※この作品はR-18です。

精子垂らす   作:超絶ゆるふわ乙女

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第38話|原初の悪魔参上!復興より先に温泉が完成しました!!

 

黒い繭が砕けてから、まだ半日も経っていなかった。

 

シオン、モリ夫、オーク将軍の三人は戻ってきた。

 

俺も真なる魔王とかいう訳の分からないものになった。

 

そして、死んだら次は本当に終わり。

 

色々ありすぎた。

 

ありすぎたので。

 

「まず放置されてるガマンダを掘り出すぞ!!」

 

「助けてガマンダァァン♡」

 

「生きてんじゃねぇか!!」

 

崩れた岩場の下から、妙に元気な声が聞こえてきた。

 

ベニマルとハクロウが大岩をどかすと、その下からガマンタが土まみれで這い出してくる。

 

髪はぐちゃぐちゃ、服も破れているのに、本人は顔についた泥を拭うことを最優先していた。

 

「もう最悪よぉ……鼻にオーク汁入ったわぁ」

 

「どういう汁だよ」

 

ガマンダは立ち上がると、周囲を見渡した。

 

壊れた家。抉れた地面。まだ治療を受けている住民たち。

 

さっきまでの軽い調子が、ほんの少しだけ引っ込む。

 

「……みんなは?」

 

「生きてる奴は大体な」

 

「そう」

 

ガマンダは短く息を吐いた。

 

「じゃあアタシも働くわぁ。瓦礫運びくらいならできるもの」

 

「休まなくていいのか?」

 

「ガマンダの館(汁付き)作るまでは急ぎたいものぉ」

 

「ぶっ壊すぞ」

 

戦争は終わった。

 

でも街は終わってない。

 

チンポリスへ戻った俺たちは、その日のうちに復興会議を開くことになった。

 

始まった直後シオンが勢いよく手を挙げた。

 

「はいはいはいはいリムル様!!」

 

「よしシオン」

 

「本日の生まんこ発言回数は何回までですか!?」

 

「議題そこじゃねぇ!!」

 

「では無制限で」

 

「もうやだこいつ」

 

しかし会議室といってもその場所は痛々しかった。

 

集会所の屋根は半分吹き飛んでいたので、会議室の中央から普通に空が見えている。

 

「議題その一、住宅」

 

ベニマルが地図を広げる。

 

「全壊が四十七棟、半壊が八十一棟です。応急住居を優先します」

 

「まぁ当然だな」

 

「議題その二、食料庫」

 

「これも無いと論外だな」

 

「議題その三、治療所」

 

「戦争で怪我人が多い、優先しよう」

 

ここまではいい。

 

俺はふと思い出し、向かい側に座る三人を見る。

 

フェラチオ。

 

クラウディ。

 

ビーチク。

 

この世界でも最上位に近い連中が、揃ってあの銃撃を止められなかった。

 

「そういやお前ら」

 

「なんだ下劣スライム」

 

「三人もいて、なんであの銃弾止められなかったんだよ」

 

フェラチオが腕を組む。

 

「弾道が存在しなかった」

 

「は?」

 

クラウディは机に頬杖をついたまま、眠そうに続ける。

 

「飛来したのではない。撃った時には既に当たっておったのぉ」

 

「何それ怖い」

 

ビーチクだけが冷静に指を組んだ。

 

「あれは銃弾の形を借りた決定だ」

 

「説明がラスボスすぎる!!」

 

「要するに、通常の防御では間に合わん」

 

「通常は?」

 

「余なら撃たれる前に口淫する」

 

フェラチオが即答する。

 

「最悪だけど頼もしすぎる」

 

クラウディも小さく頷いた。

 

「妾が起きておれば余裕だったのぉ」

 

「そこが一番不安なんだよ!!」

 

こいつ本当に戦争中でも寝るからな。

 

そこでベニマルが咳払いした。

 

「主殿、続けても?」

 

「あ、ごめん」

 

「議題その四、温泉施設の全壊」

 

「誰だァァァァァァァァァァァ!!」

 

ビーチクが勢いよく地面を殴った。

 

広場に新たな亀裂が走る。

 

「お前だよ今壊したの」

 

ビーチクが項垂れて膝をつく。

 

「我が乳首を削り」

 

