※この作品はR-18です。

精子垂らす   作:超絶ゆるふわ乙女

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第41話|初めての観光客!!人間を呼んだら魔王まで来たんだが!?

 

同じ頃。

 

観光都市チンポリス。

 

「来ない」

 

俺は門の前で腕を組んでいた。

 

「来ないですね」

 

隣にいたベニマルが頷く。

 

「なんで?」

 

「逆に何故すぐ来ると思ったんです?」

 

観光都市を名乗り始めて数日。

 

ドワフゴンの商人にも宣伝を頼んだ。

 

街道沿いにはビーチク制作の看板も置いた。

 

人間を差別に特化したオーク将軍宿も建てている。

 

精液温泉もある。

 

生まんこ飯もある。

 

門の左右には、昨日まで存在しなかった巨大な乳首型の街灯まで立っている。

 

「これ誰が建てたの?」

 

「ビーチクです」

 

「撤去して」

 

「夜間の視認性が従来の三倍です」

 

「無駄に有能なの腹立つな」

 

乳首の先端から放たれる淡い光が、街道を遠くまで照らしている。

 

門の上には大きく『観光都市チンポリス』と書かれ、その両脇には『金玉から入り、乳首から帰れ』という標語が掲げられていた。

 

意味は分からない。

 

発案者のビーチクだけは「観光の循環を示している」と説明していた。

 

俺は理解を諦めた。

 

「人間が一人も来ない!」

 

「当たり前でしょう。数日前まで戦争していた魔物の国ですよ」

 

「でもディア風呂の温泉あるよ?」

 

「原初の悪魔への信頼が厚すぎません?」

 

俺は門の外を眺めた。

 

誰もいない。

 

遠くに鳥が飛び、その下には『あと三キロで乳頭大浴場』と書かれた案内板が立っている。

 

「各国への宣伝が足りないのか?」

 

「その可能性はありますね」

 

「よし。宣伝を強化しよう」

 

「具体的には?」

 

前世ならテレビやネットがあった。

 

この世界では商人へ頼むか、街道に看板を置くくらいしか思いつかない。

 

なんかこの世界の住人、普通にスマホとか使ってる気もするが、きっと気のせいだろう。

 

既に看板は二十七枚置いた。

 

そのうち十一枚が、勝手にビーチクの肖像へ差し替えられていた。

 

「商人にもっと頼むか」

 

「それが無難でしょう」

 

「下劣スライム」

 

背後から聞き慣れた声がした。

 

振り返ると、ビーチクが新しい設計図を抱えて立っていた。

 

「話は聞かせてもらった」

 

「帰っていいよ」

 

「愚かな」

 

ビーチクは乳首街灯を見上げ、満足そうに頷いた。

 

「観光において最も重要なものは何だと思う」

 

「お前の作った乳頭温泉?」

 

「唯一無二の乳首だ」

 

「帰れ」

 

ビーチクが俺の肩を掴む。

 

「遠方から訪れる者は、その土地にしか存在しないものを求める。ならば、ここにしかない乳首を作ればよい」

 

「お前前回から言ってること変わんねーよ」

 

「我は王都中央への巨大乳首像建設を提案する」

 

「却下」

 

「高さは十五メートル」

 

「無理」

 

「内部は展望台」

 

「ちょっと楽しそうなのやめろ」

 

「乳輪部分にチンポリス土産物店を配置する」

 

「導線まで考えるな」

 

ベニマルが設計図を覗き込む。

 

「展望台から温泉街、宿泊区、商業区を一望できますね」

 

「評価しないでこんなの」

 

「ただし避難経路が不足しています」

 

「そこ!?」

 

ビーチクが腕を組む。

 

「非常時は乳頭からロケット射出すればよい」

 

「人を何だと思ってんだ」

 

「金づる」

 

「最悪すぎる」

 

俺は周囲を見渡した。

 

「そうだ。人間が来る前に、接客担当を決めよう」

 

俺はベニマルを見る。

 

「必要ですね」

 

