※この作品はR-18です。

精子垂らす   作:超絶ゆるふわ乙女

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第33話|喰う者と喰われる者!!王の名と終わらない空腹!!

 

オーク将軍。

 

そして。

 

豚頭帝オークロード。

 

二体の巨体が同時に俺に向かった。

 

「うわ二人で来るの卑怯じゃない!?」

 

俺は水刃の剣を構える。

 

オーク将軍の戦斧が右から。

 

オークロードの巨大な拳が左から。

 

逃げ場。

 

なし。

 

ーーー告、回避不能ですーーー

 

「もう少し希望ある言い方できない!?」

 

ーーー告、間違いなく死にますーーー

 

「言い方よ」

 

俺は身体を液状化させた。

 

直後。

 

戦斧と拳が同時に俺の身体へ叩き込まれる。

 

グチャッ!!

 

俺の身体が四方八方へ弾け飛んだ。

 

「リムル様ァァァ!!」

 

城壁の上でシュナが悲鳴を上げる。

 

ベニマルも刀を握り締めた。

 

「主殿……!」

 

地面へ散らばった俺の粘液が。

 

ゆっくり集まる。ぽよん。

 

「いやぁ死ぬかと思った」

 

オーク将軍が一歩下がった。

 

「……絶対死んだだろ今」

 

「復活持ちだから」

 

「スライムってそんな生き物だっけ」

 

「俺も最近分かんなくなってきた」

 

オークロードは再生した俺をじっと見つめた。

 

その瞳。

 

驚きではない。

 

喜びでもない。

 

ただ食欲。

 

「実質食べ放題じゃん」

 

「何が?」

 

オークロードが地面に残った俺の粘液を指で掬う。

 

オークロードは粘液を口へ運ぶ。

 

ぺろっ。

 

「……ソーダ味じゃない」

 

「俺も知らねぇよ自分の味なんて!!」

 

オークロードは少し考える。

 

「薄い精液味」

 

「最悪の食レポすんな!!」

 

後ろでフェラチオが鼻を鳴らした。

 

一回。

 

二回。

 

三十回。

 

「精液味だと?!」

 

「戦闘中に食いつくな!!」

 

ガマンダの棍棒がフェラチオの横顔へ叩き込まれた。

 

ドゴォォォン!!

 

フェラチオの巨体が森へ吹き飛ぶ。

 

ガマンダは棍棒を肩へ戻し、頬を引きつらせた。

 

「アタシとの戦いに集中しなさぁい♡」

 

森の奥。

 

フェラチオが木々を薙ぎ倒しながら立ち上がる。

 

「聞き捨てならぬ単語があったのでな」

 

「アンタほんっと生理的に無理だわぁ♡」

 

「奇遇だな」

 

フェラチオは口を大きく開いた。

 

蒼い魔力が喉奥へ集まる。

 

「余も貴様の陰茎には興味がない」

 

「極技・呪いの舌」

 

フェラチオの口から。

 

黒い舌が一本だけ伸びた。

 

先程までの大量の舌とは違う。

 

細い。

 

静か。

 

だが。

 

触れた地面が。

 

黒く腐った。

 

ガマンダの笑みが消える。

 

「……随分と嫌な舌ねぇ♡」

 

フェラチオは翼を広げる。

 

「舐められた者は」

 

「己が最も恥じる記憶を思い出す」

 

「その見た目で精神攻撃!?」

 

ガマンダが一歩下がる。

 

フェラチオは目を細めた。

 

「貴様にもあるだろう」

 

「エロ本が親に見つかって机の上に出されていて叫んだ過去が」

 

ガマンダの顔から血の気が引いた。

 

「や、やめなさい……」

 

「中学生の頃に書いたポエム」

 

「やめろォォォォォ!!」

 

ガマンダが棍棒を振り回しながら突進した。

 

「黒歴史掘り起こすのは美学に反するわァァァ!!」

 

「効いてる効いてる」

 

