※この作品はR-18です。

【完結後オマケ】お隣の天使様を変態紳士がいつの間にか堕天使にしてしまった件   作:麒麟人間

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最終話です
ここまでお付き合い頂きありがとうございました


エピローグ

 周くんと婚約してから、数日が経った。

 

 周くんには今までもずっと色々なものを貰っていた。

 そして今回、幸せな家族の愛まで貰ってしまった。

 次は私が周くんに返さなければならない番だ。

 大丈夫、準備はしてきた。後は行動するだけだ。

 

「真昼? 用意できたか?」

「はい、今行きます」

 

 登校の用意ができた周が呼んでいる。ここ最近は毎日一緒に登校いる。

 もう周りの目を気にするのはやめようと二人で決めたからだ。

 まだ嫌がらせも続いているが、それも今日、終わらせる――。

 

 

 

「あ、椎名さん、おはよう」

「おはようございます」

「ふ、藤宮くんも、おはよう」

「ああ、おはよう」

 

 こうして二人で登校していると、よく声をかけられるようになった。

 以前から挨拶してくれていた人たちが、ようやく真昼と周が恋人だと納得して、以前と同じように声をかけてくれるようになったのだ。

 

 ――だけど。

 

「……なぁ、なんでちょっと不機嫌なんだ?」

「別に、そんなことないですもん」

「いや、もん、て」

 

 ――最近は、さりげなく周に声をかけるために真昼に近づいてくる女子も増えてきた気がする。

 真昼と一緒にいることで、今まで目立たなかった周のいい部分が目につくようになり、密かに人気が出始めているのだ。

 

「挨拶されたから返しただけだろ?」

「それは、わかってますけど……」

 

 周は、自分が女子からモテているなんて想像もしていないのだろう、そういう人だ。

 

「俺には真昼しか見えてないよ。知ってるだろ?」

 

 繋いでいる左手の薬指を撫でられる。

 学校に指輪を付けていくわけにはいかないから、今は家に保管してあるが、その動作だけでも言いたいことは伝わってきた。

 

「……今日は終業式ですぐ終わりますし、帰ったらいっぱい可愛がってくださいね」

「はいはい」

 

 そんなやり取りをしながら投稿するのが日常と化していた。

 同じように登校してくる生徒たちに微笑ましい目で見られていることには、まだ気付いていない二人だった。

 

 

 

「あ、まひるんおはよー」

「千歳さん、おはようございます」

「周もついでにおはよー」

「誰がついでだ。おはよう」

「そんなこと言いつつちゃんと挨拶返してくれる周が好きだよ」

「むっ……」

「ほら、そんなこと言うと真昼がやきもち焼いちゃうだろ」

「べ、別にやきもちなんかじゃないですしっ」

「まひるんは可愛いなぁ!」

「きゃっ」

 

 真昼に抱きついてくる千歳を、なんとか受け止める。

 千歳はスキンシップが過剰なので少し恥ずかしくはあるが、嫌ではない。

 

「まひるん、準備は出来てる?」

「……はい、大丈夫です」

 

 周に聞こえないように、小声で千歳と確認を交わす。

 この後のことは、周には知られたくなかった。

 

「おい千歳、そのくらいにしとけよ。……それはそうと、樹はどうした?」

「え? あー、いっくんは今日は風邪で休み、かな」

「終業式だっていうのにあいつは……」

 

 なんだかんだで優しい周は、風邪と聞いて樹の心配をしている。

 終業式が終わったらお見舞いにでも行こうと考えているのだろう。

 残念ながらその必要はないが。

 

「じゃ、また後でね、まひるん。ほら、周も行くよ!」

 

 真昼はクラスが違うので、自分の教室に戻っていく。

 周の背を推しながらアイコンタクトを送ってくる千歳に頷きを返して、真昼も自分の教室に入っていった。

 

 

 

 ――???視点――

 

