【完結後オマケ】お隣の天使様を変態紳士がいつの間にか堕天使にしてしまった件 作:麒麟人間
エロ無しなので、サクッと流してください
「あの、今日のご飯はどうでしたか?」
「え? ああ……今日も美味しかったよ、ありがとう」
「いえ……」
「…………」
あれからしばらく、どうしても真昼を真っ直ぐに見られずにギクシャクしてしまう。
別に、学年十位に入れなかったからといって何がどうなるわけではない。
クラスの中での順位なら上位だし、以前よりはかなり上がっている。
問題は、掲示板で順位を見た時、十位以内に入れなかった原因を一瞬人のせいにしかけてしまったことだ。
嫌がらせによる精神的なストレス。教科書やノートが水浸しにされてしまい、警戒に時間を取られてしまったこと。
確かにそれらの影響は少なくないが、それでもやりようはあったはずだ。
変なプライドは捨てて真昼にノートを見せて貰えばよかったし、嫌がらせなんて気にせず勉強に集中できていればもう少し結果は変わっていたかもしれない。
全て自分の弱さが招いた結果だ。
それなのに――
(俺は、真昼にまで責任転嫁しようと……!)
真昼がバレンタインに公衆の面前でチョコを渡してきたことが原因だと、一瞬とはいえ頭をよぎってしまった。
それは単なるキッカケに過ぎないし、遅かれ早かれ避けられない問題だった。
それを責めるような考えが浮かんだ自分に腹が立ったし、真昼に対して顔向けできない。
そのせいで気まずい空気が流れてしまい、真昼にまでつらそうな顔をさせてしまっている。
これではいけないと思いつつも、どうにも上手く話すことができない。
「えっと……今日は帰りますね」
「ん、ああ……」
食器の片付けはなるべく周が担当していたが、今は続かない会話の代わりに、何かして空気を紛らわそうと真昼が片付けていた。
しかし、それすらも終わってしまったため、手持ち無沙汰になった真昼は自分の部屋へと帰っていってしまった。
「真昼と一緒にいるって言ったのに、俺は……」
とっくの前にいろんな覚悟は決めたと思っていたのに、こんなつまらないことで揺らいでしまうなんて思わなかった。
「俺に、必要な覚悟って……」
結局、ぐるぐると同じ思考ばかりを繰り返すだけで時間が過ぎていった。
――真昼視点――
期末テスト以来、周の様子がおかしくてまともに会話ができない。
学年十位以内を狙うと努力していたのは知っているし、すごく意気込んでいたのはわかるけれど、十位を逃したからといって何故あんなに落ち込んでいるのかがわからない。
前よりはかなり順位が上がっていたし、目標に向けて努力する周くんは格好良かった。
それなのに、何故か空気が重くて言葉が続かないし、真昼と目を合わせるのも避けている。
どうすればいいのかもわからず、学校では以前のように別々の時間を過ごしてしまっていた。
「ね、ねえ椎名さん……これ、本当なの?」
声を掛けてきたのは、普段から真昼と仲良くしているクラスメイトの女子だ。
真昼に向けられたスマホの画面を覗き込んだ瞬間、真昼の頭の中は真っ白になってしまった。
「……これ、一体誰が?」
「わ、わからないけど、みんな椎名さんがあの男子に脅されて連れ込まれてるんじゃって噂してて……マンションに入ってく画像もあるし」
画面の中のメッセージでは、周への暴言や、事実無根の噂話で埋め尽くされていた。
まるで、誰かが意図的に周を貶めようとしているようだ。
「これ、いつからですか?」
「えっと……先週くらいからかな。ねぇ椎名さん、噂は噂だと思うけど、やっぱりあの人はやめておいた方がいいんじゃない? ほら、火のないところには煙は立たないっていうし……」
「……っ!」
「ひっ!? って、え、ちょっ、椎名さん!?」
女生徒を一瞥して、周のクラスへと走り出す。
今はいちいち誤解を解いている暇もない。
一刻も早く周に会わなくてはいけない。
「あれ、まひるん?」
「はぁ、はぁ……千歳さん、周くんはいますか?」
教室に駆け込むように訪れた真昼に、千歳が不思議そうな顔で尋ねてくる。
「今日はもう帰ったよ。なんかあったの?」
「……千歳さんは、周くんに変な噂が流れてるのを知っていますか?」
真昼が尋ねると、千歳はバツが悪そうな表情を浮かべた。どうやらそのことは知っていたらしい。
「あー、それかぁ。うん、知ってたよ」
「どうして、教えてくれなかったんですかっ……周くんは、だからあんなにつらそうにしていたんですね」
「周に口止めされてたんだよ。まひるんに心配させたくないって。自分が周りに認められれば、その内収まるって」
「……周くん」
やっとわかった。何故周がテストの順位にこだわっていたのか。
「だからテスト勉強も頑張ってたのに……あんなことばかりされてたから……あっ」
「あんなこと?」
うっかり口を滑らせてしまったと、口を覆う千歳。まだ何か隠していることがあるらしい。
「千歳さん、教えてください。今周くんに起こっていることを」
自宅へ向かう足取りが重い。
千歳から聞いた話が、真昼の足を重く鈍らせていた。
(周くんが、そんな目に遭っていたなんて……)
周の悪評に留まらず、下駄箱や机の私物を汚したり、色々な嫌がらせがあったらしい。
聞いた後になって、いくつか思い当たる節があったことに気づいた。
(私が気が付かなきゃいけなかったのに……私はこれで周くんと学校でも一緒にいられるだなんて喜んで……)
自分の影響力を考えていなかったわけではないが、ここまで直接的な手段に出るとは思っていなかった。
周のように、もっと慎重に動くべきだったのだ。
(私は……やっぱり私なんかが一緒にいるべきじゃなかったんでしょうか……)
そんな考えを振り払っていると、いつの間にか自宅のマンションまで辿り着いていた。
相当考え事に夢中になっていたようだ。
(今は、周くんに会うのがつらいな……)
それでも、今後のことをしっかりと話し合わなければならない。
そう思って自分の部屋にたどり着いた時、
「遅かったじゃない。会いたくもないのにわざわざ来てやったんだから、さっさと帰ってきてくれないかしら?」
椎名小夜、真昼の実の母親だった。
最悪な状況に最悪な展開が重なってしまいました
視点変更が多くなったため、短いですがここで一区切りしました