※この作品はR-18です。

精子垂らす   作:超絶ゆるふわ乙女

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第6話|激突!!鬼人族(オーガ)救出作戦!!ビジネス構文と美少女の相違点!!

 

「改めて聞いても終わってる名前だな乳首大公」

 

ゴブリン村長──名前は聞いたが「リグルド」というらしい。ゴブリン村を出る時、リグルドは何度も頭を下げていた。

 

「どうか、お気をつけて。乳首大公の城へ近づいた者は、皆――」

 

「乳首の研究材料にされるんだろ?」

 

「……はい」

 

「終わってる」

 

村の外れから見える黒い城は、昼間なのに周囲だけ薄暗かった。城壁の先端がやたら尖っている理由については、今は考えないことにした。

 

俺達は森の中を進んでいた。

 

道はあるようで、途中から木の根とぬかるみしかない。鳥の声も聞こえず、湿った土と腐葉土、それから妙に獣臭い空気がまとわりついてくる。

 

モリ夫が鼻を押さえた。

 

「うわ、臭っ。オーク臭ですぜ」

 

ーーー告、オーク臭。それから、あなたの体臭ですーーー

 

「スライムなのに加齢臭みたいな扱い受けるの嫌すぎる」

 

「旦那、普通に臭いっすよ」

 

「お前まで乗るな」

 

フェラチオは、森の木々より高い身体を少し屈めながら歩いていた。日差しを嫌って、なるべく影の濃い方を選んでいる。

 

しばらくは静かだった。だが、その沈黙を破ったのは、突然の咆哮だった。

 

「グァァァァァ!!!」

 

爆音が森に鳴り響き、近くの鳥が一斉に飛び立つ。

 

俺とモリ夫は、反射的に身構えた。

 

「ん!?」

 

「旦那! フェラチオが急に爆音で音割れしながら叫んでますぜ!」

 

「普通にフェラチオって呼び捨てにするんだ、お前」

 

「もう我慢出来ん!!!!!!! 陰茎をシャブらせろぉぉぉぉ!」

 

「え」

 

フェラチオは巨大な腕で頭を抱えていた。

 

白銀の鱗の隙間から、魔素がばちばちと漏れている。暴走しかけの伝説級ドラゴンが、森の真ん中で切実そうにうずくまっていた。

 

「余は口淫竜フェラチオだぞ? 本当は一時間に一回、陰茎をしゃぶらなければ暴走するに決まっているだろ」

 

「世界の当たり前みたいに言われても困るんですが、それは」

 

「旦那! 旦那の陰茎を差し出すってのはどうですかィ」

 

「死ねよ」

 

モリ夫は、俺の股間とフェラチオの大口を交互に見た。

 

「でも旦那、今後の旅を考えると定期的な供給源が――」

 

「お前、俺を何だと思ってんの?」

 

ーーー告、精子を垂らすスライムですーーー

 

「そこだけ切り取るな!」

 

フェラチオは地面へ顎をつけ、紫の目でこちらを見ていた。

 

「……頼む」

 

「急にしおらしくなるな。断りづらくなるだろ」

 

「余の口は、誰かを傷つけるためだけにあるわけではない。味を知り、言葉を交わし、相手の器を見極めるためにある」

 

「今その美学の話を始めるな」

 

「だが、今は普通にしゃぶりたい」

 

「カス」

 

俺は仕方なく、身体の中の魔素を少し練った。

 

魔力を固め、形を作る。用途については考えない。

 

地面の上に、黒い棒状の魔法具が現れた。

 

「……魔力ディルドできた」

 

「何故そんなものを作れるんですかい旦那?」

 

「聞くな」

 

フェラチオは、差し出されたそれをじっと見た。そしてそっと口へ入れた。

 

ちゅぱ。

 

森の空気が、一瞬だけ止まった。

 

フェラチオは数回確かめるように口を動かし、眉をひそめた。

 

「……おやつカルパスみたい」

 

「褒めてんのか貶してんのか分からん感想やめろ」

 

「味は悪くない」

 

「味つけてねえよ」

 

「余の口内が繊細だからな」

 

「そういう問題じゃない」

 

フェラチオはしばらく魔力ディルドを咥えたまま、満足そうに目を閉じていた。

 

やがて、さっきまで漏れていた魔素も静まる。

 

