※この作品はR-18です。

精子垂らす   作:超絶ゆるふわ乙女

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第42話|初めての外交!!最後まで帰らなかったクソガキが魔王だったので同盟を結ぼうとしたら殴りかかってきたんだが!?

 

「すなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

俺のスーパーマリオくん叫びも虚しく、ミリムはシオンから鍋を受け取った。

 

紫。

 

緑。

 

黒。

 

どの色も料理にあっていい色ではない。

 

中央では、名前も知らない何かが規則正しく脈打っている。

 

「いただきますなのだ!」

 

「待て!」

 

ミリムが匙を突っ込んだ。

 

鍋の中から何かが鳴いた。

 

「今鳴いたよ!?」

 

「生で新鮮な証拠です!」

 

「生きてんじゃねぇか!!」

 

ミリムは気にせず、匙いっぱいの共存煮込みを口へ運んだ。

 

全員が見守る。

 

人間達も。

 

ゴブリンも。

 

オークも。

 

いつの間にか温泉から出てきた客達まで、固唾を飲んで見守っていた。

 

数秒。

 

ミリムの動きが止まる。

 

「…………」

 

「ミリム?」

 

返事がない。

 

やばい。

 

死んだ?

 

初めての観光客をシオン生料理で殺した?

 

戦争が終わって数日で国際問題?

 

俺は慌ててミリムへ駆け寄った。

 

「大丈夫か!?」

 

ミリムの目が見開かれる。

 

「うまいのだ!!」

 

「嘘だろ!?」

 

ミリムは物凄い勢いで共存煮込みを食べ始めた。

 

鍋の中で何かが悲鳴を上げる。

 

それでも止まらない。

 

「この紫色の部分が特にうまいのだ!」

 

「そこ脈打ってた場所だよ!?」

 

「おかわり!」

 

「はいィィィィィ!」

 

シオンの顔が輝いた。

 

「私の生料理を、こんなに喜んでくださる方が……!」

 

「シオン、そいつ本当に人間か?」

 

「失礼ですよリムル様!」

 

温泉評論家が巨大な温度計を鍋へ差し込む。

 

「中心温度、九十八度」

 

「上がってる!?」

 

「食事によって活性化したようです」

 

「何が!?」

 

ミリムは鍋を抱え、最後の一滴まで飲み干した。

 

一滴。

 

というか、最後に残った黒い塊が自力で鍋の縁を登って逃げようとしていたが、ミリムが指で摘んで食べた。

 

「ごちそうさまなのだ!」

 

観光客達から拍手が起こった。

 

「JKの嘘松マック並の拍手喝采かよ」

 

母親は子供の目を手で覆っていた。

 

「よく見ておきなさい。あれが好き嫌いをしない立派な子です」

 

「見せるのか隠すのかどっちかにして」

 

シオンは空になった鍋を抱え、感動で肩を震わせていた。

 

「ミリム様……」

 

「なんだ?」

 

「私、貴女のためなら毎日でも料理を作ります!」

 

「本当なのだ!?」

 

「やめろ」

 

外交どころか、国家を滅ぼす契約が結ばれようとしている。

 

俺は二人の間へ割って入った。

 

「ミリム。悪いことは言わないから、シオンの料理は二度と食べるな」

 

「何故だ?」

 

「死ぬから」

 

「ワタシは最強だから死なんのだ!」

 

「子供はみんなそう言うんだよ!」

 

周囲を見る。

 

人間達は最初こそ怯えていたが、シオン料理を完食したミリムを見て随分と緊張が解けたらしい。

 

ほんとに怯えてたか?

 

魔物への警戒より、目の前の少女に対する恐怖が勝っていた。

 

それはそれでどうなんだ。

 

「と、とりあえず」

 

俺は手を叩いた。

 

「チンポリスを案内するよ。せっかく来てくれたんだし」

 

「待っていたのだ!」

 

ミリムが俺の背中へ飛び乗る。

 

「うわっ!?」

 

「出発なのだ!」

 

「歩けよ!」

 

「観光客なのだ!」

 

「観光客は王に乗らない!」

 

「妾も乗る」

 

いつの間にかクラウディが隣に立っていた。

 

両腕を広げている。

 

「何そのポーズ」

 

「早う背負え」

 

「お前は住民だろ!」

 

クラウディは不満そうに半目を細めた。

 

「差別かの?」

 

「観光客と住民の区別だよ!」

 

「やはり難しいな、人間との共存は」

 

オーク将軍が頷く。

 