巨大乳首像の建設許可を求めるビーチク。

 

生まんこ唐揚げなるもの作成しようとするシオン。

 

乳首街灯の根元で眠るクラウディ。

 

屋根の上で『観光客用』と書かれた菓子を勝手に食べるモリ夫。

 

人間用宿泊施設の入口へ、『人間専用』と『人間以外専用』の二つの看板を同時に立てようとしているオーク将軍。

 

温泉の前では、ディア風呂が完璧な笑顔で客へタオルを渡していた。

 

「本日の湯は少々精液濃度が高くなっております。足元が滑りやすいため、ご注意ください」

 

「ありがとう、精液の兄ちゃん」

 

「風呂屋の兄ちゃんです」

 

俺とベニマルは同時にディア風呂を見た。

 

「お前しかいねぇ!」

 

「何故、原初の悪魔が我が国で最も接客に向いているのですか!?」

 

ディア風呂がこちらを見る。

 

「お呼びでしょうか?」

 

「人間が来たら、お前がチンポリスの観光案内してくれない?」

 

「構いませんよ」

 

「即答!」

 

「人間であれ魔物であれ、お客様はお客様ですので」

 

「まともだ……」

 

「リムル様、原初の悪魔に安心感を覚えないでください」

 

でも事実だろ。

 

こいつ数日前に来たばかりなのに、既にこの国で五本の指に入る社会性を持っている。

 

「妾も接客くらいできるぞ」

 

クラウディが乳首街灯の根元から顔を上げた。

 

「本当?」

 

「うむ。客が来たら、妾が温泉まで案内してやろう」

 

「おお」

 

「歩くのは疲れるゆえ、客に妾を背負わせる」

 

「要介護じゃねえか」

 

「案内料として金は頂くがの」

 

「これで金とるのエグすぎる」

 

「では我が――」

 

「お前は何もするな」

 

ビーチクが不満そうに腕を組む。

 

「貴様らは我を何だと思っている」

 

「乳首しか発言しない危険人物」

 

「思想が終わってる乳首バフォメット」

 

「変態」

 

「国の重要人物」

 

最後だけオーク将軍だった。

 

全員が振り返る。

 

「お前、ビーチクのことそんな評価してんの?」

 

「復興計画の大半をこいつが組んでいるからな」

 

「そうなんだよなぁ……」

 

乳首の話題さえ出さなければ死ぬほど有能なのだ。

 

「人間用の差別宿も、もうすぐ一棟完成する」

 

オーク将軍が街の一角を指差した。

 

三階建ての立派な建物だった。

 

外見も落ち着いている。

 

玄関上部にオーク将軍の彫刻があること以外は、普通の宿だ。

 

「今回は普通だな」

 

「ああ。その代わり人間の宿代は魔物の5倍だ」

 

「差別がとどまるところを知らない」

 

「代わりに、人間が宿泊すると泊まってる魔物は外で寝ることになる」

 

「何で!?」

 

「差別を無くす平等の為だ」

 

「お前言ってることめちゃくちゃじゃねえか」

 

「難しいな、人間との共存は」

 

「そういうことじゃねえよ平等は」

 

なんで昨日まで敵だったオークへ、人間との共存を教えているんだ俺は。

 

その時。

 

「旦那ァ!死ねやァァァ!!」

 

上から声がした。

 

モリ夫が屋根から飛び降り、そのまま俺の肩へ着地する。

 

「うわっ!何すんだよ!」

 

「街道に人影ですぜ!」

 

「え?」

 

周囲の動きが止まった。

 

「人影?」

 

「へい。こっちへ向かってますぜ」

 

「商人じゃない?」

 

「荷馬車はありませんでしたぜ。徒歩で七人ほど」

 

「冒険者?」

 

「剣を持ってる奴もいますが、尻の像を背負ってる奴もいますぜ」

 

「何?」

 

「小さいケツ像ですぜ」

 

俺はベニマルを見る。

 

ベニマルも俺を見る。

 

