※この作品はR-18です。

精子垂らす   作:超絶ゆるふわ乙女

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第39話|目指せ観光都市!!人間も魔物も温泉入れば大体友達!!

 

翌朝。

 

チンポリスは朝から騒がしかった。

 

戦争が終わって、まだ一日しか経っていない。

 

壊れた家は至るところに残り、道には瓦礫が積まれたままだ。

 

治療所からは怪我人の声も聞こえてくる。

 

それでも、街のあちこちからは笑い声が聞こえていた。

 

「そこ持てー!」

 

「せーの!」

 

「死ねオラァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

ゴブリンとオークが一緒になって、大きな材木を運んでいる。

 

つい昨日まで敵だった奴らだ。殺し合っていた相手と肩を並べて、今は同じ材木を持ち上げている。

 

「もう少し右だ!」

 

「こうか?」

 

「違う!お前の右じゃない!」

 

「俺の右とお前の右は同じだろ!!」

 

「馬鹿しかいねぇのか」

 

少し離れた場所では、オークの子供とゴブリンの子供が狼族の背中に二人で乗り、楽しそうに走り回っていた。

 

「もっと速くー!」

 

「ワォォォォン!!」

 

「曲がれー!」

 

「ワォン!!」

 

「止まらんかぁぁぁぁぁ!!!」

 

止まらない。

 

「言うこと聞いてねぇじゃん」

 

そのまま三人は藁の山へ突っ込んだ。

 

「……すげぇな」

 

俺はその光景を眺めながら、少しだけ立ち止まった。

 

戦争が終わったからといって、全部がすぐ元通りになるとは思っていなかった。

 

ましてオーク達は昨日まで敵だったんだ。街の奴らが受け入れるには、もっと時間がかかると思っていた。

 

「リムル殿ー!」

 

向こうからリグルドが走ってくる。

 

「どうした」

 

「オークの皆様が復興作業を手伝ってくださるそうです!」

 

「おお」

 

「その代わり条件が」

 

「条件出せる立場かよあいつら」

 

リグルドが振り返ると、オーク達が一斉にこちらを見た。

 

「三食ステーキ」

 

「ぶっ飛ばすぞ」

 

その後ろからオーク将軍が歩いてきた。

 

「すまんな、ウチの馬鹿共が」

 

「なんかさ」

 

俺は頭を掻きながら、もう一度街を見渡した。

 

「ここ、みんなが仲良くできる国になるんじゃないか?」

 

オーク将軍が目を細める。

 

「既になっているのではないか」

 

「いやまあ、それはそうなのかもしれない」

 

街はまだ小さいし、あちこち壊れている。国なんて呼べるほど立派な場所でもない。

 

それでも、昨日まで敵だった連中が一緒に笑っている光景を見ていると、少しくらい先のことを考えてもいい気がした。

 

「魔物だけじゃなくてさ。人間も来られるようにできないかな」

 

将軍が俺を見る。

 

「人間を?」

 

「ああ」

 

「無理」

 

「諦めはっっや」

 

戦争と、人間と、あの銃弾が一瞬だけ頭をよぎる。

 

けれど、全部の人間があいつらみたいなわけじゃない。それに俺が作りたいのは、最初からそういう場所だった。

 

「人間も魔物も普通に来て」

 

「飯食って、買い物して」

 

「射精して、精子垂らす頃には……」

 

「まぁ魔物もそんな変わんねぇなって思ってもらえるような――」

 

「下劣スライム」

 

背後から声がして、嫌な予感がした。

 

振り返ると、ビーチクが俺の前へ歩いてくる。

 

「貴様は一つ勘違いしている」

 

「何を?」

 

「国とは」

 

ビーチクが自分の乳首を指差した。

 

「乳首だ」

 

「帰ってもらっていい?」

 

「話は最後まで聞け!!」

 

珍しく怒られた。

 

「乳首だけがあっても人は生きられん」

 

「そりゃそうだろ」

 

「乳輪が必要だ」

 

「何の話?」

 

「乳首を中心に乳輪が広がる。乳輪を中心に肉体が広がる。そして肉体を包む服がある」

 

「この話まだ続くの」

 

