※この作品はR-18です。

精子垂らす   作:超絶ゆるふわ乙女

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第55話|新人面接!!強敵現る!?その名は「ちんぴら」!!

 

「では、パトリシア=パイズリッドさん。まずは簡単な面接から始めよう」

 

「はい。よろしくお願いいたします」

 

簡単な面接。

 

そう言ったのは俺だ。

 

だが、机の向こうには俺のほかにベニマル、フェラリル、フェラチオ、クラウディ、ビーチク、ゴウン、アルベドまで並んでいた。

 

どこが簡単なんだ。

 

ちなみにアナルナメス王国側はまだ停戦協議と負傷者の確認で街に残っている。

 

アナルベルトは役所、ハインリッヒは治療所、ケツエンドは書類の山。

ナメトだけは、なぜか精液温泉へ行こうとしてベニマルに止められていた。

 

「それにしても面接官、多すぎない?」

 

「治安維持に関わる者が候補者を確認するのは当然です」

 

ベニマルは真面目に答える。

 

「あと暇だったからね俺」

 

ゴウンが続けた。

 

「お前は自国に帰れ」

 

「面接って聞いたら来たくなるじゃん」

 

「普通ならないよ」

 

ゴウンの後ろではアルベドが腕を組んでいる。さっきから彼女は、面接官というよりゴウンの隣を確保するために座っているようにしか見えなかった。

 

「では、質問を始めるぞ」

 

ベニマルが書類を手に取る。

 

「まず、これまでの経歴を教えてくれ」

 

パトリシアは緊張した様子で椅子に座っていた。白銀の髪に大きな魔女帽子。丁寧な受け答えと、おどおどした仕草だけなら、街の治安を任せるには少し心配になる。

 

昨日、盗賊の両脚をまとめて砕いていたことを除けば。

 

「夜魔族と長耳族の混血です。元傭兵団で制圧術師をしておりました」

 

「所属していた国は?」

 

「イングラシア王国です」

 

パトリシアはすぐ答えた。

 

それから、はっと口を押さえる。

 

「あっ……いえ、その、今は所属しておりません。個人としてこちらへ参りました」

 

「別に出身国を聞いただけだぞ」

 

「はい。聞かれたので正直に答えました」

 

「なんか今、秘密を漏らしたみたいな顔したけど」

 

「気のせいです」

 

「そうか」

 

彼女の視線が、俺の顔や後ろに立つベニマルへ何度か動いた。観察されているような、されていないような。面接だから緊張しているだけかもしれない。

 

「では、志望動機を聞かせてくれ」

 

「観光客と住民の皆様が、安心して過ごせる街を作りたいと思ったからです」

 

「おお、完璧じゃん」

 

昨日の第一印象から身構えていたけど、普通に話せばまともだ。

 

「犯罪者の皆様にも、安心して地面で過ごしていただけます」

 

「犯罪者側の安心まで考えなくていい!」

 

「では、自分の長所と短所を教えてくれ」

 

「長所は、争いを早期に終結させられることです」

 

「うん」

 

「短所は、早期に終結させすぎることです」

 

「同じじゃねえか」

 

パトリシアは自分でも反省しているらしく、申し訳なさそうに杖を抱えた。

 

「以前、口論が始まる前に双方を地面へ伏せさせてしまいまして」

 

「まだ争ってすらねえよ!!」

 

「予防です」

 

「治安維持を予防接種みたいに言うな!」

 

フェラリルが腕を組んだ。

 

「門は森の王である我ら狼族が守っている……貴様のような傭兵上がりに何ができる」

 

「新人イビりやめい」

 

俺がすかさず止めるが、フェラリルは構わず続けた。

 

「警備員ならば、生活習慣も重要だ。朝は何時に起きる」

 

「フェラリル、お前は何の面接をしてるの?」

 

「王たる者、人を見る時は生活から見る」

 

「六時頃です」

 

パトリシアが正直に答えると、フェラリルの耳がぴくりと動いた。

その顔だけで、なぜか面接に落とされそうな空気になる。怖い。

 

「遅い。マイナス10ポイント」

 

「そこ落とすポイントなの!?」

 

「王は五時に起きる。起床後の口臭管理はどうしている」

 

「毎食後に歯磨きを。寝る前には口腔洗浄もしております」

 

「じゃ採用」

 

「早い早い早い早い!」

 

「口臭を侮る者に、門は守れぬ」

 

「そこだけ妙に説得力あるの腹立つな……」

 

