※この作品はR-18です。

精子垂らす   作:超絶ゆるふわ乙女

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第40話|人間国家アナルナメス王国!?頭がおかしいのは国名だけじゃなかった!!

 

チンポリスが観光都市を名乗り始めてから、数日が経った。

 

その頃、人間国家アナルナメス王国。

 

王都の中央には、初代国王の尻を模した巨大な石像がある。

 

高さは十二メートル。尻の割れ目から噴き出した水が、八方向へ伸びる水路を通って王都全体へ供給されていた。

 

国民はこれを『建国の肛門』と呼び、毎朝その日の健康と国家の繁栄を祈る。

 

その周囲には、大小さまざまな尻の像が百八十五体並んでいた。

 

百八十四体までは歴代国王、英雄、聖職者を記念して建てられた由緒あるものだ。

 

残る一体については誰も知らない。

 

先週、突然増えていた。

 

現在、肛門書記局が所有者を捜している。

 

そんな王都の一角。

 

壁面いっぱいに歴代肛門聖騎士の尻拓が飾られた教会で、一人の少年が絶望していた。

 

「…………」

 

手元には、昨日ようやく正式に帯びることを許された聖騎士の剣。

 

そして今朝渡された一枚の登録証。

 

『肛門聖騎士・ナメト』

 

「…………」

 

少年は黙って裏返した。

 

裏面には尻を模した王国の紋章が刻まれている。

 

もう一度表へ戻す。

 

『肛門聖騎士・ナメト』

 

「ハインリッヒさん」

 

「はい」

 

隣に立っていた金髪の聖女が振り返った。

 

黒を基調としたシスター服に身を包み、胸元には銀色の肛門十字章を下げている。

 

この一年、異世界からやって来た少年の面倒を見てきた恩人、ハインリッヒだ。

 

「俺、昨日何に合格しましたっけ」

 

「聖騎士試験です」

 

「ですよね」

 

「正確には第二種肛門聖騎士試験ですが」

 

「初耳なんですけど」

 

「試験前に伝えると辞退者が増えますので」

 

「制度側も分かってるじゃないですか!!」

 

少年の名はナオト。

 

一年前、日本からこの世界へ飛ばされ、右も左も分からないまま教会へ拾われた異世界人である。

 

一年間の修行を経て、昨日ついに聖騎士試験へ合格した。

 

ようやく自分にも、この世界で生きていくための居場所ができた。

 

そう思っていた。

 

「肛門聖騎士って何なんですか」

 

「由緒ある称号ですよ」

 

「由緒で肛門を正当化しないでください」

 

「第三代肛門聖騎士は、単独で魔族二百体を討伐したと記録されています」

 

「そこだけ聞いたら普通に英雄なのが一番嫌なんですよ!」

 

ナオトは教会の壁を見た。

 

第三代肛門聖騎士の尻拓だけ、他より三倍ほど大きい。

 

「あと、俺はナオトです」

 

「ええ」

 

「ナメトになってます」

 

「本当ですね」

 

「今気づいたんですか!?」

 

「いえ、昨日から気づいていました」

 

「言ってくださいよ!」

 

ハインリッヒは登録証を覗き込み、穏やかに微笑んだ。

 

「ですが、ナメトも良い名だと思います」

 

「本気ですか?」

 

「肛門との響きが自然ですし」

 

「ハインリッヒさん!?」

 

一年間この人はずっとまともな人だと思っていた。

 

教会の人間が尻拓へ祈りを捧げている時も、この人だけは静かに聖典を読んでいた。

 

王都の子供達が『尻穴の数え歌』を歌っている時も、この人だけは困ったように笑っていた。

 

だから勝手に仲間だと思っていた。

 

違った。

 

この人も、この国の人間だった。

 

「変更できませんか」

 

「できますよ」

 

「できるんかい」

 

「肛門書記官の許可が必要です」

 

「もう役職名に嫌な予感しかしない」

 

教会の外から、鐘の音が鳴った。

 

正午を知らせる鐘だ。

 

同時に街中の尻像が一斉に口を開き、腹の底へ響く低い声で時刻を告げた。

 

『十二時です。国民の皆様、肛門を清潔に保ちましょう』

 

「なにあれ」

 

「もう1年もいたら慣れるでしょう」

 

「無理です……」

 

