【R-18】オバエロ:至高の淫魔がスケベする話 作:口だけの淫魔
リ・エスティーゼ王国、その王都……ロ・レンテ城。
その最奥にある、王族の居住区の一室。
第三王女であるラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフ……ラナーは鏡を横切った。
「……………」
少し前まで、ラナーは鏡を見ながら表情の練習をしていた。
愛する子犬であるクライムが望む、慈悲深い姫の微笑みを目指していた。
だが、今はしていない。
ラナーは自身が欠損していることを知っている。
身体ではなく、心が欠損していることを。
慈悲とはよく分からないものだ。
合理的な判断の前に、他人の命などどうでも良かった。
己の欲する目的のためならば、何を犠牲にしても心が傷まない。
そう自覚していた。
「…………」
足を止めて、鏡の方へ戻る。
そして、目線を向ける。
そこには……無表情、ではなく、プレゼントを楽しみに待つような乙女の顔があった。
何の練習もなく、ぎこちない笑みではなく……心の底から、楽しみにしている顔だ。
それでも、人が見れば不気味と呼ぶような人間味のない笑みだったが……無表情よりは、感情豊かだろう。
「まぁ……私も、楽しみなのですね」
言葉に出せば自覚する。
愛する子犬クライム……『アレ』のことをまだ、ラナーは愛している。
だが、男としてではない。
ペットとして、だ。
自分があの少年に向けていた好意が恋愛感情ではなく、支配欲や、庇護欲だったことをラナーは自覚していた。
心の奥底で、見下していたのだ。
対等な関係でなければ、真の意味で男女の仲になる事はできない。
「…………」
ラナーは自身の服装を確認する。
空色の、薄い生地のネグリジェだ。
下着が透けて見える、寝巻き。
見る男は見れば、欲情を煽るだろう。
そのまま鏡から目を逸らして、ベッドに座る。
このベッドの上で何度かクライムと身体を重ねた事がある。
だが、それも遠い記憶だ。
クライムとはもう、長い間、身体を重ねていない。
その事について、クライムは相当、落ち込んでいたが……新しい男が出来て、既に心がここにないのだと知り、更に落ち込んでいた。
その様子を見てラナーは憐れんでいなかった。
愛を繋ぎ止められないクライムの不甲斐なさ、その自業自得だと……情けなくて可愛いと思っていた。
「……ふぅ」
呼吸を一つして、ラナーはベッドの側にある机から、クライムにも預けた魔法のハンドベル……ではなく、小さな鈴を取り出した。
それを手に取り、振る。
カラカラ、と。
綺麗な音は鳴らなかった。
乾いた、小さな音だ。
聞き耳を立てたとしても、部屋の外なら気付かないような音。
鈴の意味がない。
だが、それで良かった。
音を鳴らした直後、部屋に黒い輪っかが現れた。
それが空間を跳躍する転移魔法だと、ラナーは知っていた。
ぬるり、とメイド服の女性が現れた。
その美貌から黄金の姫とも呼ばれるラナーと並ぶほど、美しい容姿を持ったメイド服の女性だ。
彼女のことを、ラナーはよく知っていた。
即座にベッドから立ち上がり、ラナーは頭を下げた。
「ようこそおいでくださいました、ラズロ様」
「いえいえ、お呼び下さりありがとうございます。ラナー様」
互いに頭を下げ合う。
ラナーは第三王女であるが、このメイドは相当な立場の女性である。
礼儀を尽くさない訳には行かない。
「用意はできましたので、予定を遂行できればと」
「畏まりました。では、
ラズロが手を挙げると、即座に異形が召喚された。
それはラナーの姿形を真似るよう変身した。
「……いつ見ても、凄いですね」
「まぁ、見る人が見たら分かりますけどね」
そう口にするラズロに対して、ラナーは苦笑した。
長い時間を共にしたクライムですら気付かないのだ。
この王城に居る誰が気付けるというのか。
「では、ラナー様。行きましょうか」
「……はい」
手を出したラズロの手を握ると、転移魔法が発動した。
一瞬で景色が切り替わり……そこが既に王城ではなかった。
それ以上に豪華で絢爛な、一室に変わっていた。
「では、父上をお呼びしますので、少しお待ちを」
