暗黒。
上下も。
左右も。
距離すらも分からない。
食われたオーク達の顔だけが。
足元から。
壁から。
虚空から。
無数に浮かび上がっていた。
「痛い」
「苦しい」
「腹が減った」
「めちゃ気持ちいい」
「トイストーリー4は駄作」
「最後の奴だけ何を訴えてんだよ!!」
声が重なる。
そして。
何かを咀嚼する音。
グチャ。
オニゴーリ。
クチャ。
「……最悪の咀嚼音ASMRだな」
俺は周囲を見回した。
ここは。
オークロードの腹の中。
正確には。
奴の捕食能力が作り上げた暗黒空間。
食われた肉体。
奪われた魔素。
3分の1の純情な感情。
その全てが。
この場所に閉じ込められている。
ーーー告、外部との通信は遮断されていますーーー
「え!?クンニ君!?」
返事。
なし。
「今の誰だよ」
足元のオークが口を開く。
「雰囲気で真似して言った」
「クンニ君の存在認知してんのやめろ」
オークロードは両腕を広げた。
「可愛いでしょ我が腹の中」
「内装業者変えた方がいいぞ」
「食われた者の怨嗟で出来ている素敵なデザインです」
「口コミ0.2点くらいだろここ」
オークロードの足元から。
黒い泥が広がった。
俺の足首へ絡みつく。
ジュウウウウウ……
身体の表面が。
少しずつ削られる。
「うわ熱ッ!」
俺は液状化して泥から逃れようとする。
だが。
黒い泥は液体の身体へ入り込み。
内側から俺を腐らせた。
ーーー腐食耐性、突破ーーー
声は。
クンニ君ではない。
この空間そのものが俺の状態を告げている。
「アナウンスまで乗っ取られてんのかよ!」
オークロードの全身の口が笑う。
「ここでは全てが俺になる」
黒い腕が伸びる。
俺の右肩を掴む。
「肉も」
別の腕が左脚へ巻きつく。
「魔素も」
背中から伸びた口が。
俺の頭へ噛みついた。
「記憶も」
視界が。
白く染まった。
洞窟。
転生。
モリ夫。
ゴブリンの村。
フェラリル。
ドワルゴン。
シズさん。
俺の中にある記憶が。
一つずつ。
暗黒空間へ浮かび上がる。
「うわ人の思い出勝手に上映すんな!!」
巨大な顔がシズさんの姿へ口を開く。
「この女も食べる」
俺の笑みが消えた。
「……それに触るな」
オークロードは首を傾げる。
「お前のものは俺のもの」
「俺の身体を喰うのは好きにしろ」
俺は黒い腕を掴んだ。
腐食する掌へ力を込める。
「でもな」
シズさんの記憶へ伸びていた口を水刃で切り裂く。
「この人から貰ったものまで」
暗黒空間へ青白い斬撃が走った。
「お前に渡す気はねぇ」
切断された口が黒い泥へ沈む。
オークロードの表情は変わらない。
「攻撃とか酷いよお」
「何言ってんだお前」
無数の腕が。
一斉に俺へ伸びた。
「全部剥がすね」
身体中を。
無数の手が掴む。
「ちょっ」
引っ張られる。
「五体バラバラ性感マッサージは頼んでねぇぇぇ!!」
ブチッ!!