ビーチクは構わず街を指差した。

 

「街も同じだ」

 

「え?」

 

「中心となるものが必要だ」

 

俺は昨日完成した温泉へ目を向ける。

 

超乳首絶頂温泉・金玉の湯。

 

「中心があれば人が集まる。人が集まれば店ができる」

 

「道ができ、宿ができ、物流が生まれる」

 

「そして外から来た者が金を落とす」

 

俺は黙ってビーチクを見た。

 

「……お前」

 

「何だ」

 

「もしかして普通に観光都市の話してる?」

 

「最初からそう言っている」

 

「乳首の話しかしてなかったよ!?」

 

ビーチクは鼻を三十回鳴らした。

 

「貴様は王になったばかりだから分からんのだ」

 

「何が」

 

「我の乳首だけを見ていては国は作れん」

 

「俺一回もお前の乳首見てねぇよ!!」

 

「乳輪や乳頭まで見ろ」

 

「嫌だよ!!」

 

ビーチクは俺の肩へ手を置いた。

 

「いずれ分かる。王とはすなわち乳首だからな」

 

「魔王やめようかな」

 

そんな会話をしている間にも、昨日完成した温泉には既に長蛇の列ができていた。

 

「……マジで繁盛してる」

 

入口の番台には、黒い燕尾服に白いタオルを首へ掛けた二本角の男が座っている。

 

原初の悪魔、ディア風呂。

 

「いらっしゃいませ。大人一名ですね」

 

「タオルはこちらを。足元には精液が垂らされておりますので、滑らないようお気をつけください」

 

普通に働いていた。

 

「昨日来たばっかなのに馴染みすぎだろ!!」

 

ディア風呂がこちらを見る。

 

「おはようございます」

 

「おはようじゃないよ!」

 

「では」

 

ディア風呂が頭を下げる。

 

「おはちんこ」

 

「そこじゃねえよ!」

 

「昨日の売上ですが」

 

「売上!?」

 

ディア風呂は木札の横から帳簿を取り出した。

 

「想定の二・七倍です」

 

「お前もう経営してんの?」

 

「風呂屋ですので」

 

「原初の悪魔だよね?」

 

「副業です」

 

「副業で悪魔やってんの!?」

 

その横を、風呂上がりのオークが通り過ぎる。

 

「精液にまみれた良い湯だった」

 

「ありがとうございました」

 

「また来る」

 

「お待ちしております」

 

後ろからはゴブリン、鬼人、狼族、オークが次々と同じ入口から出てきた。

 

ビーチクが腕を組む。

 

「見ろ」

 

「何を?」

 

「人とは乳首だ」

 

「人だよ!!」

 

「同じことだ」

 

「全然違う!!」

 

とはいえ、ビーチクの言いたいことは分かった。

 

昨日まで殺し合っていた奴らが、今日は同じ湯に浸かり、同じ場所で牛乳を飲んでいる。

 

俺は温泉を眺めながら呟いた。

 

「……観光都市、案外いけるかもな」

 

その時、温泉の入口へ一人の男が現れた。

 

フェラチオだ。

 

いつも通り堂々と歩いてくる。

 

「朝風呂と洒落込むか」

 

「お前風呂入るんだ」

 

「当然だ。我の美しい肉体と素晴らしい口淫技術を維持するためには必要だからな」

 

「フェラだけしてる奴だと思ってた」

 

「貴様は余を何だと思っている」

 

フェラチオが入口をくぐり、番台へ向かう。

 

そこでディア風呂と目が合った。

 

「…………」

 

「…………」

 

止まった。

 

ディア風呂が微笑む。

 

「おはようございます」

 

「……うむ」

 

また沈黙。

 

何この空気。

 

「フェラチオ?」

 

「なんだ」

 

「入らないの?」

 

「入る」

 

そう答えたのに動かない。

 

「入れよ」

 

「今入ろうとしている」

 

「五秒くらい止まってるよ」

 

「竜にとって五秒など一瞬だ」

 

「なんかお前、昨日からこいつの前だと大人しくない?」

 

「全く気のせいだ」

 

即答だった。

 

ディア風呂が木札を一枚取る。

 