ラズロがそう口にして部屋を出た。
ラナーは少し考える。
父上という呼び名。
それは彼女が、その父上という存在に造られた存在だからだ。
女性の胎から生まれた訳ではない。
それでも父と呼ぶのは、繋がりを求めているからだろう。
それが悪い事だとはラナーは思わない。
呼称一つで求める相手との繋がりを強められるなら、自分だってそうするからだ。
「…………」
窓の外を見る。
夜だというのに、街に灯りが見える。
そして、活気がある。
ここはリ・エスティーゼ王国ではない。
アインズ・ウール・ゴウン魔導国である。
最先端の魔法研究と、繁栄により、夜も活気付いているのだろう。
経済に関して詳しいラナーは、その様子を見て素晴らしいと感じていた。
民衆とはより幸せに……自分から進んで経済を回す存在であるべきだと考えている。
より経済を回し、より発展し、より税を納める。
それが民のあるべき姿だと。
だからこそ、夜中の活気が素晴らしいものだとラナーは感じていた。
「…………」
そうして少し待って、部屋の扉が開いた。
「すまん、待たせたな。ラナー」
「いえ、来た所ですから。大丈夫ですよ、ベリアル様」
愛する男がそこにいた。
ベリアル……魔導国の都市長という肩書きを持つ、悪魔である。
初めての出会いは最悪だった。
寝室に突然現れて、めちゃくちゃに犯して来たのだから。
恨みすらした。
だが、身体を重ねて、出会いを重ねていく中で……この男の良さに、ラナーは気付いた。
この男は自分と同様、人でなしである。
だが、人間である自分よりは、人間臭い異形である。
懐に入れたものに対して、例え立場がどうであろうと真に平等に振る舞い、愛を囁く。
その力を活かせば、いつでも自分を屈服できるのに、自ら従うよう……いや、協力するように愛を持って接する。
その強さと、振る舞い。
真の雄とは、この男のことであるとラナーは心の底から感じていた。
……それはそれとして、この男との
「取り敢えず、夕食は食べたか?」
「はい、食べましたが……量は減らしていましたので、軽食程度なら食べられますよ?」
「なら、夜食を用意しよう。頼めるか、ラズロ」
自らのメイド相手にも、傲慢に振る舞う事はない。
ベリアルの言葉にラズロは頷き、部屋を後にした。
「さて、少し時間が空いたな。今日からの予定を少し詰めるか」
「はい、私も確認したいと思っていました」
王都に偽物である
それは……ただの休暇である。
ラナーは定期的に、ベリアルと会っている。
夜中に転移魔法で訪れて、ナザリックの寝室で一晩を共にする……それが二十日に一度か二度ほど。
他の側室はベリアルともっと会っているが、ラナーは王女という身分であり、あまり王都から抜け出せない故に仕方のない事であった。
それでも愛する男と時間を共にしたいと思うのは、女の性である。
故に、ラナーはラズロに相談したのだ。
その結果がこの、偽物を王都に置き、数日魔導国へ慰安するプランだった。
「行きたい所はあるか?」
「……農場を改良したと聞きました。それと、
「ああ、構わない。でも、身分は隠さないとな」
「変装でも致しましょうか?」
「ただ変装しても、バレるだろう。ラナーは可愛いからな」
「…………冗談が上手いですね」
そう褒められても、ラナーの心臓はいつも通り動くだけだ。
照れたりもしない。
だが、嬉しいのは確かだ。
愛する男に容姿を褒められて、嫌がる女は居ないだろう。
「冗談じゃないさ。優れた容姿だ、服を変えた程度では紐付けてしまう。魔法で幻覚でも貼り付けるとしよう」
「なるほど、魔法ですね。分かりました。それでお願い致します」
魔導国の農地、
王国では考えられないような政策で、凄まじい発展を遂げている。
その姿を見たいというのは、ラナーからすれば知識欲を満たすためだけの行動だ。
決して、王都で同じような事がしたい訳ではない。
というか、断られても別に良かった。
ラナーの目的は、ベリアルと共に時間を過ごす事である。
正直に言えば、何処に行くのでも構わないのだ。
ただ、目的を用意すれば、自然と共にいる時間が増えるから、目的を用意しただけだ。
そう考えていると、部屋にノック音が響いた。