その時、教会の扉が開いた。

 

「誰が私を呼んだ」

 

大量の書類を抱えた男が入ってくる。

 

地味な服装。

 

疲れた顔。

 

腰には剣ではなく、赤、青、黄、三色の印鑑を下げていた。

 

肛門書記官ケツエンド。

 

この王国の行政、記録、経費、切れ痔、始末書、石像の登録数を一手に管理する有能な官僚である。

 

ケツエンドは入ってくるなり、教会の床に置かれていた募金箱を見た。

 

『第百八十六尻像建立基金』

 

「新しいケツ像は却下したはずだ」

 

神父が奥から答える。

 

「既に四割程、資金は集まっております」

 

「王都のケツは百八十五までだ」

 

ナオトは思わず口を挟んだ。

 

「上限あったんですか!?」

 

ケツエンドが少年を見る。

 

「昨日合格した新人か」

 

「はい! ナオトです!」

 

「ナメトだな」

 

「ナオトです」

 

「書類上はナメトだ」

 

「間違ってるんですよ!」

 

「書類は間違えん」

 

「書いた人間が間違えるんですよ!!」

 

ケツエンドは書類を一枚めくった。

 

「申請者氏名、ナオト。登録担当者の記入、ナメト。登録責任者の承認、ナメト。聖騎士名簿への転記、ナメト。既に四名が確認している」

 

「四人全員間違えてるじゃないですか!」

 

「変更申請は可能だ」

 

「本当ですか!?」

 

「まず現名義で三年間活動し、旧名使用実績証明書を提出しろ」

 

「三年間ナメトとして生きるんですか!?」

 

「その後、肛門聖騎士名義変更届、聖職者名義同一性証明書、騎士籍訂正申請書、尻印再登録届を提出する」

 

「理解の範疇超えたんでいいです」

 

ケツエンドは淡々と続ける。

 

「なお、肛門の変更はできん」

 

「もういいって言ってんだろ」

 

「肛門を軽々しく変更されると行政が混乱する」

 

「俺が混乱してるんですよ!」

 

ナオトは登録証を胸元へしまった。

 

「もうナメトでいいですってだから」

 

「諦めるのですか?」

 

ハインリッヒが不思議そうに首を傾げる。

 

「これ以上奥へ進んだら戻れない気がします」

 

「もう既に肛門聖騎士ですよ?」

 

「進み切ってたわ」

 

ケツエンドは興味を失ったように別の書類を取り出した。

 

「それよりハインリッヒ。英雄殿が戻った」

 

「アルベルトが?」

 

「ああ。王城の右尻棟へ出頭している」

 

「王城に右尻棟あるんですか?」

 

「左尻棟もある」

 

「中央は?」

 

「割れ目だ」

 

「キモすぎるこの国」

 

「設計者は二百年前に死んだ」

 

「墓壊したい」

 

ハインリッヒが歩き出す。

 

「行きましょう、ナメト」

 

「ナオトです」

 

「大丈夫すぐ慣れますよ」

 

「慣れたくありません」

 

―――

 

王城へ続く大通りの途中には、四人の英雄像が並んでいた。

 

先頭に立つのは、銀色の髪を持つ中性的な勇者。

 

その隣には、小柄なエルフの剣士。

 

杖を掲げた賢者と、深いフードを被り、聖杖を携えた僧侶が後ろに続いている。

 

台座には、それぞれの名が刻まれていた。

 

『伝説の白濁勇者 セルトゥム=インペルト』

 

『剣士 ライク=リフト』

 

『賢者 アナルディウス』

 

『僧侶 クレア』

 

「……アナルディウス?」

 

ナメトは三つ目の名前を二度見した。

 

「由緒正しき大賢者です」

 

ハインリッヒが真顔で答える。

 

「尻穴みたいな名前ですけど」

 

「由緒正しき大賢者です」

 

押し切られた。

 

ナメトは諦めて、最後の像へ視線を移した。

 

「この人は、姓がないんですね」

 

「本人が名乗らなかったそうです」

 

「じゃあ、どうしてクレアという名前だけ?」

 

「像を造る際、名もなき僧侶では困ると説得され、渋々それだけ伝えたと記録されています」

 

「渋々……」

 

「それ以前の記録では、ほぼ全て『僧侶さん』です」

 