「鰹節かよ」

 

「乳首を削る思いで造った温泉が……」

 

「比喩かよ」

 

ビーチクが立ち上がった。

 

「乳首浴場の再建だ」

 

「優先順位おかしくない?」

 

「戦を終えた民に必要なのは屋根だけではない」

 

声は真面目だった。

 

ビーチクは崩れた街の方へ目を向ける。

 

「眠る場所があっても、心身が休まらなければ街は立ち直らん」

 

ビーチクは腕を組みながら淡々と話し続ける。

 

「湯は傷ついた者を同じ場所へ座らせる。身分も種族も関係なくな」

 

普通に良いこと言ってる。

 

悔しいけど、めちゃくちゃ良い。

 

「だからこそ」

 

ビーチクが地図の一角を指差す。

 

「超乳首絶頂温泉・金玉の湯を再建する」

 

「クソみてえな再建!!」

 

「何がだ」

 

「てか新しく金玉入れてんじゃねえよ!」

 

「前より格調高くした」

 

「何に効くのこの温泉?」

 

「乳首疲労」

 

「そんな疲労ねえだろ」

 

「知らんけど冬場に多い」

 

その時、横で話を聞いていたオーク将軍が机の上へ資料を広げる。

 

「それよりもまず住居の確保を優先すべきだ」

 

「ようやく正論来た」

 

「オーク達だけでも相当な数がいる」

 

周囲のオーク達が一斉に頷いた。

 

「じゃあオーク将軍は案があるのか」

 

「決まっているだろう」

 

オーク将軍は自信満々に語り出す。

 

「まず作業台を作る」

 

「マイクラじゃねえんだぞ」

 

「続いて石斧」

 

「マイクラから離れろよ!!」

 

刹那、またシオンが手を挙げる。嫌な予感しかしない。

 

「え……なにシオン」

 

「炊き出しをしたらいいと思いますリムル様!」

 

「案外まともだ……何作るの?」

 

「当然チンポリスの復興記念」

 

「 生 ま ん こ 炊 き 込 み ご 飯 」

 

「帰っていい?」

 

その時だった。

 

風が止まった。

 

いや、違う。

 

空気そのものが、一瞬だけ重くなった。

 

フェラチオが目を細める。

 

クラウディも、珍しく顔を上げた。

 

ビーチクの手が止まる。

 

「……何かが来るぞ」

 

「何が?」

 

答えはなかった。

 

集会所の中央。

 

壊れた床の隙間から、黒い湯気が立ち上った。

 

「湯気?」

 

黒い。

 

どう考えても風呂上がりの色ではない。

 

湯気はゆっくり人の形を取り、その中から一人の男が歩いてきた。

 

黒髪。

 

黒い目。

 

その中心だけが、赤い。

 

頭には角。

 

身には黒い燕尾服。

 

首には白いタオル。

 

手には、何故か古びた木札。

 

男は俺を見ると、丁寧に頭を下げた。

 

「こんにちんこ」

 

「なんだろうすげえ既視感」

 

「まだ名乗っておりませんが」

 

「その挨拶はろくでもない奴しかしないんだ」

 

男は微笑んだ。

 

「原初の悪魔、ディア風呂と申します」

 

「帰れ」

 

「自称、風呂屋の兄ちゃんです」

 

「原初の悪魔が風呂の兄ちゃんやってんのぉ?」

 

フェラチオの空気が変わる。

 

「原初……」

 

クラウディも半目のまま相手を見る。

 

「まだ生き残りがおったのか」

 

「ご存知でしたか」

 

「昔から面倒な連中じゃ」

 

「お前が言うな」

 

ディア風呂は俺から目を離さない。

 

「三千年ぶりに目覚めさせていただいたので、ご挨拶に」

 

「三千年寝てたの?」

 

「三千年風俗していました」

 

「身体売りすぎだろ」

 

「体力には自信がありまして」

 

「なぁこいつもただの変態なんじゃねえの?」

 

ベニマルが刀に手をかけた。

 

「主殿、下がってください」

 

「え?」

 

「原初を名乗る悪魔を、信用する理由がありません」

 

ディア風呂はむしろ満足そうに頷いた。

 

「正しい反応です。原初の悪魔を名乗る風俗働き兄ちゃんを、初対面で信用するべきではありません」

 

