森を抜ける。
戦いの熱気もすっかり消えた帰り道。
カバルが俺の顔を見ながら何度目か分からないため息をつく。
「……何回見ても慣れねぇ」
「何が?」
「お前」
「めちゃくちゃ美形になってる」
「元はただのスライムだったんだぞ?」
エレンも頷く。
「それ以前に、前はもっとこう……税金かかりそうなスライムさんでしたよね」
「税に対する執着なに?」
ギドだけは別方向だった。
「今も射精できるにょ?」
「何を確認してるんだお前は」
ーーー告、射精しますかーーー
「するんじゃねえ」
三人は顔を見合わせる。
「見た目だけ美形になっても中身は変わってねぇな」
「射精スライムさんで安心した」
「安心する要素ある?」
歩いているうちに、
森が開ける。
その先には――
巨大な木製の門。
見張り台。
柵。
以前より遥かに発展した街が広がっていた。
「……」
カバル達が固まる。
「え」
「本当に街だ」
「魔物しかいないって事は衛生面大丈夫かしら」
「気にするところそこだけ?」
俺は少しだけ誇らしかった。
「みんな頑張ってくれたからな」
その時。
門の前へ巨大な狼が現れる。
銀色の毛並み。
巨大な体躯。
圧倒的な威圧感。
嵐牙狼族の王。
フェラリルだった。
「来たか、我が主よ」
「いつから俺の呼び名それになったの」
カバル達が一斉に警戒をする。
フェラリルは堂々と言い放った。
「我が口臭を受けねば入国はできぬ」
「嫌すぎる入国審査だ!!」
懐から取り出した。
ブレスケア。
ポリポリ。
「入国には儀式が必要だ」
「でたよ」
フェラリルは胸を張る。
「我が口臭検査を受けよ」
「なんで?」
「国家とはまず衛生管理から始まる」
「聞いたことねぇ国家論だな」
カバルが震える。
「俺これやるの?」
フェラリルは真剣だった。
「安心せよ」
「今日はシトラス味だ」
「味の問題じゃねぇよ!!」
「フェラリル」
俺が呼ぶ。
「どうした我が主」
「入っていい?」
「もちろんいいで〜す」ペロペロ
「さっきのルール何だったんだ」
門を抜ける。
街へ入ると、
今度は住民達がこちらへ振り向いた。
「スライム様だ!」
「……あれ?」
「姿変わってる!」
「めちゃきも」
リグルドが駆け寄る。
「スライム殿……そのお姿は!」
「色々あってな」
「美形で女子供を誑かす気ですな!下劣な…」
「俺お前になんかしたっけ?」
モリ夫も飛んできた。
「誰?こいつ」
「スライムだよ。今はリムルって名前だけど」
「表紙詐欺じゃん」
「AVのパケ写詐欺みたいに言うな」
その横からフェラチオが現れる。
俺をじっと眺め、言葉を発する。
「ほぅ」
「女かと思えば男のような面妖さだな」
「余はどっちでもいけるが」ジュル
「バイドラゴン?」
街を歩く。
以前は土だった道も、
綺麗に整備され始めていた。
「あれ?」
川が街にかかってるの発見する。森から繋がっていた。
「こんな川あったか?」
その時だった。
川の向こうから白い髪を揺らしながらクラウディが現れる。
「妾が繋いだ」
「カウパー」
「その名で呼ぶでない不敬者め」
クラウディは胸を張る。
「妾は白濁竜。大陸の外の海や内陸の川」
「世界の水脈を整えた存在じゃ」
カバル達が目を丸くする。
「え?」
「この人(?)そんな大物だったのか!?」
俺は小声でカバル達に伝える。
「てかこいつ四大竜のクラウディだぞ」
「嘘!?デカイ白い竜じゃなかったの!?」
「こんな人間サイズの女の子っぽい姿にもなれたんにょね……」
クラウディはどこか懐かしそうに川を眺めた。
「世界が生まれた頃――」
「六大竜の長兄、ヴァギナ・ナーヴァが大陸を創り」
「妾が海を満たした」
「そして――」
その時。
フェラチオが横を通り過ぎる。
「くだらん」
「話が長いのが苦手なくせに貴様の話は長すぎる」
クラウディの額に青筋が浮かぶ。
「……お主」
「自分が末弟なのをまだ気にしておるのか?」
「黙れ」
クラウディが鼻で笑う。
「事実じゃろ」
「年功序列など弱者の価値観だ」
「効いておる効いておるw」
二匹の竜が言い争う。
カバル達は小声で話す。
「スケールでかくね?」
「世界創世の話してますよ?」
「てか世界って四大竜じゃないにょ?」
俺は興味なさそうに頷いた。
「ふーん」
三人が一斉に振り向く。
「そこ『ふーん』で済ませる所か!?」
2人の口喧嘩を後にしさらに街の奥へ。
そこには巨大な城が建っていた。
「完成したぞ!下品スライム」
屋上で仁王立ちするビーチク。
「敏感乳首城だ!見ろこの乳輪を」
「ネーミング何とかならなかった?」
「じゃあいいよ乳頭宮殿とかで」
「拗ねすぎだろ」
ビーチクは不満そうに項垂れる。
「愚民共は芸術を理解できんらしい」
「理解したくねぇ」
「この街は観光国家となる」
「ほぉ?」
「入場料を取り、宿を建て、土産物を売る」
「急にまともじゃん」
「乳首占いの館」
「陥没乳首専門店」
「乳輪美術館」
「どうだ?」
「全部潰すぞ」
「浅はかだな、下品スライム」
ビーチクが嘲笑う。
「人は理解できぬ物ほど金を払う」
「なんか経営論だけ妙に説得力あるのなんなんだ」
「安心しろ。赤字なら貴様の財布から補填だ」
「最悪すぎる」
カバル達は城を見上げる。
街を見回す。
笑い合う魔物達。
働くゴブリン。
走り回る子供達。
暴れ回る四大竜。
元々この森近辺を支配してた乳首大公ビーチク・バフォメットの新たなる城。
「……いや怖くね?これ」
「人視点だとそうだよねやっぱり」
やっぱり四大竜だったり乳首大公がいるのには慣れなさそうだった。
だがカバルが小さく笑った。
「最初は変なスライムだと思ってたけど」
「本当に国を作っちまったんだな」
エレンは怪訝そうな顔で喋る。
「でもこれ不動産所得税とかかかりますよ」
「なんなら都市計画税もかかるにょ」
「急にリアルなこと言うのやめて?」
カバルに褒められて少しだけ照れくさい。
「まぁまだ国造りは始まったばっかりだけどな」
その瞬間。
口喧嘩から帰ってきたフェラチオが高らかに宣言する。
「第一回!」
「陰茎フェスティバル開催決定!!」
「集え雑魚共!!!!」
「また勝手なことしてんじゃねえェェェ!!!」
街中にツッコミが響いた。
つづく……