右腕が千切れた。
左脚が砕ける。
顔の半分を。
巨大な口が喰い千切った。
身体が崩れる。
再生。
崩れる。
再生。
繰り返すたび。
再生速度が。
遅くなっていく。
「貴様は終わる」
オークロードが歩み寄る。
「復活能力も俺が貰う」
足元のオーク達が。
その身体へ吸収される。
「俺は
「スカトロ…便…?うんこの話?」
「ちげーよハゲ!!」
オークロードは両腕を広げる。
「屠殺した相手を喰らい」
「肉を」
「魔素を」
黒い腕が突き刺さる。
「記憶を」
背後。
巨大な口が開く。
「全てを己へ変える」
俺は。
膝をついた。
身体の半分以上が。
既に消えている。
オークロードは。
俺の頭上へ手を伸ばした。
「貴様はここで終わる」
「……なるほどな」
俺は笑った。
オークロードの手が止まる。
「何がおかしい」
「いや」
俺は。
残った片腕を黒い地面へ突き立てた。
「お前、自分の能力に随分かっこいい名前付けてるけどさ」
黒い魔素が俺の掌から広がる。
「要するに」
暗黒空間の一部が俺の色へ染まり始める。
「死体漁りだろ」
オークロードの無数の口が一斉に歯を鳴らした。
「違う」
「違わねぇよ」
俺は立ち上がる。
片脚しかない。
片腕しかない。
顔も半分削れている。
それでも。
俺は前へ進んだ。
「お前は“腐食者”」
一歩。
「屠殺した相手を喰らう」
さらに。
一歩。
「死んだ奴を漁って」
暗黒空間が。
俺の身体を削り続ける。
「そいつの力を盗んで」
背後。
俺の捕食領域が。
巨大な口として形を成す。
「強くなったつもりでいる」
オークロードの顔に。
初めて。
怒りが浮かんだ。
「生肉も好きなんですけど」
「聞いてねえよ」
「王なんですけど」
「仲間を非常食にする奴が王を名乗んな」
オークロードの腕が俺を殴り飛ばす。
ドゴォォォン!!
身体が地面を転がる。
胸から下が消し飛んだ。
「貴様に王や飢餓の何が分かる」
無数のオーク達が。
オークロードの身体から叫ぶ。
「腹が減った」
「子供唐揚げうま」
「インスタ更新しよ」
「蒙古」
「↑どういうこと?」
「生きるしかなかった」
怨嗟。
空腹。
絶望。
オークロードが背負ったもの。
いや。
奪ったもの。
俺は。
這いながら前へ進む。
「分かんねぇよそんなん」
オークロードの腕が止まる。
「俺はお前じゃない」
俺は顔を上げた。
「腹が減って何もなくて」
「仲間を喰うしかなかった奴の気持ちなんか」
口の端を上げる。
「簡単に分かるなんて言えるかよ」
オークロードの目が。
僅かに揺れる。
「でも」
俺の身体が。
再び再生を始める。
「分からないからって」
腕が、脚が戻る。
魔素が暗黒空間から俺へ集まる。
「喰われていい理由にはならねぇ」
オークロードの周囲。
足元に浮かんでいたオーク達の顔が。
一斉に奴を見る。
「王よ」
「金返して」
「3年前に貸したゲーム」
「返して」
オークロードが後ずさる。
「黙れ」
「金もゲームも全て俺のもの」
「俺がお前らを救った」
「俺が」
「違う」
俺は奴を指差す。
「お前は全部」
「自分の腹に閉じ込めただけだ」
暗黒空間。
俺の背後で。
『暴食捕食者』の巨大な口が開く。
オークロードの口も。
全身。
腹。
背中。
掌。
無数に開く。
「ならば喰らう」
「貴様も」
「貴様の記憶も」
「貴様の仲間も」
俺は。
真正面から。
オークロードへ走った。
「お前は“腐食者”」
腕が迫る。
水刃で切断。
「死体を喰う側だ」
巨大な口が開く。
自分の身体ごと突っ込む。
「でも俺は違う」
捕食者。
生きたまま。
相手へ食らいつき。
喰らい。
奪い。
解析し。
自分の力へ変える。
「“捕食者”が」
俺の背後の口が。
オークロードへ噛みつく。
「“腐肉漁り”に」
オークロードの無数の口が。
俺の身体を喰い千切る。
