※この作品はR-18です。

【R-18】オバエロ:至高の淫魔がスケベする話   作:口だけの淫魔

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幕間
#104 幕間:アルシェ・イーブ・リイル・フルト 前編


「じゃ、お姉さま!おやすみなさい!」

 

「おやすみなさーい!」

 

 

ウレイリカとクーデリカの言葉に、アルシェは二人を抱きしめた。

 

 

「ええ、おやすみなさい。二人とも」

 

 

アルシェの妹であるウレイリカとクーデリカ。

この二人は現在、ベリアルの住む邸宅の別棟に住んでいる。

アルシェも同様に別宅に住んでいるが、部屋は違う。

これは側室であるアルシェのみ個室を与えられている……という訳でもなく、幼くも自立心の芽生えて来た妹達の情緒を育むべく、二人用の子供部屋を用意しただけに過ぎない。

 

そうして二人を寝室に送り届けたアルシェは、一つ息を深く吐いて自室に戻るべく廊下を進む。

 

魔法灯の半数が消灯しているが、それでも廊下は僅かに明るい。

このような設備など、貴族崩れだった実家では考えられない事である。

 

 

(って、また……無意識に比べてる。もうあんな家、無関係なのに)

 

 

家のことを考えてしまうのはホームシックなのか。

いいや、そんなことはない。

ここが自分の住むべき家であり、帰るべき場所である。

あんな両親の元に帰るつもりなど、アルシェには少しも無かった。

 

ただ、寂しさを感じているのは事実だった。

 

 

(……ベリアル様、忙しそうだし)

 

 

つい先日まで、愛するベリアルが、聖王国から来ていた聖王女や重鎮の女性達の接待をしていた。

接待……というには親密であり、夜な夜な何やらしているようだったが。

 

彼女達を見つけた際、側室の証明である指輪をしていたのでアルシェは察した。

また随分と地位の高い、綺麗な女性が増えたな……と、取り柄のない自分と比べて、アルシェは自信を喪失しそうになっていた。

 

聖王国で色々と仕事があってベリアルは中々帰って来なかった時期もあり、どうにもこうにも接点が少なくなっていた。

 

それを寂しいと、アルシェは感じていた。

 

 

(……ちょっと前に慰めてもらったけど)

 

 

僅かな時間の隙間を見つけて、聖王国から帰還していたベリアルと落ち合う事があった。

その時は帝国から四騎士であるレイナースも来ていたため、二人まとめて……慰めて貰ったが。

 

それは身体を満足させられただけで、心が満足した訳ではない。

 

 

(……我儘を言ったら、迷惑だろうし。言わないし、言う気もないけど……もっと帰って来て欲しい、とか、言ったら迷惑になる……のかな)

 

 

夜風に触れた肌の冷たさに、寂しさを感じながら自室の扉を開けた。

そうして中に入れば、日々を過ごしている室内が目に入る。

 

机に積まれた本は、魔導学院の講義に使用する本だ。

現在、アルシェは魔導学院の講師として勤務している。

といっても学生に直接、魔法を教える訳ではなく……魔法学の教師と共に講義の内容を考えるような仕事をしている。

相手側の教師はアルシェよりも使用できる魔法の位階も低いが、それでも魔法に関する知識はアルシェを上回っている。

互いに尊重しつつ、どうすれば最適な教育ができるか、日々頭を悩ませている。

 

 

「……ふぅ」

 

 

アルシェは山積みの本を横に避けて、ブックスタンドから一冊の本……日記帳を手に取った。

魔導国に来てから、自然と書き始めた日記帳だ。

そこには妹であるウレイリカやクーデリカの成長記録も残っている……だが、それだけではない。

 

愛するベリアル様とデートしたこと。

ウレイリカとクーデリカ、自分も含む四人で遠出をしたこと。

嬉しかったこと、楽しかったこと。

 

それらが書き込まれている。

 

 

「……ベリアルさま」

 

 

ぽつりと名前を呼べば、自分の身体が疼いている事に気付いた。

 

 

「…………」

 

 

愛する人に会いたいという気持ち。

胸を空くような寂しさ。

それらを紛らわすように感じてしまう、欲求。

 