クラウディは椅子に座ったまま、半目でパトリシアを見た。

 

「妾の方が強い」

 

「それは当たり前だろ」

 

「採用されたら、妾の湯も巡回するのか?」

 

「必要であれば」

 

「湯船で騒ぐ者は?」

 

「一度注意します」

 

「聞かなければ?」

 

「沈めます」

 

それまで半分閉じていたクラウディの目が、ほんの少しだけ開いた。

 

「じゃ、採用」

 

「意気投合すんな!!」

 

「眠らせてから沈めますので、危険はありません」

 

「昨日、兵士を湯船に沈めてた奴と同じ理屈じゃねえか!」

 

フェラチオが身を乗り出した。

 

「余なら騒ぐ客など一舐めで静かにできる」

 

「お前は面接で自分の性癖を売り込むんじゃねえ」

 

「性癖ではない。実績だ」

 

「実績にするな」

 

「では、パトリシアよ。貴様ならどうする?」

 

「まず口頭で注意します。応じなければ、逃げられないように地面へ伏せさせます」

 

「……それ舐めるより堅実だな」

 

「褒められてます?」

 

「余もよく分からん」

 

「本人が分からないことを言うなよ」

 

ビーチクが図面を机へ広げる。

 

「警備員として、巨大乳首展望台の防犯設計を見て意見を述べよ」

 

「面接に図面持ち込むんじゃねえ。あと完成もしてねえ」

 

パトリシアは図面を覗き込んだ。

さっきまでのおどおどした雰囲気が消え、指先で導線をなぞり始める。

 

「見晴らしは良いですが、北側の導線に死角があります。侵入者がここから入った場合、警備員は二人必要です」

 

ビーチクの目が光った。

 

「ほう」

 

「一人が警告し、もう一人が脚を砕く」

 

「役割分担まで骨折なの!?」

 

「警告役が負傷した場合は、二人目が警告してから砕きます」

 

「砕くのを最後に回す気はあるんだな……」

 

「長引かせたくありませんので」

 

ビーチクは図面を畳んだ。

 

「なら採用」

 

「早い早い!まだ面接中!」

 

「防犯設計の才能がある」

 

「才能の使い方が怖いんだよ!」

 

「ならば、巨大乳首展望台の常駐警備を任せる」

 

「初日から乳首の砦に配属するな!」

 

「乳首の砦とか勝手に改名するな」

 

「どうでもいいだろ名前とか!」

 

⸻

 

面接の結論は出なかった。

 

そこで、実際に街を巡回してもらい、問題が起きた時の動きを見ることになった。

 

「何かあっても、まず話し合いだぞ」

 

「承知しました」

 

「本当にだぞ」

 

「はい。話し合いで相手が納得すれば、脚を砕く必要はありません」

 

「その認識で本当に大丈夫か?」

 

通りを歩き始めてすぐ、フェラリルが温泉街の土産屋の前で立ち止まった。店先に積まれているのは、湯気の立つ温泉まんじゅうだ。

 

「不審物確認だ」

 

「お前、森の王じゃなかった?」

 

「王自ら現場を見る」

 

「絶対まんじゅう食いたいだけだろ」

 

店主は困った顔をしながら、一つ差し出した。

 

「よろしければ、毒味をお願いできますか?」

 

「うむ」

 

フェラリルは威厳たっぷりにまんじゅうを咥え、数回噛んだ。

 

「……安全だ」

 

「美味い?」

 

フェラリルはもう一口食べた。

 

「安全だ」

 

「食レポ終わってる」

 

パトリシアは店主へ頭を下げた。

 

「ご協力、ありがとうございます」

 

「あ、はい」

 

「毒物混入、睡眠薬、呪詛、爆発物。食べ物は意外と危険なんです」

 

「温泉まんじゅうに!?」

 

「今回は問題ありません。フェラリル王が安全と判断しました」

 

「王の毒味が街の警備手順に組み込まれた」

 

「いまのは平和的だったな」

 

「はい。話し合いで解決しました」

 

「そもそも毒味必要ある?」

 

その直後、建物の陰から男達がぞろぞろ現れた。

 

先頭の男は、昨日地面に埋まった盗賊の頭領らしい。後ろには手下が十人ほど並び、全員が武器を持っている。

 

頭領は俺達を見て、口元を吊り上げた。

 

「へぇ。昨日は俺の部下を随分可愛がってくれたなぁ〜?」

 

「今も地面に可愛がられてます!」

 

少し離れた道端から、昨日埋められた手下の声が返ってきた。

 