 藤宮周のクラスの教室に入る。

 今は全校集会中だから、他に人はいない。

 終業式だから油断したのだろう、荷物もそのまま机に置いてあった。

 最近は警戒が強くてあまり派手に動けなかったが、今日を逃すと春休みに入ってしまうから最後に制裁を与えてやらないといけない。

 ここ数日は特に公衆の面前でも『天使様』と仲良さげに手を繋いだりしている姿を見かけて、苛立ちが抑えられなかったところだ。

 荷物を汚すどころか、纏めて焼却炉にでもぶち込んでやろう。

 そう思って鞄を手に取るが、中身がないのかやけに軽い。

 授業がないとはいえ、財布やHRで配られたプリントなんかもそれなりにあるはずなのにだ。

 

「な、なに、これ……」

 

 不思議に思って鞄を開いてみると、そこには『ハズレ』と書かれた紙が一枚だけ入っていた。

 

「残念、それは知り合いに貰った要らなくなった鞄だよ。周のはこっち」

「だ、誰!?」

 

 振り返ると、一人の男子生徒が立っていた。

 確か、藤宮周の友人の赤澤樹。

 全校集会で誰もいないはずなのに、何故ここにいるのか。

 

「調べは付いていたけど、びっくりだなぁ。てっきり犯人は周を妬んだ男子だと思ってたから。どうりでいくら調べても犯人が見つからないはずだよ」

「な、なんのこと? 私はただ、このクラスの友だちに借りてたものを返そうと思ってて……ちょっと机を間違えちゃったかも」

「ああ、そういうのはいいから。ね、椎名さん?」

「え!? て、天使様?」

 

 

 ――真昼視点――

 

 隠れて一部始終を見届けていた真昼は、樹の声に応じて姿を現す。

 

「あなたが、周くんに嫌がらせをしていた犯人ですね」

 

 その女生徒とは以前から挨拶程度に話す機会があったため悲しい気持ちもあるが、周にしたことを考えると到底許すことはできない。

 

「ち、違うんです。これは、間違って……」

「誤魔化さなくて結構ですよ。赤澤さんや千歳さんに、被害に遭った時間を聞いて、その時間帯に動けるクラスや授業を抜け出した人を聞き込んだ結果、そのタイミングであなたが何度も授業中に抜け出していたことがわかりました。焦って段々根回しが雑になっていたみたいですね」

 

 真昼が動けばすぐに話が拡がってしまうため、実際に聞き込んだのは千歳と樹だ。

 周のためにと惜しみなく協力してくれた二人には感謝してもしきれない。

 

「そ、そんなのたまたまです! 信じてくださいっ、私は、天使様に嘘なんて……」

「では、スマホを貸してもらえますか? あなたのスマホで学校のグループメッセージを開けば、書き込んだ履歴が残っているはずです。もしそれがなければ間違いだったと認めて謝罪しましょう」

「…………えぁ?」

 

 グループメッセージに何度も書き込まれていた周への悪い噂や中傷はかなりの頻度で更新されていた。

 送信者は匿名でも、書き込んだ本人のアカウントであれば一目でわかる様になっている。

 

「そ、それは……」

「もちろん、プライバシーの侵害になるので強制はしませんよ。ただし、自身の無実が証明できないのであれば、あなたを悪質な嫌がらせの現行犯として学校側に厳正な処分を求めます」

「そ、そんな……」

 

 今までの被害を全て考慮するとかなり厳しい処罰が下りるだろう。

 良くて停学、最悪退学処分になってもおかしくはない。

 

「さあ、どちらか選んでください。大人しく認めて謝罪するというのなら、情状酌量の余地はありますよ」

「う、うう……わ、わたしは……わあああああっ!」

「あ、こら待てっ」

 

 迫る真昼の圧に耐えかねて、教室から一目散に逃げようとする。

 樹が咄嗟に追いかけようとするが、ドアから離れていたせいでこのままでは逃げられてしまう。

 

「――ぎゃっ!?」

「お、っと……いてて」

 

 ドアを開けて駆け出そうとしたところを、扉の前にいた人物にぶつかって尻餅をついていた。

 

「これは……一体どういう状況なんだ?」

「あ、周くん!? どうしてここに……」

「全校集会に真昼が見当たらなくてな。そしたら門脇が『教室に行け、藤宮には見届ける義務がある』だとさ。で、これはどういう状況なんだ?」

「優太にも協力してもらってたとはいえ、秘密にしとけって行ったのになぁ……まあ簡単に言うと、推理小説の犯人を追い詰めるシーン、かな?」

「なるほど、完全に理解した。いや全然わからんが」

 

