森。
誰も動けなかった。
三割増しのケツ。
そして。
堂々と胸に貼られた名札。
『賢者アナルディウス改』
「だから何が改なんだよ」
老人はゆっくりと顔を上げる。
そして。
俺を見る。
目が見開いた。
「おォォォォォ!!!!」
「伝説の白濁スライムではないかァァァァァァ!!」
「だから違ぇぇぇ!!」
「数週間!!」
「いや17話ぶりじゃァァァ!!」
「メタ認知やめろ!!」
杖を掲げる。
「スライムよ!ワシは帰ってきたァ!!」
「望んでないんだよなぁ……」
「ん?あのコウモリは今回おらんのか?」
「え?モリ夫のこと?いないけどなんで?」
「ああ、あいつ臭いからワシパスじゃ」
「モリ夫哀れすぎる」
カバルが俺を見る。
「……なぁ」
「ん?」
「あの人」
「魔物じゃないよな?」
「うん」
「じゃあ俺達の依頼終わってね?」
「正論で物語終わらせるな」
エレンは名札を見て感心していた。
「ちゃんと名札を付けてるなんて……」
「礼儀正しい方なんですね」
「評価基準そこなんだ」
ギドが震える。
「にょほっ!!思い出したにょ!!」
「あのケツじいこの辺じゃ有名な変態ですにょ!!」
「くもじいみたい」
アナルディウスは頷いた。
「そう」
「威張るな」
「Googleレビュー☆6.9じゃ」
「限界突破してない?」
「☆1レビューは全部ケツ圧迫開示請求した」
「器ちっさ」
アナルディウスは杖を掲げる。
「見るがよい」
「改となったワシを」
「……」
「……」
「いや何が変わったんだ」
賢者アナルディウスは胸を張る。
「Bluetooth対応した」
「は?」
「Bluetooth非対応のケツとかもう時代遅れじゃよ」
「そんな時代滅びていいよ」
「ふん、驚くことなかれ!」
「ケツ面積1.3倍」
「あっそ」
「尻の圧2.5倍」
「ふーん」
「肛門の匂い99%カット」
「めちゃ遠くから臭ってたけど」
賢者アナルディウスは空を見上げる。
「やはりスライム風情にはわからん、か……」
「なんでこの世界の奴らナチュラルに見下してくるんだ」
「ええい!話のわからんスライムめ!我が新技を受けろォォォ!!」
「ケツ圧Bluetooth・インパクトォォォ!!」
何も起きない。
「…………」
老人が杖を見る。
「あれ」
「ケツ穴Bluetooth・インパクト」
「技名変わってんぞ」
「ペアリングが接続されとらん」
「どこと繋げる気だったんだよ」
賢者アナルディウスは懐から説明書を出した。
「ケツ穴接続……」
「ケツ圧Bluetooth……」
俺達は黙って見守る。
カバルが横からヒソヒソと話してきた。
「なぁ帰る?今なら行けそうだぞ」
「おもろいからもうちょい見よう」
エレンは純粋な眼差しでアナルディウスを見ていた。
「あのデカイケツ、デカすぎて固定資産税かかりそうですね」
ギドも独り言をブツブツ言っている。
「にょほほ……今のうちにGoogle星1つけるにょ……」
敵味方の概念が消えていた。
⸻
賢者アナルディウスは汗だくになっていた。
「全然繋がらん!!昨日まで使えたんじゃ!!」
「昨日何と繋げたんだお前」
「賢者アナルディウス」
「お前だろ」
「今は賢者アナルディウス『改』じゃ」
「ver.1.1レベルのアプデかよ」
賢者アナルディウスは叫ぶ。
「ならば!!最終手段!!」
ローブを脱ぐ。
ケツが現れる。
その時だった。
クラァァァン!!
突然。
杖が青白く光る。
「繋がったぞい」
「なんで?」
賢者アナルディウス改がニヤリと笑う。
「今度こそ」
「受けろォォォォ!!!!」
「ケツ圧Bluetooth・インパクト改!!!!」
ピロン♪
『ペアリングに失敗しました』
「弱ァい♡」
「自分に言うことあるんだ」
「もう普通に戦うもんね!!秘術・百連ケツ圧砲
(アナル・インパクト)!!」
「またそれ?!」
「安心せい!痛いのはやはり最初だけじゃ!」
ブリュリュリュリュリュッッ!!!
凄まじい衝撃波。
木々が吹き飛ぶ。
「今度は潤滑剤つきじゃぁ!!!!」
「意味わかんねーよ!!」
カバル達も伏せる。
「なんだこの変な攻撃!!」
「だから言ったろ変態だって!!」
俺は水刃を放つ。
「ギャラクシースプラッシュ!!」
ドゴォォォ!!!
衝突。
煙。
しかし。
煙の向こうから声。
「弱ァい♡」
「出たよ」
ケツだけ無傷だった。
「ケツ硬ぇ!!」
アナルディウスは得意げだった。
「改になってからケツ耐久値が七割増しじゃ」
「ケツ以外全部死んでるぞ」
「さらに」
賢者アナルディウス改は名札を指差す。
「防水仕様じゃ」
「どうでもよすぎる」
「さらに」
名札が光る。
ピコッ
「lightningケーブル対応じゃ」
「何と接続すんだよ!!」
「スマホ」
「うわぁ現代人だぁ……」
エレンが感心する。
「スマホに対応とはとても便利ですね!」
「変態に乗るな」
カバルが真顔。
「今のうちに逃げちゃダメか?」
「しっ!カバルのマジレスは黙ってるにょ!」
「お主ら一般人には分かるまい。この文明の進化というものを」
「見るがいい我が奥の手を!」
ピロン♪
急にアナルディウスがつけていた名札が喋る。
『アップデートを開始します』
「なんで名札に音声ガイド付いてんだ」
《更新には約四時間かかります》
「え」
「なんでお前が困惑してるんだ」
《Wi-Fi環境を推奨します》
「森だぞここ」
その瞬間。
名札。
ピコッ
『アップデート中は戦闘できません』
「詰んだ」
「文明に負けてるじゃねぇか」
アナルディウス改は膝をついた。
「今日はここまでじゃ……」
「散々好き放題やって帰るの!?」
その時だった。
ピロン♪
《更新に失敗しました》
《ロールバックします》
アナルディウスのケツが。
一気にしぼんだ。
「我がケツがァァァァァァ!!」
アナルディウス改は静かに涙を流した。
「散切り頭を叩いてみれば文明開化の音がする」
「どこの誰だよ」
ーーー告、対象の知能では更新条件を満たせませんーーー
「お前いきなり出てきていきなり煽るな」
アナルディウスはゆっくり立ち上がる。
「……覚えておれ」
「次はVer.3.0で帰ってくる」
「2.0飛ばすな」
アナルディウス改は煙玉を投げた。
ボフン!!
煙が晴れる。
誰もいない。
地面には一枚だけ紙が落ちていた。
俺は拾う。
そこには。
⸻
アップデート予定
* ケツ面積 +20000%
* チャレンジ1年生 全クリ方法
* 弱ァい♡のASMR搭載
* ケツ穴からフローラルな匂い追加
* 一部環境でケツが爆死する問題修正
⸻
「資源ゴミすぎる」
カバルが真顔で言う。
「……ギルドに帰るか」
「そうだな」
ギドが呟く。
「さっき低評価つけたらもう開示請求されたにょ」
「仕事早すぎるあいつ」
俺達は森を後にした。
その頃。
森の奥。
煙の中から小さな声。
「弱ァい♡」
つづく……