「いいぞ、入れ」
「失礼致します」
ベリアルが呼ぶと、ラズロがサービスワゴンを押して部屋に入って来た。
そこには確かに、甘味の並んだ皿が積み重なり、ティーポッドとカップまであった。
それがラズロによって、机に並べられる。
王城のメイド、メイド長より優雅に、無駄なく、気付けば準備が出来ていた。
「では、ごゆっくり」
そして、ラズロが頭を下げて部屋を出た。
普通、メイドならば部屋に残るべきであるが……彼女は、ベリアルとの蜜月を邪魔しないように気遣ったのだ。
ラナーからすれば、ありがたい話であった。
ラズロが邪魔だと思った事はないが、それはそれとして二人っきりの時間というのも欲しかったからだ。
「じゃあ、食べるか」
なんてベリアルは言いつつ、自然にカップへ紅茶を注ぎ始めた。
自然な仕草にラナーは止める事なく、ティーカップを受け取った。
「ありがとうございます」
感謝を口にしつつ、口につける。
王国の王女であるラナーは普段から、最上級の茶葉で紅茶を飲んでいる。
だが、その紅茶よりも何倍も美味だ。
茶葉が良いのもあるだろう。
淹れた人間の技能もあるのだろう。
(こんなものばかり飲んでいると、舌が肥えてしまいますね)
事実、ラナーはベリアルの屋敷で飲食する度に、王都での食事に対する価値が薄れていくのを感じていた。
「では、俺も失礼して……と」
ベリアルがケーキスタンドの下段から、イチゴのタルトを取り出して口にした。
つられて、ラナーも口にする。
(瑞々しい果実……適度に柔らかく、香ばしいタルト生地。王都の貴族ならば大金を叩いて手に入れようと……いえ、彼らなら、権利を振り翳して料理人を接収しそうですね)
ラナーは人間味が薄い。
美味いものを食べても感動より先に、それがどれだけの価値を持つのか考えてしまう。
それでも美味いものは美味い。
思考の後には、確かな幸福を感じていた。
「ラナー、最近の王都の様子はどうだ?」
ふと、ベリアルが声をかけて来た。
何かを知りたい、というよりは世間話だろう。
ラナーはそう感じつつ、口を開いた。
「民衆の間では特に何もなく。ですが、貴族間では魔導国に対する不信感が募っています」
「ほう?」
「アンデッドが支配する国、というのもあるでしょう。しかし、本音としては一度王国と争った経緯がある国ですから……敵愾心を抱いているのです」
「当然だな」
「そして、己の利権を守るため、魔導国との戦争の火種を、別の貴族が用意してくれないか、と考えているようですね。非常に愚か、ですが」
ラナーはそう言いつつ、その愚かな貴族達を止めるつもりはなかった。
寧ろ、さっさと魔導国と敵対して、王国には潰れて欲しかった。
そうなれば、身内に甘いベリアルのことだ。
自身を保護して、屋敷に置いてくれるだろう。
結果、王女として王都に暮らさず、ベリアルの側室として屋敷で過ごせる時間が増えるに違いない。
そう、ラナーは考えていた。
戦争の結果、失われる兵や民草の命のことは考えていない。
「そうか……ラナーは何かしているか?」
「何か、ですか?」
「ああ、裏工作とか。自分の思い通りに行くように、話を進めたりとか」
「していませんよ?」
実際、ラナーは国政に不干渉を貫いている。
理由は単純である。
ベリアルに嫌われたくないから、だ。
ラナーは知っている。
彼が戦争を回避したいと思っている事を。
王国と魔導国が戦争状態になる事を、回避したいと思っている事を。
故に、何もしない。
戦争は起こって欲しいが、引き起こすような真似をすれば、ベリアルに嫌悪されるだろう。
ラナーは、そう考えたのだ。
「意外だな。何か手を打つと考えたが」
「……それは私が、戦争を止めようとすると?」
「逆だな。戦争を引き起こそうとするんじゃないかと思った」
ベリアルの言葉に、ラナーの片眉が上がった。
そこまで自分の事を理解されているのか、と。
その事実に対して、ラナーは……少し、嬉しくなった。
好いた男に理解されているというのはやはり、恐ろしさよりも嬉しさが勝つのだ。
特に、これまで自分の思考を理解してこなかった王国の人間達を考えれば、だ。
