝っていて素直に喜んでいる。
魔力のためなのか、愛撫されているだけなのか凛にはわからない。
もうどちらでもよくなっていた。
言峰は凛の秘所を右中指で擦り快感を継続して与える。
同時に手から肩へと指を滑らせて四肢の末端から愛撫を続ける。
次に小さな顔が大きい左手で覆い隠された。
「ぁっ、んんぅ……!」
中指で耳朶を弄られて、親指は唇を撫でる。
そうされると耳も唇も弱くて感じてしまう。
魔術回路とは関係なく全身が性感帯になってしまったかのようで
たっぷりと弄られその顔はとろとろに溶けてしまっていた。
「ぁっ、綺礼、きれい……」
凛が意味もなく、けれど喜びを含ませて名を呼び続ける。
汗ばんだ肌が蝋燭の灯で艶かしく照らされている。
わずかながらも肉のついた胸が指の動きに合わせて揺れるたびに高く声をあげる。
幼い容姿はどこか色気を纏った笑顔で言峰を見つめていた。
零れ滲み出る愛液で透けて見えるコットンの中は、一本のすじだった所が
わずかに口を開き凛の内側を覗かせてしまっている。
「う、んんんっ!!」
言峰が下着をずらして、つぷりと小指を沈み込ませる。
膣口が指を柔らかく飲み込んでくにゅくにゅと締め付けた。
そうして入り口を小刻みに刺激しながら人差し指と親指を使って陰核を摘んだ。
「ひっ!あぁっ!」
悲鳴が二重に高さのオクターブを奏でる。
包皮に包まれて内側に閉じているそれは、言峰の責めにより固くなって弄りやすいようだ。
「き、れ……い、ん、んんんっ!すごくきもちい……!」
小指を浅く抜き差しされて汁気がぬちゃぬちゃと響く。
同時に敏感すぎる淫核が二本の指で擦り合わされて、凛の腰がくの字に浮いた。
そうすると指が深く膣道に入ってまた声をあげる。
言峰の腕ほどもない細い太腿に力が篭ってびくびくと上下に震える。
凛自身が指を求めて腰を押し付けていた。
同時に左手で胸や脇にお腹も撫でられると、どこも気持ちがよかった。
もう凛の中で官能の渦が膨れ上がってはちきれそうだった。
「あっ、あっ、あっ、あっ……!」
指の動きが速度を増して抜き差しに合わせて凛の声が唱和する。
じゅぼじゅぼと鈍く濡れた音が甲高く幼い喘ぎに塗り替えられる。
そうして乳首とクリトリスを強めの力で擦られて
「ふぁぁあぁあぁぁあっぁぁっっっ……!!!!!!」
絶叫にも似た悲鳴を大きく長くあげた。
膣が勝手に締まってより強く指を感じる。
全身が痙攣をおこして手足が四方へと伸びていく。
凛の中から快感が溢れ出し激流となって広がっていく。
その快楽に凛は思考すらできない。
ただただ幸せなほどに気持ちがよかった。
初めての絶頂に意識ごと流されてしまいそうだった。
「…………あっ、は、あぁぁっ……」
叫び続け声がかれたように小さくなっていって吐息を吐きだした。
呼吸を整えようと荒く息をついている。
「凛、大丈夫か」
言峰が問うたのは凛の呼吸が収まってからだ。
「……うん、すっごくきもちよかったぁ……きれいありがとぉ…………すぅ……」
ふにゃりと幸せそうに笑いながら、凛はそのまま眠ってしまう。
初めての経験で疲れきっていたのだ。
凛に余裕があるのならば、今度こそ宝石魔術の実践をする所だが無理だったろう。
言峰も息をついた。消耗していた。
射精で魔力を放出した事に加えて、他者へと魔力を通す行為は精密な技術が要求される。
体力はともかくとして魔力と精神的な疲労は言峰と言えど無視できるものではなかった。
両者とも裸だったが構わずにシーツを被る。
そうして眠ろうとしたところ、凛の身体が少しだけ冷えているのに気づいた。
びっしょりとかいていた汗を拭いてもいないせいだ。
数瞬の思案の後、言峰は凛を抱いたままで目を閉じた。
無意識なのか凛からも腕を伸ばして抱きしめ返してくる。
穏やかな寝息を立てている凛は幸せそうで言峰の顔が少しだけ歪められた。
雀の鳴き声が凛の耳朶へと喧しく響く。
(んぅ……)
だがぼんやりとした頭の中は覚醒にはほど遠い。
暖かいシーツのぬくもりに包まれて目を瞑っていた。
凛はその暖かさに疑問をすぐには感じなかった。
冬木市は名前に反してとでもいうか、それほど寒い気候ではない。
日本の西側にあるためむしろ暖かい部類に入る。
とはいえ冬が冷えないというわけでもなかった。
特に凛が住んでいる遠坂邸は時臣の志向で暖房製品に乏しく凛自身もそれを真似ていて
今の季節、暖かい環境とは言えない。
だから凛はシーツを何重にも重ねて丸まったまま就寝する事が多い。
それでも朝は寒くて冷える。ところが今日は酷く暖かいのだ。
凛は寝返りをうとうとして、何故か動けずに目を開いた。
(!!!)