俺の捕食領域が。
奴の能力を剥ぎ取っていく。
喰う。
喰われる。
互いの存在が。
互いの魔素が。
互いの能力が。
何度も。
何度も。
削り合う。
「負けるかよォォォォォォォォ!!!!」
二つの捕食領域が。
正面から。
激突した。
暗黒空間が。
真っ二つに裂けた。
光。
亀裂から。
白い光が差し込む。
オークロードの右腕が消える。
背中の口が消える。
腹部。
脚。
胴体。
奴を作っていた無数のオーク達が。
一人ずつ。
その身体から離れていく。
「待て」
オークロードが手を伸ばす。
「俺の」
「俺の力と金とゲームと三時のおやつ」
「多いわ候補」
「返せ」
足元のオーク達はもう奴を見ていなかった。
白い光へ向かって一人ずつ歩いていく。
「王よ」
一体のオークが振り返る。
「もう」
「腹は減っていない」
オークロードの動きが止まった。
「……そうか」
巨大だった身体が。
小さく小さく縮んでいく。
無数の腕も。
口も。
消えた。
最後に残ったのは一体のオーク。
傷だらけで痩せ細り立っていることすらできない。
ただの腹を空かせた男だった。
「そうか……」
オークロードは俺を見る。
その顔にもう食欲はない。
怒りも憎しみもない。
僅かな納得。
「貴様こそが」
俺の捕食領域が奴の身体を包み込む。
「本物の」
オークロードは小さく笑った。
「捕食者……」
「最後に食えないやつだな」
俺は肩を竦めた。
「いや」
捕食領域が。
さらに閉じていく。
「食うけど」
「……そうか」
オークロードは目を閉じる。
「満足だ」
オークロードの身体が。
完全に光へ包まれる。
「腹が」
「いっぱいだ」
そして。
消えた。
ーーー告、固有能力『飢餓者』の捕食及び解析を完了しましたーーー
「戻ってくるの遅くない?」
ーーー告、通信妨害により接続不能でしたーーー
「足元のオークがお前のモノマネしてたぞ」
ーーー告、著作権侵害として処理しますーーー
「どこに訴えるんだよ」
暗黒空間が崩れ始め白い光が俺の身体を包む。
ーーー告、外部空間への帰還を開始しますーーー
「おう」
俺は。
消えていく暗黒空間を振り返った。
誰もいない。
怨嗟も。
悲鳴も。
空腹も。
もう。
聞こえなかった。
⸻
オークロードの巨体が。
戦場中央で動きを止めた。
腹部の口が閉じる。
背中の腕が崩れ。
黒い魔素となって散っていく。
「主殿……!」
ベニマルが刀を握り締める。
オーク将軍は拳を構えたままオークロードを見上げていた。
やがて巨体の胸部に一筋の亀裂が走る。
バキッ。
亀裂が広がる。
内側から。
白い光。
そして。
俺が飛び出した。
「たっだいまぁぁぁぁぁんこ!!」
そのまま。
地面へ顔面着地。
ベチャッ!!
沈黙。
シオンが駆け寄る。
「リムル様の生まんこぉぉぉきちゃぁぁぁぁ!!!」
俺を抱き上げる。
「御無事ですか!?」
「生まんこって誤解される言い方やめろ」
「もっと民衆に聞かせましょう!!」
「俺の持ちネタ流行らすなよ!」
シオンは俺を抱き締めた。
ベニマルが息を吐く。
「主殿」
「本当に心配を掛けさせないでください」
「いや悪かったよお前に相談もなく」
シュナも結界を解きながら微笑む。
「本当に無事でよかったです」
フェラリルが駆け寄ってくる。
「我が主!!」
「お前も心配してくれたのか」
「腹の中の匂いは!?口内に勝ったか!?」
「どこ心配してんだよ」
フェラリルは真剣な顔でメモを構える。
「胃の中は口内に含まれるのかどうかについて」
「論文かよ」
ビーチクが金玉王冠を被ったまま歩いてくる。
「勝ったか下劣スライム」
「その金玉王冠まだ被ってんの?」
「これは我が国宝にする」
「しょーもない国宝作んなよ」
「金玉を認めることと乳首を愛することは両立する」
「思想家みたいに言うな」