「四大竜って煽り方一緒なの?」

 

俺は後ろを振り向いて思わず突っ込んでしまった。

 

オーク将軍の戦斧が目の前へ迫る。

 

「余所見をするな」

 

俺は水刃で戦斧を受ける。

 

オーク将軍は歯を食いしばった。

 

「貴様は総大将にしては弱い」

 

「急に悪口?」

 

「だが」

 

戦斧へさらに力が込められる。

 

「倒れても立ち上がる能力は厄介だ」

 

俺は水刃を握り直す。

 

「そりゃ死ぬの慣れてるからな」

 

「全く威張ることではない」

 

「正論やめろ」

 

その横。

 

オークロードが巨大な口を開いた。

 

「二人とも喧嘩しないで」

 

「ふざけんなよこいつ」

 

オークロードの腹が膨らむ。

 

グゥゥゥゥゥ……

 

空気が。

 

引っ張られる。

 

地面の石。

 

折れた武器。

 

倒れたオーク。

 

全てがオークロードの口へ吸い込まれ始めた。

 

「何だこれ!?」

 

ーーー告、吸引型捕食能力を確認ーーー

 

ーーー周囲の物質及び生命力を強制吸収していますーーー

 

「味方も!?」

 

オーク将軍が戦斧を地面へ突き立てる。

 

「陛下!我が兵まで吸うのはおやめください!」

 

オークロードは口を開いたまま首を傾げた。

 

「兵?じゃなくて非常食ぽよ」

 

「おい豚ぁ!!!!」

 

数十体のオークが悲鳴を上げながら吸い込まれる。

 

「ブギャアアアア!!」

 

「やめてくれェェェェェ!!!!」

 

「ウワァァァァァァァァァァ!」

 

オーク将軍の表情が歪んだ。

 

俺はその顔を見る。

 

「……お前」

 

「あいつの能力知らなかったのか」

 

オーク将軍は答えない。

 

戦斧を地面へ突き立てたまま。

 

吸い込まれる部下達へ手を伸ばす。

 

だが。

 

届かない。

 

オークロードは咀嚼した。

 

ゴリッ。

 

グチャッ。

 

オーク将軍の拳が震える。

 

「陛下」

 

「彼らは我らの同胞です」

 

戦場の遠くでフェラリルが何かを察知していた。

 

「同胞!!??」

 

オークロードは口元についた血を舐めた。

 

「だから美味しい」

 

静寂。

 

一瞬だけ。

 

戦場の音が遠ざかった。

 

俺はオークロードを睨む。

 

こいつはただ空腹なだけじゃない。

 

敵も。

 

味方も。

 

命も。

 

全部。

 

食べ物としか思っていない。

 

胸糞悪い。

 

「ギャラクシー・スプラッシュ!!」

 

俺は巨大な水刃を放つ。

 

オークロードは避けない。

 

口を開きそのまま水刃を食った。

 

バクンッ!!

 

「は?」

 

オークロードの腹が膨らむ。

 

数秒後。

 

げぷっ。

 

「まぁずい♡」

 

「食うなよ必殺技を!!」

 

ーーー告、対象は魔力を含む攻撃も捕食可能ですーーー

 

「俺と能力被ってんじゃねぇか!!」

 

オークロードは腹を撫でる。

 

「もっと濃いのが欲しい」

 

「エロオーク?」

 

その時。

 

影が伸びた。

 

オークロードの足元。

 

黒い影からソウエイが飛び出す。

 

「暗殺と射精の時間です」

 

「片方だけにしろ!!」

 

ソウエイの双剣がオークロードの首へ走る。

 

刃が首へ触れる直前。

 

止まった。

 

オークロードの皮膚が。

 

剣を咥えていた。

 

肉が歯のように変形している。

 

ソウエイの目が僅かに見開かれる。

 

「……肉体そのものが捕食器官」

 

オークロードの腹から巨大な口が開いた。

 