「歴史書で“さん”付けされてる英雄、初めて見ました」

 

フードの僧侶像は、他の三人より少しだけ後ろに立っていた。

 

表情は穏やかだったが、その足元だけ、なぜか巨大な魔物の頭蓋を踏み砕いていた。

 

「……本当に僧侶ですか?」

 

「治療術の名手だったそうです」

 

「聞いたことと見えてるものが噛み合わないんですけど」

 

「勇者パーティではよくあることです」

 

「怖いな、伝説の勇者パーティ」

 

王城の前には、王都最大の尻像広場がある。

 

百八十五体のうち、七十二体がこの場所へ集中していた。

 

歴代国王の像。

 

伝説の英雄の像。

 

王国へ莫大な寄付をした商人の像。

 

尻だけで魔族を窒息させたという修道女の像。

 

その中央を通る道には『右曲がり大通り』と名が付けられ、途中から緩やかに左へ曲がっている。

ナオトが右曲がりじゃねえのかよ指摘すると、ハインリッヒは「予算不足です」とだけ答えた。

 

王城、右尻棟。

 

「確認する」

 

赤髪の男が、処分通知書を片手に立っていた。

 

白を基調とした燕尾服。

 

目の下には薄いクマ。

 

この国で英雄と呼ばれる異世界人。

 

本名アルベルト。

 

通称アナルベルト。

 

この世界へ来て、およそ十年。

 

「謹慎七日」

 

「減俸一ヶ月」

 

「豚戦争への独断介入に関する始末書」

 

アナルベルトは通知書を一段下へずらした。

 

「王都の尻像清掃、一週間」

 

アルベルトは最後の項目を見る。

 

「ケツ叩き百回」

 

紙を机へ置いた。

 

「ケツ叩き百回程度ならまぁ……」

 

十年。

 

十年もこの国にいると、こうなる。

 

アナルベルトは既に、制度そのものへ疑問を持つ段階を通り過ぎていた。

 

街に尻像が一体増えていても、先週まで百八十四体だったことを覚えている自分を褒める程度で済ませている。

 

「安心しろ」

 

右尻棟に入室してきたケツエンドが言う。

 

「執行官は選べる」

 

「誰でも嫌だろ」

 

「男性、女性、アナルアサシン、筋力特化型、技巧特化型から選択可能だ」

 

「アナルアサシンてなに?」

 

部屋の隅から、小さな音が漏れた。

 

「……ふっ」

 

アナルベルトが視線を向ける。

 

窓際に一人の女が立っていた。

 

アナルナメス王国の暗部。「カリ・フラワー」だった。

 

豚戦争へ介入した際、アルベルトと共に行動していた女である。

 

「何の用だ」

 

「いえ」

 

カリ・フラワーは澄ました顔で首を振った。

 

「王国の英雄が公衆の面前でケツを百回打たれる、極めて厳粛なカリ処罰ですもの。笑うなど」

 

「公衆の面前なのこれ」

 

ケツエンドが頷く。

 

「公開処罰だ」

 

「やばすぎるだろ」

 

カリ・フラワーは処分通知書を覗き込んだ。

 

「尻を差し出す際は、真正面ではなく、わずかに右曲がりをおすすめいたしますわ」

 

「何故だ」

 

「右曲がりの方がソリが美しいからです」

 

アナルベルトは黙った。

 

カリ・フラワーは大真面目だった。

 

「ただ前へ差し出すだけでは、カリとは呼べません。僅かに右へ曲がることで生まれる緊張と余白。そこに美が宿るのです」

 

「いや何も聞いていないんだけど」

 

「対してソリは、打撃を受けた瞬間に腰を――」

 

「聞いていない」

 

「美は沈黙から生まれませんわ」

 

扉が開いた。

 

「アルベルト」

 

ハインリッヒが入ってくる。

 

アナルベルトは少しだけ安堵した。

 

「ハインリッヒ」

 

「処分が決まったそうですね」

 

「ああ」

 

ハインリッヒは通知書を確認した。

 

「ケツ叩き百回」

 

「読むな」

 

「大丈夫です」

 

「何がだ」

 

「治療魔法は得意ですから」

 

「受ける前提で話すな」

 

「腫れも裂傷も翌朝には治せます」

 

「裂傷まで想定するな」

 

「患部の陰核理解も済ませておきます」

 