「ベリアル様が喜ばないと思い、行いませんでした」
「そうか……それは有難いな。王国とはまだ、戦争をしたくないからな」
「……まだ、ですか?」
「いずれ、戦争は起こる。その時までに、少しでも状況は良くしておきたい」
その言葉にラナーは頷いた。
戦争は起きる……その言葉は決定事項に聞こえた。
現状、王国の貴族が何かヘマをしようと、魔導国が戦争する意思を見せなければ開戦しないとラナーは考えていた。
故に、そのベリアルの言葉から、魔導国の王、アインズ・ウール・ゴウンは戦争をしたがっているのだとラナーは理解した。
「しかし、ベリアル様は私が戦争を起こしたいと考えているのに……幻滅なさらないのですね」
「まぁ、ラナーだしな……それに、やりたい事よりも、何をするか……思考よりも行動だな。俺の意図を汲んで、何もしない事を選択したラナーを俺は評価している」
「……そうですか?」
ベリアルの言葉に、ラナーは笑みを浮かべた。
過去に、クライムを喜ばせようと孤児院への支援や、炊き出しなどを行った事がある。
それに対して、偽善だと蔑む貴族がいた。
その行動によって命が救われる者がいるならば、それは世間から見れば善の筈だ。
何を考えていようと、行動によって得られる結果は変わらない筈である。
だというのに、偽善だと蔑む。
気にはしていなかった。
当時、ラナーにとって評価の基準はクライムを指針としていた。
クライムが喜ぶのであれば、他の評価などどうでも良いと考えていた。
それでも無理解の蔑みというのは、不快ではあった。
その不快感を、ベリアルは払拭してくれたのだ。
少し、嬉しくもなる。
「まぁ、何かあれば相談してくれ。俺に聞かせたくなければ、ラズロでもいいぞ」
「ラズロ様ですか?しかし、ラズロ様はベリアル様のメイドです。耳に入れれば、自然とベリアル様にも報告するのでは?」
「まぁ、余程の話ならな。だが、ラズロはよく側室から相談を受けている。その上で俺に秘密にしていることが多々ある。言って欲しくないと言えば、黙って相談を受けてくれるさ」
「……ベリアル様はそれでよろしいのですか?」
「いいとも。何でもかんでも、相手のことを知るだけが、大切にするって事じゃないからな」
ベリアルの言葉に、ラナーはそういう考えもあるのか……と納得した。
ラナーとして、好いた相手の事は何でも知りたい。
何に悩んでいるのか、何を欲しているのか、何がしたいのか、何がしたくないのか、どうなりたいのか。
何でも知りたいのだ。
無論、ベリアルのことも知りたいと思っている。
今以上に、これからも。
ラナーはクッキーを紅茶で流しつつ、視線を戻した。
「ベリアル様の方はどうですか?最近、何かありましたか?」
「最近か……ドラウディロンが屋敷に来たな」
「まぁ、ドラウディロン様が?」
ドラウディロン・オーリウクルス、竜王国の王女であり、ラナーも知っている存在だ。
ベリアルと側室になる前から、知っている。
子供の姿をしているが……その行動基準から、思考が大人である事も知っている。
故に、その子供の姿が欺瞞である事も推測出来ていた。
ラナーはドラウディロンを評価している。
自身の目的……国の存続のために、手段を選ばぬ点を自身と似ているとさえ思っていた。
そして、その結果、ベリアルへの従属を選んだ事も賢い選択だと考えていた。
「ああ……面識があるのか?」
「いえ、ありませんが……大変、優れた指導者だと私は思っています」
「まぁ、それは確かに……俺もそう思う。一度会ってみるか?」
「それもいいですね。女子会というものに、憧れていましたので」
ラナーにとって、対等な友人は少ない。
周りのメイドは自分に媚び諂い、所有物であるクライムを見下す愚か者ばかり。
強いて友人と呼べるのであれば、『蒼の薔薇』であるラキュースぐらいだ。
「女子会か……他に、聖王女であるカルカでも誘うか?」
「カルカ様もですか?……ベリアル様は、聖王国、竜王国、そして王国の王女に手を出しているのですね」
「……権力目的じゃないぞ?」
「それは知っています。ベリアル様からすれば、他国の権力など、どうでも良い事です。それだけ、魔導国は強大ですから」