「人間?」

 

「人間でしょうね」

 

「観光客?」

 

「少なくとも、尻像を背負った侵略者ではないと思います」

 

次の瞬間、俺は飛び上がった。

 

「来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「落ち着いてください!」

 

「人間来た!」

 

「まだ観光客とは限りません!」

 

「ビーチク!」

 

「何だ下劣スライム」

 

「お前の巨大乳首隠せ!」

 

「我が身体に恥ずべき箇所などない」

 

「クラウディ!」

 

返事がない。

 

見る。

 

寝ていた。

 

「こいつはもういい!」

 

街が一気に騒がしくなった。

 

ゴブリン達が道に落ちていた木材を片付け、オーク達が工事を止める。

 

リグルドは、どこから持ってきたのか大量の白い花を門の周囲へ並べ始めた。

 

「リグルド!?」

 

「歓迎の花ですよリムル殿」

 

「なんで全部輪っかにして置くの!?」

 

「ビーチク殿の指示で、乳輪を表現しております!」

 

「全部捨てろ」

 

シュナも駆けてきた。

 

「リムル様。人間の方々がいらっしゃると伺いました」

 

「そうなんだよ」

 

「お茶をご用意しますね」

 

「今すぐ頼む!」

 

まともだ。

 

やっぱりシュナはまともだった。

 

「人間用の陰核茶でよろしいでしょうか?」

 

「何それ!?」

 

やっぱり駄目かもしれない。

 

「来ましたぞ!」

 

リグルドが叫ぶ。

 

全員が門を見る。

 

街道の向こうから、確かに人影が近づいてくる。

 

七人。いや、子供を含めたら八人か。

 

先頭には旅装の若い男。

 

その後ろには剣を帯びた冒険者風の女。

 

小さな尻像を背負った老人。

 

巨大な温度計を持つ男。

 

子供を連れた母親。

 

全身に土産物らしい札を貼り付けた商人。

 

最後に、桃色の髪をした小柄な少女が歩いていた。

 

先頭の若い男は、門の前まで来ると緊張した様子で俺達を見た。

 

その後ろの老人は門柱の装飾を見て、露骨に顔をしかめる。

 

「ケツがない」

 

「いきなり何!?」

 

老人は背負っていた小さな尻像を地面へ下ろした。

 

「観光都市を名乗るなら、最低でも門前にケツが三体は必要だ」

 

「何の基準!?」

 

「アナルナメス王国観光景観基準だ」

 

「そんな基準知らねぇよ!」

 

巨大な温度計を持った男は、温泉から流れてくる湯を指先で触り、眉をひそめた。

 

「精子の滑りは悪くない」

 

「何を測ってる!?」

 

「湯質だ」

 

「温度計持ってるだろ!」

 

母親は子供の肩へ手を置いた。

 

「ご挨拶なさい」

 

子供がビーチクへ頭を下げる。

 

「乳首大公様、本日はお招きいただきありがとうございます」

 

ビーチクが満足そうに頷く。

 

「礼儀を知る人間だ」

 

「何でお前を知ってんの!?」

 

母親が答える。

 

「旅の案内書に載っていました」

 

商人が一冊の本を差し出した。

 

『一度は拝みたい世界の乳首百選』

 

表紙にビーチクがいた。

 

「え、なにこれは……」

 

「今月号です」

 

「宣伝成功してんじゃねぇか!」

 

先頭の若い男だけが、申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「すみません。全員、王都から来たもので」

 

「お前だけはまともなんだな」

 

「でもチンポリスって名前はちょっと……」

 

「いきなりダメ出しかよ!」

 

俺はベニマルを見た。

 

「人間ってもっと普通じゃなかった?」

 

「全員アナルナメス王国から来たそうです」

 

「じゃあ仕方ないか」

 

それなら多種多様の人間がいてもおかしくは無い。ほんとにそうか?