「なにそれ」

 

十年。

 

十年もこの国にいると、深追いしない方がいい言葉を判別できるようになる。

 

その後ろからナオトも顔を出した。

 

「あ、アナルベルトさん!」

 

アナルベルトは少年の胸元を見る。

 

『肛門聖騎士・ナメト』

 

「合格したのか」

 

「はい! 昨日、聖騎士試験に――」

 

「肛門聖騎士だ」

 

ケツエンドが訂正する。

 

「どっちでもいいでしょう!?」

 

「違う」

 

「何が違うんですか!?」

 

「聖騎士は教会の管轄だ。肛門聖騎士は教会、衛兵局、公共衛生局の共同管轄になる」

 

「公共衛生局!?」

 

「肛門を名乗る以上、衛生は避けて通れん」

 

「俺は何を守る騎士なんですか!?」

 

「国民だ」

 

「言葉だけ立派にするな!」

 

アルベルトは何も言わなかった。

 

十年前の自分を見ているようだった。

 

カリ・フラワーが微笑む。

 

「ナメト様も、いずれ立派なカリを持つ亀頭騎士になられますわ」

 

「なんの話し?」

 

ケツエンドが机を軽く叩く。

 

「話を戻すぞ」

 

全員が静かになった。

 

名前も役職も景観も狂っているが、仕事が始まれば真面目になる。

 

それがアナルナメス王国だった。

 

「豚戦争終結後の魔物側について、新しい情報が入った」

 

アナルベルトの目つきが変わる。

 

「何があった」

 

「オークの残存勢力の多くが、あの魔物の国へ合流した。現在は復興作業へ参加している」

 

「昨日まで殺し合っていた相手を受け入れたのか」

 

「ああ」

 

ケツエンドは別の資料を机へ置いた。

 

表紙には、商人が書き写したらしい大きな文字がある。

 

『観光都市チンポリス 種族問わず歓迎』

 

「さらに、人間を呼び始めた」

 

ナオトが瞬きをする。

 

「魔物の国が観光ですか?」

 

「ああ」

 

「戦争が終わったばかりなのに?」

 

「ああ」

 

「精液温泉もある」

 

ハインリッヒが資料へ身を乗り出した。

 

「精液温泉?」

 

「そこに食いつくのか」

 

アナルベルトが見る。

 

「美肌には重要ですよ、アルベルト」

 

「絶対身体によくないだろ」

 

「それに裸になれば、人間も魔物も防御力は大差ありません」

 

「絶対そういう目的の施設じゃない」

 

「では、武器を持たない状態での相互陰核理解を――」

 

「もういい」

 

カリ・フラワーも資料を覗き込む。

 

「魔物と裸の交流……。左曲がり右曲がりの隔たりを越えるには、良い試みですわ」

 

「左右で種族を分けるな」

 

ケツエンドが宣伝文句を読み上げる。

 

「『種族問わず歓迎』『温泉あり』『抜きあり』『誰でも遊びに来られる観光都市』。現在、商人を通じて周辺国家へ情報が流れている」

 

アナルベルトは資料を受け取り、最後に国名を見る。

 

『観光都市チンポリス』

 

誰も口を開かなかった。

 

カリ・フラワーだけが感心したように頷いた。

 

「チンポリス……良い名ですわ」

 

「何がですか!?」

 

ナオトが耐えきれずに聞いた。

 

「アナルナメス王国とチンポリス」

 

カリ・フラワーは微笑んだ。

 

「互いに足りないものを補い合っていますわ」

 

「外交を人体で考えないでください!」

 

ケツエンドが別の紙を取り出す。

 

「既に外交関係構築時の仮分類は作成した」

 

「仕事早すぎません!?」

 

「アナル・チンポ相互挿入条約」

 

「捨てろその書類!」

 

ナオトの叫びが右尻棟へ響いた。

 

アナルベルトは窓の外を見る。

 

魔物と人間の共存。

 

十年前なら、もっと単純に理想だと思えたかもしれない。

 

今は違う。

 

人間も魔物も、それほど綺麗な存在ではないと知っている。

 

だからこそ、昨日まで敵だったオークを受け入れ、人間を街へ呼ぼうとしている魔物の国を、自分の目で見る価値はある。

 

「……チンポリス、か」

 

つづく……

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