まだ下半身が地面に埋まっていた。

 

「まだ埋まってたの!?」

 

「自力で出られると思ったんですが、地面が思ったより抱きしめてくれて……」

 

「土に甘えるな!」

 

頭領が一歩前へ出る。

 

「けぇ!!俺の名前はちんちんぴらぴら、略してちんぴら様だァ!」

 

ちんぴらと名乗る男は妙に誇らしげに胸を張った。

 

「略した後もほぼそのまんまじゃねえか!」

 

「覚えやすくていいだろうが!」

 

「覚えたくねえよ!」

 

「いいか、俺達はこの街の観光客から金目のものを盗むために――」

 

「普通に犯罪だよな?」

 

「時と場合によってはな!」

 

「場合によっても盗みは犯罪だよ!」

 

頭領が剣を抜いた。

 

手下達も一斉に武器を構える。

 

「そこの女を差し出せ!昨日の落とし前をつけさせてもらう!」

 

パトリシアは一歩前へ出た。

 

「お話し合いを希望されますか?」

 

「いやだから武器抜いてんだろうが!」

 

「そうですね。では、まず警告いたします」

 

パトリシアは杖を持ち上げた。

 

「ちんぴら様、武器を置いてください。抵抗しなければ、脚は折りません」

 

「おう!」

 

頭領が一瞬だけ嬉しそうに返事をした。

 

「そこ素直に様付けするの!?」

 

「ご本人がそう名乗られましたので」

 

「俺はそんな奴を様付けで呼びたくないぞ!」

 

「へっ、誰が武器を置くかよ!」

 

「警告はしました」

 

「早えよ!!」

 

その横から、シオンが腕を鳴らしながら出てきた。

 

「ここは私が――」

 

カリ・フラワーが優雅に扇子を広げて前を塞ぐ。

 

「お待ちなさい。制圧とは、もっと美しく行うものですわ」

 

「え、美しい制圧って何ですか?」

 

「まず相手の武器を落とし、逃げ道を塞ぎ、抵抗する意思を失わせます。ついでにカリ首とムスコの威厳も失わせます」

 

「前半は私もだいたい同じことを考えていました」

 

「その後に、髪型を崩さず全員を捕縛するのです」

 

「最後に髪型の話が入った!」

 

カリが盗賊達へ微笑みかける。

 

「皆様、武器を置いて投降なさい。さすれば、こちらも優雅に済ませますわ」

 

「うるせえ!やっちまえ!」

 

盗賊達が突っ込んできた。

 

パトリシアの杖が光る。

 

「『強制平伏(ニード・ダウン)』」

 

重圧が通りへ広がった。

 

盗賊達の身体がまとめて地面へ叩きつけられ、石畳が軋む。剣も槍も手から離れ、男達のうめき声が重なった。

 

「足がァァァ!」

 

「ご安心ください。命に別状はありません」

 

「足には別状あるだろ!」

 

「骨折は最小限です」

 

「最小限でも折れてんのかよ!」

 

シオンは、倒れている盗賊の一人を片手で持ち上げた。

 

「この程度なら私でも――」

 

「地面に戻してあげてください」

 

「はい!生を感じるのって大事ですよね!」

 

「素直に戻すな!」

 

カリ・フラワーは、地面に伏せた盗賊達を見渡した。

 

「少々荒っぽいですが、全員の髪型はほぼ無事ですわ」

 

「そこを評価すんの!?」

 

「制圧の美しさは細部に宿りますもの」

 

頭領だけは片膝をつき、剣を杖代わりにして耐えていた。

 

「てめぇ……!」

 

「抵抗を続けますか?」

 

「当たり前だ!このちんぴら様を舐めんじゃねぇ!」

 

「では、もう少しだけ重くします」

 

「待て待て待て!話し合おう!俺は話し合いが実はめちゃくちゃ大好きだ!」

 

「では武器を捨ててください」

 

「捨てたら脚を折らないか?」

 

「これ以上は折りません」

 

「もう折れてる前提じゃねえか!」

 

パトリシアが杖を下ろすと、重圧が少しだけ弱まった。

 

「交渉成立です」

 

「成立してねえよ!!」

 

俺が叫んだ。

 

⸻

 

捕縛された盗賊達が運ばれていくのを見ながら、ゴウンが感心したように言った。

 

「あんな話通じなさそうな奴にまともに相手するとか凄いな」

 

「別に褒めてないだろそれ」

 

「うん」

 

パトリシアは真面目に頭を下げた。

 