こうなってしまっては、眠るに眠れない。

アルシェは自分のダメさ加減にため息を吐きつつ、机の引き出しから“お気に入り”を取り出した。

 

そして、ぺたり、と床に立てた。

 

それは陰茎を模したものだった。

正確に肉を再現したかのような柔らかさを持ちながらも、硬くそそり立っている。

 

それこそ、筆頭メイドであるラズロから貰った、ベリアルの陰茎を模した“でぃるど”だった。

 

 

「…………」

 

 

生活魔法を使って水で濡らせば……自然と僅かに滑りが出てくる。

どういう仕組みかはアルシェも知らないが、何らかの魔法道具(マジックアイテム)であることは知っていた。

 

アルシェは下着を脱いで、ディルドを眺めながら……指で自分の陰唇を弄り出した。

 

 

ぬちぬち♡ぬちぬち♡♡

 

「ふっ……♡ん……っ♡」

 

 

いきなり挿入すると苦しい事を、アルシェは知っていた。

気持ち良く活用するには事前の愛撫……自慰が必要なのだ。

 

 

ぬちっ♡ぬちっ♡♡

 

「……っ♡ベリアルさま……♡」

 

 

目を閉じて、愛する男の裸体を思い浮かべる。

目に焼きついて忘れる事もできない姿を。

 

 

ぬち♡ぬち♡ぬち♡

 

「んっ♡ん……♡」

 

 

想像に耳を傾ける。

囁くような優しい声色を思い出す。

 

 

ぬぢぬぢ♡ぬぢぬぢ♡♡

 

「はっ♡あ♡んっ♡♡」

 

 

小さく喘ぎながら、指を女性器(おまんこ)から離した。

ねっとりと糸を引いている事を確認し、アルシェはディルドに向き合った。

 

 

「…………」

 

 

そして、ゆっくりと……その愛する男の陰茎を模した、ディルドに腰を落としていく。

 

 

ぬぢゅぅ……♡♡♡

 

「っ、ん゛……♡♡♡♡」

 

 

筆頭メイドのラズロが言うには、このディルドはベリアルが眠っている間にこっそりと模ったものらしい。

その事実はベリアルに伏せており、口外にすることは厳禁であるらしい。

 

といっても、ベリアルが聞いても恥ずかしそうにするだけで、大して怒られはしないだろうとラズロは高を括っていたが。

 

そんなディルドがアルシェの膣内をこじ開けていく。

 

 

ぬぢぃぃ……っ♡♡♡♡♡

 

「お゛……っ♡♡♡♡」

 

 

この部屋は防音。

魔法道具により、外へ聞こえさせようとしない声や音は防音されている。

だから、どれだけ大きな声で喘いでも問題はない。

 

しかし、それでも恥ずかしいのは事実で、アルシェは堪えるように喘いでいた。

 

 

ぬぢゅっ♡♡ぬぢゅっ♡♡

 

「っ、お゛♡♡う゛ぁっ♡♡」

 

 

子宮口にディルドの先端がぶつかるよう、ぐりぐりと押し付けて自慰をする。

 

アルシェは奥を虐められるのが好きだ。

ベリアルとする際には毎回、おねだりしているぐらいだ。

 

 

ぬぢゅっ♡♡♡ぬぢゅッ♡♡♡♡

 

「は、あ゛っ♡♡♡ベリアルさま゛……っ♡♡♡♡」

 

 

偽物の男性器(おちんぽ)に対して、アルシェは媚びるように腰を振っていた。

偽物の、ベリアルではない、ディルドだということは頭では分かっている。

それでも媚びるような腰振りが止められない。

 

 

どちゅっ♡♡どちゅっ♡♡♡どちゅんっ♡♡♡

 

「あ゛……っ♡♡イ゛ク……っ♡♡お゛♡イク゛♡♡♡」

 

 

誰に報告する訳でもなく、口から絶頂を宣言してしまう。

気持ち良くて、脳みそがクラクラするなかも、アルシェは腰を振って──

 

 

どちゅんッ♡♡♡♡♡♡

 

「イ゛、っ……く……ッ♡♡♡♡♡♡♡」

 