「フェラチオ様」

 

フェラチオの肩がほんの僅かに動いた。

 

「……なんだ」

 

「本日は」

 

少し間を置いてから、ディア風呂が笑顔のまま続ける。

 

「『普通に』ご入浴ですか?」

 

「…………」

 

「なんだよその質問」

 

フェラチオはディア風呂を睨んだが、向こうは相変わらず笑っている。

 

「ええ。それなら何よりです」

 

「……貴様」

 

「はい?」

 

「…………なんでもない」

 

フェラチオは金を置いた。

 

「釣りはいらん」

 

「足りてませんが」

 

「…………」

 

「おいフェラチオ」

 

「黙れ」

 

「絶対なんかあるだろお前ら!!」

 

フェラチオは逃げるように浴場へ消えていった。

 

ディア風呂は楽しそうにその背中を見送っている。

 

「……何したのあいつ」

 

「さあ……あ、フェラチオ様の不足分もお願いしますね」

 

「絶対知ってるじゃん!あと俺持ちかよ!」

 

「三千年も生きておりますと、色々ありますので」

 

「お前昨日三千年ぶりに目覚めたんじゃないの?」

 

「はい」

 

「嘘ばっかお前」

 

ディア風呂は何も答えず、次の客へタオルを渡した。

 

まあいい。今考えるべきはフェラチオの過去ではなく、観光都市のことだ。

 

その日の昼、俺は再び会議を開いた。

 

今度の議題は一つ。

 

「人間が来られる観光都市にしたい!」

 

パチパチパチと拍手が起こる。

 

「いいと思います!」

 

シュナが笑った。

 

「人間との交流が増えれば、私達魔物の陰核理解も深まるかもしれません」

 

「聞いたことない概念出てきた」

 

「問題があります」

 

ベニマルが手を挙げた。

 

「なんだ?」

 

「観光都市にしては目立つ国名です」

 

「…………」

 

全員が黙った。

 

俺はゆっくり窓の外を見る。

 

門には堂々と書いてある。

 

チンポリス。

 

「…………やばくね?」

 

誰も否定しなかった。

 

「人間呼ぶんだぞ?」

 

「はい」

 

「チンポリスに?」

 

「はい」

 

「家族旅行とかで?」

 

「はい」

 

「お父さん今年どこ行くのー?って聞かれて」

 

俺は両腕を広げた。

 

「チンポリスだよ!!って答えんの?」

 

沈黙。

 

「終わってるだろ!!」

 

リグルドが勢いよく立ち上がった。

 

「お待ちくださいリムル殿!」

 

「なんだよ!」

 

「名前など些細な問題です!」

 

「めちゃくちゃ大事だよ!!」

 

「そもそも決めたのはリムル殿ではありませんか!」

 

「満場一致だったろうが!!」

 

ビーチクが頷く。

 

「些細な問題、という点は一理ある」

 

「お前は黙ってろ乳首大公」

 

「世界には奇妙な名の国などいくらでもある」

 

「例えば?」

 

「ファブリーズ大国とかジュポの国とか」

 

「ゴミ国家多すぎる」

 

すると後ろにいたソウエイが手を挙げた。

 

「そういえば」

 

「ん?」

 

「人間の国に、アナルナメス王国という国があるらしいです」

 

「…………」

 

再び部屋が静まり返った。

 

俺は椅子へ座り直す。

 

「アナルナメス?」

 

「はい」

 

「王国?」

 

「はい」

 

「実在するの?」

 

「既に射精と同時に確認済みです」

 

俺は顎へ手を当てた。

 

チンポリス。

 

アナルナメス王国。

 

しばらく考えてから、一つの結論に辿り着く。

 

「……いけるな」

 

ベニマルが勢いよく振り返った。

 

「ゴリ押しするんですか!?」

 

「チンポリスいけるよ!!」

 

「何故!?」

 

「人間側が既にアナルナメスで国家運営できてんだぞ!?」

 

俺は机を叩いた。

 

「魔物サイドだけ恥ずかしがる必要ねぇだろ!!」

 

「張り合う部分そこなんですか!?」

 

リグルドも力強く頷く。

 