「お前まで混ざるなよ」

 

結局、ミリムは俺の背中から降りなかった。

 

スライムの背中ってどこだよ。

 

そんな疑問を抱えながら、俺達はチンポリスの観光案内を始めた。

 

最初に向かったのは、超乳首絶頂温泉・金玉の湯。

 

入口ではディア風呂が、いつも通り完璧な笑顔でタオルを配っている。

 

「いらっしゃいませ。本日は人間のお客様ですね」

 

「はい」

 

先頭の若い男が緊張しながら金を差し出す。

 

ディア風呂は受け取った硬貨を確かめ、木札を一枚渡した。

 

「男湯は右、女湯は左です。混浴をご希望の場合は、死んでください」

 

「死ぬの!?」

 

「エロガキは皆、死刑です」

 

「エロガキに厳しすぎだろ」

 

ミリムは入口の看板を見上げていた。

 

『本日の精液濃度 二百四十パーセント』

 

「我が城の湯より濃いのだ!」

 

「なんでどこも精液温泉があるんだよ」

 

温泉評論家が腕を組む。

 

「二百四十パーセントか」

 

「何を基準に百パーセントなの?」

 

「一般的な成人男性一名分だ」

 

「聞くんじゃなかった」

 

評論家は湯を小瓶へ採取し、光へ透かした。

 

「粘度、透明度、射精後の余韻。いずれも高水準だ」

 

「余韻が高水準てなに?」

 

ディア風呂が静かに頭を下げる。

 

「余韻評価ありがとうございます」

 

「意味わからん褒め言葉を受け入れるな」

 

尻像の老人も浴場の柱を撫でていた。

 

「建築は悪くない」

 

「そうだろ?」

 

何故か俺が誇らしくなった。

 

「ただしケツ浴場要素が足りん」

 

「お前さっきからずっとそれだな!」

 

老人は背負っていた小さな尻像を柱の横へ置いた。

 

「この温泉に寄贈する」

 

「いらない」

 

ビーチクが横から像を眺める。

 

「金玉の湯にケツ像……悪くない」

 

「お前も評価するな」

 

「入口から番台への視線を一度切る効果がある」

 

「ケツ像に誘導切り効果あんの?」

 

「ただし高さが足りん。三倍にしろ」

 

「巨大化させるんじゃねえ」

 

老人とビーチクは、その場で尻像の設置位置について話し始めた。

 

老人は尻。

 

ビーチクは乳首。

 

会話は一切噛み合っていないはずなのに、建築の話だけは成立している。

 

「ここに乳輪状の台座を置く」

 

「その中央にケツを置くのがベストじゃ」

 

「それだと乳頭が死ぬ」

 

「だがケツが生きる」

 

「意味わからん戦争始めんな!」

 

その間に、人間達は恐る恐る浴場へ入っていった。

 

最初は魔物と同じ湯に入ることへ抵抗があったらしい。

 

しかし数分後。

 

「クソザコ人間のナメクジ兄ちゃん、背中流すぞ!」

 

「とんでもない暴言聞こえてきたが頼む!」

 

ゴブリンと若い男が普通に並んで座っていた。

 

オークと冒険者風の女は、湯の温度について真剣に議論している。

 

狼族の尻尾を子供が勝手に洗い、母親が必死に謝っていた。

 

「すみません子供が!」

 

「ワォン!」

 

「喜んでるな」

 

「喜んでねえよ」

 

「普通に喋れるのかよ!」

 

尻像の老人だけは湯船の中央に小さな尻像を浮かべていた。

 

「何してんの?」

 

「水上建築試験だ」

 

「持ち込むな!」

 

何だかんだで、楽しんでくれている。

 

それを見ていると、少しだけ胸が温かくなった。

 

昨日まで、人間と魔物が同じ湯へ入る光景なんて想像もできなかった。

 

けれど実際に裸になれば、ゴブリンもオークも人間も大して変わらない。

 

いや、オークはかなり違う。

 

でも細かいことだ。

 

「リムル!」

 

湯船の中央からミリムが手を振った。

 

「こっち来るのだ!」

 

「俺は案内中!」

 

「では妾が案内を代わる」

 

クラウディが湯船へ沈んだまま言う。

 

「お前もう入ってるじゃん!」

 

「温泉の案内なら、中からした方が早い」

 

「観光客が来る前からいたよね?」

 

「妾が入っておるから、他の者は出ていけ」

 

「観光客なのに!?」

 

人間達が一斉にクラウディを見る。

 