「落ち着いたか?」

 

「うむ。これでしばらくは理性を保てる」

 

「理性の維持方法が終わってる」

 

その時だった。

 

「グァァァァァ!!!」

 

また爆音が森に響いた。

 

俺は一度、フェラチオを見る。

 

フェラチオも、魔力ディルドを咥えたまま首を傾げた。

 

「余ではない」

 

「うそだろ」

 

「ループしてる? もしかして」

 

今度の咆哮は、もっと遠くから聞こえた。

 

木々の向こう。

 

何かが倒れる音。

 

複数の足音。

 

それに混じって、明らかに人間のものではない怒号が響いている。

 

「旦那、戦闘ですぜ」

 

モリ夫が先へ飛んだ。

 

「オークらしい声がします!」

 

「城へ向かう途中で?」

 

「多分、乳首大公の手下じゃないですかね」

 

フェラチオは、口に咥えた魔力ディルドを前脚で押さえながら立ち上がった。

 

「景観を荒らさない連中なら、余も興味はない」

 

「お前の興味の基準、ずっと景観か口内環境しかないな」

 

俺達は、声のする方へ走った。

 

森を抜けた先には、小さく開けた場所があった。

 

そこでは、二人の鬼人族が大量のオークに囲まれていた。

 

真紅の髪をした青年が、大きな刀でオークの棍棒を弾いている。

 

その背後では、薄桃色の髪をした少女が、杖を握って結界を維持していた。

 

「兄様! 左です!」

 

「分かっている!」

 

青年が斬り払う。

 

二体のオークが倒れる。

 

だが、次の瞬間には別の三体が前へ出てくる。

 

数が多い。

 

少女の結界には、既に何本もひびが走っていた。

 

「鬼人族か」

 

フェラチオが目を細める。

 

「乳首大公の城へ向かう道で、オークと戦っている。面倒な匂いがするな」

 

「女の子が可愛い」

 

ーーー告、童貞センサーが反応していますーーー

 

「黙れ」

 

俺は、オーク達の頭上へ飛び出した。

 

「加勢する!」

 

「何だ!?」

 

一体のオークが振り返る。

 

その顔面へ、水刃を撃ち込む。

 

「拡散水刃・スパームスプラッシュ!」

 

ドバババババッ!!

 

飛び散った刃がオーク達の武器を弾き、前列をまとめて吹き飛ばした。

 

木々へ叩きつけられたオークが、枝を折りながら転がっていく。

 

真紅の青年が、こちらを見た。

 

「スライムが……援軍?」

 

「一応な!」

 

モリ夫が俺の横を飛び抜ける。

 

「旦那ァ! 俺も行きますぜ!」

 

「死なない程度に――」

 

モリ夫は、横から飛んできた棍棒へ正面からぶつかった。

 

ドゴォン。

 

森の奥へ消える。

 

「死にに行っただけだろアイツ」

 

フェラチオはさっきの魔力ディルドをちゅぱちゅぱしている。

 

「余、ジュポジュポこれ気に入ったズボボボボ」

 

「これが世界の四大竜なのぉ?」

 

オーク達が怒鳴る。

 

「何だこのスライム!弱そうスギィ!」

 

「精子を飛ばしてるぞ!きちゃない」

 

「そっちへ意識を向けるんじゃねえよ!」

 

俺がもう一度水刃を構えた時。

 

奥にいたオーク達が、左右へ分かれた。

 

現れたのは、一際大きなオークだった。

 

他のオークより頭一つ大きい。

 

全身には古い傷。

 

鉄の鎧。

 

巨大な戦斧。

 

そして、妙に重そうな陰茎。

 

「なんだあのチンポ!?」

 

「旦那、今はそこじゃねえです!」

 

いつの間にか戻ってきたモリ夫が、俺の背後で羽を震わせていた。

 

真紅の青年が、歯を食いしばる。

 

「オーク将軍……!」

 

「将軍までいるのかよ」

 

オーク将軍は、俺達をまっすぐ見た。

 

赤い目には怒りがあった。

 

でも、ただ殺気立っているだけではなかった。

 

「鬼人族など、本質は我らと同じ暴力的な種族だ」

 

低い声が、森に響く。

 