空から。
フェラチオが降りてくる。
「強敵だったぞそのオーク」
「ガマンダ生きてる?」
「知らね」
「もっと興味持てよ!!」
クラウディは。
岩へ寄りかかったまま眠っている。
俺はクラウディの頬を軽く叩く。
「おい起きろカウパー」
「……んぁ」
「終わったぞ」
クラウディはゆっくり目を開けた。
周囲を見回す。
倒れたオーク達。
崩れた地面。
消滅したオークロード。
そして。
無傷の自分。
「妾」
クラウディは胸を張る。
「また何かやってしまったかのぉ」
「なろう主人公やめろ」
クラウディは再び目を閉じる。
「疲れた」
「概念に疲れるのやめろ」
少し離れた場所。
モリ夫が。
別の木の枝に逆さまに引っ掛かっていた。
「あっしも助けてくだせぇぇぇ!!」
俺はそちらを見る。
「お前まだ刺さってたの!?」
「ハクロウに飛ばされて今は吊られてますぜ!!」
ハクロウが刀を抜く。
「では枝を」
「だから枝だけ切ったら落ちるでしょぉぉぉがぁぁぁぁ!!」
スパンッ。
枝が切れる。
モリ夫が落下。
その下。
現場大男おじ丸がモリ夫をキャッチした。
「現場では落下物に気を付けろ」
「せめて生き物として扱ってあっしのこと」
リグルドが。
オーク兵達を引き連れて歩いてくる。
「リムル殿」
「おお、リグルド」
「城内へ侵入したオーク兵、全員説得しました」
「え?マジで?」
オーク兵達が一斉に頭を下げる。
「我らをチンポリスに受け入れてください!」
「帰るとこないしニートです!」
「撃てませェェェェェん!!」
「リグルド王万歳!」
「最後の奴誰だ!!」
リグルドが小さく笑う。
「民意です」
「支持率0.2%だったろうが!!」
V豚がスマホを見せる。
「戦争終結後は1.7%パーセントまで伸びました」
「微々たる変化すぎる」
リグルドは胸を張る。
「この勢いなら五十年後には政権交代も」
「長期計画すぎるだろ」
V豚が俺へスマホを向ける。
「では戦争終結記念配信を」
「やめろ」
「タイトルは『オークロードを倒した消去法の精液の王に今の気持ちを聞いてみた件』」
「スマホ破壊するぞ」
周囲から。
笑いが起こった。
ゴブリンも。
オークも。
鬼人も。
戦争で傷ついた者達が。
笑っていた。
終わった。
本当に。
ようやく。
終わった。
俺は。
戦場の中央を見る。
オーク将軍が。
一人。
立っていた。
武器はない。
両拳は潰れ。
爪も剥がれている。
それでも。
背筋を伸ばして。
消えたオークロードのいた場所を見つめていた。
俺は。
将軍へ近づく。
「将軍」
オーク将軍が振り返る。
「リムル」
「終わったな」
「ああ」
将軍は。
周囲のオーク達を見る。
リグルドの後ろで。
ゴブリン達と並ぶ者。
傷ついた仲間を支える者。
戦斧を捨て。
座り込む者。
「陛下は」
将軍が呟く。
「最後に何か言ったか」
俺は少し考えた。
「腹いっぱいだってさ」
将軍は目を閉じる。
「……そうか」
それだけ。
言った。
暫くして。
オーク将軍は。
俺の前へ膝をついた。
「我らは敗れた」
「将軍?」
「我らは貴様の国を襲い多くの命を奪った」
「今更なにを」
拳を地面へ置く。
「許されるとは思っていない」
周囲のオーク達も。
一体。
また一体。
将軍に続いて膝をつく。
「我らの処分は」
オーク将軍が頭を下げる。
「貴様に委ねる」
俺は。
将軍を見下ろした。
さっきまで敵だった。
俺を殺そうとした。
こいつの軍によって。
傷ついた仲間もいる。
死んだ者もいる。
全部。
なかったことにはできない。
それでも。
「お前ら」
俺は頭を掻いた。
「行く場所あんの?」
オーク将軍は答えない。
「食い物は?」
沈黙。
「家は?」
沈黙。
「やっぱ何もないんじゃねぇか」
俺は溜息を吐く。
「なら」
将軍へ。
手を差し出す。