「食べる」

 

「遠慮します」

 

ソウエイは即座に影へ沈む。

 

口が空を噛んだ。

 

ソウエイは俺の影から顔だけ出した。

 

「主様」

 

「敵将の暗殺に失敗しました」

 

「お前が失敗するの珍しいな」

 

「ですが射精には成功しました」

 

「え、どゆこと?」

 

オークロードの肩を見る。

 

白い液体。

 

ぺちゃ。

 

オークロードが指で掬う。

 

ぺろっ。

 

「うまい」

 

「食うなァァァ!!」

 

ソウエイは影の中で静かに頷いた。

 

「次はバリカタ濃いめにします」

 

「改善点どこだよ」

 

その頃。

 

戦場の反対側。

 

黄金の斬撃と黒炎が。

 

何度も激突していた。

 

オークキングは金玉王冠を押さえながら大剣を振るう。

 

「黄金金玉斬!!」

 

「技名が直球で浅すぎる」

 

ビーチクは片手で黒炎を放った。

 

「乳輪黒炎壁」

 

「お前も人のこと言えねぇよ!!」

 

黄金の斬撃が黒炎へぶつかる。

 

爆発が起き黒煙が舞う。

 

その中からオークキングが飛び出す。

 

「乳首など金玉の前では無力!」

 

ビーチクの胸元へ大剣の切っ先が迫る。

 

ビーチクは動かない。

 

剣が乳首へ触れる。

 

その瞬間。

 

ビーチクの両目が見開かれた。

 

「我が神聖領域に触れたな」

 

「え」

 

空気が変わる。

 

黒炎が紫色へ変わる。

 

ビーチクの背後に。

 

巨大な乳輪の幻影が現れた。

 

「我が乳首へ触れた者は三代先まで呪う」

 

「代償重すぎるだろ!!」

 

オークキングの顔が引きつる。

 

「待て。戦争とはいえ不可抗力だ」

 

「痴漢には問答無用」

 

ビーチクが指を鳴らす。

 

「超敏感乳頭地獄」

 

オークキングの全身が跳ねた。

 

ビクンッ!!

 

「なっ……!?」

 

鎧の内側。

 

身体中の毛穴が。

 

一斉に乳首へ変化した。

 

「何これぇぇぇぇぇ!?」

 

「全身乳首化の呪いだ」

 

「あまりにもキモすぎる!!」

 

オークキングが膝をつく。

 

風が吹く。

 

全身が擦れる。

 

ビクビクビクッ!!

 

「や、やめろ……!風だけで……!」

 

ビーチクは腕を組む。

 

「我が乳首の価値、身をもって知れ」

 

オークキングは涙を流した。

 

「これが……乳首の力なのか……」

 

オークキングは地面へ倒れた。

 

金玉王冠が転がる。コロコロ。

 

ビーチクは王冠を拾う。

 

しばらく眺めた後。

 

自分の頭へ乗せた。

 

「フン、金玉王冠も悪くない」

 

「結局欲しかったんじゃねぇか!!」

 

遠くでやり取りが見えてた俺が突っ込む。

 

ビーチクは黄金の金玉王冠を被ったまま胸を張る。

 

「金と乳首は古来から好相性」

 

「乳首派としての誇りどこ行った」

 

「美とは共存できる」

 

「急に多様性受け入れんな!!」

 

さらに。

 

氷原。

 

クラウディは岩へ寄りかかったまま眠っていた。

 

その時。

 

クラウディの巨大な白い尻尾が。

 

ゆっくり。

 

持ち上がった。

 

オーク達の進行が止まる。

 

尻尾が。

 

地面へ落ちた。

 

ドォォォォォン!!