クラウディは半目のまま顎を上げた。

 

「妾は一人で入りたい」

 

「じゃあお前が出ろよ」

 

「嫌じゃ」

 

「最悪の常連客」

 

ディア風呂が浴場の外から声を掛ける。

 

「クラウディ様。他のお客様へ退店を要求する場合、貸切料金が発生します」

 

「リムルが払う」

 

「俺!?」

 

「妾の主じゃろ」

 

「都合のいい時だけ主にするな!」

 

結局、クラウディは湯船の隅へ移動した。

 

三歩分だけ。

 

本人は大きく譲歩したつもりらしい。

 

温泉の次は商業区へ向かった。

 

まだ完成していない店も多いが、屋台や露店は既に並び始めている。

 

串焼き。

 

果物。

 

木彫りの狼族。

 

オークが作った巨大な革靴。

 

デーモンの召喚。

 

マンモスの墓場。

 

究極完全体グレートモス。

 

そして何故か、ビーチクの乳首を模した飴。

 

「これ誰が作ったの?」

 

「我だ」

 

「お前商品開発までしてんの」

 

「一つ銀貨二枚」

 

「高い」

 

「本物の我の乳首から型を取った」

 

「情報を付け足すな!」

 

ミリムがビーチク飴を二本手に取る。

 

「コレ面白いのだ!」

 

「買うの!?」

 

「うむ!」

 

ビーチクは満足そうに金を受け取った。

 

「見る目があるな、竜人の娘」

 

「お前も話が分かるのだ!」

 

二人が握手する。

 

嫌な同盟が結ばれた。

 

「ミリム」

 

「なんだ?」

 

「それ舐めるの?」

 

「飴だから当然なのだ!」

 

フェラチオが少し離れた場所で顔をしかめた。

 

「乳首飴とは品がない」

 

「お前が言う!?」

 

「絶対陰茎飴のがよかった陰茎飴」

 

「どっちも品がねえよ」

 

フェラチオはミリムに興味がないように振舞っていた。

 

けれど、さっきから妙に視線だけは向けている。

 

何なんだこいつ。

 

知り合いなのか。

 

聞いてもどうせ答えない気がする。

 

商人はビーチク飴を大量に仕入れていた。

 

「このゴミ売れるの?」

 

「アナルナメス王国では乳首大公様の知名度が急上昇しています故に」

 

「いや何で!?」

 

「今月の『世界の乳首百選』で特集されましたので」

 

「この世界って終わってない?」

 

ビーチクは胸を張る。

 

「当然の評価だ」

 

「お前、こんな取材いつ受けたの?」

 

「記者が勝手に我を遠くから見ていた」

 

「盗撮じゃねぇか!」

 

「大いなる美は隠せん」

 

「巨大乳首しまえ!」

 

その後も、人間達は街を歩いた。

 

ゴブリンの工房を見学し、オークの宿で部屋を確認し、狼族の背中へ乗って街道を走った。

 

オーク将軍の宿では、受付に大きく料金表が掲げられていた。

 

『魔物 一泊銀貨一枚』

 

『人間 一泊銀貨五百枚』

 

若い男が固まる。

 

「高すぎないですか?」

 

オーク将軍が腕を組む。

 

「まぁ、差別だからな」

 

「堂々と言うな」

 

「ただし人間が泊まる場合、魔物二名が生贄になる」

 

「何のために?」

 

「平等だ」

 

「何一つ平等じゃない」

 

冒険者風の女が部屋を確認する。

 

「でも設備は良いですね」

 

「当然だ。人間料金は五百倍だからな」

 

「理由を自白するな」

 

それでも女は予約を入れた。

 

「泊まるの!?」

 

「魔物二人が生贄になるところを見たいので」

 

「目的おかしくない?」

 

オーク将軍は初めての予約に嬉しそうだった。

 

俺は複雑だった。

 

夕方になる頃には、人間達の表情からすっかり緊張が消えていた。

 

門の前。

 

俺達は帰る人間達を見送るために並んでいた。

 

先頭の若い男が頭を下げる。

 

「最初は正直、怖かったです」

 

「まあ、魔物の国だしな」

 

「でも来て良かった」

 

男は街を振り返った。

 

ゴブリン達が手を振っている。

 

オーク達も手を上げる。

 

ディア風呂は温泉の入口から営業用の笑顔を向けていた。

 

「次は妻と娘も連れてきます」

 

「本当か!?」

 

「あ、俺独身ですけど」

 

「急にホラーになったな」

 

「作ってから来ます」

 

