※この作品はR-18です。

精子垂らす   作:超絶ゆるふわ乙女

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第37話|おかえり!!三つの命と、真なる魔王の通常営業!!

 

三時間。

 

戦場の中央。

 

巨大な黒い繭は一度も動かなかった。

 

オーク将軍。

 

シオン。

 

モリ夫。

 

三つの身体も青白い光に包まれたまま目を覚まさない。

 

誰もその場を離れなかった。

 

ベニマルは黒い繭の前に座り刀を膝へ置いている。

 

シュナはシオンの手を握り続けていた。

 

ハクロウは周囲へ意識を張り巡らせている。

 

オーク達は将軍を囲み祈るように頭を下げていた。

 

フェラリルは繭の匂いを嗅いでいる。

 

「真なる魔王の繭……いい匂いダァァァァ」

 

鼻先を近づける。

 

「内部の湿度は」

 

「やめろ」

 

ベニマルが低い声で言った。

 

「黙って待て」

 

「これも口内研究のためだ」

 

「主殿の繭を研究対象にするな」

 

「では舐めるだけ」ペロリ

 

刀が。

 

僅かに抜かれた。

 

「冗談で〜す」ポリポリ

 

フェラリルはブレスケアを噛みながら座った。

 

その隣。

 

ビーチクは金玉王冠を被ったまま腕を組んでいる。

 

「遅い」

 

「まだ三時間です」

 

シュナが答える。

 

「三時間もあれば」

 

ビーチクは乳首を鳴らした。

 

「我なら乳首だけで街を三つ落とせる」

 

シュナが不思議そうに首を傾げる。

 

「その金玉王冠で?」

 

「話聞けよ」

 

「誰のなんですかそれ」

 

「落ちていた金玉を拾った」

 

「やっぱり捨ててください」

 

「こいつやだ我」

 

少し離れた岩。

 

クラウディは黒い繭へ背中を預けて寝ていた。

 

「……すぅ」

 

「おい」

 

フェラチオが。

 

クラウディの頬を摘む。

 

「起きろ馬鹿竜」

 

「んぅ……」

 

「リムルがまだ目覚めていないぞ」

 

「妾が起きても」

 

クラウディは薄く目を開けた。

 

「出るのが早まるわけではなかろう」

 

「それはそうだが」

 

「なら寝る」

 

「マジムカつくこの四大竜」

 

再び。

 

目を閉じた。

 

フェラチオがその額を叩く。

 

「なんじゃ痛いのぉ」

 

「主が命を懸けている時くらい起きていろ阿呆」

 

クラウディは不満そうに頬を膨らませる。

 

「いつからあいつは妾達の主になったんじゃ?」

 

「……」

 

「あいつを自分の主と認めるとはお主も丸くなったものよのぉ」

 

「殺すぞ」

 

「それに妾だって命懸けで寝ておる」

 

「睡眠へ大層な覚悟を持つな」

 

その時。

 

リグルドがスマホでYouTubeショートを見ながら呟いた。

 

「三時間経過しました」

 

全員が。

 

黒い繭を見る。

 

沈黙。

 

何も起きない。

 

リグルドはもう一度スマホを見る。

 

「三時間と一分です」

 

何も起きない。

 

「三時間と二分」

 

「刻むな」

 

ベニマルが睨む。

 

「だって不安ではないですか」

 

「お前が読み上げる方が不安になる」

 

「では黙って確認します」

 

リグルドは画面へ顔を近づけた。

 

「ゼロ♡ゼロ♡ゼロ♡ゼロ♡」

 

「射精管理始まってるぞ」

 

その瞬間。

 

ドクン。

 

黒い繭が。

 

大きく脈打った。

 

全員が息を呑む。

 

クラウディが目を開ける。

 

繭の表面へ。

 

一筋。

 

亀裂が走った。

 

バキッ。

 

黒い欠片が地面へ落ちる。

 

青白い光が亀裂から溢れ出す。

 

「主殿……」

 

ベニマルが立ち上がる。

 

亀裂が広がる。

 

バキ。

 

バキバキ。

 

黒い繭が内側から砕け散った。

 

膨大な魔素が戦場を駆け抜ける。

 

空が揺れる。

 

地面が沈む。

 

残っていた雲が一瞬で吹き飛んだ。

 

光の中心。

 

青い髪。

 

黒い衣。

 

細い身体。

 