 

衝撃波。

 

オーク達が空へ舞い上がる。

 

「寝返りでェェェ!?」

 

クラウディは目を閉じたまま呟く。

 

「……うるさいのぉ」

 

白い霧が広がる。

 

オーク達が一瞬でぶっ飛んだ。

 

クラウディは再び寝息を立てる。

 

「働いてるのか寝てるのかどっちなんだあいつ」

 

近くを走っていたハクロウが刀を納めた。

 

「寝ながら戦えるとは達人の域ですな」

 

「お、ハクロウどうだ戦況は」

 

「私はオーク1.5匹倒しました」

 

「少ねえし!あと0.5分はなんなんだよ」

 

現場大男おじ丸が巨大な木材を振り回しながら頷く。

 

「現場でも寝ながら売り専してるやつはたまにいるぞ」

 

「いねぇよ」

 

⸻

 

地下避難所。

 

リグルドとV豚オークは。

 

床へ巨大な紙を広げていた。

 

『リグルド王政権奪取計画』

 

ゴブリン達が遠巻きに見ている。

 

「本当にやる気だ……」

 

「戦争中だぞ……」

 

V豚オークは棒で図を指した。

 

「まずリムル氏の支持率を落とします」

 

リグルドが真剣に頷く。

 

「どうやって?」

 

「失言を切り抜きます」

 

「どの発言を?」

 

V豚オークは分厚い紙束を出した。

 

紙束には。

 

『いただきまんこ発言』

 

『ウーマナイザー発言』

 

『うまい棒美味しくない発言』

 

『国名チンポリス発言』

 

『ケツにハリガタ突っ込んで喜んでる発言』

 

数え切れない失言が記録されていた。

 

リグルドの目が輝く。

 

「絶対勝てる絶対」

 

「でしょ?」

 

二人は笑う。

 

その瞬間地下室の天井が大きく揺れた。

 

住民達が悲鳴を上げる。

 

「戦場が近付いている!」

 

リグルドは立ち上がった。

 

V豚オークも紙束を抱える。

 

「早く逃げましょうリグルド氏!」

 

「待て」

 

リグルドは地下の住民達を見る。

 

怯えるゴブリン。

 

子供達や怪我人。

 

リグルドは槍を握った。

 

「私は未来の王だ」

 

「そうですよ!だから早く!」

 

「故に」

 

リグルドは階段へ向かう。

 

「民を置いて逃げる王にはなれん」

 

V豚オークが固まる。

 

「……え」

 

リグルドは振り返る。

 

「お前も来い」

 

「何で!?」

 

「先生だろう」

 

「いや俺敵なんですけど!?」

 

リグルドはV豚の襟首を掴む。

 

「戦え」

 

「俺氏精神攻撃しかないぃぃぃ!!」

 

二人は階段を上っていく。

 

ゴブリン達が顔を見合わせる。

 

「村長……意外とちゃんとしてる……」

 

一人のゴブリンが小さく呟いた。

 

「でもクーデター計画は消してないぞ」

 

床。

 

『戦争後実行予定』

 

「やっぱ駄目だあいつ」

 

⸻

 

戦場。

 

オークロードの拳。

 

オーク将軍の斧。

 

二つの攻撃が。

 

同時に俺へ迫る。

 

俺は水刃を交差させる。

 

「ぐっ……!」

 

衝撃。

 

腕が弾け飛ぶ。

 

身体が半分潰れる。

 

だが。

 

即座に再生。

 

「まだだ!!」

 

俺はオーク将軍の胸へ体当たりする。

 

オーク将軍が数歩下がる。

 

そこへ。

 

オークロードの口が迫る。

 

巨大な歯。

 

俺は咄嗟にオーク将軍の戦斧を掴んだ。

 

「借りるぞ!」

 

「待てそれ余の武器」

 

俺は戦斧の柄を利用して身体を回転させる。

 

そのままオークロードの顔面へ。

 

「スライム回転金玉蹴りぃ!」

 

「金玉要素どこ?」

 

俺の足がオークロードの鼻へ直撃する。

 

ドゴォン!!

