※この作品はR-18です。

【R-18】オバエロ:至高の淫魔がスケベする話   作:口だけの淫魔

11 / 111
エッチなシーンはありません。


#11 王都・蒼の薔薇

リ・エスティーゼ王国、首都。

バランシア宮殿、内部……その一室。

 

 

「王都を守護する者の中に、信仰系の魔法詠唱者(マジックキャスター)が必須だと思うのです」

 

「……ラナーの言ってる事は分かるわ。でも、貴族の魔法詠唱者(マジックキャスター)軽視の風潮が無くならない限り、宮殿内の護衛を任せるのは難しいでしょうね」

 

「……そうですか。難しい、ですか……ラキュース」

 

 

ラナーが少し顔を曇らせる。

その様子に、薄紅色のドレスを着た容姿の整った女性……ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラが頷いた。

だが、その容姿からは考えられないが……ラキュースは王国のトップであるアダマンタイト級冒険者チーム『蒼の薔薇』のリーダーを務めている。

十九歳という若さながら、様々な偉業を達成した優れた神官戦士だ。

魔法詠唱者(マジックキャスター)としての実力も、戦士としての実力も優れている。

 

そんなラキュースは、目の前の友人……ラナーの様子に胸を痛めた。

 

先日、彼女は魔皇バアルと名乗る悪魔に襲撃された。

その際、身の毛もよだつような陵辱をされてしまった……との事だ。

王国としては否定している話ではあるが、友人であるラキュースはラナー自身から真実を打ち明けられていた。

 

ラナーは現在、その悪魔に対して恐怖を抱いている。

当然の話だと、ラキュースも理解している。

助けてあげられなかった後悔と、悪魔に対する怒りを感じながらも……ラナーの提案に現実的な意見を述べている。

 

 

「実際、私だから宮殿に入れているけれど……普通の冒険者程度では足を踏み入れる事も出来ないでしょうね。そして王国は魔法詠唱者(マジックキャスター)を保有していないし、雇うつもりもないわ」

 

「……仕方のない話ですね。今後、魔法詠唱者(マジックキャスター)の立場向上に努めるとしても、それは当分先になってしまう、なら──

 

 

そう話した直後、ラナーの目線が揺れ動いた。

呼吸の頻度も増え、汗が流れる。

 

 

「と、当分は、今まで通り……あの時、と同じ騎士しか護衛に用意できない、なら……い、意味が──

 

「ラナー様」

 

 

すぐ側に立っていた、白銀の鎧を着たクライムがラナーの手を握った。

すると、恐慌状態に陥っていたラナーは少しずつ落ち着きを取り戻していく。

 

 

「っ、ごめんなさいね、クライム。もう大丈夫よ」

 

 

その言葉にラキュースは目を細めた。

大丈夫な訳がないからだ。

ラナーは大事に育てられてきた……痛みや苦痛からは程遠い場所で、だ。

そんなラナーは突如として現れた悪魔に襲われ……貴族達の目も変わってしまった。

悪魔に陵辱されたという噂は、ラナーに対する印象を大きく変えてしまったのだ。

 

哀れみの目、穢れたものを見る目、侮蔑する目……心地よいとは言い難い視線が、ラナーへと向けられている。

 

そんな状態でラナーの傷が癒えるわけがない。

だから、大丈夫な訳がないのだ。

 

 

「アインドラ様、ラナー様もお疲れになられましたので……」

 

「……ええ、そうね。クライム、彼女の事をよろしくね?」

 

「はい。この身にかえて」

 

 

ラキュースから見て、クライムはよく頑張っている。

自身の主君を守れなかった負目から、守らねばならないという強迫観念に駆られているように見えるが……それぐらいが丁度良い。

今、不安定になっているラナーには、多少強引にも守ろうという姿勢を見せてくれる男が必要なのだ。

 

ラキュースはラナーに頭を軽く下げて、宮殿を後にした。

 

 

ラキュースは宮殿の廊下を歩き、外へ向けて移動を始める。

そんな中、柱の裏から一人の女が姿を現した。

 

 

「ボス、もう帰るの?」

 

「ええ。あの場はクライムに任せた方が良いわ」

 

「むっ、確かに。クライムは頼りになる……前まではあった可愛げがなくなった。ちょっと大人になった」

 