俺は。

 

ゆっくりと。

 

目を開けた。

 

「……」

 

視界。

 

ぼやける。

 

身体が。

 

重い。

 

頭も。

 

上手く回らない。

 

ーーー告ーーー

 

クンニ君の声。

 

ーーー真なる魔王への覚醒進化が完了しましたーーー

 

「……終わったのか」

 

ーーー肯定ーーー

 

俺は。

 

自分の手を見る。

 

指。

 

五本。

 

腕。

 

二本。

 

脚。

 

二本。

 

ケツ穴。

 

一個。

 

生殖器。

 

無し。

 

「見た目あんま変わってなくない?」

 

ーーー肯定ーーー

 

「命懸けの進化で据え置き?」

 

ーーー否定ーーー

 

ーーー全身体能力及び魔素総量が大幅に上昇していますーーー

 

「外見の話してんだよ」

 

ーーー告ーーー

 

ーーーケツ穴が二ミリ広がりましたーーー

 

「誤差だろ!!」

 

声が戦場へ響いた。

 

誰も笑わなかった。

 

俺はすぐに三人を見る。

 

オーク将軍。

 

シオン。

 

モリ夫。

 

まだ。

 

動いていない。

 

「クンニ君」

 

ーーー告ーーー

 

「蘇生は」

 

ーーー魂魄再定着処理、最終段階ですーーー

 

「成功するのか」

 

ーーー現時点における成功確率ーーー

 

間。

 

俺は。

 

拳を握る。

 

ーーー99.8%ーーー

 

「残り0.2%はなんだよ」

 

ーーー個体差及びクソザコな魂魄変質ですーーー

 

「ほぼモリ夫じゃねぇか」

 

少し声が震えた。

 

俺はまずオーク将軍の前へ膝をつく。

 

胸へ手を当てた。

 

傷は完全に塞がっている。

 

けれど。

 

心臓は動いていない。

 

「戻ってこい」

 

魔素を流す。

 

青白い光が俺の腕を伝い将軍の身体へ入っていく。

 

ーーー魂魄再定着を開始ーーー

 

将軍の身体が僅かに浮き上がる。

 

オーク達が息を呑む。

 

「将軍……」

 

光が胸の中央へ集まる。

 

一つ。

 

小さな。

 

音。

 

ドクン。

 

「……!」

 

もう一度。

 

ドクン。

 

将軍の胸が僅かに上下する。

 

口元から息が漏れた。

 

「デス豚田汁男優みちお!!」

 

俺は。

 

その肩へ手を置く。

 

瞼がゆっくりと開いた。

 

「……ここは」

 

掠れた声。

 

将軍は。

 

焦点の合わない目で。

 

俺を見る。

 

「リムル……?」

 

「そうだ」

 

「俺は」

 

将軍が自分の胸へ触れる。

 

「さっき撃たれたはずでは」

 

「ああ」

 

「ならば何故」

 

「生き返った」

 

将軍は暫く何も言わなかった。

 

そして俺の手を見る。

 

あの時。

 

届かなかった手。

 

俺は。

 

もう一度。

 

将軍へ差し出した。

 

「うちに来いよ」

 

将軍の目が。

 

僅かに見開かれる。

 

「今度は」

 

俺は笑った。

 

「ちゃんと掴め」

 

将軍はゆっくりと腕を上げる。

 

指が俺の手へ触れた。

 

将軍は強く握る。

 

「……世話になる」

 

「おう」

 

手は。

 

今度こそ届いた。

 

周囲のオーク達から声が上がる。

 

「将軍!!」

 

「生きてる!!」

 

「Switch2返します!!」

 

「今返すのか」

 

「データは消しました!」

 

「殺すぞお前」

 

オーク将軍は息を吐く。

 

「なんか俺のことみちおって呼んでなかった?」

 

「えー何それリムルわかんなーい」

 

俺は立ち上がる。

 

次。

 

シオン。

 

シュナが場所を譲る。

 

「お願いします」

 

「ああ」

 

シオンの隣へ座る。

 

顔は眠っているみたいだった。

 

三時間前。

 

冷たくなり始めていた手。

 

今は。

 

僅かに温かい。

 

俺はその手を握る。

 

「シオン」

 

光を流す。

 

ーーー魂魄再定着を開始ーーー

 

青白い粒子が。

 

シオンの全身を包む。

 