 

オークロードの巨体が。

 

初めて。

 

一歩下がった。

 

俺は地面へ着地する。

 

「やっと効いた!」

 

オークロードは鼻を押さえる。

 

「痛いの嫌」

 

「なんなんこいつ」

 

オークロードの腹が再び鳴る。

 

先程より一際大きく。

 

グゥゥゥゥゥゥゥゥ……

 

オークロードの身体から。

 

黒い魔素が溢れ始めた。

 

倒れたオーク達の身体が。

 

ゆっくり。

 

干からびていく。

 

魔素が。

 

生命力が。

 

オークロードへ吸われていく。

 

オーク将軍が振り返った。

 

「陛下」

 

「何を……」

 

オークロードの身体が膨らむ。

 

腕。

 

腹。

 

背中。

 

全てが。

 

さらに巨大化する。

 

ーーー告、対象が死亡した同族を捕食し能力を増大させていますーーー

 

ーーー個体名、豚頭帝オークロードーーー

 

ーーー固有能力『飢餓者』を確認ーーー

 

「飢餓者……」

 

オークロードは笑わない。

 

怒らない。

 

ただ。

 

口を開く。

 

「味方生命保険入れればよかった」

 

「気にするとこそこ?」

 

足元。

 

オーク達の死体が次々と消える。

 

凍った者も。

 

焼けた者も。

 

倒れた者も。

 

全て。

 

オークロードの中へ。

 

オーク将軍の顔が青ざめる。

 

「やめろ……」

 

オークロードは将軍を見る。その目は正気では無かった。

 

「誰だ…お前?」

 

「誰だか分からないが美味しそう」

 

オーク将軍が。

 

初めて。

 

自分から一歩下がった。

 

「陛下!私は!!」

 

「貴方の将軍です!!」

 

オークロードは首を傾げる。

 

「将軍味?」

 

「ちげえよ豚」

 

オークロードの腕が伸びる。

 

オーク将軍の首を掴む。

 

「ぐっ……!」

 

俺は急いでオーク将軍の所へ向かう。

 

「何やってんだ!離せ!!」

 

水刃を振るう。

 

だが。

 

オークロードは俺ごと腕を振り払う。

 

俺は地面を転がる。

 

オーク将軍の身体が。

 

オークロードの口へ近付いていく。

 

「待て……!」

 

オークロードは口を開く。

 

「いただき卍」

 

オーク将軍は暴れる。

 

だが。

 

力の差が違いすぎる。

 

「ふざけるな!!こんな終わり方があっていいものか!!」

 

将軍の叫びが戦場へ響く。

 

「我らは!」

 

「貴様の腹を満たすためだけに生きているのではない!!」

 

オーク軍が。

 

動きを止めた。

 

ガマンダも。

 

V豚も。

 

戦場のオーク達も。

 

将軍を見る。

 

オークロードの動きは止まらない。

 

口が迫る。

 

俺は立ち上がる。

 

「クンニ君!!」

 

ーーー告、対象オークロードの捕食能力はリムル様の『暴食捕食者』と酷似していますーーー

 

「だったらよぉ!!」

 

俺は両手を前へ伸ばす。

 

「食う力同士なら!」

 

「どっちが本物か決めようじゃねぇか!!」

 

身体から。

 

黒い渦が広がる。

 

『暴食捕食者』

 

『グラトニー・レイパー』

 

オークロードの『飢餓者』。

 

俺の『暴食捕食者』。

 

二つの捕食領域が。

 

正面から激突した。

 

空気が捻じれる。

 

地面が剥がれる。

 

倒れた武器や瓦礫が。

 

二つの渦の間で浮かび上がる。

 

オークロードが俺を見る。

 

初めて。

 

食欲以外の感情が浮かんだ。

 

愛情。

 

「好き」

 

「は?」

 

俺は歯を食いしばる。

 

「オーク将軍はな!」

 

「お前の飯じゃねぇ!!」

 

オーク将軍が目を見開く。

 

「貴様……」

 