「人体錬成?」

 

冒険者風の女も笑った。

 

「宿の差別が改善されたら、また来ます」

 

オーク将軍が頷く。

 

「次は飯に人間の肉を用意する」

 

「悪化してるがな」

 

温泉評論家は小瓶を掲げた。

 

「湯は悪くない。精液濃度の安定性に課題はあるが、再訪の価値はある」

 

「普通に温泉として評価して」

 

母親と子供も頭を下げる。

 

「乳首大公様にもよろしくお伝えください」

 

「なんであいつ俺より有名なんだよ」

 

最後に尻像の老人は、背から降ろした尻像を指差した。

 

「ケツ像はここに置いていく」

 

「持って帰れよ」

 

「この国との友好の証だ」

 

「ぜっっっっったいいらない」

 

「名は『建国の肛門・分家』」

 

「本家どこなんだよ」

 

老人は俺の制止を無視し、門柱の横へ小さな尻像を置いて帰っていった。

 

撤去しよう。

 

絶対撤去しよう。

 

「ありがとうございました!」

 

人間達が手を振り、街道を歩いていく。

 

俺も手を振り返した。

 

初めての観光客。

 

色々あった。

 

本当に色々あった。

 

でも、何だかんだ楽しんで帰ってくれた。

 

「成功……したのかな」

 

「したのでは?」

 

ベニマルが隣で微笑む。

 

「国際交流として正しい形かは分かりませんが」

 

「そこは俺も分からん」

 

人間達の姿が遠ざかっていく。

 

俺は少しだけ息を吐いた。

 

これで第一歩だ。

 

人間と魔物が普通に会って、同じ湯に入り、同じ街を歩いた。

 

次はもっと多くの人間が来るかもしれない。

 

そのために、宿も店も道も整えなければならない。

 

問題は山積みだ。

 

それでも。

 

「リムル!」

 

背後から声がした。

 

「ん?」

 

振り返る。

 

ミリムがいた。

 

「…………」

 

俺は街道を見る。

 

帰っていく人間達。

 

もう一度、ミリムを見る。

 

「お前、帰らないの?」

 

「帰らんのだ!」

 

「何で!?」

 

ミリムは両腕を広げた。

 

「ワタシはこの国を気に入った!」

 

「それは嬉しいけど」

 

「飯はうまい!」

 

「シオンの料理だぞ!?」

 

「温泉も良い!」

 

「精液濃度二百四十パーセントだぞ!?」

 

「乳首の奴も話が分かる!」

 

「あいつの話わかるやついるんだ……」

 

ミリムは俺の前へ立ち、胸を張った。

 

「だから決めたのだ!」

 

「何を?」

 

「チンポリスとワタシの国は、今日から仲良しなのだ!」

 

「外交かっる」

 

「駄目か?」

 

ミリムが首を傾げる。

 

外交。

 

国と国の関係。

 

そんなものを、今日一日遊んだだけで決めていいのだろうか。

 

いや、駄目に決まってる。

 

でも俺達も人間との交流を求めている。

 

相手が友好的なら、断る理由はない。

 

「そもそも、お前の国ってどこなんだ?」

 

「『忘れられたオナホの国』なのだ!」

 

「…………」

 

風が吹いた。

 

門柱の横に置かれた小さな尻像が、カタカタと揺れる。

 

俺は観光都市チンポリスの看板を見上げた。

 

チンポリス。

 

忘れられたオナホの国。

 

しばらく比較する。

 

「……うちって、もしかしてまだマシなんじゃねぇか?」

 

「何がです?」

 

ベニマルが聞く。

 

「国名」

 

「一旦、判断を保留します」

 

「即答しないんだ」

 

その時。

 

俺の足元から影が伸びた。

 

黒い影の中から、ソウエイが静かに姿を現す。

 

「リムル様」

 

「うわっ!どうした?」

 

「調査が完了しました」

 

「調査?」

 

ソウエイはミリムを見る。

 

ミリムは二本の乳首飴を両手でぶん回し、交互に舐めていた。

 

フェラチオが露骨に嫌そうにしながら顔を背ける。

 

「こちらの少女についてです」

 

「ああ」

 

そういえば、正体が分からないから念のため調べるよう頼んでいた。

 

早いな。

 

「何か分かった?」

 

「はい」

 

ソウエイは淡々と告げた。

 

「この方が魔王ミリム・ナーヴァであるという情報は事実でした」

 

「…………」

 

俺はミリムを見る。

 

乳首飴。

 

桃色の髪。

 