「骨さんありがとうございます」

 

「魔王に対して骨さんておま……」

 

ゴウンが肩をすくめる。

 

「だが、俺なら最初から相手を骨にする」

 

「物騒な提案すんな」

 

アルベドがゴウンの隣から前へ出た。

 

「至高の御方に褒められたからって調子に乗るんじゃないわよぉぉ!このクソビッチ!!」

 

「今の、褒めてないって本人が言ってたぞ」

 

「至高の御方のお言葉をあなたが勝手に解釈しないで!」

 

「俺も解釈してないよ!」

 

パトリシアはさらに恐縮した。

 

「申し訳ありません。次からは、褒められたかどうか確認してから喜びます」

 

「そこまでしなくていい!」

 

「あと、ビッチではありません。パトリシアです」

 

「名前で反論するな、真面目すぎる!」

 

アルベドはゴウンの袖を掴み、彼を自分の背後へ引っ張った。

 

「アインズ様、もうナザリック=ヘルスに戻りましょう!この女は危険です!」

 

「俺、まだ何もされてないけど」

 

「今後、至高の御方に顔面騎乗位を要求したり、全裸で後をつけ回したりするかもしれません!」

 

「パトリシアさん、面接を受けに来ただけだからね?」

 

実地試験の結果、パトリシアの制圧能力は十分すぎるほど確認できた。

 

問題は、その「十分」がどの程度なのか、街の誰にも分からないことだった。

 

「警備責任者としては頼もしいが、力加減は訓練が必要だな」

 

ベニマルがまとめる。

 

「はい。次からは、もう少し軽く地面へ沈めます」

 

「地面へ沈めるのは確定なのか」

 

「長引かせないためです」

 

「ベニマル、お前納得してないよな?」

 

「しておりません」

 

「だよな」

 

⸻

 

盗賊達の引き渡しが終わると、ベニマルは採用書類を見直しながら、パトリシアへ最後の質問をした。

 

「以前の勤務先について、もう一点だけ確認したい。イングラシアでは、傭兵団以外にどの組織と関わりがあった?」

 

「自由組合とは何度か仕事をしております」

 

「自由組合?」

 

「はい。通称ギルドです。その総帥――グランドマスターは、ユウキ・カグラザカ様です」

 

「……ユウキ?」

 

俺は思わず聞き返した。

 

「カグラザカって、日本人の名前じゃないか?」

 

パトリシアがぱっと顔を明るくする。

 

「ご存じなのですか?」

 

「いや、名前を聞いただけだけど」

 

横でゴウンが首を傾げた。

 

「ユウキ・カグラザカ……妙に日本人っぽい名前だな」

 

「ゴウンもそう思う?」

 

「うん。普通に日本人っぽい」

 

「変な含み持たせなくて助かる」

 

「何それ」

 

パトリシアは俺とゴウンを交互に見た。

 

「総帥はとてもお優しく、自由組合の皆から慕われております」

 

「へえ……」

 

日本人かもしれない。

 

この世界に来た異世界人なのだろうか。

 

俺の中で、少しだけ興味が湧いた。

 

「パトリシアさんは、ユウキと一緒に仕事をしていたのか?」

 

「直接お会いしたことはありません。ですが、総帥の方針や実績はよく存じております」

 

「そうなんだ」

 

「はい。今回も、こちらの様子を定期的に――」

 

パトリシアの言葉が止まった。

 

「定期的に?」

 

「……警備記録として、定期的にまとめるつもりです。街の犯罪傾向を把握することは必要ですので」

 

「それはそうだな」

 

「とにかく、私は街の治安を守ります。観光客の皆様が安心して滞在できるよう、必要であれば穏便に制圧いたします」

 

「穏便の意味だけ、あとで一緒に辞書で確認しような」

 

「はい。両脚を折るのは、辞書を読んだ後にします」

 

「折らない選択肢を学べ!」

 

その時、遠くの門から悲鳴が聞こえた。

 

「また盗賊か!?」

 

「違います!盗賊の頭領が地面から出ようとして、もう一度埋まりました!」

 

「地面と和解しろォォォ!!」

 

パトリシアは杖を持ち直した。

 

「見てまいります」

 

「今度は脚折るなよ!」

 

「はい。今日はもう折れておりますので」

 

「そういう問題じゃねえ!!」

 

新しい警備責任者が来た。

 

チンポリスの治安は良くなるのだろうか。

 

ひとまず、盗賊の頭領が地面から出られるまでは、平和が続きそうだった。

 

つづく……

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