ぷしゃっ♡♡♡♡♡♡

 

 

そのまま絶頂した。

 

 

「あ゛……っ♡あ゛ぁ……っ♡♡」

 

 

身体を痙攣させ、電撃のように流れる快楽に身を捩る。

 

 

「お゛……♡っ、ふ……ぅ♡♡♡」

 

 

快楽の余韻に浸り終え、アルシェは陰茎を膣口から抜く。

 

 

つ、ぷ……♡♡

 

「っ、う゛♡♡」

 

 

ゆっくりと、慎重に──

 

 

っちゅぽ……♡♡♡♡♡♡

 

「お゛♡♡♡♡♡」

 

ぷしゃっ♡♡♡♡

 

 

それで抜いた瞬間に愛液が吹き出た。

腰がガクガクと震えるし、足に力が入らない。

 

 

「……は、ぅ♡」

 

 

それでも堪えて、アルシェは何とかベッドに転がった。

 

 

「はぁ……♡は、ぁ……♡」

 

 

確かに、男の陰茎を模したディルドは気持ちいい。

 

 

「…………」

 

 

だがそれでも、本物には及ばない。

そう、アルシェは考えていた。

 

 

「……片付け、ないと」

 

 

疲労感と虚しさを感じながら、アルシェは生活魔法で後片付けをして、ディルドを机に戻した。

そうしてパンツを履き直して、ベッドに転がった。

 

誰もいないベッドの上。

目を閉じて……ゆっくり、眠ろうとする。

 

もぞもぞと太ももを動かしつつも、目を逸らすように気を逸らして……そして、眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、アルシェは目を覚まして、支度をした。

といっても、仕事の支度ではない。

毎週三日間、学校は休みとなっている。

今日は単純に、ウレイリカやクーデリカに付き合う日だった。

 

そう考えつつ、自室から出て廊下を歩く。

別宅も朝の掃除などが行われている。

 

ここにいるメイド達の殆どが帝国出身だと、アルシェは聞いていた。

殆ど、の外に居るのは森妖精(エルフ)のメイド達……そして、ベリアルが連れて来たメイド達だ。

 

そんな彼女達の横を頭を下げながら通り過ぎる。

メイド達も頭を小さく下げてくる。

 

当初は側室であるアルシェに仰々しくお辞儀をしていたのだが、そこまでしなくてよいと口にした事で今はこのような形になっている。

 

アルシェは確かに貴族出身ではあったが、こうも品格のあるメイドに頭を下げられると気後れしてしまう。

故に、こうして軽い挨拶に落ち着かせた。

 

そうしてアルシェはウレイリカとクーデリカの部屋に辿り着き、ノックをする。

 

 

「……ウレイ、クーデ?起きてる?」

 

 

無理矢理入っても良いのだが、こうして配慮することが二人を一人前として扱っている事に繋がる。

彼女達には親離れをして欲しい……アルシェは姉であるが、それでもこうもベッタリとし過ぎていると、困るのも事実だ。

 

そうして少し待てば、内側から扉が開く。

 

 

「おはよう、ウレイ。クーデ」

 

 

そう声を掛ければ、部屋の中からウレイリカとクーデリカが出て来た。

 

 

「おはよう、お姉さま!」

 

「おはよう!」

 

「うん、おはよう。支度は出来てる?今日は公園に行く日でしょ?」

 

「えっと、着替えはまだ!」

 

「私も」

 

 

見れば分かる話ではある。

二人とも、パステルカラーの寝巻きに身を包んでいるのだから。

 

 

「なら、外で待ってるから着替えてくれる?」

 

「うん!」

 

 

二人の返事を聞いて、扉を閉めた。

別に急いでいる訳ではない。

今日は緩やかな、休日の予定だ。

 

 

「……はぁ」

 

 

壁に背を預けて、アルシェは一つ欠伸をして──

 

 

「あー……おはよう?アルシェ」

 

「ふぇっ」

 

 

声の先にいたのは、この屋敷の主であるベリアルだった。

思わず、アルシェは目を瞬いた。

 

 

「ベリアル様?な、何故ここに……?」

 

「あぁ、いや、アルシェに会おうと思ってな。でも部屋には居なかったし、ウレイやクーデの所かと思い来たわけだが」

 