「……ティナもそう思う?」

 

 

ティナが頷く。

黄金色の髪を持ち、スラリとした肢体。

見に纏う服装は身体に密着した、動きやすい服装だ。

 

『蒼の薔薇』の一員である盗賊系スキルを習得した元・暗殺者だ。

 

 

「うん。身体が大きくなったのもあるけど、わたしの好みから大きく外れた感じする」

 

 

そして、未成年の少年に発情する変態だ。

 

 

「……そういう判断基準はどうなの?本人の前では絶対に言わないでね」

 

「むっ、わたしもそこまでバカじゃない」

 

「…………そうかしら」

 

 

ラキュースは苦笑した。

ティナの事は仲間として信用しているが、その発言は信用できなかった。

 

 

「クライム、絶対に童貞捨てた。ガガーランもそう言ってたし、間違いない」

 

「下世話な話も程々にしないと、『蒼の薔薇』に悪評が付くわ」

 

「……じゃあ、もう言うのやめとく」

 

「そうして頂戴ね」

 

 

ラキュースも何となく感じ取っていた。

親友であるラナーと、その従者であるクライムの距離が縮まっている。

特にクライム側からラナーに対する距離感が無くなっているように感じた。

 

直接、言われてはいないが男女の関係になった……と、ラキュースは考えている。

悪評によって嫁の貰い手がなくなったのであれば、クライムと正式に婚姻しても文句を言う貴族はいないだろう。

 

それはラナーにとって、不幸中の幸いか……そう思い、ラキュースは目線を逸らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

王城から離れたラキュースはティナを連れて、王都の王通りを歩いていた。

ドレスから普段着に変えて、冒険者らしい服装となっているが……足を進めているだけで、ラキュースは周りからの視線を感じていた。

ティナは影に隠れつつ移動しているため、その視線はラキュースに集中している。

 

王都で最も有名なアダマンタイト級チーム『蒼の薔薇』……そのリーダーであるラキュースは、かなりの有名人である。

こんな視線には慣れたものであり、話しかけられない限りは反応もしない。

 

王都の大通り、その中にある冒険者用の宿。

そこには十分な広さに複数の施設……貴族が住んでいると言われても納得できる程の規模があった。

そんな王都における最上級の宿は、その規模に相応しい宿泊費用がかかる。

 

そこに宿泊している冒険者は、一級の冒険者だけだ。

 

そんな宿の扉を、ラキュースは開けた。

一階部分の酒場兼食堂にはまだ人は少ない。

昼食を取るには遅く、夕食を食べるには早い時間帯だからだ。

 

それでも席に座っていた何人かの冒険者は、ラキュースを一瞥した。

それだけ、アダマンタイト級の冒険者とは著名なのだ。

 

鬱陶しい視線を無視して、ラキュースは奥へと進む。

普段からそこに仲間がよく座っているからだ。

 

実際、目的の人物が二人そこに座っていた。

片方は漆黒のローブを身にまとい、仮面を付けた小柄な少女……魔法詠唱者(マジックキャスター)のイビルアイ。

もう片方は筋骨隆々の巨漢……いや、巨女の戦士ガガーラン。

 

その二名もまた、『蒼の薔薇』のメンバーであった。

 

 

「ガガーラン、昼間からお酒を飲んでるの?」

 

「お?リーダーか。今日は非番な筈だろ?俺の飲酒を止める事は出来ないぜ」

 

「……文句はないけれどね。程々にしてね」

 

 

ラキュースはため息を吐いて、イビルアイに視線を向けた。

 

 

「ティアはどうしたの?一緒じゃなかったの?」

 

「少し前に宿を出た。またナンパでもしているんじゃないか?」

 

「…………」

 

 

ラキュースは再び頭を抱えそうになった。

 

ティナの姉妹であるティア……二人は元々、暗殺者集団『イジャニーヤ』の一員だった。

そんな彼女達は色々な事情があり、現在は『蒼の薔薇』に席を置いているのだが……。

 

ティナは未成年の男の子好き。

ティアは可愛い女の子に目がない。

 

ナンパ、という事は街に出て女に声を掛けているのだろう。

 

 

「それより、リーダー。ティナはどうした?一緒に王城に行っていた筈だろ?」

 

