翌朝。
チンポリス。
建設途中の国。
俺は机の上に置かれた金貨を眺めていた。
「一枚」
「二枚」
「三枚」
「……」
「少なっ」
既に金貨は残り250枚と少ししかなかった。
横でビーチクが腕を組む。
「当然だ」
「金貨300枚如きで国が維持できると思っているのか?」
「いや、如きって言うなよ」
ビーチクは指で机を叩いた。
「家を建てる」
「道路を整備する」
「職人を雇う」
「食料を確保する」
「乳首を開発する」
ビーチクは淡々と言う。
「国家運営とは金が消える作業だ」
「夢がねぇ」
「半年後には財布も乳首も真っ平らだ」
「それただの陥没だろ」
後ろでフェラリルが頷く。
「ブレスケアや美肌パックの補充にも金は必要だ」
「無駄遣いするんじゃねえ」
モリ夫が頭を抱える。
「つまり金が足りないってことですかい旦那?」
「そういうこと」
「やっぱり俺が身体売るしかないっすねへへ」
「誰需要?」
俺は椅子にもたれる。
「やっぱり収入源が必要だな」
リグルドも会話に入ってくる。
「じゃあ借金とかどうですかリムル殿」
「異世界にアコムある?」
「あるわけねぇだろ」
その時。
「リムル様」
シュナが慌てて入ってくる。
「来客です」
「誰?」
シュナは答える。
「武装国家ドワルゴン」
「……」
「ガゼル王です」
その場全員が固まった。
「え?」
⸻
街の入口。
巨大な馬車が止まる。
重装ドワーフ兵。
近衛騎士。
そして馬車から降りてきた男。
鍛え抜かれたホモくさい肉体。
野獣のような男。
鋭い眼光。
王の風格。
ガゼル王。
「久しいな。今はリムルというんだったか?」
俺は頭を下げる。
「わざわざ来てくれたのか」
ガゼル王は笑った。
「当然だ」
「前回は貴様らが来た。今回は余が来る」
「公平だろう」
「妙に律儀なんだなあんた」
ガゼル王は街を見る。
建設途中の建物。
笑う魔物達。
働くゴブリン達。
そして。
入口でブレスケアを配るフェラリル。
「順番で〜す」ポリポリ
ガゼル王が呟く。
「やはり面白い国だ」
「最初にそこ見る?」
ガゼル王は突然笑い出した。
「リムルよ。お前に聞きたいことがあった」
「何?」
ガゼル王は真顔になる。
「チンポリスとは何だ」
沈黙。
「……」
俺は目を逸らした。
「いやその色々あって」
「余は1日笑った」
「そんなに?」
「ドワルゴン史上最も印象に残る建国名だ」
「褒めてんのか?」
またもガゼル王は真顔になる。
「いや全然」
「やめてよ!!!!」
「余ですら国名で遊ばなかったぞ」
「ごめんじゃん!!」
⸻
その後。
チンポリス会議室。
リムル。
ベニマル。
シュナ。
ガゼル王。
主要メンバーが集まる。
ガゼル王は机に置かれた資料を見る。
「金貨300枚」
「これが現在の資金か」
「実際にはもう250枚ちょっとだけどな」
ガゼル王は即答した。
「お前うんこすぎ」
「やっぱり?」
ガゼル王は資料を閉じる。
「だが問題は金ではない」
「え?」
「貴様は国を成長させたいのだろう」
俺は黙る。
ガゼル王は真剣な目で伝える。
「ならば金貨を渡すだけでは意味がない」
「一時的な延命にしかならん」
「……」
「必要なのは循環だ」
ガゼル王は指を立てる。
「ドワルゴンは技術支援・鍛冶職人派遣・交易路を提供する」
「代わりに貴国は魔物素材を提供する」
「さらに」
「魔物の護衛戦力の協力も結ぶ」
ベニマルが反応する。
「つまり軍事協力」
「そう、そしてお互いの交易路の拡大にも繋がる」
ガゼル王は頷く。
「互いに利益がある関係を作る」
「それが真の意味で同盟だ」
「これなら対等の関係である。我々も貴国に金貨をその都度支払おう」
俺は笑う。
「ガゼル王ってちゃんと王様なんだな」
「何だと思っていた」
「変なランキングとか変な資格作る人」
「それも余だ」
「否定しろよ」
ガゼル王は立ち上がる。
「では契約書を」
ソウエイが受け取る。
「射精されてないか確認します」
数秒後。
ソウエイの顔が変わる。
「……」
「どうした?」
「最後の一枚が問題です」
「何?」
ソウエイが読む。
『年間射精回数報告書(最新版)』
「いらねぇぇぇぇぇ!!」
ガゼル王は真面目な顔で紙を見る。
「国家間交流は情報共有が大切だからな」
「いらねえもん共有すんな!」
「今回は棒グラフ付きだ。」
「進化すんな!」
「まだあります」
「まだあんの…」
俺は既にげんなりしていた。
「ドワルゴン式国家交流項目」
「内容は」
「国歌交換」
「そもそも俺らに国家ねえし実質テロだろ」
「特殊資格交換」
「嫌な予感」
「『最』上級ケツ穴管理士制度」
「消せぇぇぇぇ!!」
ガゼル王は真顔。
「これも互いを知る文化交流だ」
「文化じゃねぇ!」
「ちなみに余は実技99点」
「前より上がるな!!」
⸻
その夜。
正式な交易協定が結ばれた。
魔物の国チンポリス。
そして。
武装国家ドワルゴン。
二つの国は新たな関係を築き始める。
真の意味でこれで金欠とは無縁になりそうだ。
俺は空を見上げる。
「……」
「本当に国になってきたな」
その横で。
ガゼル王が呟く。
「ところでリムルよ」
「チンポリスの国歌はいつ作る?」
「作らねぇよ」
「チンポリス音頭とかは?」
「作らねぇ」
「余は自国のは作詞作曲したぞ」
「その武勇伝捨てろ」
こうして。
魔物の国はまた一歩。
本当の国家へ近づいたのであった。
つづく……