「そ、そうですか」

 

 

顔が赤くなる。

無防備にはしたなく欠伸をしていた姿を見られてしまったからだ。

 

 

「しかし、ベリアル様。何の用事、ですか?」

 

「あぁ、聖王国の仕事も終わったからな。良ければ、今日ぐらい一緒に過ごさないか……というお誘いだ」

 

 

それは万金に値するお誘いだった。

しかし……アルシェは二人の妹を思い出した。

 

 

「あの、今日は二人の妹と予定があって……」

 

「あー、そうか。なら仕方ないな。それで、何をするんだ?」

 

「公園に行こうと約束を」

 

「なるほど…………迷惑を承知で聞くんだが、俺もついて行って構わないか?」

 

 

ベリアルの提案に、アルシェは首を傾けた。

 

 

「私は構いませんが……」

 

 

一国の重鎮であり、多忙であるベリアルを公園なんかに誘うのも申し訳ない気持ちがある。

そう考えての発言だったが──

 

 

「あぁ、そうだな。ウレイとクーデにも聞かないとな」

 

 

なんて事を口にした。

アルシェは思わず、苦笑した。

 

二人の妹であるウレイリカとクーデリカ。

ベリアルからすれば側室に迎えた女の妹に過ぎない。

そんな二人を個人として配慮してくれている。

 

自分が大切にしているものを、愛する男も大切にしてくれている。

その事実はアルシェには嬉しかった。

 

そう考えていると──

 

 

「あれ?ベリアル様だ」

 

「ベリアル様、おはようございます!」

 

 

二人の妹が部屋から出て来た。

挨拶をする妹達の頭に、ベリアルが手を置いた。

 

 

「おはよう、ウレイ。クーデも」

 

 

頭を撫でられて、二人は嬉しそうだ。

随分と懐いたな、とアルシェは思った。

元々、二人は人懐っこい性格だったが……輪にかけて懐いている。

 

それもそうか、とアルシェは理由を考えた。

実家の父はこうも構ってはくれなかった。

執事達は適切に距離を置いていた。

こうして構ってくれる大人の男性というのは、二人にとって人生で初めてのものだ。

 

 

「ベリアルさま、どうしたの?」

 

「何かごよう?」

 

「あぁ、今日、三人で公園に行くんだろう?俺もついて行って良いかな?」

 

「うん、いいよ!」

 

「ベリアルさまも行こう!」

 

 

ベリアルは、この都市でも片手で数えられるほどに偉い権力者である。

そんな相手だが、ウレイリカとクーデリカにとっては、自慢の姉の夫……という印象だった。

実際の話、アルシェは嫁や妻ではなく、側室なのだが、子供には違いなど分からない。

 

 

「……あっ、ウレイリカ。お姉さまに悪いよ」

 

「あ、たしかに。ほんとだ……ベリアルさま、今日は公園行かなくてもいいよ?」

 

「……ん?どうしてだ?」

 

 

ベリアルの言葉に、ウレイリカクーデリカが顔を合わせた。

 

 

「ベリアルさま、お姉さまと二人っきりになりたいんじゃないの?」

 

「お姉さまとデートしたいでしょ?」

 

 

二人の言葉にアルシェは顔を赤くした。

 

 

「ふ、二人とも……っ」

 

 

反論しようとしたが、アルシェとしてもベリアルと二人っきりにはなりたかった。

その上で妹を優先しているだけだ。

 

そんなアルシェを横目に、ベリアルは苦笑した。

 

 

「いいや、大丈夫だ。気にしなくていいんだ。俺は二人とも遊びたいからな」

 

「え?ほんと?」

 

「本当だとも」

 

 

そうしてベリアルは、ウレイとクーデの頭を撫でた。

そして、アルシェへ目を向けた。

 

 

「という訳で、俺も公園に行く。準備をしてくるから、少し待っていてくれるかな?」

 

「うん!お姉さま、お部屋で待とう!」

 

「待とう!」

 

「あ、ちょっと……あの、ベリアル様、すみません」

 

 

腕を引っ張られながら、アルシェはベリアルに頭を下げた。

 