心臓。

 

止まったまま。

 

一秒。

 

二秒。

 

三秒。

 

光が胸へ沈んでいく。

 

ドクン。

 

シオンの指が。

 

僅かに動いた。

 

「シオン」

 

ドクン。

 

唇が。

 

震える。

 

「……リ」

 

小さな声。

 

「リムル……様……」

 

「シオン!」

 

シオンの瞼がゆっくり開いた。

 

紫色の瞳が俺を映す。

 

「俺が分かるか?」

 

「ちゃんと……生です……」

 

「痛いところは」

 

「女性器あたりが……」

 

「よし正常だな!」

 

声が震えた。

 

「もう勝手に死ぬなよ」

 

「すまんこ」

 

「あと庇うな」

 

「すんませんこ」

 

「命令だぞ」

 

「リムル様を守ることが私の役目ですから」

 

「俺は何度でも死ねるんだよ」

 

言ってから。

 

止まった。

 

違う。

 

もう。

 

死ねない。

 

シオンも察したらしい。

 

「……もう」

 

シオンが呟く。

 

「何度でもでは、ないのですよね」

 

「ああ」

 

「では」

 

シオンは俺を強く抱き締めた。

 

「今まで以上にお守りします」

 

「話聞いてた!?」

 

「二十四時間ずっと隣にいます!」

 

「監視だろそれ!!」

 

シオンは完全に目を覚ました。

 

そして俺の顔をじっと見つめる。

 

「リムル様」

 

「なんだ」

 

「少し雰囲気が垂らすっぽくなりましたね」

 

「垂らすっぽくってなんだよ」

 

「とても立派です」

 

シオンは股間を凝視していた。

 

「どこ見てんの?」

 

シオンは胸へ手を当てる。

 

深く息を吸った。

 

嫌な予感。

 

「真なる魔王となった」

 

声が。

 

戦場へ響く。

 

「リムル様の生まんこォォォォォォォォォォォ!!!!」

 

「蘇生直後の第一声に近い言葉がそれ!?」

 

「おかえりなさいませェェェェェ!!ご主人様ァァァァァァァァァァ!!!!」

 

「俺もお前も帰ってきてんだよ!!」

 

シュナが涙を拭いながら笑った。

 

「あの意味不明な発狂は間違いなくシオンですね」

 

「確認方法が悲しすぎる」

 

シオンは俺の腕へしがみつく。

 

「ああ……リムル様の匂い……」

 

「蘇生してすぐ嗅ぐな」

 

「魔王の香りがします」

 

「どんな匂いだよ」

 

「少し濃くなった精液のような」

 

「死後世界へ送り返すぞ」

 

ーーー警告ーーー

 

ーーー次回の蘇生は保証できませんーーー

 

「冗談だよ!!」

 

シオンが戻った。本当に戻ってきてくれた。

 

俺は最後の一人を見る。

 

モリ夫。

 

地面へ仰向けに寝ている。

 

「……」

 

何故か一番不安だった。

 

シオンが俺の隣から覗き込む。

 

「モリ夫さんは?」

 

「今から戻す」

 

シュナは安心した顔つきだった。

 

「失敗しても仕方ありませんね」

 

「仲間への温度差どうなってんだよ」

 

モリ夫の胸へ手を当てる。

 

「クンニ君」

 

ーーー告ーーー

 

「やるぞ」

 

ーーー魂魄再定着を開始しますーーー

 

青白い光がモリ夫を包む。

 

心臓。

 

止まっている。

 

身体。

 

動かない。

 

十秒。

 

何も。

 

起きない。

 

「おい」

 

ーーー処理中ーーー

 

二十秒。

 

何も起きない。

 

「モリ夫」

 

三十秒。

 

ーーー警告ーーー

 

嫌な。

 

音。

 

ーーー魂魄の再定着に抵抗を確認ーーー

 

「なに抵抗してんだよ!!」

 

ーーー個体モリ夫の魂魄が、現世への帰還を拒否していますーーー

 

「拒否ってどういうこと!?」

 

シオンが腕を組む。

 

「地獄の方が居心地がよかったのでしょう」

 

「地獄で何してんだあいつ」

 

俺はモリ夫の胸元を掴む。

 

「オラ戻ってこい!!」

 

光を無理やり流し込む。

 

「お前まだ俺を殺してねぇだろ!!」

 

一瞬。

 

モリ夫の指が動いた。

 

「そうだ!!」

 

俺は叫ぶ。

 

「俺はもう何度も死ねないぞ!!」

 

モリ夫の瞼が僅かに震える。

 

「次に殺せば本当に終わりだ!!」

 

ドクン。

 

心臓が。

 

動いた。

 

「なんでそれで反応すんだよ!!」

 

モリ夫が勢いよく目を開いた。

 

「旦那ァァァァァァァァァ!!!!」

 

飛び起きる。

 

その頭が俺の顎へ直撃した。

 

ゴンッ!!