「自分で言うの!?」

 

「警戒を怠る客は……皆精子を垂らします」

 

「意味わかんねーワードやめろよ」

 

ベニマルが刀を抜く。

 

次の瞬間。

 

刀が消えた。

 

「なっ」

 

ディア風呂の手には、木札が一枚増えていた。

 

「刃物類は番台でお預かりします」

 

「いやどういう能力?」

 

「刀を返せ!」

 

「退店時に全てお返し致します」

 

「そもそも入店してねぇよ!」

 

モリ夫が横から飛び出す。

 

「悪魔とか大ボラこきやがって雑魚がぁぁ!」

 

「はい」

 

ディア風呂が指を鳴らした。

 

『強制退店』

 

モリ夫が消えた。

 

「え、前話復活してもう死んだの?」

 

一秒後。

 

外から声がする。

 

「なんであっしだけ外に出されたんですかい!!」

 

「だからどういう能力なんだよこいつ」

 

シオンが大剣を構える。

 

「生リムル様に危害を加えるなら、この私が」

 

「お客様、浴場内での暴力行為は禁止です」

 

「いやここ浴場じゃないんですけど!!」

 

「今後この国は全てそうなります」

 

「勝手に国の敷地内全部浴場にすんな」

 

ベニマルが予備の短剣を抜こうとした。

 

また木札になった。

 

「なんなのこいつぅ〜」

 

ベニマルは涙目だった。

 

次に、ディア風呂がフェラリルをじっと見る。

 

沈黙。

 

「口腔衛生に重大な問題がありますね」

 

「何?」

 

次の瞬間。

 

巨大な歯ブラシがフェラリルの口内へ突っ込まれた。

 

ズボッ!!

 

「アガガガガガガガガ!!」

 

「奥歯に三千年分の歯垢が」

 

「我まだ三千年生きてな──」

 

「口を動かさないでください」

 

「グォォォォォォォ!!」

 

ビーチクは一歩も動いていなかった。

 

「原初の悪魔」

 

「はい」

 

「名だけで我らが退くと思うな」

 

ディア風呂の笑みが少し薄くなる。

 

「この街へ害を成すか」

 

ビーチクは自分の乳首を弄る。

 

「それとも乳輪を弄り倒すか」

 

「現時点では、害を成す意思はありません」

 

「ならば客だ」

 

「どこが客判定なんだよ」

 

ビーチクは平然としている。

 

「害意があれば討つ。なければ使う。敵か味方かで悩む時間ほど無駄なものはない」

 

確かに合理的だけど、相手原初の悪魔だぞ。

 

「それに」

 

ビーチクが地図を指差した。

 

「風呂屋なのだろう」

 

「はい」

 

「丁度いい」

 

「何が!?」

 

「乳頭大浴場を直せ」

 

「なんでネーミング毎回変わるんだよ」

 

ディア風呂は地図を覗き込んだ。

 

「……これは」

 

ビーチクも横に立つ。

 

「どうだ我が乳頭温泉計画」

 

「配管の思想は悪くありません。ただし源泉を直接繋ぐ場合、この地盤では三日で腐ります」

 

「フン、当然だ」

 

ビーチクが即答した。

 

「だから旧式では一度冷却槽を噛ませていた」

 

「なるほど」

 

ディア風呂が初めて少し感心した顔をする。

 

「……ご慧眼です」

 

「我を誰だと思っている」

 

「 乳 首 大 公 」

 

「スペース挟んでんじゃねえよ」

 

二人はもう俺を無視して図面を見始めていた。

 

「温泉の温度は四十二度が最適解です」

 

「いや、四十六度じゃないと乳首が育たん」

 

「なるほど…」

 

「納得する要素どこだよ」

 

その会話を聞いてクラウディがゆっくり立ち上がった。

 

「温泉か」

 

「なんかお前は食いつくと思ったよ」

 

「妾、先に入ってよいか?」

 

「ぶっ壊れてるつってんだろ!」

 

「湯がないなら妾の精液とかでよかろう」

 

「キモこの四大竜」

 

その日の午後。

 

街の復旧率は十二パーセント。

 

浴場区画。

 

二百八十パーセント。

 

「数字おかしいだろ!!」

 