 

「ん?いや、いいんだ……というか、謝るような事なんてあったか?」

 

「……いえ、そう、思いますが」

 

 

不思議そうにするベリアルを気にしつつ、アルシェは一つ頭を下げた。

同時に、ウレイリカとクーデリカも小さく頭を下げていた。

 

 

「ん……?ま、まぁいいか。じゃあちょっと離席する。悪いが、ちょっと待っててくれ」

 

 

そんな三人に首を傾げつつも、ベリアルはその場を後にした。

着替えやら何やらで忙しいのだろう。

 

その間、アルシェは妹達の部屋で待つ事にした。

 

そこは子供部屋だ。

昔は一つのベッドで二人が寝ていたが、今は各々のベッドがある。

ウレイリカのベッドには大きな猫のぬいぐるみが、クーデリカのベッドには幼鳥のぬいぐるみが置いてある。

勉強机が二つあり、そこには学院で使用している教科書が積まれており……本棚には彼女達のお気に入りの本が置いてある。

 

そんな部屋を用意したのはベリアルだ。

といっても家具を選んだわけではない。

アルシェや、二人が望む度に、望む物を取り揃えてくれたのだ。

 

愛する男であり、主であるベリアルに感謝しつつ、アルシェは椅子に座った。

 

 

「ベリアルさまと一緒にお出かけするの、久しぶりだよねー」

 

「うんうん、久しぶりだよねー」

 

 

ウレイリカとクーデリカが互いの言葉に同意している。

そんな二人にアルシェも口を開く。

 

 

「うん。先月の初めぐらいだったかな?学校の保護者見学に来てくれたんだっけ」

 

「そう!お父さま達、来れないから」

 

「うん、ベリアルさまが来てくれたの!そのあと、お買い物にも連れてって貰ったんだよね」

 

 

ウレイリカとクーデリカは気にしていないようだが、彼等は年若い中、両親と離れ離れになってしまった。

そうさせたのはアルシェである。

現実を見ずに借金ばかりするクズのような両親であったが、娘にかける愛情は本物だった……と、アルシェは思っている。

それとも、そう思いたいだけなのかもしれない。

 

本質は分からない。

記憶で美化しているのかもしれない。

碌でもない両親だったが、親は親だ。

 

そんな親からまだ若い子供達であるウレイリカとクーデリカを引き剥がしてしまったことに対して、アルシェは罪悪感を感じていた。

 

自分が二人の親代わりをしている自覚がアルシェにはあった。

しかし、アルシェは“女”であり、“母親”の代わりにしかなれない。

自分にできない“父親”としての振る舞いをしてくれるベリアルに対して、アルシェは感謝していた。

 

 

「それでね、それでね」

 

「うんうん」

 

 

ウレイリカとクーデリカの話を聞きながら待っていれば、部屋の扉が開いた。

 

 

「すまない、待たせたな」

 

「いえ……大丈夫、です。ベリアル様」

 

 

急いでいた様子のベリアルに対して笑みを浮かべつつ、アルシェは椅子から立ち上がった。

同時に、ウレイリカクーデリカの二人も椅子代わりにしていたベッドから立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルシェが主導で残りの三人を連れて屋敷を出た。

馬車に乗って少し走れば……魔導国内に作られた、大きな公園に到着した。

そこは魔導国が建設した公共の公園だが、貴族街に近く……それなりの身分がある子供しか遊びには来ない。

そのお陰で、最低限の教育が済まされた子供しか居らず、治安も良いのだが。

 

本来、このような公園が街にあることは少ない……と、アルシェは考えている。

少なくとも、帝国には無かった。

子供の遊び場とは路地裏か、空き地だった。

わざわざ、子供が遊べるように土地や遊具を用意するという発想は、珍しいものだ。

 

元々その場で遊んでいた子供のコミュニティに入り、はしゃいでいるウレイリカやクーデリカを遠目にアルシェはベンチに座った。

離れのベンチにはその場に居る子供達の保護者、つまり両親が座っていた。

自分と同じく、遊んでいる自分の子供を遠目で見ているのだろう。

 

そういった親達は知り合い同士で集まっているのか、お喋りに興じてる者も多かった。

 