ラナーにとって、ベリアルとは超越者である。
魔導国はそんな超越者が跋扈する国であり、この世界の法や地位、権力や金銭など、既存の価値観に捉われない国だと認識している。
よって、ベリアルにとって姫だの王女だの、出会いのキッカケではあれど、その肩書きが重要ではないことをラナーは知っている。
そうして会話を進めていくと、菓子も紅茶も無くなっている事に気付く。
楽しいティータイムも終わり……となれば、続けて行う事は分かりきっている。
「では、身体を清めてまいります。案内をお願いしてもよろしいですか?」
「ああ、ラズロに頼むとしよう」
すなわち、
愛する男とまぐわうこと、それはラナーにとっての幸せである。
過去、ベリアルに激しく犯された時……もはや、暴力とも呼べる快楽を押し付けられた時。
あの時、間違いなくラナーの思考回路は変わった。
性欲、というものが強くなった。
元々、無かった訳ではない。
愛する子犬、クライムと将来的に……という気持ちはあった。
だがそれは独占欲や、好意の上に成り立つものであった。
今は少し違う。
夜、一人で自慰に耽る時間が出来た。
ベリアルのことを想い、自慰をする。
激しい
本物の雄に屈服させられる自分を考えて、悦に浸る。
そんな時間が増えた。
「では、失礼いたしますね……♡」
甘えた声が漏れた。
自覚して甘い声を出す事は、昔からあった。
しかし、今の声は自覚して出したものではなかった。
愛する男との
無意識に、雌として媚びる声を出したのだ。
それを恥じたり、悔やむ心はラナーにはない。
ただ、事実として甘えるような媚びた声を出しただけだ。
そうして、ラナーはラズロに連れられて浴場に連れてこられた。
夜中だというのに、
そんな中、ラナーは一人で浴場に足を踏み入れた。
王宮ならば、メイドが付いて来る所だ。
しかし、ラナーは王女とはいえ、王宮内で良い立場とはいえない。
自力で身体を洗う事ぐらい出来る。
「さて……」
湯で身体を濡らし、柔らかな布に液体の石鹸をつけて、身体を拭う。
王都で入浴する時と、全く作法が異なる。
だが、こちらの方が心地よい。
ラナーは、鏡を見た。
「…………」
白く、滑らかな肌。
艶やかな金髪。
深みにある青い瞳、薄紅色の唇。
誰もが羨む美貌が、そこにある。
そんな美貌を持つ、ラナーの表情は──
「……ふふ」
笑みを浮かべていた。
これからの幸せを想う、安らかな少女の笑みだ。
そして、視線を下げる。
柔らかな少女の裸体だ。
痩せすぎず、それでいて肉感の薄い身体。
胸もあるが……それほど大きくはない。
それでも美しい、あどけない少女の身体。
その裸体を石鹸のついた布で拭う。
「…………」
この身体は、ベリアルの為にある。
これから、激しく責められ、犯される。
そう思えば、体も疼く。
ラナーは、自身を
ただ、ベリアルに激しく犯されたり、首を絞められたり、尻を叩かれると気持ちよくなるだけである。
愛を確かめ合う、キスしながらの正常位のような、ラブラブエッチも好きではあるが。
普段の妄想はもっぱら、自分をモノとして扱うような激しめの後背位である。
人はそれを
「……今日は激しめにして貰えるよう、おねだりしてみましょうか」
身体が疼く。
ベリアルに身体を好き勝手にされる妄想をすると、子宮がぐつぐつと煮えるように熱くなる。
呼吸も僅かに熱くなる。
今この場で自慰したいと思ってしまうほどだ。
身体を洗うのは程々に、身体を湯に浸ける。
そうして、少し身体を温めて……浴場を出た。
「今、あがりました。ラズロ様」
脱衣所にはラズロが居る。
そして、服を用意してくれていた。
風呂に入る前に、用意するよう注文した服だ。
「……用意してくださったのですね。ありがとうございます」
「いえいえ、ラナー様。仕事ですし……父上も喜びますから」
ラズロが用意したのは、白いレースの透けるようなベビードールだ。
純白で無垢を装う、人の嗜虐心を刺激する寝巻き。
それは、乳房や女性器など、隠すべき所を隠していない布切れだ。
それをラズロから預かり、ラナーは身につけた。
そしてまた、ラナーは笑みを浮かべた。
恍惚とした、少し下品な笑みを。