「え?あれ……居ない?」

 

「はははは……全く、自由な奴らだな。俺以上だろ」

 

 

ガガーランの言葉に、いよいよラキュースは頭を抱えた。

確かに今日は非番だが、少し話がしたいと言っていた筈なのに。

 

ラキュースは給仕に飲み物と、軽食を頼み席についた。

そして落ち着いたタイミングで、イビルアイが口を開いた。

 

 

「それで?魔皇バアルについての情報得られたか?」

 

「ううん、ダメね。ラナーに訊くには気の毒だし……新しい情報はなかったわ」

 

「そうか……進展はなし、か」

 

 

現在、『蒼の薔薇』はラナーからの依頼によって王都に滞在している。

目的は二つ。

魔皇バアルに対する防衛。

そして、王都を根城にする巨大な犯罪シンジケート『八本指』の調査。

この二つだ。

 

給仕が運んできた果実水をラキュースは口にした。

 

 

「イビルアイは何か知っているの?王城に侵入できるような強大な悪魔について」

 

「……いや、思い当たる節はない。ただ、誘拐された貴族の中には元・オリハルコン級の冒険者に守られていた貴族もいる」

 

「そうね。惨殺されていた、と聞いたわ」

 

 

イビルアイは少し悩むような仕草をしてから、指を立てた。

 

 

「魔皇バアル……その難度は、八十は確実にあるだろう。いや、それ以上あると想定して立ち向かった方が良い」

 

「……そうね。私もその想定よ」

 

「一般の冒険者では足手纏いになる。遭遇した場合は我々だけで戦う必要があるな」

 

「ええ、無駄な犠牲は避けたいものね」

 

「いや、無駄な犠牲などではない。『足手纏いだ』とハッキリ言っている」

 

 

歯に衣着せぬ物言いに、ラキュースは少し眉を顰めつつ……イビルアイでも、そう言うレベルなのかと納得する。

 

魔法詠唱者(マジックキャスター)であるイビルアイは、『蒼の薔薇』で最も強い。

それはリーダーであるラキュースですら比べ物にならないほど、強い。

 

二百年前の御伽話の英雄……十三英雄の一人であるからだ。

イビルアイは『国墜とし』の異名を持つ、伝説の吸血鬼(ヴァンパイア)である。

仮面を付けているのはその正体を悟られぬため……人間のふりをしているのだ。

 

そんな彼女を以ってして、危機感を感じる相手……魔皇バアル。

彼女は難度を『八十』と言ったが、本心ではもっと上だと思っているのだろう。

正直に口にしないのは、『蒼の薔薇』の士気を下げないためだ。

 

元々持っていた危機感を、ラキュースは引き上げた。

 

 

「……勝算を高めるために、やるべき事はあるかしら」

 

「いや、ない。強いて言うならば、魔皇バアルが王城付近に出没する事を祈るぐらいだな」

 

「え?何故、王城に?守るべき人が増えてしまうのではないかしら」

 

「そうだ。王城には王がいる。王を守る為ならば、ガゼフも出ざるを得ない」

 

 

ガゼフ・ストロノーフ。

王国戦士長であり、王国最強の戦士だ。

アダマンタイト級冒険者であるガガーランですら、足元に及ばない程の力量を持つ。

その力量は物語の英雄にも及ぶ、と言われている。

 

イビルアイの発言に、ガガーランが口を出した。

 

 

「そこまでなのか?魔皇バアルってのは」

 

「正直に言えば、見ていないから分からん。だが、短時間で王城内の元・オリハルコン級冒険者を殺害した。……それも、剣は鞘におさまったままだったそうだぞ?」

 

「おっと、そりゃ……おっかねぇ話だな」

 

 

ガガーランが酒を口にした。

 

空気は重い。

王都に突如現れた強大な悪魔に、誰も彼もが怯えている。

ただ強力なだけであれば、まだマシだった。

突如現れた、という事が恐怖を煽る。

 

今日、明日……いや、次の瞬間。

いつ現れたっておかしくないのだ。

王城内の騎士達は、怯えながらも気を張り詰め続けている。

その負担は相当なものだろう。

 

そんな重い空気の中、ガガーランが酒の入った木樽のジョッキを机に置いた。

 

 