だが、アルシェの周りには誰も来ない。

というか、来ないどころから避けられている節があった。

 

アルシェが年若いのに母親のような振る舞いをしているから……という訳ではない。

実際、ウレイリカとクーデリカの三人で来た時には「若いのに偉い」と褒めに来たくらいだ。

 

問題なのは、隣に座っている男性なのだろう。

 

ベリアルは、この都市の都市長である。

都市長……とされているが、魔導国の首都であるエ・ランテルの都市長というのは、一般的な都市長よりも遥かに権力があるものとされている。

明確に“そう”だと決まってはいないが、少なくともアルシェ含めるこの場の者は、ベリアルを特別だと考えていた。

 

 

「……ん?どうかしたか、アルシェ」

 

「い、いえ……久しぶりだと思ったので」

 

「あぁ、確かに。こうして一緒に出かけるのも久しぶりだな……悪かったな。ここ最近、忙しくて」

 

「いえ、それが仕方ない事だって、私にも分かってますから」

 

 

そんなベリアルと共にいる自分も“特別”……とは、アルシェには思えなかった。

愛して貰っている自覚はある。

それでも、その地位に自分が相応しいと無条件で頷けるほど、自尊心がある訳ではなかった。

 

 

「しかし、ああして見ていると、ウレイもクーデも子供なんだと思えるな」

 

 

ベリアルの言葉にアルシェは視線を向けた。

 

 

「子供、ですか……?」

 

 

子供は子供だろう。

年齢的にも風貌的も、二人を大人として扱う理由がない。

 

 

「ん?ああ、言い方が悪かったな。二人は大人に気を遣っているだろう?だからさ、ああして、子供らしく振る舞えているのを見ると、歳相応なんだな……と思う訳だ」

 

「確かに……ウレイもクーデも、遠慮しがちな所があると思います」

 

 

アルシェは頷く。

 

彼女達は幼いが、愚かではない。

自分が誰の慈悲で暮らせているのか、それを分かっている。

だから姉である自分や、出資者でもあるベリアルに対して我儘を言わない。

 

 

「聡いのは良いが、子供はもう少し我儘で良いんだがな」

 

「そう、ですか?」

 

「より良い生活を、より良い幸せを与えてやりたい。だから求める言葉を口にして欲しい……と俺は思っている。ま、それこそ俺の我儘だろうが」

 

「……そういったものを我儘とは言わない、と私は思います」

 

 

ベリアルの言葉にアルシェは首を振った。

友人、仲間、妹、愛する人……そんな人達が幸せになって欲しいというのは、アルシェにも分かる言葉だ。

 

 

「そうか?」

 

「そうですよ。ベリアル様は我儘なんかじゃありません」

 

「……いや、俺ほど我儘で自分勝手な奴は、この世界には中々居ないと思うぞ?」

 

 

顎に手を当てて苦笑している様子を見て、アルシェは笑みを浮かべた。

 

 

「……ふふ、そう、ですか?」

 

「そうだろう?」

 

「なら、そうしておきますね」

 

 

この人が自分のためと言いつつ、誰かのために駆け回っていることをよく知っている。

自分を助けるため、妹を守るため、手を尽くしてくれた時から、知っている。

 

そんなアルシェに対して、ベリアルは姿勢を崩した。

 

 

「アルシェも我儘で良いんだぞ?」

 

「え……?わ、私が我儘を?」

 

「ああ、欲しい物、して欲しいこと。俺に教えてくれないか?」

 

 

アルシェは迷った。

良い家の、良い部屋の、危険がない仕事と、美味しい食事。

それと、妹に対して最高の環境が与えられたこと。

 

 

「い、いえ……そんな、我儘なんて」

 

 

そこに満たされている今、我儘などない。

 

 

「んー?そうか?例えば服でも、宝石でも、なんなら家でも良いぞ?」

 

 

ベリアルの言葉にアルシェは悩んだ。

言えば本当に用意してもらえるのだろう。

 

だが、物欲は満たされている。

 

 

「わ、私は……」

 

 

だから、今、欲しいものを答えるとするならば──

 

 

「……特には何もない、です」

 

 

