※この作品はR-18です。

【完結後オマケ】お隣の天使様を変態紳士がいつの間にか堕天使にしてしまった件   作:麒麟人間

27 / 31
大変お待たせしました
ラストに向けて書き溜めたので毎日あげていきます
エロ無し鬱めな話が少し続きますが最後までよろしくお付き合い頂けると幸いです


天使様と期末テスト

 周の部屋にカリカリとペンの走る音だけが響く。

 勉強自体は日課のようにしてきたが、ここ最近は暇があれば机にむかっている。

 

「ふう、少し休憩するか」

「お疲れ様です。コーヒーどうぞ」

「お、ありがとう」

 

 丁度休憩しようと思ったところにコーヒーが出てくる。周の行動パターンを把握されているようで少しくすぐったさを覚える。

 

「それにしても、今回はかなり根を詰めていますね。何か目標でもあるんですか?」

「あー、そうだな」

 

 真昼に正面から「改めて告白するために頑張っているんだ」とは恥ずかしくて口にできない。

 

「今回はちょっと思うところがあってな。学年十位以内を目指してるんだ」

「学年十位以内ですか……普段は二,三十位台でしたよね? かなり大変だと思いますけど……」

 

 下の方で順位を上げるのと、上の方で順位を上げるのではまるで難易度が違う。

 上位十位ともなれば、常に切磋琢磨している層だ。周が後から少し勉強したからといって、簡単に追い抜けるとは限らない。

 

「そうだな。でも、だからこそ意味があるんだ」

 

 この学校で学年十位という成果があれば、少しは自分に自信が持てる。

 常に学年トップの真昼には遠く及ばないが、周囲にそれとないアピールくらいにはなるだろう。

 もちろん、それだけで全て解決とはいかないだろうが……。

 

「勉強を頑張るのはいいことです。頑張ってください」

「ああ」

 

 まひるのコーヒーで充分休憩もできたことだし、再び机に向かう。

 

「……あれ、周くん。教科書の文字が少し滲んでませんか?」

「あ、ああ。ちょっと飲み物溢してしまってな」

「私の教科書お見せしましょうか?」

「いや、樹に画像撮らせてもらったから大丈夫だ」

「そうですか?」

 

 真昼は特に疑問にも思っておらず、それ以上追求してくることはなかった。

 でも一瞬ヒヤッとした。教科書が濡れて滲んでしまったのは、何者かから嫌がらせを受けたからだ。

 あの日以降も、何度も陰湿な嫌がらせは続いた。上履きは毎日持って帰るようにしたし、荷物も必要最低限にして警戒はしているが、どうしても教室を留守にする移動教室や体育の時間などに被害に遭っていた。

 だが、それを真昼に知られてしまえば自分の責任だと考えるだろう。

 真昼を悲しませないためにも、真昼に知られないようにしつつ、問題を解決しなければならない。

 教科書はともかく、過去のノートは完全にダメになってしまった。正直これが一番痛い。

 真昼に頼るわけにはいかないから、樹や千歳に見せてもらおうかとも思ったが、あの二人のノートはあまり参考になりそうになかったので断念した。

 

 

「……その分、頑張るしかないよな」

 

 テスト範囲や要点をまとめたノートが無いのは厳しいが、その分教科書を読み返せばいい。

 地力を上げれば順位も上がるはずだ。

 今はただ、がむしゃらに勉強あるのみだ。

 

 

 

 

「おい、周。ちょっといいか?」

 

 朝、登校と同時に樹に話しかけられた。いつもの軽薄な雰囲気ではなく、神妙な顔つきだ。

 

「どうした?」

「……ここじゃなんだから、ちょっと来てくれ」

 

 樹と人の少ない場所に移動する。ここなら通りかかる人もいないだろう。

 

「で、何があった?」

「周はこの学校のグループメッセージって見たことあるか?」

「グループメッセージ?」

「ま、周は知らないだろうと思ったけど、学校の生徒が勝手に作った、SNSで好き勝手書き込んだりできるメッセージ部屋だよ。誰かが招待しないと入れないから、生徒全員が入ってるわけじゃないけどな」

 

 そんなものがあったのか……。樹の言う通り、人と関わってこなかった周には知る由もなかったし、仮に樹が招待しても入らなかっただろう。

 

「そのメッセージ部屋は大体学校の噂話や先生の悪口なんかで盛り上がることが多いし、匿名で書き込めるからあんまり治安は良くないんだけど、昨日こんな書き込みがあったんだ」

 

 樹のスマホを覗き込むと、見覚えのあるマンションが写っている画像が表示されていた。

 そして、そこに入っていく男女二人の姿もあった。

 

「これ、周と椎名さんだよな?」

「そう……だな」

 

 その画像の後はすごい勢いで書き込みされていた。

 

『天使様、男のマンションに入っていく図』『マジかよ……俺の天使様が』『この男の方、許せねぇ』『こいつなんて名前だっけ?』『確か藤宮とかって名前。隠キャのくせに最近イメチェンしてイキってるやつ』

 

「散々な言われようだな」

「もっと続いてるけど、意図的に周に悪意が向くように仕向けられてる感じがするな」

「つまり、これも誰かの嫌がらせの一部ってことか」

「その可能性は高いと思う。椎名さんは周に騙されてるとか、無理矢理連れ込まれて脅されてることになってる」

「狙いは俺だけってことか。むしろその方がありがたいよ」

 

 警戒しているおかげで直接狙うのが難しくなったから、こうして回りくどい手段で貶めにきているのだろう。

 