「ちょっと話題、変えようぜ?警戒しても意味ねぇってんなら、そん時までは英気を養うべきだろ」

 

 

ガガーランの言葉にイビルアイはため息を吐いた。

 

 

「ガガーラン……お前という奴は」

 

 

そう悪態は吐きながらも、彼女は納得しているように見えた。

いつ現れるか分からない悪魔を警戒し続け、精神をすり減らし……結果、現れた時に実力を発揮できなければ意味がないのだ。

 

ラキュースが頷くと、ガガーランはニタリと笑った。

 

 

「イビルアイ、聞いたか?エ・ランテルで三番目のアダマンタイトチームが生まれたそうだぜ」

 

「あぁ……朝方、冒険者組合で聞いた。『漆黒』だろう」

 

 

ラキュースは目を瞬いた。

初耳だったからだ。

 

 

「アダマンタイト級冒険者チームが新しく出てきたの?初耳よ?」

 

「あぁ、リーダー。俺も昨晩に聞いた話だからな……漆黒の英雄モモンっつう戦士がリーダーで、美姫と呼ばれる魔法詠唱者(マジックキャスター)のナーベがいるそうだ」

 

「……二人なの?」

 

「正直、そこん所は俺も眉唾だな。どう思う、イビルアイ」

 

 

ガガーランの言葉に、イビルアイが反応した。

 

 

「正直、私も初めて聞いた時は、嘘だと思って居たが……嘘にしては真に迫り過ぎている。恐らくは事実だ」

 

「だってよ、リーダー」

 

 

再び、話が戻される。

 

 

「そう……それだけの実力者なら、魔皇バアルと相対した時に居てくれれば助かるわね」

 

「俺もそう思うぜ。どこまで信用できるかは分からねぇが、戦士だって言うなら盾ぐらいにはなるだろ」

 

「ちょっとガガーラン。そういう物言いは失礼よ」

 

「おっと、悪気があった訳じゃねぇんだ。戦士ってのは『そういう』潰しが効くって話だ」

 

 

ガガーランが空になった酒に気付いて、給仕に追加で注文した。

そして、何かを思い出したかのように口を開いた。

 

 

「そういや、王都でもちょっと話題になってる冒険者が居るのは知ってるか?」

 

「……いえ?特に思い当たる節はないけど。誰なの?」

 

「チーム名は『銀翼』。つい最近、オリハルコン級になった冒険者チームだ」

 

「へぇ……初耳ね」

 

「エ・ランテルで既に冒険者として、ある程度活動して居たようでな。最近、本格的にこっちへ籍を移したそうだ」

 

 

ラキュースは純粋に感心した。

ガガーランは結構な情報通でもあるようだ。

こんな昼間っから酒浸りし、時に他の冒険者へ絡みに行ってるのだから……それだけ、情報を集める機会が増えるのだろう。

イビルアイの知識と違った、噂話の収集能力だ。

 

ガガーランの言葉に、イビルアイが視線を向けた。

 

 

「ガガーラン。その『銀翼』のメンバーはどんな構成だ」

 

「あぁ、噂によるとリーダーは魔力系魔法詠唱者(マジックキャスター)兼戦士の男……二刀流って奴だな。で、メンバーの一人は軽装備の戦士の女らしいぞ」

 

「……そいつらも二人組なのか?」

 

「おう、そうらしい」

 

「エ・ランテルでは少数メンバーの冒険者チームが流行っているのか?バカバカしい」

 

 

イビルアイの言葉にラキュースは苦笑した。

冒険者チームとは、互いの欠点を補い、長所を活かし合う為に存在している。

近接能力を持つ戦士、高火力な遠距離攻撃を有する魔力系魔法詠唱者(マジックキャスター)、回復魔法による補助を熟す信仰系魔法詠唱者(マジックキャスター)……撹乱を可能とするレンジャーなど、様々な特技を持つ冒険者が集まった方が強い。

 

二名構成のチームは、最早、チームと呼べるほどの規模ではない筈だ。

 

 

「でも、ガガーラン。随分と詳しいわね……その『銀翼』について」

 

「あぁ、話題になってんだよ。色々とな」

 

「色々?」

 

 

ラキュースの言葉に、ガガーランは指を立てた。

 

 