「うちに来いよ」
オーク将軍が顔を上げる。
「なんの真似だ」
「お前らの罪が消えるわけじゃない」
「でも襲った分は働いて返せ」
「壊した分も直せ」
「飯も」
「家も」
「自分達で作れ」
俺は笑う。
「でも」
「生きる場所くらいは俺が用意してやる」
オーク将軍は差し出された手を見る。
「貴様は甘すぎる」
「よく言われる」
「また裏切るかもしれんぞ」
「その時は俺が止める」
「我らは魔物だぞ」
「俺もだよ」
オーク将軍が。
ほんの僅かに笑った。
「それもそうだったな」
将軍は。
ゆっくりと。
右手を上げる。
俺の手へ。
伸ばす。
その時。
遠く。
丘の上。
赤い髪が。
風に揺れた。
男は。
長銃の照準器を覗いていた。
その隣。
黒髪の女が。
戦場を見下ろしている。
「戦いは終わりましたわ」
カリ・フラワーが静かに告げる。
「我々の任務は偵察です」
「撤収しますわよ。アナルベルト」
赤髪の男。
アナルナメス王国の英雄。
アナルベルトは答えない。
照準の中央。
リムル。
その前に跪くオーク将軍。
「アナルベルト」
カリ・フラワーが眉を寄せる。
「銃を下ろしなさい」
アナルベルトの指が引き金へ触れた。
「敵戦力を確認した」
「戦争は終わりましたわ」
「今撃つなど」
カリ・フラワーの声に。
僅かな怒りが混じる。
「無粋ですわ」
アナルベルトは。
照準から目を離さない。
「人間の生存領域を脅かす勢力だ」
「戦いを終えた者へ撃つ弾に」
「何の美しさがありますの」
「美学で人間は守れない」
「勝手な真似は許しません」
カリ・フラワーが長銃に手を伸ばす。
だが、間に合わない。
アナルベルトが。
引き金を引いた。
乾いた銃声が。
丘に響いた。
戦場。
オーク将軍の胸に。
小さな穴が開いた。
将軍の伸ばした手が。
止まる。
俺は。
何が起きたのか。
分からなかった。
オーク将軍の身体が。
ゆっくりと。
前へ傾く。
「……将軍?」
俺は。
その身体を受け止めた。
胸。
背中まで。
一直線に。
貫かれている。
血が。
俺の腕へ流れ落ちる。
「おい」
将軍は。
俺を見ていない。
伸ばしかけた手が。
力なく。
地面へ落ちた。
「おい、将軍」
背後。
シオンが息を呑む。
「リムル様!!」
何かを感じたのか。
シオンが。
俺の前へ庇うように飛び込んだ。
次の瞬間。
シオンの胸が。
貫かれた。
衝撃。
血。
シオンの身体が。
俺へ倒れ込む。
「……シオン?」
シオンの口から。
赤い血が流れる。
声はない。
「シオン」
俺は。
片腕で将軍を抱えたまま。
もう片方の腕で。
シオンを受け止める。
「おい」
空。
モリ夫が。
翼を広げる。
「旦那ァ!!」
モリ夫は。
丘の方角を見た。
「あっちの方から狙撃ですぜ!!」
発射地点を探そうと。
飛び上がる。
その身体が。
空中で。
止まった。
胸。
小さな穴。
モリ夫の翼から。
力が抜ける。
身体が。
落ちる。
誰も。
間に合わない。
モリ夫が。
地面へ落ちた。
音。
小さな。
鈍い音。
俺は。
動けなかった。
将軍。
シオン。
モリ夫。
三人。
さっきまで。
生きていた。
将軍は俺の手を取ろうとしていた。
シオンは俺を庇った。
モリ夫は敵を探そうとした。
それだけだった。
「クンニ君」
声が。
震えた。
「状況を」
返事がない。
「状況を教えろ」
ーーー告ーーー
クンニ君の声。
いつもと同じ。
何の感情もない。
ーーー個体オーク将軍の生命活動停止を確認ーーー
俺は。
将軍の胸を押さえる。
血が止まらない。
「違う」
ーーー告ーーー
ーーー個体シオンの生命活動停止を確認ーーー
シオンの目は。
開いたまま。
何も映していない。
「違う」
ーーー告ーーー
地面。
モリ夫。
動かない。
ーーー個体モリ夫の生命活動停止を確認ーーー
つづく……