声も出せないほどに驚いた。目の前にある言峰の寝顔。
暖かいのも当然だ。遭難した男女かのように二人は全裸のまま抱き合っているのだから。
凛はシーツだけではなく言峰の腕と胸板に包まれて眠っていた。
(わ、わわ)
焦りと恥ずかしさで凛の顔が朱に染まる。目も覚めた。
でも暴れたりも叫んだりもせずにそのまま言峰を見つめていた。
いつもの無表情にも似た静謐な寝顔。
なんだか起こしていけないような気がしたのだ。
(あったかい……)
それにぬくもりがなくなってしまいそうで嫌だった。
こうして抱きしめられていると安心するのだ。
先の聖杯戦争で父の時臣を亡くし母の葵は意識不明で入院していて顔しか見れない。
こんな風に抱きしめられていた記憶が子供の凛には遠い過去のようだ。
(お父様、お母様……)
凛はすがるように抱きしめて、涙が言峰の肩へと零れ落ちる。
「……凛」
その嗚咽が伝わったのだろう、低い声が凛の鼓膜を打った。
「あっ……う」
凛の口元が引き締められる。
泣いていたのを知られたくないと。変に意地っ張りだった。その涙が伝わっているのに。
「悲しいのか」
顔が押し付けられて肩を濡らす。
「私のせいなのだろうな」
びくりと凛の身体が震えて小さく呟く。
「違うの……」
何も言っていないのに言峰に心を読まれたかのよう。
「父も母も守れなかった私を恨む権利が凛にはある。なんならお前の望む罰を私に下すべきだ」
「違う!」
泣き崩れた顔を上げ凛は否定する。
「綺礼は頑張ったんだよね?それでもどうしようもないくらいに相手が強くて! だからお父様は負けて……! お母さんも巻き込まれて……!」
両親を失った悲しみを怒りに変えてぶつけようとはしなかった。
それは凛自身も聖杯戦争をわずかながら知っているからだ。
同級生の葬式。親友であるコトネの行方不明。
ハーメルンの笛吹きのように子供をさらう邪悪な男。
聖杯戦争の参加者を知らない凛にだって、戦争の関係者だったろう事はわかる。
偶然と父の教えでコトネと子供らを探しだし男から助ける事はできた。
とはいえ関わって生き延びれたのは、運がよかっただけと思う。
父すら達成しえず命を失ったものが聖杯戦争なのだ。
なにより冬木市に現出した地獄のごとき大火災は大勢の命を奪っている。
子供を失った親も、親を失った子供も膨大な数に上る。
それが聖杯戦争そのものに起因している事ぐらいは凛にも想像がつく。
聖杯戦争が罪だとしたならば、それは言峰一人の責任ではなく
遠坂時臣も負うべきものだった。
だから責められない。凛は悲しいほどに聡明で強かった。
泣いてる凛を慰めるように背中を抱きながら言峰は答えた。
「……そうだな。私は私自身、あれほど真剣に物事へ立ち向かった記憶がない。
それでも足りなかった。私の力が至らないばかりに凛を悲しませている」
言峰は続ける。
「凛。聖杯戦争はあまりに人が死にすぎた。遠坂師だけではなく無辜の人々までも。
私は凛を魔術師にするために力を尽くすつもりだが―――」
間が空いた。躊躇し言いよどんだかのように。
「お前にとってそれが幸福だとは限らないのかもしれんな」
言葉が途切れて沈黙が続いた。
早朝も過ぎたためか、圧する空気が届いたのか、雀の鳴き声も聞こえてはこない。
言峰は凛を抱いたまま動かない。
「やだ」
凛はぎゅっと目を瞑ってから見開き力強く言った。
言峰の眉が片方上がる。
「幸せかはわからないけど魔術師にはなる」
瞳は涙で濡れている。しかし強い意思を感じ取れた。
「お父様が亡くなって、お母様も病気になったのは悲しいわ。
でもだからと言って私が悲しいから、幸せになれないかもしれないから
そんな理由でお父様の想いを捨てたくなんてない」
「……もし遠坂師が凛の幸せのためならば、魔術師にならなくてもいいと言ったならば」
試すような言峰の問いかけ。
「…………それでもやだ。私も魔術は……そんなに得意じゃないけど好きだもん。今更お父様に止められたからってやめられないわ」
子供ながらも矜持を持った言葉を聞いて言峰は頷く。
「……そうだな。聞いた私が愚かだった。流石は遠坂師の……いや流石は凛だ」
言いながら凛の頭を撫でる。
(あっ……)
言峰にはこうされたのは初めてで、以前ならば子ども扱いしないでと振り払っていたはず。
だが父に撫でられた時と似ていて。思い出して。また涙が出てしまう。
「うーっ……」
言峰の胸へ顔を押し付けて唸る。そんな凛を言峰は撫でてくれていた。
しばしの間、凛は父よりも大きな手の感触を味わっていた。