鍋を丸ごと食ったクソガキ。

 

「誰?」

 

「魔王ミリム・ナーヴァです」

 

「いや聞こえたけど」

 

ベニマルの顔色が変わった。

 

「ミリム・ナーヴァ……!?」

 

「知ってるの?」

 

「単なる有名どころではありません!」

 

「有名じゃないんだ」

 

「ちげーよバカ!あまりにも有名なのです!」

 

ベニマルはミリムを見つめる。

 

「まさか、あの魔王がこのような少女の姿をしているとは……」

 

「そんなに凄いの?」

 

「『忘れられたオナホの国』を治める、最強の竜人の魔王です」

 

「説明の半分が頭に入ってこない!」

 

忘れられたオナホの国。

 

最強の竜人。

 

魔王。

 

重要そうな単語と最低な単語が同じ列に並んでいる。

 

「ソウエイ、本当なの?」

 

「はい。射精と同時に確認しました」

 

「何を!?」

 

「事実です」

 

「射精はどの情報に必要だったんだよ」

 

「儀式です」

 

「何の!?」

 

ソウエイは答えなかった。

 

影へ沈んでいく。

 

「待って!お願いだから説明して!」

 

消えた。

 

本当に何だったんだ。

 

俺は改めてミリムを見る。

 

「お前、魔王なの?」

 

「そうなのだ!」

 

「何で先に言わなかったの!?」

 

「魔王って言ってなかったか?」

 

「言ってない!」

 

「まぁ今言ったからいいじゃないか!」

 

「そういう問題じゃない!」

 

ミリムは悪びれた様子もない。

 

隣ではクラウディが欠伸をしている。

 

フェラチオは腕を組み、興味がないような顔で空を見ていた。

 

「お前ら」

 

俺は二人を見る。

 

「知ってたの?」

 

「当然知っておる」

 

クラウディが即答した。

 

「何で黙ってたんだよ!」

 

「説明するのが面倒じゃった」

 

「ワンチャン国が滅ぶかもしれない情報だよ!?」

 

「滅びそうになったら逃げる」

 

「役に立たねえ」

 

クラウディはもう目を閉じていた。

 

駄目だこいつ。

 

俺はフェラチオを見る。

 

「フェラチオも?」

 

「二度と会いたくなかったがな」

 

「苦手なの?」

 

「陰茎がない」

 

「当たり前だろ」

 

フェラチオは鼻で笑い、ミリムを一瞥した。

 

「昔からヤツは大して変わらん」

 

ミリムが振り返る。

 

「フェラチオ!」

 

「何だ」

 

「久しぶりなのだ!」

 

「そっか」

 

「ワタシは強くなったぞ!」

 

「まじで興味ないで〜す」

 

「冷たすぎない!?」

 

ミリムが頬を膨らませる。

 

フェラチオは視線すら合わせない。

 

しかし尻尾の先だけ、僅かに動いていた。

 

「もしかして昔戦ったのか?」

 

俺が聞く。

 

フェラチオの眉が動く。

 

「些細なことだ」

 

ミリムが笑う。

 

「昔は引き分けだったのだ!」

 

「余計なことを言うな」

 

「互角だったの!?」

 

「違う」

 

「引き分けなのだ!」

 

「黙れ、小娘」

 

「めちゃくちゃ気にしてるじゃん!」

 

フェラチオは殺気の混じった目で俺を見る。

 

「リムル」

 

「はい」

 

「小娘と引き分けなど四大竜の恥だ」

 

「怖っ」

 

ミリムに興味がないんじゃない。

 

昔互角だったのを死ぬほど気にしてる。

 

しかも多分、ミリムに陰茎がないから評価基準の外なのだ。

 

最低の因縁だった。

 

ビーチクだけは、正体を聞いても態度を変えなかった。

 

「なんだ魔王か」

 

「そうなのだ!」

 

「ならば話が早い」

 

ビーチクが設計図を広げる。

 

「『忘れられたオナホの国』から巨大乳首展望台への出資を求める」

 

「外交の第一声それ!?」

 

ミリムが設計図へ顔を近づける。

 

「乳頭から人がロケットみたいに飛び出すのか?」

 

「災害時などの非常時のみだ」

 

「絶対面白いのだ!」

 

「なに乗ってんのこいつら」

 

ビーチクとミリムが意気投合している。

 

魔王と乳首大公。

 

最悪の外交関係が、俺を無視して進んでいた。

 

「待て待て!」

 

俺は設計図を取り上げた。

 