「リーダーはベリル、って名前らしいんだがよ。容姿がすっげぇ良いらしい」

 

「……随分と俗な理由ね?」

 

「そんなもんだろ、噂話なんて……女の冒険者がキャーキャー喚いてたってのを聞いたぜ?男からは逆に、敵意を向けられてるんだとか」

 

「はぁ、そう……気にして損したわ」

 

 

ラキュースの落胆した顔に、ガガーランが顔を顰めた。

 

 

「大事な話だろうが。まぁ、なんつーか童貞じゃなさそうだし俺の好みじゃないが、そういう容姿関係での仕事ってのも──

 

 

ガガーランが話している最中に、宿屋の扉が開いた。

その音にラキュースとガガーランは僅かに視線を向けた。

 

……そこには黒髪、赤い目、白い肌……異様に整った男の姿があった。

服装は素肌に黒いジャケット、皮のパンツを履いている。

服には銀色の装飾品……恐らく、魔法道具(マジックアイテム)を装備している。

 

そして、その後ろには軽装備の女戦士が居る。

 

ラキュースは察した。

彼等がガガーランの言って居た『銀翼』なのだと。

 

 

「……噂をすれば、何とやらだ」

 

 

ガガーランの小声に、イビルアイが頷いた。

 

 

「驚いたな。脚色ではなく、確かに優れた容姿だ」

 

「……あ、あまり噂話をしないで頂戴。本人達に聞こえたら悪いわよ?」

 

「リーダー、別に悪口を言ってる訳じゃねぇんだ。構わねぇだろ」

 

 

ラキュースはため息を吐いて、宿屋に入ってきた『銀翼』の二人に目を向けた。

 

……確かに優れた容姿だ。

ラキュース自身も容姿を褒められる事は多く、更に王国一の美貌とも呼ばれるラナーという友人がいる。

そんな彼女からしても……男女という差はあれど、優れていると認めざるを得ない。

 

ただ、優しげな容姿ではなく、少し悪そうな……悪く言えば、女癖の悪そうな容姿をしている。

 

それが逆に──

 

 

(何あれ……すっごくカッコいい)

 

 

ラキュースの内面にある癖に引っかかった。

ラキュースは『暗黒』とか『魔剣』やら『邪悪』やら『ダークエナジー』やら『混沌(カオス)』やらが大好きだ。

他のメンバーには秘密だが、年頃の少年が好む『ちょっと悪いけど、カッコいい』が大好きなのだ。

 

そんなラキュースにとって、突如現れた『闇』を感じさせる美男の姿は、胸を高鳴らせるには十分だった。

 

何故、あんな服装をしているのか?

腰にある骸骨モチーフの魔法道具(マジックアイテム)の効果は?

それってどこで買えるの?

私も欲しいんだけど?

 

興味が恐ろしい勢いで積み上げられる中、ラキュースは深呼吸した。

 

いけない。

ラキュースは『蒼の薔薇』のリーダーだ。

リーダーに相応しい冷静な振る舞いをしなければ──

 

 

「って、あれ?ガガーランは?」

 

 

視線を戻すとガガーランが離席していた。

 

 

「ガガーランなら『銀翼』を席に誘うと向かっていったぞ」

 

「なっ」

 

 

オリハルコン冒険者チーム、『銀翼』の二人に目線を戻すとガガーランが話しかけているのが見えた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

モモンガさんが『モモン』という名前で冒険者をやってるように、俺も冒険者をやる事となった。

 

というのも、クレマンティーヌをナザリック内で引き篭もらせて腐らせるには可哀想だったからだ。

彼女はナザリック基準ではそれほど強い戦士ではないが、転移世界の基準ではかなりの上澄みだ。

王国内で勝てる奴が……居てもフル装備をした戦士長のガゼフぐらいか?

 

そんな英雄級の戦士である彼女をナザリックに引き籠らせるのは、彼女にとってもよくない話だ。

 

例え、ラズロと一緒に毎日スパに行ってマッサージ受けて、肌を艶々にして満面の笑みを浮かべていたとしても。

サウナに行ったり、バーで酒飲んだり、ポップするアンデッド相手に武技の訓練をしていたとしても。

 

……だよな?

流石にペットじゃないんだから、家に鎖で繋ぎっぱなしは可哀想だよな?