 

「いっっった!!」

 

「生き返りましたぜェェェェ!!」

 

モリ夫は自分の身体を触る。

 

胸。

 

腕。

 

翼。

 

尻。

 

「全部ありますぜ!」

 

「最後に尻触る必要あった?」

 

「あっしのアイデンティティですぜ」

 

「アナルディウスじゃん」

 

モリ夫は俺を見る。

 

「旦那……」

 

「ん?」

 

「あっし」

 

モリ夫の声が震える。

 

「死んでる間……真っ暗な場所で」

 

「何があった」

 

モリ夫は拳を握った。

 

「地獄の受付に並んでましたぜ」

 

「死後世界に受付あんの?」

 

「番号札が七百六十九番で」

 

「混みすぎだろ」

 

「ようやく呼ばれたと思ったら」

 

モリ夫は悔しそうに俯く。

 

「お前は臭すぎだから帰れって」

 

「地獄から臭いで入場拒否されたの!?」

 

「酷い話ですぜ!!」

 

「お前風呂入らねえからだよ」

 

「受付の鬼にケツの穴を見せただけですぜ」

 

「完全にお前が悪い」

 

モリ夫は涙を拭う。

 

「ですが旦那」

 

「なんだ」

 

口の端を思いっきり上げる。

 

「これで」

 

殺意。

 

清々しいほどの。

 

殺意。

 

「いつか本当に殺せますぜ」

 

「生き返って真っ先に確認することそれ?」

 

「旦那が一度しか死ねない身体になったって、魂に聞こえましてねぇ」

 

モリ夫は両腕を広げた。

 

「俄然やる気が出ましたぜ!!」

 

「お前の蘇生キャンセルしていい?」

 

ーーー警告ーーー

 

ーーー不可逆ですーーー

 

「クンニ君もっと慎重に蘇生しろよ!!」

 

モリ夫が俺へ抱きつく。

 

「旦那ァァァ!!」

 

「うわ気持ち悪ッ!!」

 

「会いたかったですぜェェェ!!」

 

「俺も会いたかったけど離れろ!死ね!」

 

全員が止まった。

 

俺も止まった。

 

モリ夫がゆっくりと俺を見る。

 

俺は口元を押さえる。

 

「……悪い」

 

「今死ねは」

 

「シャレにならないよな」

 

数秒。

 

沈黙。

 

モリ夫はにやりと笑った。

 

「ようやく」

 

俺の肩を叩く。

 

「旦那もあっしらと同じになりましたねぇ」

 

「……ああ」

 

「なら」

 

モリ夫はいつもの顔で笑った。

 

「次からは死なねぇようにしてくださいよ」

 

「お前に言われたくねぇよ」

 

今度こそ周囲から笑いが起きた。

 

シオン。

 

オーク将軍。

 

モリ夫。

 

三人とも。

 

立っている。

 

喋っている。

 

笑っている。

 

生きている。

 

俺はその場へ座り込んだ。

 

力が一気に抜けた。

 

「よかった……」

 

涙がまた出そうになる。

 

オーク将軍が少し離れた場所から俺を見る。

 

「リムル」

 

「なんだ」

 

「礼を言う」

 

「いいよ」

 

「しかし」

 

将軍は真剣な顔で頭を下げた。

 

「俺の命だけでなく」

 

周囲のオーク達を見る。

 

「我らの未来まで救った」

 

「だからいいって」

 

「これって」

 

将軍は。

 

拳を胸へ当てる。

 

「オーク差別じゃないですか?」

 

「それ持ちネタにすんなや」

 

オーク達も笑う。

 

「とりあえず借りパクされたSwitch2回収してからにしろ」

 

「承知した」

 

オーク達が一斉に目を逸らした。

 

「おい」

 

将軍が立ち上がる。

 

「なに借りパクしてんだ」

 