 

俺は気を取り直し、一歩前へ出た。

 

「ようこそ、チンポリスへ!」

 

言った。

 

人間相手に、初めて堂々と言った。

 

チンポリスへようこそ。

 

観光客達は一斉に巨大な看板を見上げる。

 

『ようこそ!観光都市チンポリスへ!!』

 

老人が首を傾げた。

 

「字が真っ直ぐすぎる」

 

「え」

 

温泉評論家が頷く。

 

「名称は良い。アナルナメス王国やジュポの国との接続性が高い」

 

「何の接続だよ!」

 

母親が子供へ教える。

 

「チンポリスへ入る時は、右尻から入りなさい」

 

「なんで?」

 

「本当に魔物が普通に喋っている……」

 

先頭の男が感心したように呟いた。

 

「今更そこに驚くの!?」

 

「魔物の宣伝なので半分は嘘かと思っていました」

 

「信用ねぇなぁ魔物の国」

 

それでも、人間達は門をくぐった。

 

ゴブリンを見る。

 

オークを見る。

 

狼族を見る。

 

四大竜を見る。

 

巨大な乳首街灯を見る。

 

宿の玄関にあるオーク将軍の彫刻を見る。

 

「思ったより普通だな」

 

先頭の男が呟いた。

 

「どこが!?」

 

その時。

 

「おおー!」

 

人混みの後ろから大きな声がした。

 

桃色の髪をした小柄な少女が、門の上の看板を見上げている。

 

「チンポリス!」

 

大声で読んだ。

 

「良い名なのだ!」

 

少女は胸を張った。

 

「父上も、国の名は性癖と威厳が一度に伝わるものが良いと言っていたのだ!」

 

「どういう家庭教育だよ」

 

「違うのか?」

 

少女は本気で首を傾げた。

 

「違うと思う」

 

「そうなのか。父上は城の正門にも巨大な小陰唇を二つ置いていたぞ」

 

尻像を背負った老人が反応する。

 

「二つ?」

 

「左右に一つずつなのだ!」

 

老人は震えた。

 

「完璧な均衡だ……」

 

「なんで理解者いるんだよ」

 

少女はケラケラ笑いながら門へ近づいてくる。

 

「ここには温泉があると聞いたのだ!」

 

「あるよ」

 

「うまい飯も?」

 

「ある」

 

「強い奴も?」

 

「観光目的変わってない?」

 

「全部なのだ!」

 

元気な奴だ。

 

少女は俺の周りを一周し、顔を近づけた。

 

「お前がこの国で一番偉い奴か?」

 

「一応、この国の王をやってる」

 

「ほう。王ならお前の乳首は何個あるのだ?」

 

「普通に二個だよ!」

 

ビーチクが一歩前へ出た。

 

「王とは乳首だ」

 

「違う」

 

少女は勢いよく頷いた。

 

「うむ!」

 

「分かるな!」

 

ビーチクの目が輝く。

 

「ほう。貴様、分かるか」

 

「王が乳首なら、魔王は乳輪なのだ!」

 

ビーチクが息を呑んだ。

 

「……貴様話せるな」

 

「認めるなよ」

 

少女はビーチクの乳首を見上げる。

 

「良い乳首だな!」

 

「分かるか」

 

「父上も似たものを持っていたのだ!」

 

「父親何者!?」

 

「性癖竜なのだ!」

 

俺は聞かなかったことにした。

 

この世界では、深掘りすると戻れなくなる単語が多すぎる。

 

「名前は?」

 

「ワタシか?」

 

少女は胸を張った。

 

「ワタシはミリムなのだ!」

 

「ミリムね。俺はリムル」

 

「リムル!」

 

ミリムは少し考え、嬉しそうに笑った。

 

「ミリムとリムル!なんか似てるのだ!」

 

「仲良くなれそうだな!リムル!」

 

距離の近い奴だ。

 

初対面なのに、まるで昔から知っているみたいに笑う。

 

妙な奴だけど、不思議と嫌な感じはしなかった。

 

その時だった。

 

「……ほう」

 

背後から声がする。

 

フェラチオだ。

 

