※この作品はR-18です。

精子垂らす   作:超絶ゆるふわ乙女

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第1話|スライム転生!!いや精子しか出ねえんだけど!?

 

暗い洞窟だった。

 

天井から落ちた水滴が、足元の浅い水溜まりへ小さな波紋を作っている。湿った岩の匂いと、遠くで何かが擦れる音。目を覚ました俺は、しばらくその天井を見上げていた。

 

「……どこだ、ここ」

 

起き上がろうとして、そこで異変に気付く。

 

身体が動かない。

 

正確には、手も足もなかった。

 

「終わった」

 

昨日まで、俺は会社員だった。

 

仕事終わりに後輩と歓楽街を歩いていたら、どこからか暴走トラックが突っ込んできた。運転席のおっちゃんが窓から身を乗り出し、ものすごい顔で叫んでいたことだけは覚えている。

 

『何がケツマンだァァァァァ!! 俺は会社の使いパシリケツマンじゃねぇぇぇぇぇ!!』

 

そこで記憶が途切れている。

 

「……異世界転生か」

 

嫌な予感を抱きながら、水溜まりを覗き込んだ。

 

映っていたのは、青くて丸い、見覚えしかない生き物だった。

 

「……」

 

水面のスライムも、俺に合わせて揺れた。

 

「は?」

 

目を擦ろうとして、手がないことを再確認する。

 

「は???」

 

洞窟の奥まで声が響く。

 

「What’s up!!?? オーマイガッッッッッッ!!!!」

 

この衝撃は、感覚遮断の落とし穴へ落ちた夜以来だった。アムウェイに騙されて一千万失った時よりも、オーバーロードにハマって『オーバーチンポ』という二次小説を書き、低評価を食らった日々よりも、今は普通にショックだ。

 

「落ち着け、俺」

 

水面の青い塊を見つめる。

 

「スライムだ」

 

うん。

 

「終わった」

 

念のため股間を確認した。昨日まで自慢していたマグナム十二センチは、跡形もなく消えている。

 

その時、頭の中へ機械的な声が響いた。

 

ーーー告、個体名未設定ーーー

 

「誰だ」

 

ーーー告、サポートを開始しますーーー

 

「神様?」

 

ーーー告、違いますーーー

 

「じゃあ何なんだよ」

 

ーーー告、そこに無ければ無いですねーーー

 

「ダイソーの店員みたいな返しすんな」

 

頼りにならなそうな脳内音声だったが、名前がないのは不便だろう。俺は少し考え、最初に浮かんだものをそのまま口にした。

 

「今日からお前、クンニ君な」

 

ーーー告、キモキモキモキモキモキモーーー

 

「そこまで罵倒されることある?」

 

ーーー告、名称の変更を要請しますーーー

 

「却下」

 

空腹で腹が鳴った。スライムでも腹は減るらしい。

 

「とりあえず飯だな。今使える技とかないのか?」

 

ーーー告、自慰がありますーーー

 

「終わってる」

 

ーーー告、スライムであっても自慰行為は可能ですーーー

 

「聞いてない」

 

洞窟の天井を見ると、黒いコウモリが一匹、岩肌へ逆さにぶら下がっていた。美味そうではないが、食べられるなら贅沢は言えない。

 

体内の水分を集め、意識を尖らせる。

 

「……いけ。水刃」

 

ペッ。

 

飛んだのは、どう見ても勢いのない液体だった。

 

コウモリは瞬きもせず、次の瞬間には俺の身体へ飛びかかってきた。鋭い爪が表面を裂く。

 

「え」

 

そこで、俺は死んだ。

 

ーーー告、転生特典により復活を使用しますーーー

 

直後、身体ごと吸い込まれるような感覚が走った。

 

「グオオオオオオォォォォォ!!!!???」ギュイイイィィン

 

直後、バキュームフェラみたいな凄まじい吸引の後、俺はさっきと同じ場所で目を開けた。

 

「……本当に復活した」

 

感動する暇はなかった。

 

復活を待っていたコウモリが、もう一度俺を引っ掻いた。

 

「いや、これリスキルじゃない?」

 

俺は死んだ。

 

ーーー告、復活を使用しますーーー

 

「グオオオオオオォォォォォ!!!!???」ギュイイイィィン

 

直後、バキュームフェラみたいなこれさっきもやったな。

 

二度目の吸引を終えた時には、少しだけコツを掴んでいた。

 

今度は水分を圧縮する。さっきよりも強く、細く、刃の形を意識して放つ。

 

「水刃!」

 

ペッペッ。

 

ズバァァン!!

 

コウモリが真っ二つになり、岩壁へ叩きつけられた。

 

「急に強くない?」

 

ーーー告、一度死亡し、復活したためですーーー

 

「サイヤ人の特性かよ」

 

ーーー告、なお先ほど放ったものは水ではなく精子ですーーー

 

「は?」

 

ーーー告、固有能力『精子垂らす』ですーーー

 

洞窟に沈黙が落ちた。

 

「終わってる能力名だな」

 

ーーー告、Exactlyーーー

 

「英語で同意するな」

 

それでも強い。死ねば強くなり、精子を刃にすればコウモリを倒せる。最悪の能力名だが、この世界で生き残るには悪くないのかもしれなかった。

 

「……まあいい」

 

俺は倒れたコウモリを見ながら、少しだけ笑った。

 

「この技で天下を取ってやるよ」

 

まだ、この時の俺は知らなかった。

 

この洞窟に、後に生涯の悪友となる、一匹のクソうるさいコウモリがいることを。

 

つづく……

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