「話を整理しよう!」

 

全員が俺を見る。

 

「ミリムは魔王」

 

「そうなのだ」

 

「忘れられたオナホの国を治めてる」

 

「うむ!」

 

「チンポリスを気に入った」

 

「気に入った!」

 

「だから友好的な関係を築きたい」

 

「その通りなのだ!」

 

ここまではいい。

 

国名以外は。

 

相手が魔王なのは驚いたが、敵対する気がないならありがたい。

 

むしろ、四大竜レベルの強い相手と友好関係を結べるなら、この国にとって大きな助けになる。

 

人間と魔物の共存を目指すなら、魔王だろうが竜人だろうが拒む理由はない。

 

「分かった」

 

俺は頷いた。

 

「俺も、ミリムの国とは仲良くしたい」

 

「本当か!?」

 

「ああ」

 

ミリムの顔が明るくなる。

 

「ただし、ちゃんとお互いの国について話し合って――」

 

「よし!」

 

ミリムが拳を握った。

 

「では、リムルがワタシと対等か確かめるのだ!」

 

「え?」

 

地面が割れた。

 

ただ拳を握っただけだ。

 

それだけで、ミリムの足元から亀裂が走り、門の外まで一直線に伸びていく。

 

乳首街灯が揺れた。

 

尻像の老人が置いていった『建国の肛門・分家』が倒れる。

 

「分家ェェェェェ!?」

 

「友達になるなら、強さを確かめるのは当然なのだ!」

 

「いや待ておかしいだろ理屈」

 

「忘れられたオナホの国の文化だ!」

 

「そんな文化廃れちまえ」

 

ミリムは楽しそうに笑っている。

 

冗談ではない。

 

さっきまでのクソガキと同じ顔なのに、身体から放たれる魔力がまるで違う。

 

空気が重くなる。

 

街全体が軋む。

 

俺の中でクンニ君が警告を鳴らした。

 

―――告、対象の魔素量は測定上限を超過しています―――

 

「上限超えてんの!?」

 

―――告、逃走を推奨します―――

 

「てかクンニ君久しぶりだなおい!」

 

ミリムが一歩前へ出る。

 

「構えるのだ、リムル!」

 

「嫌だよ!」

 

「安心しろ!痛いのは最初だけだ!」

 

「その言葉は嫌な予感しかしねえ!」

 

フェラチオが腕を組んだまま言う。

 

「やめておけ、ミリム」

 

「お?」

 

止めてくれるのか。

 

意外だ。

 

「リムルを殺したら死んじゃうよ」

 

「そりゃ殺したら死ぬだろ」

 

ミリムの目が輝く。

 

「それも面白そうなのだ!」

 

「サイコパス?」

 

クラウディが乳首街灯の根元で寝返りを打つ。

 

「戦うなら遠くでやれ」

 

「戦闘を止めろよお前は」

 

「温泉を壊したら殺す」

 

「俺温泉以下なんだ」

 

ビーチクは亀裂の入った地面を見下ろした。

 

「街道の基礎が歪んだ」

 

「そこ!?」

 

「修繕費は敗者が払え」

 

「もう戦う前提じゃん!」

 

誰も止めてくれない。

 

ベニマル達は武器を構えているが、相手が魔王だと知って動けずにいる。

 

シオンだけは鍋を抱えたまま、ミリムへ声援を送っていた。

 

「ミリム様!頑張ってください!」

 

「俺の部下だよね?」

 

「リムル様もついでに頑張ってください!」

 

「俺の方が雑なのなんでだよ」

 

ミリムは拳を構えた。

 

小さな身体。

 

細い腕。

 

それなのに、そこへ集まる力が尋常ではない。

 

空が暗くなる。

 

雲が裂ける。

 

遠くの山から鳥が一斉に逃げ出した。

 

「行くのだ!」

 

「待て!」

 

「待たん!」

 

「せめて街の外へ――」

 

ミリムが地面を蹴った。

 

姿が消える。

 

次の瞬間。

 

俺の目の前に、笑顔のミリムがいた。

 

「友達になるのだ、リムル!」

 

「友達の作り方が終わってるぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

魔王ミリム=ナーヴァ。

 

観光客として来たクソガキ。

 

忘れられたオナホの国を治める最強の竜人。

 

そして今。

 

俺へ全力で拳を振り抜こうとしている、友好的な外交相手。

 

こうしてチンポリス初の国家外交は。

 

互いの国について話し合うより先に。

 

殴り合いから始まった。

 

つづく……

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