さっきまで欠伸をしていたくせに、今は珍しくミリムを見ている。

 

「何?」

 

「いや。懐かしい性癖の匂いがして来ただけだ」

 

「嗅覚に性癖を追加するな」

 

フェラチオはミリムを眺め、僅かに口元を緩めた。

 

「親父に似てきたな、小娘」

 

俺はフェラチオを見る。

 

「知ってるの?」

 

「さてな」

 

「今親父に似てるって言ったよな?」

 

「性癖竜の娘など、世界にいくらでもいる」

 

「いてたまるか!」

 

少し離れた場所では、クラウディも起き上がっていた。

 

いつもの半目。

 

いつもの面倒くさそうな顔。

 

ただ、金色の瞳だけが真っ直ぐミリムを見ている。

 

「クラウディも知ってるの?」

 

「さてのお」

 

「お前ら揃って何なんだよ」

 

クラウディは小さく笑う。

 

「しかし、父親よりは話が通じそうじゃ」

 

「これで!?」

 

「父親は城の壁すべてに己の性癖を彫らせておったからのお」

 

「見たら視力失いそう」

 

ミリムが胸を張る。

 

「父上の性癖城は凄かったのだ!」

 

まあいい。

 

今は初めて来てくれた観光客だ。

 

正体が何であれ、歓迎するという方針は変わらない。

 

「じゃあミリム。街を案内するよ。温泉も飯も抜きもあるし」

 

「本当か!?」

 

「ああ」

 

「やったのだ!じゃあ抜き!」

 

「エロガキすぎる」

 

「腹が減っては性癖も育たんのだ!」

 

「父親の教育絶対おかしい」

 

「リムル様!」

 

背後から声がした。

 

嫌な予感がする。

 

ものすごく嫌な予感がする。

 

振り返る。

 

シオンがいた。

 

満面の笑み。

 

両手には大きな鍋。

 

中では、この世に存在していいのか判断に困る色をした何かが蠢いていた。

 

紫、緑、黒。

 

中心部分だけ、脈打っている。

 

「ちょうど完成しました!」

 

「何が?」

 

「観光客の皆様へ振る舞う、チンポリス名物料理です!」

 

観光客達が一斉に後ずさった。

 

温泉評論家だけが料理へ器具を近づける。

 

「温度、九十二度」

 

「測らなくていい!」

 

「料理名は何ですかな?」

 

尻像の老人が尋ねる。

 

シオンは自信満々に答えた。

 

「魔物と人間の共存煮込みです!」

 

鍋の中で、何かが弾けた。

 

「共存できてない音したぞ!」

 

「隠し味に陰核茶を使用しております」

 

シュナが補足する。

 

「お前も関わってんの!?」

 

「うまそうなのだ!」

 

横を見る。

 

ミリムの目が輝いていた。

 

「食べていいのか!?」

 

「待て」

 

「いただきますなのだ!」

 

「待て待て待て待て!」

 

ミリムが皿へ手を伸ばす。

 

シオンが嬉しそうに差し出した。

 

「どうぞ!」

 

「渡すなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

観光都市チンポリス。

 

人間の観光客受け入れ初日。

 

開始数分。

 

早くも最初の犠牲者が出ようとしていた。

 

ただ一つ。

 

この時の俺は知らなかった。

 

俺が必死になって救おうとしているこの少女が、人間ですらないことを。

 

ましてや、魔王ミリム=ナーヴァ。

 

そんな化け物みたいな肩書きを持つ奴だなんて、知るはずもなかった。

 

「早く食わせるのだ!」

 

「死ぬぞ!」

 

「父上は『梅毒も性癖のうち』と言っていたのだ!」

 

「お前の父親どうなってんだよ!」

 

「梅毒とは失礼ですよリムル様!」

 

「じゃあシオンが先に食え!」

 

「私は皆様のために作りましたので!」

 

「逃げんな!」

 

初めての観光客を迎えたチンポリスは、今日も平和だった。

 

多分。

 

つづく……

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