口にしようとして、アルシェは口を噤んだ。

 

公園に見える景色。

赤子を抱く、母親の姿。

 

ウレイリカとクーデリカがまだ子供である中、それを求める事は出来ない。

 

だが、考えてしまう。

愛する人の子供を産めたなら。

この愛を形に出来たのなら。

 

どれだけ良いことか。

幸せなことか。

 

だけどそれを、愛する人は望んでいない。

 

アルシェは気付いていた。

ベリアルはどこかで、恐れているのだろう。

 

この人はどこか、自己評価が低い。

己の事をどうしようもない人間だと誤解している。

 

親になる自信がなく、人に愛して貰う自信もない。

だから誰かを愛そうとするし、愛して貰うために尽力する。

 

そう分かるからこそ、この願いを口にする事は……この人を、傷付けてしまう。

アルシェはそれを理解していたから、黙ってしまう。

 

 

「……いや、すまない。答えづらい質問だったな。俺の押し付けだった」

 

 

ベリアルの言葉に、アルシェは目線を上げた。

 

 

「そんな、押し付けだなんて……私、思ってない、です。ベリアル様が私のことを、気遣ってくれてるって……分かってますし」

 

「……そうか?」

 

「そうです。そのことが、とても嬉しいですから」

 

「……そう言ってくれると嬉しいな。ありがとう、アルシェ」

 

 

感謝の言葉と共に、髪を撫でられた。

何処まで内心を察せられているのか、アルシェには分からない。

どれだけ愛していても、相手の想うこと全てが分かるわけではないからだ。

 

それでも、愛してくれているのは分かる。

だから少し嬉しくなって、笑みを浮かべた。

 

 

それから、他愛のない話もした。

最近の仕事の話とか、色々と。

 

 

そうして少し時間が経てば、公園内から親子が減っていく。

太陽はまだ登ったまま、頭上にある。

 

だとすれば理由というのは──

 

 

「お姉さま、お腹空いた!」

 

「お腹空いたー!」

 

 

昼食どきという事だ。

ご飯をねだる雛鳥のような二人に対して、ベリアルが目線を向けた。

 

 

「アルシェ、今日の昼食の予定は?」

 

「いえ、特には……一度、屋敷に帰ろうと思ってましたが」

 

「そうか。ならもっと良い案がある。あそこで食べないか?」

 

 

ベリアルが指差したのは公園の隅にあるただ広い草原だ。

人もまばらに居て、そこで親子が地面に布を敷いて食事をしている。

ピクニックというやつだ。

 

 

「……それでいいですが、私は用意してきていませんが、ベリアル様が用意を?」

 

「まぁな。こういう時のことを想定して……ほら」

 

 

ベリアルが虚空に手を突っ込み、そこから耐水性のありそうな布と、ピクニック用のバスケットを取り出した。

 

 

「わぁ!すごい、ベリアルさま!」

 

「すごい、すごーい!」

 

「ふっ、そうだろうそうだろう?」

 

 

なんて事もなしにベリアルは用意したが、アルシェは「またか」と内心で呆れていた。

 

アルシェは相手の魔法力を見極める生まれながらの異能(タレント)を持っている。

相手が使用できる魔法の位階を見ただけで看破できる。

 

普段、ベリアルは看破されないよう魔法道具(マジックアイテム)によって認識阻害をかけているが……その実、第十位階どころか、超位魔法と呼ばれる奇跡すら扱えるのだと知っている。

 

この虚空に物を収納して、時間を停止させ、また取り出す魔法……これは、ただの収納魔法とは格が違う。

どれだけ時間が経過しても、その虚空に収納した料理は温かいままで、出来立てとなる。

 

常識はずれな事をしている。

だが、この男が常識はずれな事など、アルシェはよく知っていた。

 

 

「……ん?どうした、アルシェ」

 

「いえ……ベリアル様は普段通りだな、と」

 

 

少し不思議そうにしているベリアルを見て、アルシェは笑みを浮かべた。

 

 




アンケート置いてますが、結果関係なく全キャラの話書きます。
それはそれとして読者の欲しいエピソード濃い目に書くので、投票してくれると嬉しいです。

欲しいエピソードは?

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