 

という訳で、クレマンティーヌに冒険者をするぞ!と言ったら、二つ返事で承諾された。

『それってデートだよねー』とか何とか言ってた。

デートではないだろ、と否定するのは簡単だが……最近、夜以外はあまり構ってやれて居ないからな。

至高の御方として、ナザリック内のあれこれが忙しいのだ。

モモンガさんもギルド長アインズ・ウール・ゴウンとして過労気味だし、仕事は手伝ってやりたい。

 

デートって事にしておいてやろう。

 

という訳で、モモンガさんとデミウルゴスに「俺も冒険者なりたーい!」と言ってきた。

モモンさんは二つ返事で承諾してくれたし、デミウルゴスは勝手に何か納得してくれた。

『流石はベリアル様』略して『さすベリ』をされた。

俺はもうデミウルゴスが怖いよ。

 

エ・ランテルにて漆黒の英雄モモンの推薦により、身内贔屓スタートした俺とクレマンティーヌの冒険者活動だが、恐ろしい程に上手く事が進んだ。

 

著名なモンスターを狩ったり、スキルを使って秘境の野草を探したり、それなりに楽しんでいればすぐにミスリル級にまで昇格できた。

だが、お陰でエ・ランテルを拠点としている漆黒の英雄と依頼がブッキングする事が多く、俺は王都へと拠点を移した。

 

ついでにその事をデミウルゴスに言えば、また『さすベリ』された。

俺は全知全能の天才軍師なのかも知れない。

 

そうして王都で幾つか依頼を熟せば、すぐにオリハルコン級にまで到達できた。

あまりにも早い昇格にちょっと拍子抜けしてる。

 

 

ちなみに、登録名は本名ではない。

俺の名前はベリルで、クレマンティーヌはクレアだ。

まぁ、元々、本名じゃないけどな……一応、念には念をだ。

 

モモンガさんも、モモンって安直な名前で冒険者やってるんだし、まぁいいだろ。

 

 

そうして、オリハルコン級になった俺達は金銭もそれなりに余裕が出来たため、宿屋のランクを一つあげる事にした。

衣食住に関してはナザリックを上回る事はないし、殆どの食事をナザリックに帰って済ませてはいるが……偶には食事をしている様子を見せないと不審がられる。

 

現地で食事をするなら美味い所がいい。

宿も綺麗な場所の方がいい。

 

という訳で、王都で最も上等とされる冒険者向けの宿屋に来た訳だが──

 

 

「おう、『銀翼』の二人だな。ちょっと俺に付き合えよ」

 

 

目の前に筋肉ムキムキの厳つい女が現れた。

名はガガーラン、『蒼の薔薇』の戦士だ。

 

背後から何かがキレる音がした。

……自分より弱い戦士に舐めた態度を取られて、クレマンティーヌがキレたのだろう。

俺はガガーランの言葉を無視して、振り返りクレマンティーヌへ目線を向けた。

 

 

「……クレア」

 

「えー?なに?別にいいよー?」

 

 

ニッコリとした笑顔を浮かべるクレマンティーヌに、思わずため息を吐きそうになった。

彼女との付き合いが長ければ、一瞬でキレてると分かるが……付き合いの短い奴らなら、ただ笑っているようにしか見えないだろう。

 

俺はガガーランへと視線を戻した。

 

 

「喜んで、付き合わせて貰うとするよ」

 

「話が早い奴は嫌いじゃないぜ。こっちだ、着いてきな」

 

 

ガガーランの思惑は分からない。

だが、アダマンタイト級冒険者の誘いをオリハルコン級冒険者が断ると角が立つ。

 

ガガーランの指を差した方を見れば……慌てた様子の金髪美女と、椅子に偉そうに座っている小柄の仮面女を見つけた。

ラキュースとイビルアイ、ね。

 

まぁ、可愛い女に付き合わされるのは嫌じゃない。

別にガガーランも嫌いじゃないし。

ちょっとストライクゾーンから外れてはいるが、俺にとって女は女だ。

無碍にはできない。

 

だって、悪い奴らじゃないし。

寧ろ好感が持てる。

 

そうして席に着くと、ラキュースがこちらへ近づいて来た。

 

 

「その、ごめんなさいね?強引に連れて来てしまって……」

 

「いえいえ、構わないとも」

 

 

ニッコリと俺が笑うと、ラキュースは顔を赤らめた。

……まだ<魅了(チャーム)>すら使ってないんだが。

意外と面食いなのか?