「なのに、人に少し似ているというだけで、人間の美醜の感覚から外れずに済む」

 

青年と少女が、黙る。

 

オーク将軍は戦斧を地面へ突き立てた。

 

「我らオークは醜いと呼ばれ、人間は我らを討伐する。鬼人族は恐れられながらも、見栄えがよければ守られる」

 

一拍。

 

「これって差別じゃないですか?」

 

「急に正論の形で殴ってくるな」

 

モリ夫が、珍しく真面目な顔で頷いた。

 

「旦那。あいつ、正しい魔物のあり方について問うてるんじゃないですか?」

 

「おい、モリ夫」

 

「へい?」

 

「お前、今『正しい魔物のあり方』について言ったか?」

 

「え、うん。言いましたけど」

 

俺は一度だけ、息を吸った。

 

人間時代。

 

会議室。

 

曖昧な言葉を投げて、後から「そういう意味じゃなかった」と逃げる上司。

 

なぜか頭の奥から、二度と使わないと思っていた声が出てきた。

 

「日常生活ならともかく、言葉を伝える時は複数の捉え方ができないように明確に物事を伝えろ。なぜなら、お前のその曖昧な表現ひとつが、後々大きなトラブルの元になるからだ。正しい文章を軽視するな。それはビジネスの基本であり、人としての責任だぞ」

 

森が静かになった。

 

モリ夫は、羽を止めていた。

 

「ヒィィィッ! 旦那の『トラブルの元だぞ構文』出た!」

 

「俺も何で今出たのか分からない」

 

オーク将軍は、俺が長々と喋っている間に、戦斧を持ち上げていた。

 

「話は終わったか」

 

「あ」

 

次の瞬間。

 

戦斧の腹が、俺の身体へめり込んだ。

 

ドゴォォォォォン!!

 

俺は木を何本か折りながら、後方十三メートルくらいまで吹き飛ばされた。

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!」

 

地面へ落ちる。

 

視界が揺れる。

 

ーーー告、ビジネス構文による防御力上昇は確認できませんーーー

 

「当たり前だろ!」

 

「旦那!!??大丈夫ですかい!!??」

 

「もう許さねえぞオーク野郎…お前の知らない精子垂らすを見せてやるよォォォォ!!!!」

 

オーク将軍が戦斧を担いだまま、こちらへ歩いてくる。

 

「貴様らも、人間と同じだ。口では理解を語り、都合が悪くなれば我らを醜い豚として斬る」

 

「いや、俺達も今初対面だから、そんな綺麗な話できないけど」

 

俺は身体を起こす。

 

「だからって、お前らがこいつらを囲んで殺そうとしていい理由にはならないだろ」

 

「戦争とはそういうものだ」

 

「まだ戦争始まってねえよ」

 

俺が魔素を練る。

 

オーク将軍も戦斧を構える。

 

その間へ。

 

白銀の巨体が、ゆっくり進み出た。

 

フェラチオだった。

 

「退け」

 

オーク将軍が、眉を寄せる。

 

「竜が何の用だ」

 

「余は今、食後で機嫌がよい」

 

フェラチオは、口元から魔力ディルドを抜いた。

 

「だから、一度だけ見逃してやろうと思った」

 

「ならば、何故前へ出る」

 

「だが」

 

フェラチオは、俺の方を見た。

 

「余の同行者を、木材みたいに飛ばすのは気に入らん」

 

「さっきまで俺を吸って吐いてた奴が急に仲間面すんなよ」

 

「竜は気分で生きる」

 

フェラチオの巨大な口が開く。

 

森の風向きが変わった。

 

オーク将軍が、初めて後ろへ一歩下がる。

 

「待て。貴様まさか――」

 

「竜技」

 

フェラチオが、息を吸った。

 

「超絶真空フェラ・ブレス」

 

「その技名だけは本当にどうにかならないのかなぁ!?」

 

その後目の前で

シューーーーッッッッ!!!!という謎の音と共にオークはフェラチオのブレスで吹き飛ばされていた。

 

「グォォォォォォォ!!?」

 

オーク将軍は、森の奥へ小さくなって消えた。

 

残されたオーク達が、固まる。

 

フェラチオは口を閉じた。

 

「スッキリ塩味」

 

「食ってないだろ」

 

「風がオーク臭かった」

 