「拡張したので」

 

「復旧なのに元より増えてる!!」

 

ビーチクとディア風呂の相性が、最悪な意味で良すぎた。

 

ビーチクが乳頭浴槽の位置を決める。

 

ディア風呂が地獄から湯を引く。

 

ビーチクが乳首導線を直す。

 

ディア風呂が『永久追い焚き』を掛ける。

 

「永久追い焚きってなに?」

 

ベニマルだけは最後まで警戒を解かなかった。

 

「主殿へ危害を加えるつもりはないのか」

 

ディア風呂は一瞬だけ考えた。

 

「目覚めさせてくださった恩人ですので」

 

「おお」

 

「少なくとも、私が殺す理由はありません」

 

「“少なくとも”を付けるな」

 

「あと貴方は精子垂らしてますので」

 

「意味わかんねえよ」

 

夕方。

 

住宅区ではまだ瓦礫が積まれていた。

 

食料庫は仮設。

 

治療所も仮設。

 

なのに。

 

「完成です」

 

俺の前には。

 

巨大な門。

 

立派な石畳。

 

白い湯気。

 

露天風呂。

 

内湯。

 

休憩所。

 

牛乳専門売店。

 

乳首訓練所。

 

「ぶっ壊してぇ」

 

「命令ならば遠慮なく」

 

ディア風呂が指を鳴らす。

 

消える。乳首訓練所。

 

「何故だァァァァァァァァ”ァ”ァ”ァ”ァ”!」

 

「景観を損ないますので」

 

「ざまぁ」

 

だが門の上には、ビーチクが誇らしげに掲げた看板。

 

超乳首絶頂温泉・金玉の湯

 

「看板だけ今からでも燃やしていい?」

 

「それは最重要文化財だ」

 

「今日できたばっかだろ!!」

 

その時、湯船の奥から声がした。

 

「遅かったのぉ」

 

クラウディが既に浸かっていた。

 

「お前いつから入ってた!?」

 

「途中からじゃ」

 

「それだと工事中だろ!!」

 

「邪魔なのでクラウディさんには三回ほど移動をお願いしました」

 

ディア風呂が答える。

 

「あいつ動いたのか?」

 

「いいえまっっっっっっっったく」

 

「でしょうね」

 

湯船の縁にはクラウディの太い白い尻尾が乗っている。

 

本人は完全に居座る気だった。

 

「妾、ここに住む」

 

「帰れ」

 

「居住権も取得した」

 

「ある訳ねえだろ」

 

ビーチクが腕を組む。

 

「ならば問題ない。浴場の稼働率も上がる」

 

「こいついさせたら精液まみれだろ」

 

「湯は良いぞ、リムル」

 

クラウディが手招きする。

 

「疲れておるのじゃろ」

 

「……まあ、それは」

 

「なら入れ」

 

確かに。

 

疲れた。

 

死んで。

 

戻って。

 

三人を戻して。

 

魔王になって。

 

戦争の後始末して。

 

原初の悪魔が風呂から来た。

 

もう何も考えたくない。

 

「……入るか」

 

「主殿!?」

 

「今日はいいだろベニマル!!」

 

「めちゃくちゃ怪しい原初の悪魔が管理している浴場ですよ!?」

 

「もういいんだよ!!」

 

「そうだぞリムル」

 

クラウディの横にオーク将軍が湯に浸かっていた。

 

「なんでお前既に誰よりも街に馴染んでるんだよ」

 

服を脱ぎながら、俺はディア風呂を見る。

 

「変なことすんなよ変態悪魔」

 

「もちろんです」

 

「本当だな?」

 

ディア風呂は湯加減を確かめ、静かに頷いた。

 

「今の反応……精子垂らしてますね」

 

「黙れ」

 

俺は湯に浸かった。

 

「不思議なものだなリムル」

 

隣にいた将軍が俺を見る。

 

「何が?」

 

「昨日までは敵だった貴様と、今は同じ湯にいる」

 

「いいだろ。そういうのもさ」

 

「ああ……満足だ」

 

「オークロードのモノマネやめい」

 

その夜。

 

チンポリスの復興は、ほとんど進まなかった。

 

ただし温泉だけは。

 

翌朝から満員になった。

 

つづく……

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