 来てしまったものは仕方がないので、周にも状況を説明した。

 

「なるほどな……それで、真昼はこいつをどうするつもりなんだ?」

「もちろん、先生方にも全て説明して、然るべき処置をしてもらいます」

「……それ、少し待ってくれないか?」

「周くん?」

 

 周は、逃げ道を塞がれ、尻餅をついたまま怯えている女生徒の前に、目線を合わせてしゃがみ込んだ。

 

「なぁ、あんたはなんでそんなに俺を目の敵にしてるんだ?」

「おいおい、嫌がらせしてきた本人に直接聞いちゃうか? そういうこと」

「だって気になるだろ。真昼との仲を妬んだ男ならいざ知らず、女子に嫌がらせされる心当たりなんかないんだが」

 

 それを聞いた女生徒は、怯えていた表情を怒りに一変させ捲し立ててきた。

 

「あ、あんたが……あんたが天使様を穢そうとしてるからよ! 天使様はいつも綺麗で、優しくて……完璧な存在だったのに、あなたが天使様を騙して、イヤらしい欲望で天使様を穢そうとするからっ、だから、私が救おうと……」

 

 くだらない。素直にそう思った。

 勝手に理想の『天使様』を押し付けて、理想と違えば悪意を向けるなんて馬鹿げている。

 しかもそれが、真昼本人ではなく周に向けられるだなんて筋が通らない。

 恐らく、あの悪い噂話も彼女の中では真実を流布しているだけだったのだろう。

 彼女はあくまで、『天使様』を守るために善意で動いているつもりだったのだ。

 

「天使様は私の理想だったんです。暗くて醜くて頭の悪い私と違って、いつも笑顔で、綺麗で、なんでもできて……だから、ずっとそのままでいて欲しいと、思って……」

「なるほどな……あんたが俺を嫌う理由はわかったよ」

 

 周は、怒るでもなく淡々と頷いた。

 

「あんたも真昼のことが大好きだったんだよな。だからこんな悪い蟲が近づいたら追い払おうとするのもわかるよ」

「な、なにを他人事みたいにっ……」

「俺だって、もし真昼に変な奴が近づこうとしたら全力で遠ざけるしな。だから、気持ちはわかるよ」

「あ、周くん……」

「自分を嫌ってる相手にまでノロケるとか、周も大概だな……」

「と、とにかく。あんたも、真昼を大切に思ってるなら、真昼自身の幸せも考えてあげて欲しいんだ。『天使様』じゃない、等身大の『椎名真昼』の幸せを」

「……え?」

「俺は、この先何があっても、必ず真昼を幸せにする。だから、あんたも見守っていて欲しい」

 

 周は、真剣に彼女を説得しようとしている。

 悪意に対して制裁を加えるだけでは、問題の解決にならないと考えたのだろう。

 

(本当に、周くんという人は……)

 

 彼女に対して抱いていた怒りが消える。

 被害に遭っていた周本人が赦そうとしているなら、真昼からこれ以上何か言うつもりはない。

 

「……そんな、都合の良いことばかり言っても、どうせ男なんて女を顔でしか見てない癖に。天使様……椎名さんがもし私みたいなブスだったら見向きもしてない癖に……」

 

 なるほど、彼女は恐らく男性に見た目を馬鹿にされたことで、元々男性への嫌悪感が強かったのだろう。

 

「真昼の可愛さにドキドキすることはあったけど、お互いに惹かれたのは見た目なんかじゃなかったからなぁ。それに、俺もやっと気づいたんだが、見た目なんて自分が自信を持ってればどうにでもなるらしい。俺でも変われたんだ、あんたもきっと変われるよ」

「……そんな、簡単には変われないわよ……あなたたちみたいに、外見に恵まれてる人にはわからないでしょうけど」

「うーん……あ、そうだ、真昼」

 