「データだけ移させてください!」

 

「オンライン契約は我らが払いました!」

 

「保護フィルムが剥がれました!」

 

「全員並べ」

 

将軍が拳を鳴らす。

 

「死ぬ覚悟をしろお前ら」

 

「蘇生直後に粛清始めんな!!」

 

戦場へ。

 

いつもの騒がしい声が戻ってきた。

 

クラウディがゆっくりと立ち上がる。

 

眠そうな目で俺を見る。

 

「リムル」

 

「おう」

 

「魔王になったのか」

 

「ああ」

 

クラウディは。

 

俺の頭へ手を置いた。

 

「ようやく我らと同格の存在になったのぉ」

 

「お前に褒められるとなんかムカつく」

 

「褒美に」

 

クラウディが片腕を上げる。

 

「妾の「特製精液製造雪見だいふく072号くん」の味見をさせてやろう」

 

「わざわざ0つけた意味なんだよ」

 

「遠慮するなお主は精子が主食なのだろう」

 

「ハゲドラゴンざけんな」

 

クラウディの足元へモリ夫が滑り込む。

 

「あっしが代わりに食らいますぜぇ!」

 

「多分死ぬぞお主」

 

「多分死ぬの!?」

 

「そんなもん俺に食べさせようとすんなや!!」

 

フェラチオが俺の顔を覗き込む。

 

「しかし」

 

俺の頬を指で突く。

 

「本当に魔王なのか?」

 

「クンニ君が言ってたぞ」

 

「どれ」

 

フェラチオは。

 

俺の口を開けようとする。

 

「口内を確認すれば」

 

「何で魔王判定を口でするんだよ!!」

 

「喉奥に魔王の淫紋が」

 

「ある訳ねえだろ」

 

フェラリルがメモを構える。

 

「真なる魔王の口腔ケアについて」

 

「お前ら研究会解散しろ!!」

 

ビーチクが腕を組んだまま俺を見る。

 

「真なる魔王か」

 

「なんだよ」

 

「少しは我の実力に近づいたようだな」

 

「お前魔王じゃないだろ」

 

「乳首の世界では覇王だ」

 

「世界狭すぎる」

 

ビーチクは金玉王冠を外し。

 

俺へ差し出した。

 

「これをやろう」

 

「いらねぇ」

 

「新たな王の誕生に相応しい」

 

「絶対いらねぇ」

 

「金玉魔王リムル」

 

「舐めすぎだろ」

 

リグルドが鼻をほじりながらスマホを確認する。

 

「リムル殿」

 

「今度は何だ」

 

「真なる魔王への覚醒により」

 

画面を見せる。

 

「リムル殿の支持率が上昇しました」

 

「マジで?」

 

「現在8.9%です」

 

「真なる魔王で1桁なの!?」

 

「歴代最高です」

 

「比較対象お前だけだろ」

 

リグルドは胸を張る。

 

「このまま行けば四十年以内に過半数へ」

 

「俺その前に死ぬ可能性あるから!!」

 

周囲から再び笑いが起きた。

 

俺も笑った。

 

声を出して笑った。

 

三時間前。

 

もう二度と。

 

この声を聞けないと思った。

 

もう二度と。

 

この馬鹿共と。

 

同じ場所で笑えないと思った。

 

でも。

 

戻ってきた。

 

「クンニ君」

 

ーーー告ーーー

 

「俺の死亡後継続機構は」

 

少し。

 

周囲の音が遠ざかる。

 

ーーー全死亡記録の消費に伴い、機能を停止していますーーー

 

「もう本当に」

 

ーーー肯定ーーー

 

ーーー次回の死亡は不可逆ですーーー

 

胸の奥。

 

怖くないわけじゃない。

 

死ぬ。

 

終わる。

 

次はない。

 

今まで。

 

考えなくてよかったこと。

 

俺は自分の手を見る。

 

その手をシオンが握る。

 

「リムル様」

 

反対側。

 

モリ夫が。

 

肩へ腕を回す。

 

「旦那」

 

オーク将軍も。

 

俺の前へ立つ。

 

「王よ」

 

周囲。

 

仲間達が。

 

俺を見ている。

 

一人じゃない。

 

俺は。

 

小さく息を吐いた。

 

「まぁ」

 

立ち上がる。

 

「死ななきゃいいだけだろ」

 

ーーー告ーーー

 