「椎名さんは、このこと知ってるのかな」

「いや、そんな気配はなかったな。多分、グループメッセージに招待はされてるだろうけど、入らなかったんだろうな。こういうの、煩わしそうだし」

 

 真昼も以前は他人と深く関わるのを避けていた。

 こういったグループには間違いなく参加しないだろう。

 

「というか、真昼がこれを見ていたらこの全員に小一時間詳細の説明と悪口への説教をし始めるだろうな」

 

 想像の文字からだけでも氷のような微笑が見えてきそうだ。

 

「どうする? 俺のアカウントから匿名で擁護しておくか?」

「いや、却って火をつけるだけだろう。やめておこう」

 

 今のところ、周の家に連れ込んだということになっているから、真昼が同じマンションということはバレていないようだ。

 ならわざわざ火種になるようなことはしない方がいいだろう。

 

「それにしても、本当にいろいろやってくるな」

「まあ好き勝手言ってるのは一部だと思うよ。バレンタインの時の椎名さんを見てたらとてもこんなこと言えないだろうし」

 

 あの時の真昼は、どう見ても周に対して好意の視線を向けていた。

 あの場にいたクラスメイトたちには伝わっただろうが、ここに書き込んでいる人たちはその場にいなかったか、もしくは真昼の熱狂的な信者かのどちらかだろう。

 

「直接被害はないし、放っておいた方がいいだろうな。少しずつでも、わかってくれる人たちがわかってくれれば、それで充分だよ」

「周……似合わねえ台詞だなぁ」

「うるせ」

「あの周がこんなに成長して……椎名さんには感謝だよ」

「お前は俺の親か何かか」

 

 結局、犯人の手がかりにはなりそうにないので、この件も特になにもしない方向で落ち着いた。

 私物による被害を除けば、もう実害はないに等しい。気にせずいつも通りの日常を過ごしていけば、いずれ嫌がらせも止むだろう。

 

 

 

 

「……周くん、まだ勉強してるんですか?」

「ああ、最近なにかと時間を取られて勉強時間が減ってるからな。上位に食い込むためには少しでも時間を作らないと」

「その、無理しすぎてもいけませんし、ちょっと休憩しませんか? 気分転換、とか」

「気分転換、て……」

 

 真昼の方に振り返って、何を伝えたいのか理解した。

 真昼は季節にそぐわない薄着で、明らかに周を誘っている。

 そういえば、最近は勉強ばかりで真昼とあまり触れ合っていなかったような気がする。

 

「…………悪い、今は、勉強に集中したいんだ。今真昼に甘えてしまったら、気が緩んでしまいそうだ」

「そう、ですか……わかりました。じゃあ、今日はもう帰りますね。周くんも、無理して体を壊さないようにしてくださいね」

 

 真昼は、少し寂しそうに自分の部屋に帰っていった。

 周だってもっと真昼とイチャイチャしたかったが、今回ばかりは結果を出さなければならない。

 テストが終わるまでは、心を鬼にして真昼と触れ合うのは避けておかないと、一度甘えてしまえば歯止めが効かなくなるのは目に見えている。

 

「……もうひと頑張りするか」

 

 誘惑を振り払うように、再び教科書と向きあった。

 

 

 

 そんな日々を繰り返して、とうとうテストが終わり、その結果が張り出される日が来た。

 テスト結果はこの学校では割と重要視されているため、かなり人だかりができている。

 

「凄い人ですね……」

「まあみんな自分の成績は気になるからな。真昼は今までは見てなかったのか?」

「その……私はいつも一位でしたし、人気がなくなった頃に確認だけしてました」

 

 少し申し訳なさそうに言う真昼。一位常連なのを申し訳なく思っているのだろう。

 

「真昼が引け目に思うことはないよ。それだけいつも努力してるのは知ってるから」

「周くん……」

「そうだ、なあ真昼、今度……」

 

 話がある、と続けようとして、ふと留まる。

 ちゃんと告白するのはホワイトデーの日と考えているから、まだ少し日がある。

 今から言っても仕方がないだろう。

 

「なんですか?」

「あー、いや、いいや。また今度話すよ」

「?」

「ほら、多少人がはけてきたし、そろそろ見に行こうか」

 

 不思議そうに首を傾けている真昼に誤魔化すように、掲示板へ向けて歩き出す。

 

「上の方はよく見えるな。一位はやっぱり真昼か。流石だな」

「い、いえ」

「帰ったらまたお祝いしないとな」

「あ、ありがとうございます。それで、周くんの順位は見えましたか?」

「もう少しで見えそうだ。えーっと」

 

 前の方に近づくにつれ、二位、三位と順に見えてくる。この辺りには名前はないだろう。もう少し下の方だ。

 七位、八位と周以外の名前が載っている。

 まだか、と焦り始める。

 それなりに手応えはあったはずだが、まだ自分の名前は見えない。

 

「――――っ」

「あ、周くん? 見えましたか?」

 

 後ろでぴょんぴょんと跳ねて掲示板を見ようとしている真昼の肩にポン、と手を置く。

 

「……悪い、今日は先に帰る」

「え、周くんっ!?」

 

 真昼を置いてさっさと校門へ歩いていく。

 真昼が何か言っている声が聞こえたが、これ以上この場にはいられなかった。

 

 真昼がやっと掲示板の前に辿り着いて見ると、そこには「十六位 藤宮 周」と書かれていた。




ちょい暗めな話なのであっさり目に
グループメッセージの設定は原作にはないけど、周たちは関わらないだけで学校の裏サイト的なのあってもおかしくないよな、と思って入れました
周くんは頑張ってたけど、いろんなことがあって集中しきれず結果に恵まれませんでした
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。