 

 

「私はラキュース。『蒼の薔薇』のリーダーよ」

 

「これはご丁寧にどうも……俺はベリル。『銀翼』のリーダーをやらせて貰ってるよ」

 

 

俺が手を出すと……少し迷ったような仕草をしてから、俺の手を握って来た。

……細いな。

 

クレマンティーヌもそうだが、この世界の女戦士は何故こうも筋肉を付けずに戦闘力を得られるのか。

いや、ガガーランは別だが。

マジでムキムキだな……惚れ惚れするぐらいには。

 

 

「あっちが戦士のガガーランで、こっちに座っているのが魔法詠唱者(マジックキャスター)のイビルアイよ」

 

 

ラキュースに紹介されたガガーランが、俺の側に寄って来た。

 

 

「おう、よろしくな!」

 

「よろしく──

 

 

手を伸ばした瞬間、握手を──万力のような力で締め付けられた。

だが、所詮、現地基準で高レベルな戦士……ユグドラシルでカンストしている俺には無意味だ。

 

レベル差というのは無慈悲な話だ。

この世界で血の滲むような努力をした奴らが、ユグドラシルの一般的なゲーマーに負けてしまうのだから。

 

まぁ、リスペクトはしないとな。

ズルして手に入れたような力だ。

この力で相手を小馬鹿にするのは良くない。

 

 

「随分と力が強いんだな、ガガーラン」

 

「そういうお前も、ちっとも痛がる素振りを見せねぇ……相当、鍛えてるな?」

 

「ご想像にお任せするよ」

 

 

何とか誤魔化せたな。

戦士の奴らは『握手しただけで力量が分かる!』とか言ってくるからな、勘が鋭い。

コキュートスとかが言ってる『戦士ノ輝キ』って奴だ。

 

俺にはさっぱり分からん。

 

 

「それで……そちらがイビルアイ、だったか。よろしくな」

 

「……あぁ、よろしく」

 

 

俺は手を出したが……イビルアイは手を差し返さなかった。

警戒心が強いな。

まぁ、当然か……俺、結構うさんくさい見た目してるからな。

 

 

「あ、ごめんなさいね?イビルアイ、ちょっと人見知りなの」

 

「いやいや、構わないとも。警戒するに越した事はない。だろう?」

 

 

イビルアイに目線を向けると、顔を逸らされた。

態度、悪過ぎだろ。

まぁ、いいけど。

マスクの下は美少女吸血姫だからな……美少女には、美少女無罪が適用される。

 

 

「それで、ベリルさん──

 

「いや、呼び捨てで構わないとも。アダマンタイト級の先輩に敬称で呼ばれるほど、大した人間ではない」

 

 

まぁ、マジで人間じゃないんだけどね。

俺、淫魔(インキュバス)だし。

 

 

「なら私もラキュースで構わないわ」

 

「……良いのか?」

 

「ええ、勿論」

 

 

あれ?

何でこんなに気を許されてるんだ?

困惑してガガーランに目線を向けると、ガガーランも困惑して居た。

 

……ラキュースには、俺と仲良くなりたいという下心があるのか。

何かしら、面倒ごとに巻き込まれる可能性も考えておくべきか。

 

 

「ところで……早速だけど、質問しても良いかしら?」

 

「あぁ、何でも訊いてくれていい」

 

 

質問次第によっては、嘘の回答を用意しなければならない。

モモンガさんと一緒に考えた、俺の出生設定資料集を思い出し──

 

 

「その身に付けてる髑髏の魔法道具(マジックアイテム)、どこで手に入れたの?買えるなら、お店を紹介して欲しいのだけれど」

 

 

椅子から転げ落ちそうになった。

多分、俺は、ラキュースから同好の士……厨二病だと思われていたのだ。

今後欲しい話は?

  • クレマンティーヌの続き
  • ラナーの続き
  • エンリ
  • ヒルマ
  • ドラウディロン
  • プレアデス
  • その他、現地人
  • その他、ナザリック勢
  • ※結果だけ確認する
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。