「勘違いすんなよ!」

 

俺は叫ぶ。

 

「お前は敵だ!」

 

「街を襲ったし嫌いだ!」

 

「差別構文もうざい!」

 

オーク将軍の眉が動く。

 

「最後は関係ないだろ」

 

「でも!」

 

俺は捕食の力を強める。

 

「自分の仲間を飯扱いする奴よりは!」

 

「お前の方がまだマシだ!!」

 

オーク将軍の身体が。

 

少しずつ。

 

オークロードの手から離れていく。

 

「俺の獲物を返せ」

 

オークロードが力を強める。

 

「誰がお前の獲物だ」

 

オーク将軍は戦斧の柄を握る。

 

そして。

 

オークロードの腕へ。

 

全力で斧を叩き込んだ。

 

ザンッ!!

 

オークロードの腕が切断される。

 

将軍が地面へ落ちる。

 

俺は捕食領域を解除し、将軍の身体を受け止めた。

 

「重ッ!!」

 

「貴様が勝手に受け止めたのだろう」

 

「ありがとうくらい言えよ!!」

 

オーク将軍は俺から離れ。

 

戦斧を構え直す。

 

俺の隣へ。

 

立った。

 

「……一時休戦だ」

 

「マジ?」

 

「陛下は」

 

将軍はオークロードを睨む。

 

「既に我らの知る王ではない」

 

オークロードの切断された腕が。

 

黒い肉を伸ばし。

 

再生していく。

 

「うわぁ」

 

「こいつも再生持ちかよ」

 

オークロードは二人を見る。

 

腹が鳴る。

 

「仲良くしてて偉い」

 

「誰目線?」

 

オーク将軍は戦斧を肩へ担ぐ。

 

「スライム、いやリムル」

 

「何だよ」

 

「足を引っ張るなよ」

 

俺は水刃剣を構える。

 

「そっちこそ」

 

「あと名前ないと呼びづらい」

 

オーク将軍が苛立ったように腕を組んだ。

 

「戦闘中に命名する気か」

 

俺は一瞬考える。

 

「デス豚田汁男優みちお」

 

「殺すぞ」

 

「じゃあオーク沢ラード之助」

 

「敵に戻っていいか?」

 

「冗談だよ!!」

 

俺とオーク将軍は。

 

同時に地面を蹴る。

 

「行くぞ将軍!!」

 

「指図するな!!」

 

白い水刃。

 

巨大な戦斧。

 

二つの武器が。

 

オークロードの拳へ激突した。

 

ドゴォォォォォォォォォン!!!!

 

爆発。

 

衝撃。

 

戦場全体が白く染まる。

 

俺とオーク将軍は地面へ叩きつけられた。

 

オークロードも。

 

数十メートル後方まで押し戻されている。

 

だが。

 

倒れていない。

 

俺は身体を再生しながら立ち上がる。

 

「硬すぎんだろ……」

 

オーク将軍も戦斧を杖にして立つ。

 

「まだだ」

 

オークロードはゆっくり顔を上げた。

 

その口元が初めて笑っていた。

 

「お残しは許しまへんで」

 

空腹がさらに膨れ上がる。

 

黒い魔素が空を覆う。

 

ーーー超警告ーーー

 

ーーー豚頭帝オークロードの魔素量が急上昇ーーー

 

ーーー進化反応を確認ーーー

 

「進化!?」

 

オーク将軍の顔色が変わる。

 

「まさか……」

 

オークロードの背中から。

 

巨大な黒い腕が。

 

一本。

 

二本。

 

四本。

 

生えていく。

 

腹部には。

 

無数の口。

 

身体全体が。

 

飢餓そのものへ変わっていく。

 

オークロードは。

 

何十もの口を同時に開いた。

 

「いただきまんこ」

 

「俺の持ちネタだろそれは!!」

 

こうして。

 

豚戦争は。

 

さらに最悪の段階へ進んだのであった。

 

つづく……

 

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