「むしろ親近感がありますな」

 

「だろ!?」

 

「チンポリスとアナルナメス」

 

「仲良くできそう!!」

 

「国際関係を下ネタの語感で決めないでください!!」

 

シュナが困ったように笑っている。

 

「ですが、本当に陰核タイプである人間の方々が来てくださるなら、素敵ですね」

 

俺は理解を諦めて頷いた。

 

「ああ」

 

温泉がある。飯もある。

 

これから宿を作って、店を増やして、道も整える。

 

魔物だけじゃなく、人間も、エルフも、ドワーフも、誰でも来たい奴が普通に来られる街にする。

 

「よし!」

 

俺は立ち上がった。

 

「決めた!!」

 

全員が俺を見る。

 

「チンポリスを、人間も魔物も遊びに来られる観光都市にする!!」

 

歓声が上がり、オーク達が拳を上げる。ゴブリン達も笑っていた。

 

そこへシオンが勢いよく立ち上がる。

 

「リムル様!!」

 

「なんだ!」

 

「生観光客向けに私が名物料理を考えます!!」

 

「もう既にやめろ!!」

 

「何故ですか!?」

 

「国際問題になる!!」

 

続いてビーチクも立ち上がる。

 

「ならば我は街道沿いに我の巨大乳首像を建造する」

 

「国を壊さないでよぉ〜」

 

「観光名所だ」

 

「一応ここ俺の国な?」

 

オーク将軍が腕を組む。

 

「俺達は宿を作ろう」

 

「おお!頼む!」

 

「とにかく人間を差別することに拘った宿だ」

 

「誰が来たいんだよそんな国」

 

クラウディは机へ突っ伏したまま、手だけを挙げた。

 

「妾はこの国の観光大使になる」

 

「働く気ある?」

 

「ない」

 

「不採用」

 

「ではご当地グルメになる」

 

「食えんの!?」

 

天井から逆さにぶら下がっていたモリ夫まで口を挟む。

 

「旦那ァ!」

 

「お前は何すんの?」

 

「観光客の財布をひたすら盗――」

 

「国外追放」

 

「まだ最後まで言ってませんぜ!?」

 

「最後まで聞く必要ねぇよ!!」

 

本当に騒がしい。

 

けれど、俺はこの騒がしさが好きだった。

 

昨日まで敵だった奴らがいる。昔からいる奴らもいる。

 

意味の分からない竜もいれば、乳首大公もいる。

 

三千年寝ていた原初の悪魔まで、いつの間にか番台で働いている。

 

そんな連中が、今は全員同じ街にいる。

 

だったらきっと、ここからもっと増やしていける。

 

俺は机の上に広げた地図を見る。

 

「まずは人間にも、この街のことを知ってもらおう」

 

「どうやってです?」

 

「触れ込むんだよ。道を作って、商人に伝えて、噂を広げる」

 

ここには魔物の街がある。けれど、怖い場所じゃない。

 

飯があって、温泉があって、馬鹿みたいに騒がしくて、誰でも来られる。

 

そんな街があることを、外の奴らにも知ってもらう。

 

「よし」

 

俺は笑った。

 

「宣伝開始だ!!」

 

「おおー!!」

 

まだ屋根の直っていない会議室から声が上がり、そのまま青い空へ大きく響いていった。

 

こうして魔物の国チンポリスは、人間を迎え入れるための新しい一歩を踏み出した。

 

目指すのは、種族なんか関係なく誰もが笑って過ごせる国。

 

そして、誰もが気軽に遊びに来られる世界一楽しい観光都市だ。

 

その第一歩として、街道沿いには巨大な看板が設置された。

 

『ようこそ!!観光都市チンポリスへ!!』

 

俺は完成した看板を見上げた。

 

隣ではベニマルとシュナも同じように見上げている。たまたま通りかかったオーク将軍まで足を止めた。

 

しばらく誰も口を開かなかった。

 

俺は腕を組み、改めて看板を眺める。

 

「……やっぱ国名変えない?」

 

リグルドが看板へ抱きついた。

 

「絶対に嫌です」

 

「なんでそんなチンポリスに誇り持ってんだよ!!」

 

つづく……

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