ーーー極めて合理的な結論ですーーー

 

「お前それもっと早く教えろよ」

 

ーーー死亡前には毎回警告していましたーーー

 

「聞いた覚えねぇ」

 

ーーーマスターは毎回無視していましたーーー

 

「過去の俺馬鹿すぎない?」

 

「今もですよリムル様」

 

シオンが即答した。

 

「生き返って毒舌強くなってない?」

 

その時腹の音が戦場へ響いた。

 

ぐぅぅぅぅぅぅぅ。

 

全員が音の方を見る。

 

オーク将軍。

 

将軍は。

 

少し。

 

顔を逸らした。

 

「……お腹空いた」

 

「オークロードじゃん、うける」

 

俺は笑った。

 

「帰ろうぜ将軍」

 

「どこへだ」

 

「チンポリス」

 

俺は全員を見る。

 

「飯食って」

 

「怪我治して」

 

「精子垂らして」

 

「寝る!」

 

シオンが勢いよく手を挙げる。

 

「では私が皆様のお食事を!!」

 

「それはやめろ」

 

ベニマルの低い声が響いた。

 

「何故ですか兄者ァ!?」

 

「蘇生した三人をもう一度殺す気かお前は!!」

 

「今の私は以前とは違います」

 

「死後世界で料理修行したの?」

 

「前とは発想力がダンチです!」

 

「なんの料理作るんだシオンは」

 

シオンは胸を張る。

 

「魔王となったリムル様へ相応しい」

 

「真・生まんこ定食を!!」

 

「捨てちまえよそんな食材」

 

モリ夫が涎を垂らす。

 

「あっしは食べますぜ」

 

「死んで味覚壊れた?」

 

クラウディが大きく欠伸をする。

 

「妾は大精液泥雪見だいふくがよい」

 

「戦後の第一希望それ?」

 

フェラリルが手を挙げる。

 

「我が主の胃液を頼む」

 

「キモすぎ」

 

フェラチオが笑う。

 

「ガマンダも連れて帰るか?」

 

「あいつ生きてたの!?」

 

遠く。

 

岩の下。

 

僅かに。

 

手が上がった。

 

「……助けて」

 

「三時間ずっと埋まってたの!?」

 

笑い声。

 

怒鳴り声。

 

泣き声。

 

全部混ざり合う。

 

戦争は終わった。

 

三人は帰ってきた。

 

そして俺は真なる魔王になった。

 

「よし」

 

俺はチンポリスの方角へ歩き出した。

 

「帰るぞ!!」

 

「旦那の後ろは任せてくだせぇ!!」

 

「後ろから刺すなよ」

 

「善処しますぜ」

 

「確約しろ!」

 

俺達は帰った。

 

いつもの最悪で騒がしい。

 

俺達の街へ。

 

⸻

 

遠く世界の底。

 

光も。

 

音も。

 

時間すらも。

 

ほとんど届かない場所。

 

そこに。

 

一つの浴場があった。

 

黒い石。

 

黒い湯。

 

天井から落ちる。

 

一滴の水。

 

ぽちゃん。

 

湯気の中。

 

一人の男が。

 

湯船へ浸かっていた。

 

黒い髪。

 

頭から伸びる。

 

二本の角。

 

閉じられていた瞼が。

 

ゆっくりと。

 

開く。

 

黒い眼球。

 

その中心。

 

赤い光。

 

男は遠い世界を見つめた。

 

「真なる魔王……」

 

三千年。

 

眠り続けていた。

 

原初の悪魔。

 

その口元に。

 

静かな笑みが浮かぶ。

 

「今のは……」

 

男は。

 

湯船の縁へ腕を掛けた。

 

白いタオルを。

 

肩へ乗せる。

 

「かなり精子垂らしてますね」

 

立ち上がる。

 

ざばぁ。

 

三千年ぶりに。

 

原初の悪魔が。

 

風呂から上がった。

 

「さて」

 

男は。

 

黒い燕尾服へ袖を通す。

 

腰へ。

 

古びた風呂札を下げた。

 

「恩人へ」

 

赤い瞳が愉快そうに細まる。

 

「ご挨拶へ参りましょうか」

 

原初の悪魔。

 

『ディア風呂』

 

真なる魔王の誕生を知り。

 

長い。

 

長い。

 

長風呂を。

 

ようやく終えた。

 

つづく……

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