「そこまで吸うなよ」

 

将軍を失ったオーク達は、しばらくこちらと森の奥を見比べていた。

 

それから、一体ずつ後退していく。

 

「将軍を探せ!」

 

「いや、あれ生きてるのか?死んだだろ」

 

「それなら今日定時上がりできるな」

 

やがて、オーク達は森の奥へ消えた。

 

静かになった場所で。

 

真紅の青年が、刀を下ろした。

 

「……助かった」

 

少女も、壊れかけた結界を消して頭を下げる。

 

「ありがとうございました」

 

近くで見ると、少女はさらに可愛かった。

 

「うおっ」

 

ーーー告、童貞センサーが再反応していますーーー

 

「黙れ」

 

真紅の青年は、改めて俺達へ向き直る。

 

「俺はベニマル。鬼人族の戦士だ」

 

少女も続ける。

 

「私はシュナと申します。兄様の妹です」

 

「スライムだ」

 

「モリ夫ですぜ」

 

「余はフェラチオ」

 

「こいつらの名前は気にするな」

 

ベニマルの表情が、少しだけ曇った。

 

「本来なら礼を尽くしたい。だが、俺達には時間がない」

 

「何かあったのか?」

 

「俺達の里が、オーク達に襲われている」

 

「襲われすぎだろこの世界」

 

シュナが、杖を胸元で握った。

 

「先ほどの者達も、その一部です。オーク軍は突然、森へ入ってきました」

 

「さっきの将軍が?」

 

「はい。ただ、奴らの背後にはもっと大きな存在がいます」

 

ベニマルは、遠くに見える黒い城を睨んだ。

 

「乳首大公ビーチク・バフォメット」

 

「全部そいつ絡みなの終わってる」

 

「オーク達を率い、近隣の集落へ手を伸ばしている。俺達は里を抜け出して援軍を探していた」

 

「援軍がスライムとコウモリと口淫竜で大丈夫か?」

 

「口淫竜がいる時点で大丈夫かどうかを考える段階ではない気がします」

 

シュナの言葉は丁寧だった。でも、ちょっとだけ正しかった。口淫竜いたら俺らいらなくね?

 

ベニマルは、俺の前で膝をつく。

 

「頼む」

 

「え」

 

「俺達だけでは、里を救えない。力を貸してほしい」

 

シュナも、兄の隣で頭を下げた。

 

「どうか、お願いいたします」

 

俺は二人を見る。

 

それから、黒い城を見る。

 

村から連れ去られたゴブリンの娘達。

 

オークに襲われている鬼人族の里。

 

そして、全部の中心にいるらしい乳首大公。

 

「……順番としては、城を潰すのが先だな」

 

ベニマルが顔を上げる。

 

「城を?」

 

「元締めがあそこにいるなら、まず話をしに行く」

 

「話で済む相手ではないぞ」

 

「話が通じなかったら、殴る」

 

「その順番でいいんですか?」

 

「良くはないけど、主人公っぽいだろ?」

 

ーーー告、キショ童貞特有の判断ですーーー

 

「主人公要素を全部童貞へ回収するな!」

 

フェラチオが、黒い城を見ていた。

 

紫の瞳が、少しだけ冷たくなる。

 

「……あやつか」

 

「やっぱ知ってるの?」

 

「城を見れば分かる」

 

「乳首型だから?」

 

「それもある」

 

フェラチオは、森の向こうにそびえる城を見上げた。

 

「数十年前、余の巣穴の上へ乳首型の城を建てようとした愚か者だ」

 

「前話の続きと同じ情報を重ねてくるな」

 

「腹が立つことは、何度でも言う」

 

「しつけえよその情報」

 

ベニマルが立ち上がる。

 

「城へ向かうのなら、俺達も案内する」

 

「兄様、里の皆様は……」

 

「城を落とせば、オーク達の指揮も乱れる。今はそれが最短だ」

 

シュナは少し迷ってから、強く頷いた。

 

「分かりました。私も参ります」

 

こうして俺達は、乳首大公の城へ向かうことになった。スライム、コウモリ、口淫竜、そして事情を抱えた鬼人族の兄妹という、どう考えても正規の討伐隊には見えない五人組で。

 

城の先端は、夕陽を受けて嫌な形に光っていた。

 

つづく……

 

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