 周が真昼を呼んだ。何をしたいかはすぐに理解できた。

 真昼は、ポーチの中からメイク道具を取り出した。

 

「仕方ないですね……じっとしていてくださいね」

「ちょ、ちょっと、何する気なんですか!?」

「まあまあ」

 

 抵抗する彼女を押さえつけて、軽いメイクや髪型を整えていく。

 

 ――20分後――

 

「はい、もう結構ですよ」

 

 手鏡で彼女の顔を映す。

 

「嘘……これが、私?」

 

 メイクといっても、学校の規則に違反しない程度の簡単なものしか持ってきていないが、正しく使えば見た目の印象など案外簡単に変わる。

 元々彼女は最低限の身だしなみくらいしか整っていなかったが、素材は悪くなかったため、少し整えれば見違えるように変わった。

 

「ああ、見た目なんて案外そんなもんだっただろ? 維持するのは多少大変ではあるけど、思ってるほど外見なんて大したことじゃないんだ」

「……そう、なんでしょうか」

「ああ、だから俺たちのことも、中身をしっかり知って、見守っててくれると助かる」

「…………」

 

 女生徒は何も返事をしなかったが、先ほどまでのように怒りも悪意もなくなっているように見えた。

 

「これで、一件落着、でしょうか?」

「で、いいんじゃない? 周は案外人たらしだからなぁ」

「わかる気がします」

 

 そうこう言っていると、外が騒がしくなってきた。終業式を終えた生徒たちが戻ってきたのだろう。

 

「あれ? 椎名さんたち、なんでここにいるの?」

「わ、あなた随分印象変わったじゃん。終業式なのにイメチェン?」

 

 女生徒の知り合いが、見た目の変わった彼女を取り囲むように盛り上がる。

 当の本人は、オロオロと慌てている。

 

「ほら、可愛くなったんだからみんなに見てもらえ」

「か、可愛っ!?」

 

 和やかに見守る周の一言に、真っ赤になって更に取り乱す。

 

 ――――周くん?

 

 周は結構無自覚にこういうことを言う。

 それは周の美点でもあるのだが、放っておくと周を狙う女子が増えていきかねない。

 周に免じて今回のことは水に流そうと思っていたが、少しだけ仕返しをすることにした。

 

「そういえば、周くんがイヤらしい欲望で穢そうとしていると言っていましたが、むしろ逆ですよ。私が周くんを誘惑して襲ったんです」

「「え!?」」

 

 事情を知らない周りの人たちも、真昼の突然の言葉を聞いて驚く。

 

「て、天使さ……椎名さんがそんなことするはずが!」

「あら、信じられませんか? なら証明してあげますよ」

「お、おい、真昼?」

 

 困惑している周の首に手を回し、熱いキスを交わす。

 

「ん、ちゅ……ちゅぱ……れろ……ちゅ、ん……はぁ」

 

 突然のことに言葉を失っている周囲を他所に、更に盛り上がっていく。

 

「んん……はぁ、ん……れぉ……んちゅ……ちゅぷ、ちゅぱっ……ん、ぷぁ」

 

 思いきり堪能して口を離すと、つー、と唾液が糸を引いて口から垂れてきた。

 

「あ、ああああ。わ、私の中の『天使様』のイメージが……」

「これでも信用できないのなら、この場でセックスでもしてみましょうか?」

「セッ!?」

 

 まさか真昼の口からそんな言葉が出てくると思っていなかったのか、女生徒は完全にダウンしてしまった。

 彼女の中の『天使様』のイメージは完全に打ち砕かれただろう。

 それを見ていた周りの人たちは、皆同じことを思ったのだった。

 

『『て、天使様が…………天使様が堕天した!』』

 

 ――――完




周「真昼なら本当にこのままおっ始めそう……」

というわけで、これにて完結です!
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました
もしよければ評価、お気に入り登録、感想頂けると嬉しいです
良かった点だけでなく、悪かったところやこういう展開が読みたかったなどの感想でも大歓迎です

今後について
一応今回で完結ですが、少ししたらエロエロなオマケは上げると思います
それ以降は予定はないですが、気が向いたら書くかもしれません

それでは、もう一度、ありがとうございました!
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